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Google、世界初で「検証可能な量子優位性」を実現
2025年10月24日 11:51
Googleは10月23日、量子コンピュータ向けの新しい量子アルゴリズム「Quantum Echoes」を発表した。世界で初めて検証可能な量子優位性を実証し、従来の最速スーパーコンピュータ(スパコン)上で動く最先端アルゴリズムよりも13,000倍高速に動作するという。
Quantum Echoesは、分子、磁性体、ブラックホールなどさまざまな自然界システムの構造を理解する上で有用な時間順序外相関関数アルゴリズム。このアルゴリズムを同社の量子チップ「Willow」上で実行させたところ、従来のスパコンの最先端アルゴリズムよりも1万3,000倍高速であったことから、“量子コンピュータが古典コンピュータより正確、より安価、またはより効率的に計算を実行できること”の定義である量子優位性を初めて検証可能な形で実証した。
今回のアルゴリズムは、エコーのように機能することから名付けられた。まず、Willowチップ上の量子ビットに、綿密に作り込んだ信号を送り、1つの量子ビットに摂動を加え、その後、その時間発展を正確に逆方向に戻すことで返ってくるエコーを観測する。量子エコーが特別なのは、量子の波が足し合って、より強力な構成的干渉減少によって増幅する点で、これにより高感度に測定できるようになるという。
このアルゴリズムは計算が複雑なだけでなく、最終的な計算結果の精度までも同時に検証できる。このため、量子ハードウェアには極めて低いエラーレートと高速演算処理能力の両方が求められる。今回Googleは別の量子コンピュータでも同じ結果を再現し、検証できることから「量子の検証可能性」と謳っている。
また、別途実施された原理実証実験「多体核スピンエコーによる分子幾何学の量子計算」においては、分子の定規となるこの新技術を使用、核磁気共鳴データの活用や化学構造に関するより多くの情報を取得することで、現在の手法よりも長い距離を測定できることが示された。
今回のQuantum Echoesアルゴリズムによる世界初の検証可能な量子優位性の実証は、量子コンピューティングの実世界での応用に向けた大きな一歩であると位置づけており、今後もこのような実用的で有益な実用化の例がさらに多く生み出されると期待している。