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ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」 | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」

LIFE
2025.04.30

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開演1時間前に劇場入りして、準備に取り掛かる龍くんを訪ねました

開演1時間前に劇場入りして、準備に取り掛かる龍くんを訪ねました

  • 久保純子
    フリーアナウンサー

    1972年、東京都生まれ。小学校時代をイギリス、高校時代をアメリカで過ごす。大学卒業後、NHKに10年間勤め、「ニュース11」「おはよう日本」「紅白歌合戦」「プロジェクトX」など、キャスターやインタビュアーとして幅広く活躍。2004年からは、フリーアナウンサーとして活動し、テレビやラジオに出演する傍ら、執筆活動や絵本の翻訳も手がける。日本ユネスコ協会連盟による世界寺子屋運動の広報特使を務め、「子ども」と「言葉」、そして「教育」をキーワードに活動の場を広げている。現在は、夫と2人の娘(23歳と17歳)とともにニューヨーク在住。2022年2月より念願だったモンテッソーリ幼稚園の教師としても働き始める。著書に、翻訳を手がけた絵本『クレムとカニさん うみのためにできること』『あしたはクリスマス』『サンタさんのまほうのスノードーム』『プリンセス・スノーとユニコーン』『ムーミンとなかよし』『おやすみなさいムーミン』(いずれも文化出版局)など。

ニューヨーク在住9年目の、久保純子さん。家族や友人との時間、街で見かけたモノ・コト、感じたことなど、日々の暮らしを通して久保さんが見つめた「いまのニューヨーク」をつづります。

初めて上林龍(かみばやしりょう)くんに会ったのは、龍くんが中学生のときだった。娘と同じ学校に通う龍くんは、演劇の公演で異彩を放っていた。「歌も、お芝居も素晴らしいな〜」と脳裏に焼き付いていた。 

ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」
中学2年生の時に初めて龍くんを見て感激。あれからますますパワーアップして、今やブロードウェーの舞台で活躍する姿は感慨深いです

そんな龍くんと再会を果たしたのは、今から3年ほど前。お母さま(ママ友)と一緒にNYに遊びに来たときのことだった。名門アメリカのミシガン大学に留学中で、ブロードウェーの道に進みたいが、いかんせんビザの問題がある。さあどうする?という話をしていたのである。

そうなのだ、ブロードウェーは、ユニオン(労働組合)が強く、アメリカ国籍の俳優陣を守るために、外国籍の俳優にはほとんどと言っていいほど門戸が開かれていないのだ。

コロナ禍の「Black Lives Matter」「Stop Asian Hate」を経て、黒人やアジア人の権利が声高に唱えられるようになり、以前よりは不均衡は緩和されているものの、現在ブロードウェーに立っているアメリカ人の俳優陣の50.2%を白人が占め、黒人は40.9%、ヒスパニック系は4.1%、アジア系に至っては3.7%と極めて少ないのが現状だ。そして、いまだ外国人籍の俳優はごく少数に限られている。

ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」
「パイレーツ! ザ・ペンザンス・ミュージカル」は7月までの限定公演。クラシカルで、それでいて新しい風を感じる作品です。「観客の熱気や反応に呼応するように、先輩たちのお芝居が日々変化していく。”生の舞台”の面白さを改めて実感しています」と目を輝かせていた

あっという間にブロードウェーの舞台へ

そんな中で、新星のごとく現れた龍くんは、大学を卒業するや否や、OPT(米大学を卒業後1年間だけアメリカで働けるビザ)を使って、昨年トニー賞・作品賞をはじめ数々の賞を受賞した「ザ・アウトサイダーズ」のオーディションを受け、見事合格。「あっ」という間にブロードウェーの舞台に立ったのだ。

さらにとんとん拍子で、今は二つ目のミュージカル「パイレーツ! ザ・ペンザンス・ミュージカル」に出演中で、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。こんな出世例は聞いたことがない。 

ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」
4人でシェアしている楽屋は3畳ほどの大きさ。思ったよりも天井が低く、こぢんまりとしていました。衣装や仮眠用のベッドまでびっちり

ユニオンに登録している51,000人ほどのブロードウェー俳優陣の中から、熾烈(しれつ)な競争を勝ち抜いて、今現在ブロードウェーの舞台に立っているのは800人ほど(2024年秋時点)。これまでどの俳優さんにお話を伺っても、早朝からオーディション会場へ出向き、何時間も並んでやっとオーディションを受け、不合格の通知を受けるたびに挫(くじ)けそうになりながら、また次のオーディションへ向かう、と一様に話している。それだけに、龍くんは異例中の異例で、ましてや大学を卒業したばかりで、しかも日本人の男性で、2作品に連続して立っているなんて、私の知る限り前代未聞だ。

ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」
楽屋には、ブロードウェーデビューを果たした「ザ・アウトサイダーズ」の写真が飾られていました。幼少期をインドネシア、その後日本のインターナショナルスクールに通った龍くんは、英語が堪能です

日本人の「個性」と自分自身の「個性」

マイノリティーとして、どんな思いで舞台に上がっているのだろう。マイノリティーだからこそ勝ち抜く強みもあるのだろうか?

龍くんは、日本人であることの「個性」、そして自分自身の「個性」を最大限に生かしているという。オーディションでは、マイノリティーであるが故に、おのずと目立つ。だからこそ、それをチャンスと捉え、例えば「アウトサイダーズ」のオーディションでは、他の俳優たちが立って踊り始めたとしたら、龍くんは、座った状態から踊り始める。「パイレーツ」の6回のオーディションでは、コロナ禍で本格的に始めたピアノの技術を生かして、ジャズピアノを披露するなど、人種をプラスにしながら、自分の「個性」をどんどん前に出していたそうだ。実際に、今「パイレーツ」のミュージカルで、龍くんがピアノを弾くシーンは、彼のアイデアで組み込まれたそうだ。

ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」
龍くんは、ミシガン大学で、ミュージカル科を専攻、作曲も副専攻。ジャズピアニスト、映画音楽作曲など多彩です。「パイレーツ」のピアノを使ったシーンも、龍くんのアイデアが取り入れられました。撮影:Joan Marcus

小学生の頃から日本では劇団四季の舞台に立ち、その後も英語劇をいくつも経験してきた龍くん。目標のブロードウェーに立った今、思い描いていた世界だったか?と問うと、「正直、週8公演はきつい。体力勝負です」と。毎日公演があり、日によっては2回公演もある。朝起きるとまずは加湿器をつけて、喉(のど)の調子を確認。イガイガするときは、ジムに行き、スチームサウナに入って喉を潤すという。ブロードウェーの先輩俳優陣は、60〜70%の力で、うまく力を抜きながら、楽しんで舞台に立っているとのこと。龍くんも、今、ちょうど良い「塩梅(あんばい)」を模索中だ。

ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」
週8回の過酷な公演に楽しさをプラス! 楽屋の壁には、こんな可愛いゲームが。目隠しをして、見事、目のところにシールを貼ることができればご褒美がもらえるとか

これからの夢は、出来うる限り多くのブロードウェーの「オリジナル」の作品に出演することだという。「オリジナル」というのは、これまでロングランされているものではなく、新しく作り出された、また復活したミュージカルのこと。

ブロードウェーに立った上林龍くん。トニー賞受賞作にも出演「日本人として唯一無二の存在に」
メイクや着替えは自分で行う。パイレーツ役のため、顔や腕に汚れに見立てた「茶色」のファンデーションをトントントン。舞台の合間には、共演者とゲームでリラックス

「僕はここブロードウェーで、日本人として唯一無二の存在を目指します」と意気込む。これからの活躍から目が離せない。娘とほぼ同い年、どうしても母目線になってしまう。皆さま、どうか応援をよろしくお願いいたします。

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もりもり
2025年5月6日 1:30 PM

若くして目標がしっかりしていて真っ直ぐに生きられる姿は感銘を受けました。挫折を繰り返し、でも何とか腐らずに前を向いて自分を生かし、個性を表現する事は年齢や環境関係なく同じなんだと励みになりました。今出来る事を一所懸命する事、良い塩梅を探る事。大事にしていきたいです。 良い記事をありがとうございました。

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もりもり
2025年5月6日 1:30 PM

若くして目標がしっかりしていて真っ直ぐに生きられる姿は感銘を受けました。挫折を繰り返し、でも何とか腐らずに前を向いて自分を生かし、個性を表現する事は年齢や環境関係なく同じなんだと励みになりました。今出来る事を一所懸命する事、良い塩梅を探る事。大事にしていきたいです。 良い記事をありがとうございました。