アマゾナス【Amazonas】
世界最大の河アマゾン
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| 世界最大の河アマゾン | |
|---|---|
| Amazonas, o Maior Rio do Mundo | |
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2023年の再発見後に制作されたプロモーションポスター
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| 監督 | シルヴィーノ・サントス |
| 製作 | アヴェリーノ・カルドーゾ、マノエル・ゴンサルヴェス[1] |
| 製作会社 | アマゾニア・シネフィルム |
| 公開 |
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| 上映時間 | 66分 |
| 製作国 | ブラジル |
| 言語 | 無声 (ポルトガル語字幕) |
『世界最大の河アマゾン』(せかいさいだいのかわアマゾン、葡: Amazonas, o Maior Rio do Mundo)は、1918年、シルヴィーノ・サントスによるブラジルの白黒無声ドキュメンタリー映画である。アマゾン熱帯雨林の生活を描く。1920年に完成し、アマゾンに関する最古の映像記録の一つとされている。1931年に失われたとされていたが、2023年にチェコ映画アーカイブで再発見された。
シルヴィーノ・サントスは三年間にわたり卓越した撮影技術で本作を制作した。その技術について、ル・モンド紙は「計り知れない芸術的価値」[2]と、ガーディアン紙は「ブラジル無声映画の聖杯」と称賛した[3]。
粗筋
本作は世界最大規模の河川であるアマゾン川と熱帯雨林に住む生命を描き出す[4]。とくにアマゾン流域に生息する豊かな動植物相、先住民らの日常生活や儀式を記録している[5]。
この映画は、ラテックス採取、マナティー狩猟、漁業、ブラジルナッツ・サトウキビ・カカオ・綿花の採集・加工、畜産業、木材産業など、現地のエリート層による搾取的慣行の変容過程とその経済的可能性を詳細に描き出している[5][6]。地域に生息するワニ類、ジャガー、カニ、カメ、鳥類、蝶などの希少動物も紹介されている。また、パリンティン族をはじめとする先住民コミュニティについては、祖先伝来の記録や慣習、儀式を通じて描写した。岩面彫刻や岩絵、主食としてのキャッサバの利用、ひょうたん細工やハンモック作りの技術、そしてこれらの社会における女性の役割と祝福の儀式などが取り上げられている[7][5]。
1917年、アマゾン州政府の支援を受け、アマゾン地域の商人マヌエル・ゴンサルヴェスと共同で、シルヴィノ・サントスは「アマゾニア・シネ・フィルム(葡: Amazônia Cine-Film)」を設立した[8]。翌年には起業家アベリーノ・カルドーゾの支援を得て、マナウスにおいて[9]『世界最大の河アマゾン』と題するドキュメンタリー映画を制作した。この作品では、アマゾン熱帯雨林の豊かな生態系と産業的可能性が紹介されている[8][1]。撮影はブラジルのアマゾナス州とパラ州、およびペルーのイキトス市とプトゥマヨ区で実施された[10]。本作は1920年6月に完成したが[11]、よく比較される同時代の軍人兼映画監督ルイス・トマズ・レイスの作品ほど先住民に焦点を当てたものではなかった[12]。とはいえ、この映画にはウィトト族の習慣や生活様式が含まれており、特に字幕を通じて部族の若者たちのトラウザーズ着用について言及するなどしている[3][13][14]。
本作はマナウスの実業家たちによって資金提供され、ゴム、木材、ブラジルナッツといったアマゾンの資源を欧州の投資家に売り込む目的で制作された[15]。前作はペルーのプトゥマヨ川で撮影されたが、船難で失われた。これとは異なり、サントスは自ら編集を担当し、マナウスにある現像所でネガフィルムの現像を行った。本作はブラジル映画として初めてコダック製ネガフィルムを使用し、アメリカブランド「ベル&ハウエル」製の完全金属製カメラを採用した作品である[16]。
散佚
サントスがメガホンを置く頃には、本作はブラジル初ともなるネガフィルム6,000m級の長編映画となった[17]。サントスは、アベリーノ・カルドーゾの娘婿であるプロペルシオ・サラヴィアから制作の申し出を受けた。サラヴィアは、この映画のネガフィルムをロンドンに持ち込み、多言語版を作成すると約束した[18]。しかし、実際にはサラヴィアはこの素材を自身の利益のためにフランスの配給会社であるゴーモンに売却し、自らを監督としてクレジットした[19]。サラヴィアはその後一度も帰国せず、サントスは深刻な財政難に陥ることになった[17]。この作品は『アマゾンの驚異(英: The Wonders of the Amazon)』としてヨーロッパで配給されたが、1931年には散佚したとみなされていた[20]。2023年に再発見されるまで、この映画は失われた映画と考えられており、サントスによって他の作品に転用された断片のみが現存している状況だった[3][13]。また、原作が視聴できなかったため、この作品に関する研究もほとんど行われていなかった[11]。
発見
本作は長年散佚したと考えられてきたが、2023年にプラハの映画資料館チェコ映画アーカイブで再発見された[4]。2023年2月、同館はポルデノーネ無声映画祭ディレクターのジェイ・ワイスバーグに連絡を取り、現在失われた硝酸フィルムから1981年に制作されたデジタルコピーを提供した[21]。この資料は『アマゾンの驚異(英: The Wonders of the Amazon)』と題され、誤ってアメリカ映画と分類され、また1925年製とされていた[22]。ワイスバーグは、この映画が報告されているよりも古いと推測し、パラ連邦大学の教授でありサントスの作品の専門家であるサヴィオ・ルイス・ストコに連絡を取り、映画の来歴を確認した[23]。
デジタルコピーはシネマテカ・ブラジレイラによって検証され、これが確かにシルヴィーノ・サントスの作品と裏付けられた[24]。タイトルカードはポルトガル語に翻訳され、カンピーナス州立大学音楽学部でフルート奏者兼作曲・理論・分析教授を務めるルイス・エンリケ・シャヴィエがサウンドトラックを作曲した[13]。この作品はさらにイタリアの専門家たちによって分析され、ストコは「これは基本的に奇跡だ。この作品がいつか発見されるとは、まったくの望み薄だった」と語った[3]。
公開
この映画は『アマゾンの驚異』のタイトルで、1922年2月12日にロンドンで初上映された[23]。その後10年間にわたり、イギリス、フランス、イタリア、チェコスロバキア、スペインで上映された[19]。
再発見後、本作は2023年10月10日にポルデノーネ無声映画祭で初公開された[20]。ブラジルでの初上映は同年11月22日、サンパウロのシネマテカ・ブラジレイラで行われた[25]。その後、12月1日にジョアンペソアのシネポリス、12月7日にリオデジャネイロ近代美術館、12月22日にフォルタレザのシネテアトロ・サン・ルイス、12月29日にマナウスのアマゾン劇場でも上映された[26]。2024年9月には、完全版がシネマテカ・ブラジレイラの文化コンテンツバンクで一般公開されている[5]。
出典
- ^ a b Neto, Antônio Leão da Silva (2002). Dicionário de filmes brasileiros. São Paulo: Futuro Mundo Gráfica & Editora. p. 47. ISBN 9788590059523
- ^ “In Brazil, one of the oldest films shot in the Amazon miraculously rediscovered” (英語). (2023年11月29日) 2025年12月5日閲覧。
- ^ a b c d Malleret (2023年10月7日). “Lost 'holy grail' film of life in Brazil's Amazon 100 years ago resurfaces” (英語). The Guardian. 2024年6月16日閲覧。
- ^ a b Giannini, Alessandro (18 November 2023). “Dado como perdido, filme de 1918 sobre o Amazonas é encontrado em Praga” [Presumed lost, 1918 film about the Amazon is found in Prague]. Veja (Brazilian Portuguese) (2868 ed.). 2023年11月28日閲覧.
- ^ a b c d “Amazonas, o maior rio do mundo”. Banco de Conteúdos Culturais. 2025年1月28日閲覧。
- ^ Stoco 2019, p. 202.
- ^ Stoco 2019, pp. 198–199.
- ^ a b Rodrigues (2024年1月3日). “Crítica | 'Amazonas, O Maior Rio do Mundo': imagens intrigam e revelam as contradições da Amazônia” (ポルトガル語). Cine Set. 2025年1月29日閲覧。
- ^ (フランス語) Au Brésil, la redécouverte miraculeuse de l'un des plus anciens films tournés en Amazonie. (2023-11-27).
- ^ Stoco 2019, p. 147.
- ^ a b Stoco 2019, p. 129.
- ^ Ramos, Fernão; Schvarzman, Sheila (2018) (ポルトガル語). Nova história do cinema brasileiro. São Paulo, SP, Brasil: Edições SESC. pp. 379–414. ISBN 978-85-9493-083-5. OCLC 1066745502
- ^ a b c “Um tesouro perdido – e reencontrado” (ポルトガル語). Carmattos (2023年12月6日). 2023年12月8日閲覧。
- ^ “In Brazil, one of the oldest films shot in the Amazon miraculously rediscovered” (英語). (2023年11月29日) 2025年12月5日閲覧。
- ^ “Au Brésil, la redécouverte miraculeuse de l’un des plus anciens films tournés en Amazonie” (フランス語). (2023年11月27日) 2025年12月5日閲覧。
- ^ Stoco 2019, p. 136.
- ^ a b “95 anos de Silvino será comemorado” (ポルトガル語). Jornal do Commercio (32544): p. 2. (1981年11月25日). ISSN 1517-4689
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- ^ a b “Primeiro filme rodado na Amazônia passou quase um século desaparecido antes de ser recuperado” (ポルトガル語). G1. Jornal Nacional (2023年11月23日). 2025年12月5日閲覧。
- ^ a b Spadoni (2023年10月10日). “1º filme na Amazônia estreia mais de 100 anos após sua produção” (ポルトガル語). Olhar Digital. 2023年11月28日閲覧。
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- ^ Ramos, Fernão; Schvarzman, Sheila (2018) (ポルトガル語). Nova história do cinema brasileiro. São Paulo, SP, Brasil: Edições SESC. pp. 379–414. ISBN 978-85-9493-083-5. OCLC 1066745502
- ^ a b Catálogo Giornate del Cinema Muto. Le Giornate del Cinema Muto. (2023-10-10). p. 285-287 2023年8月12日閲覧。.
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- ^ “FILMOGRAFIA - AMAZONAS, O MAIOR RIO DO MUNDO”. bases.cinemateca.org.br. 2023年12月8日閲覧。
引用文献
- Stoco, Sávio Luis (2019年7月31日). O Cinema de Silvino Santos (1918 - 1922) e a representação amazônica: história, arte e sociedade (Postgraduate Program in Media and Audiovisual Processes thesis) (Brazilian Portuguese). São Paulo: University of São Paulo. doi:10.11606/t.27.2019.tde-31072019-115319. 2025年2月7日閲覧.
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