メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
別名:メチシリン耐性黄色葡萄球菌
英語:Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA
食中毒や感染症の原因となる黄色ブドウ球菌のうち、抗生物質メチシリンをはじめとするさまざまな薬剤に対して耐性を持った菌のこと。薬剤耐性菌となった黄色ブドウ球菌。MRSAと略記されることが多い。
黄色ブドウ球菌は常在菌であり、健常者も大半が保菌しているが、免疫力により毒性は無害化されている。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌も健常者に対しては害はない。入院中の患者など、免疫力が著しく低下している者が、黄色ブドウ球菌の生産する毒素に中たりやすい。薬剤耐性菌は抗生物質の多用・濫用から生まれやすいこともあり、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は院内感染が危惧される菌のひとつとなっている。
通常の黄色ブドウ球菌であればいくつかの抗生物質によって効果的に治療することができるが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌にはほとんどの抗生物質が効力を示さない。有効な抗生物質の把握と投与といった適切な対処がとられなかった場合、重症に至る、あるいは死に至る危険もある。
MRSA
「MRSA」とは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のことを意味する表現である。
「MRSA」とは・「MRSA」の意味
「MRSA」とは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌のことをいい、メチシリンに対して耐性があることを示しているが、メチシリンなどのペニシリン剤に限らず、β-ラクタム剤や、アミノ配糖体剤、マクロライド剤など、多くの薬剤に対し多剤耐性を示す。そのため、通常の抗菌薬では効果がなく、MRSAの抗菌薬としては、グリコぺプチド系の塩酸バンコマイシン、テイコプラニン、アミノグリコシド系の硫酸アルベカシン、オキサゾリジノン系のリネゾリド、環状ペプチド系のダプトマイシンが承認されている。その中でも塩酸バンコマイシンは、第一選択薬の抗菌薬として使用されることが多い。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の元となる黄色ブドウ球菌は、人間の鼻やのど、皮膚など様々なところに存在している常在菌である。健康な時は身体に問題が起こることは少ないが、免疫力が低下している時や、高齢者、傷口があると感染症にかかりやすくなる。特に、黄色ブドウ球菌の中でもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、抗生物質が効きにくいため感染すると重症化しやすい。そして、菌を保有しているかどうか調べるためには細菌検査を行う。細菌検査の結果での1+とは、菌を保有している状態のことをいう。菌の保有数が増えれば、この1という数が2や3になる。MRSAの感染原因には長期間の抗生物質乱用や、長期間の入院、手術を受けたこと、湿疹などの慢性皮膚炎などが挙げられる。
病院内で感染することを「院内感染」といい、MRSAは院内感染の代表的な病原体である。入院患者が保有している黄色ブドウ球菌の中で、50~70%がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌だったというデータもある。そのため、院内感染を防ぐために感染対策マニュアルが作られている。院内感染は特に高齢者に多く、様々な臓器に感染症を起こし重症化しやすく治療が難しい。その一方で、医療機関以外で感染する「市中感染」は、子どもや若者の皮膚感染が多く、治りやすいという特徴がある。
MRSAの感染経路には、飛沫感染や接触感染がある。どうやって感染するかというと、MRSAに感染した人が咳やくしゃみをすることで感染したり、MRSAに感染した人の飛沫を触り、その手で鼻や口などを触ることで感染したりする。そのため、MRSA感染者を看護する場合は、マスクやガウンの着用、手洗いうがいを徹底することが大切である。
MRSAに感染したらどんな病気になるかは、感染場所によって様々で、皮が大きくむけるブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群や、かゆみの強い膿んだ水ぶくれができるとびひ、発熱や皮膚の腫れなどが起こる骨髄炎、高熱や呼吸困難を起こす肺炎などが挙げられる。したがって、感染したらどのくらいで治るかは症状の重さによって差が出てくる。
MRSAは決して治らない感染症ではないが、高齢者が感染すると症状が重くなりやすいため、治るのか不安に思ったら医師や医療現場のスタッフに直接聞くと良い。MRSAについては、「感染 原因」「症状 高齢者」「完治 期間」などインターネット上で検索されることが多いが、自らの判断で抗菌薬を使用すると症状が悪化することも考えられるため、身体に違和感を感じたらすぐに医師へ相談するべきだ。
MRSAと同じブドウ球菌で、「mssa」と「mrse」という菌が存在する。mssaは、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌のことで、第一選択薬の抗菌薬に、セファゾリンを使うことが多い。MRSAとの違いは、メチシリンに対する感受性の有無である。また、mrseは、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌のことで、MRSAと同じく多くの薬剤に対して耐性を示す。MRSAとの違いは、コアグラーゼという血漿を凝固させる酵素を作るか作らないかである。MRSAはコアグラーゼを作り、mrseはコアグラーゼを作らない。
「MRSA」の読み方
「MRSA」は、「エムアールエスエイ」と読む。エム‐アール‐エス‐エー【MRSA】
読み方:えむあーるえすえー
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
MRSA
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)は、メチシリンやその他の多くのβラクタム系抗生剤(ペニシリン系、セフェム系)に対して薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌のことです。MRSAは、1961年に英国で初めて報告され、1980年代になって日本国内に広く分布するようになり院内感染の原因菌として最重要視されています。これは、黄色ブドウ球菌に対して抗菌力の弱い第三世代セフェム剤の繁用が原因と考えられています。ほとんどの抗生剤が有効ではないため、手術後の敗血症、腸炎、肺炎、心内膜炎、腹膜炎等は重症化しやすい。代表的な治療薬は、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシンです。
MRSA[Mezithilin resistant Staphylococcus aureus]
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
(MRSA から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/23 01:42 UTC 版)
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(メチシリンたいせいおうしょくブドウきゅうきん、英語: methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA)とは、抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌の意味であるが、実際は多くの抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌である。
なお生物種としては、あくまで黄色ブドウ球菌であるので、生物学的な詳細は同記事を参照のこと。
臨床像
MRSA は黄色ブドウ球菌が耐性化した病原菌であり、黄色ブドウ球菌と同様に常在菌のひとつで、ヒトの鼻腔・咽頭・皮膚から検出される。
そもそも薬剤耐性菌であるため、抗菌薬の使用が多い病院で見られ(耐性菌は抗菌薬の乱用により出現する)、入院中の患者に発症する院内感染の起炎菌としてとらえられている。しかし病原性は黄色ブドウ球菌と同等で、健常者にも皮膚・軟部組織感染症を起こしうる。
病院外での発症が最初に確認されたのは、1960年代にさかのぼるが、近年では健康な人のごく一般的な感染症の起炎菌として見つかることもあり、本菌が病院から街中へと広がっていることが示唆されている。community-acquired MRSA (CA-MRSA) は、1999年にアメリカ合衆国で死亡例がみられてからは、外来診療でも留意すべき菌種のひとつとなった。CA-MRSAは、院内感染でのMRSAとは異なり、ミノサイクリンやST合剤、クリンダマイシンが有効であることが多い。
本菌が免疫力が低下した患者に感染すると、通常では本菌が起こすことはないような日和見感染を起こす。一旦発症するとほとんどの抗生物質が効かないため、治療は困難である。特に、術後の創部感染、骨感染(骨髄炎・関節炎)、感染性心内膜炎(IE)、臓器膿瘍は難治性化し、適切な治療を受けられないと、後遺症や死亡を引き起こしてしまう。
不活化
不活化のために、80vol%消毒用アルコールが有効である(エタノールでの滅菌は、芽胞を持たない細菌に有効)。
院内で感染者が判明した場合、感染者の治療も重要であるが、感染を広げないことも重要であり、標準予防策に基づく感染管理が必要となる。MRSA の場合、接触感染予防策が重要である。
抗菌薬
代表的なMRSAに対する抗菌薬は以下の通りである。
菌種(クローン)によっては、ミノサイクリンやレボフロキサシン、クリンダマイシン、ST合剤(スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの合剤)などが、有効か中等度有効であることがある。また、各地域や、個々の医療施設によってもMRSAの性質は異なることがあるため、適切な抗生剤の使用に当たっては、これらローカルファクターも重要な要素である。なお、MRSAに対してST合剤とリファンピシンの併用は、リネゾリドと同等の効果がみられるとの報告もある[2]。また、国内では適応がとれていないが、欧米ではキヌプリスチン・ダルホプリスチン(商品名シナシッド)も有効であることが証明され、使用が認可されている。
バンコマイシンは耐性菌の出現が少ない抗菌薬として MRSA の治療に汎用されていた。1996年のバンコマイシン低度耐性黄色ブドウ球菌(VISA)やバンコマイシンヘテロ耐性黄色ブドウ球菌(ヘテロVISA)の発見を始め、2005年現在、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のバンコマイシン耐性遺伝子(vanA)を獲得したバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の出現が報告されていることから、その使用には十分な注意が必要とされている。さらに、β-ラクタム系抗生物質との併用によってバンコマイシン耐性が発現する MRSA も出現している。これはbeta-lactam antibiotic induced vancomycin-resistant MRSA(BIVR)と呼ばれており、併用には注意が必要である。
耐性機構
ペニシリン系抗生物質をはじめとするβ-ラクタム系抗生物質は、細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンの合成を阻害することで作用する。これに対して、従来のペニシリン耐性ブドウ球菌はペニシリン分解酵素を産生することで薬剤耐性を獲得した。そこでこれらの細菌に対しても有効な、ペニシリン分解酵素によって分解されない薬剤が開発された。これがメチシリンであり、ペニシリン耐性菌の治療に効力を発揮した。
しかしながら MRSA は、従来のペニシリン耐性菌とは別の戦略を採ることでメチシリン耐性の獲得に成功した。MRSA は従来のブドウ球菌とは異なり、β-ラクタム剤が結合できないペプチドグリカン合成酵素(PBP2')を作ることでβ-ラクタム剤の作用を回避する。この PBP2' というタンパク質はmecAという遺伝子にコードされているが、この遺伝子はDNAカセット染色体と呼ばれる部分に、他の薬剤耐性遺伝子とともに集まっており、ある菌から他の菌へ種を超えて伝達されることが解明された。
一般に薬剤耐性を獲得した細菌は、薬剤感受性の細菌に比べて増殖が遅い傾向があり[3]、MRSAもペニシリン感受性の黄色ブドウ球菌に比べると増殖が遅い[4]。
MRSA の分類
- 院内感染型 MRSA(hospital-associated MRSA:HA-MRSA):入院歴やカテーテルの使用,透析などの医療行為に関わる患者に多くみられる。
- 市中感染型 MRSA(community-associated MRSA:CA-MRSA): 小児や若年健常者の皮膚感染などにみられる。学校での流行や健常人の感染などでも注意。
注釈
- ^ 「腎機能に依存しない1日1回投与の抗MRSA薬」。日経メディカル。2018年。
- ^ J Antimicrob Chemother 2014 Sep 10; [e-pub ahead of print].
- ^ Andersson DI, Levin BR. (1999). “The biological cost of antibiotic resistance.”. Curr Opin Microbiol. 2 (5): 489-93.
- ^ Miriam Ender, Nadine McCallum, Rajan Adhikari, and Brigitte Berger-Bächi (2004). “Fitness Cost of SCCmec and Methicillin Resistance Levels in Staphylococcus aureus”. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 48 (6): 2295-7.
関連項目
外部リンク
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 - 国立健康危機管理研究機構
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (methicillin-resistant Staphylococcus aureus ;MRSA) 感染症の滅菌・消毒 - 横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課
- MRSAのページへのリンク