MOBIRY DAYS
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/07 13:23 UTC 版)
MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)は、広島電鉄(広電)がPASPYに代わり、日本電気 (NEC)、レシップと共同開発し、2024年(令和6年)7月から広電及びグループ各社で導入した、鉄道・バス乗車券の電子決済(QRコード決済)システム。
また広電グループのみならず、広島県内のコミュニティバスや廃止代替バスの運行事業者などにも導入が予定されている。
概要
他の従来の乗車カードが、ICカード/プリペイドカード側でストアードフェア (SF) 残高や定期券情報を保持し、車載器との交信で残高の加除情報をカード側に書き込む「カードベースドチケッティング (Card Based Ticketing, CBT) 」方式を採用しているのに対し、MOBIRY DAYSはそれとは異なり、スマートフォンアプリやICカードが保持するID番号を介して、登録済み利用者の情報をクラウドサーバ側で管理し決済を行う「アカウントベースドチケッティング (Account Based Ticketing, ABT) 」方式を日本で初めて採用したことを特色とする[1]。
これにより、CBT方式では高速な計算処理を行う端末(駅・車両側の機器)が必要になるのに対し、ABT方式では車載端末側ではID番号の読み取りのみを行うだけで済む(決済取引は車載端末とクラウドサーバーとの無線交信で実施する)ため、導入コストの削減が図れるとしている[2]。
カード裏面の記号番号の先頭は、MD。
導入の背景
広電をはじめとする広島県内の交通事業者では、1993年から磁気式プリペイドカード型の乗車カード「バスカード」を導入し、さらに2008年からはバスカードの後継システムとして、非接触型IC乗車カード「PASPY」にシステム移行し、交通系ICカード全国相互利用サービスの片利用(該当カードのPASPYエリアでの利用)に対応させてきた。
しかし、広電社長の椋田昌夫は2021年6月29日の株主総会で、PASPYが参加各社が利用比率に応じて分担している7 - 8年ごとのシステム更新費に約50億円を要し、利用比率の高い広電がそのほぼ半額(約20億円)を負担していることに懸念を示し、PASPY事業からの撤退とQRコード決済への移行を表明した[3]。PASPYは広電主導で開始され運営してきたシステムであることから、広電が撤退すればPASPYは成り立たなくなることから、広電のQRコード決済への移行表明が引き金となり[4]、PASPY自体もサービス終了が決定した。
2022年3月4日、広電はNEC、レシップとの3社共同で、ABT方式による新たな乗車システムの検討に着手したことを公表し、2024年10月のサービス開始を目途として開発を行うことを明らかにした[5]。
その後、詳細な仕様の決定を進めた結果、2023年10月23日にサービス名称を広電のMaaSアプリ「MOBIRY」に由来する「MOBIRY DAYS」とすることを発表、主なサービス内容を公表した[6]。
沿革
- 2021年(令和3年)6月29日 - 広島電鉄の株主総会で、椋田昌夫社長がPASPYからの離脱とQRコード決済導入を表明[3]。
- 2022年(令和4年)3月4日 - 広島電鉄が新決済システムの開発に着手したことを公表[5]。
- 2023年(令和5年)10月23日 - 新決済システムによるサービス名を「MOBIRY DAYS」とし、サービスの詳細を公表[6]。
- 2024年(令和6年)
- 2025年(令和7年)
- 2026年(令和8年)
導入事業者と導入路線
以下の各社各路線で導入、または導入が予定されている[18][19]。
広島バス、広島交通、JRバス中国の3社はICOCAのシステムを中心に運用する[20]。そのため、上記3社の広島空港リムジンバス便はモビリーデイズは非対応。
導入済
電車・一般路線バス
- 広島電鉄 - 電車・バス全線(高速バス松江線、米子線を除く)
- 芸陽バス - 全線(安芸津海風バスを除く)
- スカイレールサービス - みどり坂タウンバス(芸陽バスに運行委託)
- 備北交通 - 全線(東城市街地循環バス、東城廃止代替バスを除く)
- エイチ・ディー西広島 - 全線
- ひろでんモビリティサービス - スマートムーバー(デマンドバス)
- 朝日交通 - 熊野阿戸線
- 瀬戸内産交 - 沖友線
- 君田交通 - 川の駅三次線(JR三江線廃止代替バス)
- 広島バス - 全線
- 広島交通 - 全線(県内高速バスは除く)
- JRバス中国 - クレアライン、雲芸南線
- 北海道北見バス - 都市間バスを除く路線バス全線
コミュニティバス
- 呉市「呉市生活バス」[21][12] - 以下の9社が運行
- 三次市「くるるん」 - 備北交通が運行
- 庄原市「ひまわりバス」 - 備北交通が運行
- 東広島市「のんバス」 - 芸陽バス運行便に限る(JRバス中国運行便は不可)
- 廿日市市「廿日市市自主運行バス」[11] - 以下の5社が運行
- 安芸郡府中町「つばきバス」[22] - 広電バスが運行
- 安芸郡海田町「ふれあいバス」[15] - 芸陽バスが運行
船舶
導入予定
一般路線バス
他の交通系ICカードの利用について
MOBIRY DAYSはPASPYと異なり、交通系ICカード全国相互利用サービスとの互換性がない。このため、他の交通系ICカードについてはICOCAの簡易型IC端末[注釈 1]を新たに導入することで、PASPYのサービス終了後も引き続き利用可能としている。ただし、ICOCA定期券の利用や電車・バス車内でのICカードチャージは出来ず、ICカード内チャージ残額での利用に限られる[26]。
広電は、PASPYサービス終了翌日の2025年3月30日から、これらの取り扱いを開始した[26]。
広電は当面の間、MOBIRY DAYSとICOCAの2種類の読み取り機を電車やバスに搭載するものの、将来的にはICOCAの読み取りもMOBIRY DAYSの読み取り機で可能とし、端末を共通化したいとしている[27]。
その後、2024年11月13日の会見で広電の仮井康裕社長は、決済時の混雑などを避けるためにMOBIRY DAYSの車載器でも全国交通系ICカードや流通大手の電子マネーを使えるように新たに検討していることを明らかにしている[28]。PASPYサービス終了後の早期実現を目指す[29]としており、このうち全国交通系ICカードについては、2026年春から対応できるよう準備を進めていることを2025年6月27日の株主総会で明らかにした[30]。
MOBIRY DAYS導入済
| MOBIRY DAYS事業者 | MOBIRY DAYS | 全国交通系ICカード | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 広島電鉄(電車・バス) | ◎ | △ | コミュニティバス含む | |
| 芸陽バス | 一部コミュニティバス含む | |||
| スカイレールサービス | ◎ | みどり坂タウンバス | ||
| 備北交通 | △(一部路線のみ) | 一部コミュニティバス含む | ||
| エイチ・ディー西広島 | △ | |||
| ひろでんモビリティサービス | ○(PiTaPaを除く) | WAONも利用可[31] | ||
| 宮島松大汽船 | ◎ | |||
| 君田交通 | × | |||
| 呉市生活バス | ひまわり交通 | PASPY非対応事業者 | ||
| なべタクシー | ||||
| 富士交通 | ||||
| 野呂山タクシー | △(一部路線のみ[12]) | PASPY非対応路線も含む | ||
| 朝日交通 | × | 自社直営運行路線も同様 | ||
| 東和交通 | ||||
| 呉交通 | ||||
| 倉橋交通 | ||||
| 瀬戸内産交 | △(一部路線のみ[12]) | 自社直営運行路線も同様 | ||
| 廿日市市自主運行バス | 廿日市交通 | × | ||
| 廿日市カープタクシー | ||||
| ささき観光 | PASPY非対応事業者 | |||
| 佐伯交通 | ||||
| 津田交通 | ||||
| 広島バス | ◎ | ICOCAのシステムを中心に運用 | ||
| 広島交通 | ○ ※順次導入中 | |||
| JRバス中国 | ○(一部路線のみ) | |||
| 北海道北見バス | ◎ | × | PASPY非対応事業者 | |
| [凡例] ◎:利用可 ○:利用可(定期券のぞく) △:カード内チャージ残額利用のみ可 ×:利用不可 | ||||
MOBIRY DAYS導入予定
| MOBIRY DAYS事業者 | MOBIRY DAYS | 全国交通系ICカード | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 広島交通 | ○ | ◎ | 順次導入中。ICOCAのシステムを中心に運用 | |
| JRバス中国 | ○(一部路線のみ) | 一部路線導入済。ICOCAのシステムを中心に運用 | ||
| [凡例] ◎:利用可 ○:利用可(定期券のぞく) △:カード内チャージ残額利用のみ可 ×:利用不可 | ||||
利用方法
会員登録
利用に当たっては事前の会員登録が必要となり、専用のウェブサイトもしくはスマートフォンアプリ上でメールアドレスとチャージ決済用のクレジットカード(ブランドがJCB、VISA、Master、AMEX、Dinersで、3Dセキュア2.0に対応していることが必須[32]。デビットカード、プリペイドカードは不可)を設定する必要がある。また、ICカードの発行もアプリ上から申し込むことを原則とする。
チャージ決済手段にクレジットカードではなく、銀行口座からの引き落とし(広島銀行のみ取扱い)を選択することも可能だが、その場合は有人取扱窓口で会員登録を行う必要がある[32]。有人窓口は、2024年7月20日の先行導入時点では広島電鉄広島北営業課(広島市西区)、広島バスセンター(広島市中区)、備北交通本社(庄原市)、三次市交通観光センター(三次市)の4箇所のみ[33]だが、同年9月7日の本格導入以降は4箇所に加えて広島電鉄の各営業センター・営業所、及び芸陽バスの各営業所に取扱窓口を設けている[34]。
また、メールアドレスがない場合、あるいは決済手段を持たない(現金でのチャージのみ行う)場合でも会員登録は可能であるが、その場合も上記の有人取扱窓口で会員登録とICカード発行を申し込む必要がある[35][36]。
チャージ・決済
会員登録終了後、スマートフォンアプリにより指定金額をチャージする(オートチャージにも対応する)。銀行口座からの引き落としでは手数料がチャージ1回につき25円発生する。アプリで完結するモバイル決済を前提としていた。当初、現金チャージは上記の有人取扱窓口でのICカードへのチャージに限定されていたが、現在はバス・電車車内での現金チャージは広島エリアのみ対応している。北海道北見バスでの車内チャージは現時点ではできない。
利用時には、乗車時及び降車時に車両端末にスマートフォンアプリのQRコードもしくはICカードをかざす。利用前にアプリ決済かICカード決済のどちらかを選ぶ必要があるため、一つの会員情報でスマートフォンアプリとICカードを同時に利用することはできない。車内での現金チャージは広島エリアのみ対応しており、会社によっては高額紙幣も可能だが、ほとんどは1000円札のみのチャージ対応している。なお残高不足になりクレジットカードもしくは銀行口座からのチャージができない場合は、不足額を現金で支払うことになる[37]。
2024年11月13日の会見で広電の仮井社長は、MOBIRY DAYSのチャージ手段も拡充させる方向を明らかにした後[28]、2025年4月22日にバス・電車車内での現金チャージを2025年8月18日の始発便から開始した[38]。
脚注
注釈
出典
- ^ “広島電鉄、ABT方式の新乗車システムを2024年に稼働、チャージ残高や定期券などの情報をクラウドで保持”. IT Leaders. インプレス (2022年3月7日). 2024年7月9日閲覧。
- ^ “本邦初!ABT方式の乗車券システムを商用化する”. bp-Affairs. 一般社団法人ビジネス&パブリック アフェアーズ (2022年3月8日). 2024年7月9日閲覧。
- ^ a b “パスピーをQRコードに集約検討 広電社長、メリット説明”. 中国新聞. (2021年6月29日) 2024年7月9日閲覧。
- ^ 「パスピー廃止方針に業界動揺 広電抜けると成り立たず【フィーチャー】」『中国新聞』2021年7月28日。2024年7月8日閲覧。
- ^ a b 『スマートフォンに表示させたQRコードや新たな交通系ICカードを認証媒体とする新乗車券システムの開発に着手します』(プレスリリース)広島電鉄、2022年3月4日。2022年3月4日閲覧。
- ^ a b 『新たな乗車券サービスの名称と主なサービス内容が決定しました』(プレスリリース)広島電鉄、日本電気、レシップ、2023年10月23日。2024年7月9日閲覧。
- ^ “2024年7月20日土曜日にサービス開始しました。”. MOBILY DAYS公式サイト (2024年7月19日). 2024年8月13日閲覧。
- ^ “iPhoneでの「MOBIRY DAYSアプリ」 提供開始について”. MOBILY DAYS公式サイト (2024年8月20日). 2024年8月21日閲覧。
- ^ 『新乗車券システムMOBIRY DAYSサービス開始について』(プレスリリース)広島電鉄、2024年7月5日。2024年7月9日閲覧。
- ^ “新乗車券システム「モビリーデイズ」 広島電鉄の路面電車・バスの全路線で本格運用”. FNNプライムオンライン(テレビ新広島取材). (2024年9月7日) 2024年9月9日閲覧。
- ^ a b “市自主運行バスへMOBIRY DAYSを導入します” (PDF). 広報はつかいち 2025年1月号 p.6-7 (2025年1月1日). 2025年2月3日閲覧。
- ^ a b c d “呉市生活バスにおける「MOBIRY DAYS」サービスの運用開始”. 呉市 (2025年2月21日). 2025年2月22日閲覧。
- ^ a b 『「MOBIRY DAYS」サービス開始について』(プレスリリース)宮島松大汽船、2025年2月20日。2025年3月1日閲覧。
- ^ a b 『一部路線での「MOBIRY DAYS」のサービス開始について』(PDF)(プレスリリース)広島バス・広島交通・JRバス中国・広島電鉄、2025年2月21日。2025年2月22日閲覧。
- ^ a b “PASPYサービス終了のご案内” (PDF). 広報かいた 2025年3月号 p.21 (2025年3月1日). 2025年3月1日閲覧。
- ^ 『乗車券システム「MOBIRY DAYS」サービスの運用開始及びICバスカードの終了について』(プレスリリース)北海道北見バス、2025年7月9日。2025年7月22日閲覧。
- ^ “MOBIRY DAYS/広島バス株式会社”. www.hirobus.co.jp. 2026年1月2日閲覧。
- ^ 事業者・利用可能路線一覧 - MOBIRY DAYS公式ウェブサイト
- ^ “パスピー廃止でどうなる モビリーデイズ導入で交通各社の動き”. 中国新聞. (2024年7月19日) 2024年9月15日閲覧。
- ^ 『交通系ICカード ICOCA導入のお知らせ』(プレスリリース)広島バス・広島交通・中国ジェイアールバス・西日本旅客鉄道、2024年7月5日。2024年7月6日閲覧。
- ^ “「市政だより くれ」2025年3月号” (PDF). 呉市 (2025年2月10日). 2025年2月22日閲覧。
- ^ “つばきバスへのMOBIRY DAYS導入について”. 広島県安芸郡府中町 (2024年8月1日). 2024年9月15日閲覧。
- ^ 「2026年2月1日(日) 一般路線バスの運賃改定及び定期券制度の変更等について (PDF)」(プレスリリース)、広島交通、2026年1月9日。2026年1月12日閲覧。
- ^ ““PASPY”終了まであと2か月 “MOBIRY DAYS”と“ICOCA”どう使い分ける?”. 中国放送 (2025年1月31日). 2025年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月3日閲覧。
- ^ 『バス・地域鉄道へのICOCA展開の取り組み~簡易型IC端末の導入について~』(プレスリリース)西日本旅客鉄道・JR西日本テクシア、2022年2月22日。2024年2月7日閲覧。
- ^ a b 『広電グループ 電車・バスで簡易型ICOCA端末によるサービスを開始します』(プレスリリース)広島電鉄・西日本旅客鉄道、2025年3月5日。2025年3月5日閲覧。
- ^ “パスピー後継 広島電鉄新乗車システム「モビリーデイズ」とは? 割引、連携など利便性は上がるの? 広島”. テレビ新広島 (2023年10月27日). 2023年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月11日閲覧。
- ^ a b モビリーデイズ専用車載器、ICOCAなどに対応へ 広島電鉄社長が検討表明 - 中国新聞デジタル 2024年11月13日
- ^ モビリーデイズ専用車載器、ICOCA対応は2025年3月末以降 パスピー終了より後に 広島電鉄社長 - 中国新聞デジタル 2024年11月19日
- ^ ““MOBIRY DAYS”の端末で“ICOCA”などが使えるように 26年春目処 広電・仮井社長が明らかに 広島”. 中国放送 (2025年6月27日). 2025年7月1日閲覧。
- ^ SMART MOVER ひろでんモビリティサービス
- ^ a b “支払い手段”. MOBIRY DAYS公式サイト. 2024年7月13日閲覧。
- ^ “取扱窓口一覧”. MOBIRY DAYS. 2024年7月9日閲覧。
- ^ 『新乗車券システム 「MOBIRY DAYS」 サービス開始です!』(プレスリリース)広島電鉄、2024年7月5日。2024年7月9日閲覧。
- ^ “クレジットカード・銀行口座をお持ちの方”. MOBIRY DAYS公式サイト. 2024年7月13日閲覧。
- ^ “現金支払いをご希望の方”. MOBIRY DAYS公式サイト. 2024年7月13日閲覧。
- ^ “乗車方法”. MOBIRY DAYS公式サイト. 2024年7月17日閲覧。
- ^ 『「MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)」の機能向上と新たな施策を実施します!』(プレスリリース)広島電鉄、2025年4月22日。2025年7月22日閲覧。
関連項目
- PASPY
- バスカード (広島県)
- 広島電鉄
- ICOCA - 複数の事業者が並行導入
- iCONPASS - 広島バス・広島交通・JRバス中国で導入したWeb定期乗車券サービス
外部リンク
- MOBIRY_DAYSのページへのリンク