漫画「メダリスト」作者、つるまいかださん 一問一答
2022年11月22日 16時00分 (3月30日 12時18分更新)
漫画「メダリスト」の作者、つるまいかださんの一問一答は次の通り。
―メダリストを制作するきっかけは。
「自分が愛知県出身というのは大きい。題材としてフィギュアスケートが魅力的と思ったのは、国民の多くがテレビで見て親しみがあるスポーツなのに、どのようにしてテレビに映っている姿になったのか、たくさんの人が想像できない。私も知りませんでした。選手たちが最初からこんなに上手だったわけでない。どんな過程を経て、技術を会得する段階を踏まれたのか。それを知りたい人も多くいるだろうということで、この漫画を描きたいと思いました」
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―フィギュアスケートの経験は。
「自分が経験しないと描けないだろうと思い、大須の名古屋スポーツセンターで開かれたフィギュア教室に習いにいきました。夏に1カ月ほどですね」
―名古屋を地元を舞台にしたのは。
「ひとえに地元を応援したい気持ち。(連載を準備していた)当時、そこまでフィギュアの世界に詳しくなかった。有名選手がたくさん出ているリンクがいくつかある。これらが舞台になったら、たくさんの人が興味を持ってくれるのではと選ばせてもらいました」
―ノービス(9~12歳)選手を取り上げたのは、成長する過程を描きたかったから。
「そうですね。最初からいろいろできてしまうと、自分とは世界が違うなと読者が感じると考えました。私も自分と距離が近いところから物語が始まるのが見たいと思い、主人公を小学生にしました」
―登場人物の設定は。
「魅力的なキャラクターでありたいと思い、自分が好きなタイプになりました。(コーチの)明浦路司は最初、主人公候補でなく、結束いのりしかいなかった。担当編集者と相談したとき、小学生が主人公なら、それを支える保護者がいるべきだという話になりました。司はいのりにとって、ストレスにならない、幸せになれる性格になるようにしました」
―2人は師弟ながら対等の関係にも見える。こだわりは。
「フィギュアに限らず、いつも汗水垂らして頑張るのは子どもの主人公。大人は支配的になりやすい。主人公が2人の話にしたいと思ったとき、司が上から(の視点)にならず同等の立ち位置になれるよう、相棒的なキャラクターに設定しました」
―参考にした実在の選手はいるのか。
「いません。すごく気をつけていることですが、物語なので勝ち負けがどうしてもある。もし参考にしてしまうと、勝った、負けたというとき、モデルにした選手に迷惑をかける恐れがあります。また実際の選手の個性とかぶり過ぎないようにも気をつけています」
―夢を追いかける選手たちをどのような思いで描いているのか。
「主人公が競技を始めるのが遅いことになっています。実際、日本代表選手を目指すなら小学校低学年前に始めないと難しいそうです。多くの人が歩んでいない道というのは、成功しないだろうとみんなが反対する。でも新しい何かを成し遂げる人は、誰も歩んでいない道を目指し、そこから可能性を切り開いていくじゃないですか。近くに応援する人がたくさんいなくても、好きなことを続けて新しい道は開いていける。そんな勇気を持てる漫画になったらいい」
―子どもの夢を壊さないということか。
「いのりたちが夢をかなえていく姿を見れば、フィギュアに限らず関係ない分野の人でも、自分も挑戦したい、誰かを応援したいという気持ちになるんじゃないかな。読んでいる人が頑張れる気持ちになってほしいですね」
―作品のテーマや描くときに大切にしていることは。
「新しい形のスポーツ漫画にしたいと思った。昔は根性論で手が擦りきれるほど頑張れみたいな、そんな姿がかっこいいという描かれ方だった。今はケガを防ぐためにきちんと休息をはさむとか、体のことを大切にしながら一緒にスポーツをしていく考えが一般的。過去に人気だった作品とは少し違う、時代にあった漫画にしたいと思いながら描いています。ただ、自分の知見もたくさんのバイアスがあるはずなので、日々勉強しながら担当編集者さんと相談し、これは大丈夫だろうかと悩みながらつくっています」
―「次にくる漫画大賞2022」に選ばれた。
「1位、2位、3位の価値というのを描いている。一つでも上の高さ、1番というものがすごく重要なものだと日々思っていたので、メダリストという作品を長く多くの人に届けるため、トップを取りたい気持ちで臨んでいた。たくさんの人のおかげでいただけた賞でもあるので、本当にうれしかったです」
―デビュー作で1位をどうとらえている
「実は、自分にとってデビュー作という自覚はありません。学生時代ずっと漫画を描いていました。就職してから(講談社の)『即日新人賞』を受賞したことがきっかけで漫画家を目指そうと思い、会社を辞めました。振り返ると、自分が夢を目指そうと思えた理由は賞が取れたから。それまで、その一歩が全然踏み出せなかった。いのりや司も同じですが、どんなに熱い思いがあっても一人だけで大きな夢に踏み出すのは本当に怖いこと。私も漫画を少しずつ発表できるようになったのは、担当編集者さんと漫画を描けるようになってからだった。近くに誰かがいるという心強さを自分の人生で感じたので、そんな心のパワーをたくさん作品に詰め込んでいます」
―愛知、名古屋が舞台のメダリスト。中日新聞の読者へメッセージを。
「フィギュアが有名な土地だけれど、知らない人は知らない世界。少年少女が魂を燃やしているドラマが行われている尊い土地なんだよと感じてもらいたいですね。街ですれちがう女の子や男の子がスケーターかもしれない。彼女たちを応援してもらえる気持ちを持ってもらえたらうれしい。自分は聖地がある漫画にロマンを感じるタイプ。自分が漫画家になって、それを描くことができてうれしいです」
―今後どういうところを見てほしいか。
「これから因縁のライバル狼嵜光(かみさきひかる)との戦いが繰り広げられます。楽しみに読んでほしい」
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