ISKP
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/08 10:18 UTC 版)
ISKPまたはIS-K[1]は、アフガニスタンを中心に活動するイスラム過激派の武装組織、テロ組織「Islamic State – Khorasan Province」の略称。日本語ではイスラム国ホラサン州と訳される[2]。ここでいうホラサン(Khorasan)とはイランの一部(北ホラーサーン州、南ホラーサーン州、ラザヴィー・ホラーサーン州の3州)にとどまらず、アフガニスタンやパキスタンの一部を包含する地域(かつてのホラーサーン)を示す。
| イスラム国 ホラサン州 الدولة الإسلامية – ولاية خراسان |
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| アフガニスタン紛争 (2001年-2021年) アフガニスタン紛争に参加 |
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イスラム国 コーカサス州のロゴ
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| 活動期間 | 2015年-現在 |
| 活動目的 | ワッハーブ派 サラフィー主義 サラフィー・ジハード主義 タクフィール主義 |
| 指導者 | ハフィズ・サイード・カーン † アブドゥル・ハシーブ・ロガリ † アブドゥル・ラーマン・ガレブ † アブ・サアド・エルハビ † ジア・ウル・ハク † アブドラ・オラクザイ(逮捕) シャハブ・アル・ムハジル |
| 活動地域 | |
| 上位組織 | |
| 分裂元 | |
| 関連勢力 | |
| 敵対勢力 | |
概要
アフガニスタン紛争が続いていた2015年1月にパキスタン・ターリバーン運動の地方司令官だった初代最高指導者のハフィズ・サイード・カーンらがISILに忠誠を誓い設立された。アフガニスタン東部からパキスタン国境付近にかけた地域で勢力を拡大した。同じ地域を拠点とするイスラム原理主義勢力ターリバーンとは対立状態にあり、アメリカ合衆国のシンクタンクによれば2017年以降、両勢力との間で200回以上の交戦が生じたとされている[3]。
テロ組織として名前が取り沙汰されるようになったのは、2019年8月に、アフガニスタンの首都カーブル西部にある結婚式場での自爆テロ攻撃で、6人が死亡した事件である。さらに2020年11月には、カーブル大学でも銃撃テロを主導、20人前後が死亡した。2020年以降、ターリバーンがアメリカ合衆国とアフガニスタン駐留軍の撤退交渉を進めた際には、「アメリカと取引を行った」としてターリバーンを非難した[4]。
2026年初頭時点では構成員は2000人以上と報道されており、アフガニスタンに多いパシュトゥン人が指導部を構成し、戦闘員は中央アジア各地からも流入している[2]。ターリバーン政権に接近するロシア連邦や中華人民共和国も標的としており、中国は同じムスリムであるウイグル人弾圧も攻撃理由としている[2]。
国際連合安全保障理事会の分析支援・制裁監視チームが2025年12月にまとめた報告書では、ターリバーン政権やパキスタンによる対テロ作戦で攻撃件数は減少に追い込まれているものの、活動地域はアフガニスタンの北部や東部に広がっている[2]。
パキスタンの首都イスラマバードにあるイスラム教シーア派礼拝施設で2026年2月6日に起きた自爆テロでも犯行声明を出した[5]。
反タリバン運動との関係
現在のISKPの最高指導者とされる通称シャハブ・アル・ムハジル(別名:サナウラ・ガファリ)は、アメリカが支援していたアフガニスタン・イスラム共和国の大統領アシュラフ・ガニー下で副大統領を務め、その後は反ターリバーン武装勢力「民族抵抗戦線」を率いたアムルラ・サレーの特別警備員であった[6][7]。
2021年ターリバーン攻勢によるアフガニスタン・イスラム共和国崩壊とアフガニスタン・イスラム首長国の政府(ターリバーン政権)復活後、アフガニスタン・イスラム共和国軍の兵士や諜報機関に所属していたスパイがISKPに加わったと言われている[8]。
パンジシール紛争で敗北し、著しく弱体化した民族抵抗戦線に代わって、ISKPはアフガニスタン国内で唯一、ターリバーン政権に打撃を与える事が可能な組織である。
主なテロ行為
2021年カーブル国際空港テロ事件
2021年8月15日、ターリバーンはアフガニスタンの首都カブールを制圧した]。前政権や外国公館の協力者などが国外へ脱出するためにカーブル国際空港へ殺到し、周辺は大混乱が続いた。アメリカはISKPPによるテロ対策を講じていた[9]が、同年8月26日に空港のアビーゲート付近で自爆テロが発生した(カーブル国際空港自爆テロ事件)[10]。アメリカ軍兵士13人を含む180人以上が死亡した。同日、当時のアメリカ合衆国大統領ジョー・バイデンはISKPを名指しした上で報復攻撃の立案を国防総省に指示[11]。2日後の8月28日、アメリカ中央軍は、ナンガルハル州でISKPに対する攻撃を実施、無人航空機を使用して標的(テロ攻撃の立案者)を殺害したと発表した[12]。
2021年10月カーブル市内爆発事件
2021年10月3日、カーブル市内のモスク周辺で爆発が発生。20人以上が負傷もしくは死亡した。モスクではザビフラ・ムジャヒドの母親を追悼する儀式が行われていた[13]。翌4日にはISKPが犯行を認めた[14]。
モスクワ郊外コンサート会場銃乱射事件
2024年3月22日、 ロシア連邦の首都モスクワ郊外にあるクラスノゴルスクのコンサートホール、クロッカス・シティ・ホールで銃撃事件が発生[15][16]。133人以上が死亡し、145人以上が負傷した[16][17][18]。銃撃事件の直後にISKPが犯行声明を出した[19][20][21][22]。
脚注
- ^ [1]BBC(2021年8月27日)2026年2月8日閲覧
- ^ a b c d 「先月に中国人狙うテロ 7人死亡/アフガンに残るISの脅威」『毎日新聞』朝刊2026年2月5日(国際面)
- ^ “米、アフガンでのIS系活発化を警戒”. 産経新聞ニュース (2021年8月25日). 2021年8月27日閲覧。
- ^ “カブール爆弾テロの背後と名指しされる「イスラム国ホラサン州」とはどんな組織か?”. WOW KOREA. 2021年8月27日閲覧。
- ^ 「礼拝中に自爆テロ 32人死亡/パキスタン IS系が犯行声明」『朝日新聞』朝刊2026年2月8日(国際面)
- ^ kabulnewstvのツイート(1463142568372449286)
- ^ Admin (2021年11月24日). “ISIL chief Amrullah Saleh's chief security guard turns out” (英語). Blaze Trends. 2021年11月26日閲覧。
- ^ Trofimov, Yaroslav (2021年10月31日). “Left Behind After U.S. Withdrawal, Some Former Afghan Spies and Soldiers Turn to Islamic State” (英語). Wall Street Journal. ISSN 0099-9660 2021年11月26日閲覧。
- ^ “ISIS系、カブール空港へのテロ攻撃を謀議か 米分析”. CNN (2021年8月22日). 2021年8月27日閲覧。
- ^ “カブール国際空港付近で2度の爆発、米国人やアフガン人に被害”. CNN (2021年8月27日). 2021年8月27日閲覧。
- ^ “カブール空港周辺で爆発、米軍・民間人70人超死亡 IS犯行声明”. ロイター (2021年8月27日). 2021年8月27日閲覧。
- ^ “米、アフガンIS系勢力に空爆=報復で立案者殺害か―空港テロ、死者180人超に”. AFP (2021年8月28日). 2021年8月28日閲覧。
- ^ “カブールで爆発、米軍撤退後初 タリバン関係者追悼するモスク近くで”. BBC (2021年10月4日). 2021年10月6日閲覧。
- ^ “アフガン首都爆発 、「イスラム国」が犯行認める タリバン、副首相任命し統治急ぐ”. 日本経済新聞 (2021年10月6日). 2021年10月6日閲覧。
- ^ “モスクワ銃撃テロ133人死亡、「イスラム国」が犯行声明…プーチン氏「全員を特定して処罰する」”. 読売新聞オンライン (2024年3月23日). 2024年3月24日閲覧。
- ^ a b “ロシア・モスクワ近郊のコンサートホールで銃撃 少なくとも133人死亡”. BBCニュース (2024年3月23日). 2024年3月24日閲覧。
- ^ “コンサート会場で乱射、133人死亡確認 モスクワ郊外、テロと断定―ISが犯行声明、タジク人拘束”. 時事ドットコム (2024年3月24日). 2024年3月24日閲覧。
- ^ “モスクワ近郊のコンサート会場で襲撃、60人死亡 ISISが犯行声明”. CNN.co.jp. 2024年3月24日閲覧。
- ^ “モスクワ銃乱射の死者93人に、容疑者11人拘束 ISが犯行声明”. Reuters (2024年3月23日). 2024年3月24日閲覧。
- ^ “ロシアのコンサートホール襲撃、ISが犯行声明「数百人を殺傷」”. 毎日新聞 (2024年3月23日). 2024年4月5日閲覧。
- ^ “モスクワ乱射133人死亡 11人拘束、ISが犯行声明:”. 東京新聞 TOKYO Web. 2024年3月24日閲覧。
- ^ “【速報中】モスクワ銃撃の死者130人超に ウクライナ側は関与否定:”. 朝日新聞デジタル (2024年3月24日). 2024年3月24日閲覧。
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