子供数百万人が感染症にかかる恐れ、ワクチンの停滞が要因＝国際研究チーム
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子供を命に関わる感染症から守るためのワクチン接種の取り組みが、過去20年間で世界中で停滞し、一部の国では後退しているとする研究結果が24日、英医学誌ランセットに掲載された。
研究チームの報告によると、新型コロナウイルスのパンデミックが、ワクチン接種の状況をさらに悪化させた。はしかや結核、ポリオなどの感染症に無防備なままの子供は、数百万人に上るという。
研究者たちは、ワクチンにもっと簡単に、かつ公平にアクセスできる機会を提供するための、協調した取り組みを呼びかけている。
小児保健の専門家たちは、ワクチン接種プログラムを資金面で支える国際援助の削減と、ワクチン懐疑論が合わさり、「最悪の事態」を招いていると警鐘を鳴らしている。
子供のワクチン接種状況
世界的な子供のワクチン接種プログラムは、これまで大きな成果を上げてきた。
1974年以降、40億人以上の子どもがワクチンを接種し、世界中で推定1億5000万人の命が救われたとされる。
2023年までの約半世紀で、ワクチン接種率は2倍に拡大した。
しかし、2010年以降は停滞が続き、国や地域によって接種率に大きなばらつきが生じている。
「ランセット」に掲載された研究結果によると、はしかのワクチン接種率は100カ国近くで低下している。
新型コロナ対策のロックダウンは、接種プログラムを中断させ、状況をさらに悪化させた。
2023年時点で、世界中で1600万人近くの子供が、幼少期にワクチンを接種していなかった。その多くはサハラ以南のアフリカと、南アジアに集中している。
報告書の著者、米ワシントン大学保健指標評価研究所（IHME）のジョナサン・モサー博士は、大勢の子供がいまだワクチン接種が不十分、あるいはまったく接種していない状態だと指摘する。
「幼少期の定期接種は、最も強力かつ費用対効果の高い公衆衛生介入の一つだが、長引く世界的にな不平等や、新型コロナがもたらした課題、、ワクチンに関する誤情報やワクチン忌避の拡大が、免疫促進プログラムの低迷につながっている」と述べた。
博士は、はしかやポリオ、ジフテリアなどの感染症が大流行するリスクが高まっているとも述べた。
そして、すべての子供が命を守る予防接種の恩恵を受けるべきだと付け加えた。
富裕国でも接種率が低下
富裕国と低所得国の間では、依然として大きな格差がある。
しかし、欧州諸国やアメリカ、そのほかの富裕国でも接種率が低下傾向にあると、報告書の筆者たちは警告している。
英オックスフォード大学ワクチン・グループのアンドリュー・ポラード教授は、この報告書は憂慮すべき状況を映し出していると指摘する。
「この傾向が逆転しなければ、さらに多くの子供たちが予防可能な病気にかかって入院し、回復不能なダメージを負い、死ぬことになる」
「残念ながら、国際的な保健予算の削減により、状況は悪化する見込みだ」とも、ポラード教授は指摘した。
英ユニバーシティー・コレッジ・ロンドン（UCL）のデイヴィッド・エリマン博士は、現在の接種状況には多くの要因が絡んでいると指摘する。
「世界各地で、内戦や紛争に苦しむ国が増えている。加えて、アメリカやイギリスなどの富裕国による対外援助が大幅に削減されている。そのため、多くの人にワクチンを届けるのが難しくなっている」
「科学ではなく、間違った情報に基づく意見に沿って、政策が決定されているようにも見える。まさに最悪の事態が起きている」と、エリマン博士は付け加えた。
研究者たちは、あらゆる国が一次医療を強化すると共に、保護者が子供にワクチンを接種するのをためらわないよう、ワクチン接種に関する誤情報への対策を講じる必要があると提言している。
さらに、ワクチンにもっと容易かつ公平にアクセスできる機会を世界中で提供するための、協調した取り組みを呼びかけている。
