9月から10月にかけて、多くのYouTubeユーザーのトップ画面やオススメ欄に突如表示された動画がありました。「janken」という名のその動画は、キュートな表情を見せる女子高生とあっちむいてホイで勝負する……という内容のゲーム映像でした。
このゲームの名は、『ジャンケンゲーム あっちむいてホイ』。この可愛い子を描いたのは一体誰なんだ……!?と話題になりましたが、これを手掛けていたのは、なんと『グリザイア』シリーズやアニメ「物語」シリーズ、「ひぐらしのなく頃に業・卒」などで知られるフロントウイング所属のアニメーター・イラストレーター・キャラクターデザイナーの渡辺明夫氏だったのです。
Game*Sparkではこの度、渡辺明夫氏にメールインタビューする機会を入手。貴重な当時のお話を訊かせていただきました。
実はメインは女子高生じゃない!?
――まず、『じゃんけんゲーム あっちむいてホイ!』の制作にどのような立場(役職)で携わったかを教えて下さい。
渡辺:元々アニメーションさせるゲームと聞いてましたので、アニメーターとして、アニメ原画&動画と、キャラクター3人と1匹作らせて頂きました。
――ほかのデータイースト作品にも関わられていたのでしょうか。お話できる範囲で、携わった作品を教えて下さい。
渡辺:だいぶ昔の事で記憶が怪しいのですが、当時『あっち向いてホイ!』の後にデータイースト様で女の子だけの格闘ゲームの企画があり、12人くらいキャラクターアイデアを出したあたりで企画が無くなりました。
データイースト様とは、それっきりだったのですが、その時の担当様が東芝EMI様やトンキンハウス様など紹介して下さり(※)、嬉しい事にコンシューマーゲームのお仕事を頂く事になった記憶があります。
※渡辺明夫氏はかつて、東芝EMIで『ずっといっしょ』、トンキンハウスで『Lの季節』『Missing Blue』のキャラクターデザインを務めた。
――今回話題に火がついたのは、国内外多くのYouTubeユーザーのおすすめに、プレイ動画が突如浮上したことでした。渡辺さんが携わられていることはほぼ知られていませんが、今回の反響をどう感じましたか。
渡辺:私はぜんぜん知りませんでした。友達や知り合いからお話しを伺って、なんで今更と思いました、、、流石に30年以上前の物なので、とても恥ずかしかったです。
――動画視聴者から人気の高いともみ(女子高生)についてお聞かせください。素朴ながら心惹かれる人が続出していますが、どういった思いでデザインしましたか。
渡辺:私の記憶ではメインは、猫(たま)と舞妓さん(まいこ)だった気がします。漁港のオジサン(ぶんた)がラスボスで、女子高生が初心者キャラだった気がします。
当時、私の中で女子高生といえば、村田蓮爾先生の描くゲーム『豪血寺一族』の女の子のイメージがとてもありまして、物凄く影響を受けて描いてた気がします。
――鼻の穴が描かれているのも特徴的です。ここは現在の渡辺さんのデザインにも通づるところだと思いますが、ここを描きこむのはなぜですか。どういったこだわりがありますか。
渡辺:今は流行りの絵も勉強させて頂いてますが、この頃は美少女アニメや美少女ゲームがとても好きなのに、そのような流行りの絵がうまく描けなかったため、私の中での普通で何も特徴の無いキャラとして描いていただけだと思います。
人間には鼻の穴2つあるから描いてるだけでしたが、最近は鼻の穴が可愛いと思って描いてます♪
――ゲームが進むと焦るなど、豊かな表情変化も魅力的です。細かく変化をつけることにこだわった理由を教えて下さい。
渡辺:いろいろ表情をつけるのは仕様書にあったバリエーションを描いてるだけだと思います。くずしの表情など私の癖が出ていて、今と変わらない気がします。
――背景のキャラクターや景色も動くというのがユニークです。こうした楽しげで豪快な演出はどのように作りましたか。
渡辺:背景と背景に居るキャラクターは、私では無く、データイースト本社の方々の頑張りだと思います。
ほぼ出回らなかった……!?
――ほかの3キャラについてもなにかエピソードやこだわりがあれば教えて下さい。
渡辺:猫さんはいちばん遊んで自由に描いたと思います♪ 『あっちむいてホイ!』の筐体には、この猫さんが立体になって乗って居たので、この猫さんが主人公なのかと思ってました。私のオリジナルキャラクター初の立体化(フィギュア)だと思います!
舞妓さんは企画書段階ではキーヴィジュアルに居たので、メインキャラだったと思います。一番最初に描いたのが、この舞妓さんで、舞妓さんをこの時初めて描きました。京都っぽい上品な芝居を心がけた覚えがあります。
漁港のオジサンは、当時データイースト様の『トリオ・ザ・パンチ』の様なタイトルが好きでしたので、理解出来ないキャラクターの発注は、本当に嬉しく、このオジサンもかなり張り切って描いてた覚えがあります♪
――最後に、本作の制作中やリリース後のエピソードがあれば、教えて下さい。
渡辺:アニメ会社に勤めていましたが、元々ゲームがとても好きでしたので、この様なアーケードゲームのお仕事を頂ける事がとても嬉しく、当時は今のように沢山のお仕事も頂け無かったので、1人で張り切って描いてた覚えがあります。
完成後、私自身この筐体で遊んだのは、データイースト本社でテストプレイと、今のGiGO池袋2号館だった場所のゲーセンの2階にロケテストで設置された数日間の間に行って遊んだ2回だけです。
たぶん子供向けの小型筐体で、勝つとお菓子が出てくる仕様で、ロケテストでは、データイーストのシールが出てきてたと記憶してます。
その後この筐体は、お菓子が景品で出る筐体と言うのかレギュレーションを通らずお蔵入りになり、数年後地方の旅館などに数台卸されただけだと聞いたような気がします。
最後に、こんなきちんと発売もされてないタイトルを、30年以上たった今 知って貰えるのは、物凄く恥ずかしいですが、私が作業した実績として、皆様に見て頂けたのはとても嬉しい事です!
本当にありがとうございました!大感謝です!!これからも頑張りますので、渡辺明夫を宜しくお願い致しますm(_ _)m
