雪印メグミルクグループは、前身である「北海道製酪販売組合」の設立から、2025年5月に100周年の節目を迎えました。
およそ100年前、十分な栄養を得ることが難しかった時代に、創業者たちは酪農乳業を通じて「安定的で豊かな食生活の実現」を目指し、社会課題の解決に挑みました。その想いは「健土健民」という言葉に込められ、創業の精神として受け継がれています。中でも創業者の一人、黒澤酉蔵は、自然の循環を活かした「循環農法」を提唱し、持続可能な農業の実現を追求しました。この理念は、現代の「サステナビリティ」に通じるものであり、私たちの原点でもあります。
いま私たちがあたりまえに享受している「食」は、将来も保証されているわけではありません。2050年代には世界人口が100億人に達するとされ、タンパク質需要の高まりによる「タンパク質クライシス」が懸念されています。「食の持続性の実現」は、これからの社会が直面する重要な課題です。
100周年という節目にあたり、私たちは、創業の精神である「健土健民」を「社会課題を解決する精神」として据え直し、当社グループの「存在意義・志」と位置づけました。消費者や生産者、取引先や投資家、地域社会とともに価値を創造する「めぐらせる力」を私たちの最大の強みとし、この力を発揮して、新たな食の可能性を切り拓き、「食の持続性」を実現することで、企業価値の向上を目指すサステナビリティ経営を推進してまいります。
当社では、サステナビリティ経営を進めるにあたり、酪農乳業の基本的価値である「栄養を届ける」こと、事業の前提となる「環境に配慮する」こと、そして持続的な成長を支える源となる「人材を活かす」ことを3つの柱とし、その上で重要課題(マテリアリティ)と重要管理指標(KPI)を設定しています。これらのKPIは、私が委員長を務めるグループサステナビリティ委員会において、担当役員およびグループ各社の社長とともに進捗状況を確認し、達成に向けた施策を協議しています。その内容は取締役会にも報告し、実効性のある運営体制を整えています。
【雪印メグミルクグループのサステナビリティ経営が目指す3つの柱】
「栄養を届ける」
魅力ある乳・乳製品の提供や、プラントベースフード等の乳で培った知見や機能を活かした新たな食の選択肢の拡大などにより、持続可能な食の提供や健康への貢献に取り組んでいきます。それを下支えする酪農産業の持続性への貢献も、私たちのテーマです。
「環境に配慮する」
TCFDに加え、TNFD提言に基づく開示への取組みを進めています。2024年8月に初期的開示を行いました。当社を中心とするバリューチェーン全体における自然への依存とインパクトについてENCOREを活用して評価し、当社工場の周辺地域におけるロケーション分析を実施し、自然関連のリスクと機会を確認しました。提言に準拠した本格的な開示は2025年夏を予定しています。また、酪農現場における温室効果ガス削減への支援として、酪農由来のJ-クレジット活用や酪農家由来バイオメタンガスの活用を開始しました。
「人材を活かす」
グループ人材育成方針を掲げると共に、多様性(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進、人材確保・配置と育成、従業員のワークエンゲージメントの向上に取り組んでいます。また、人権分科会で策定した「ロードマップ2030」に沿って、人権デュー・ディリジェンスも進めています。2024年9月、労働時間などの問題が指摘されている「物流ドライバー」を、「優先的に取り組む人権リスク」に追加、ドライバーに対する人権影響評価(インタビュー)では特筆すべき人権課題は確認されなかったとの報告を外部専門家より受けました。外国人労働者へのインタビューも計画に沿って実施しています。さらに、取組みを当社グループ全体に拡大するため、先行実施会社を選定しました。
私たちは、当社グループの「サステナビリティ経営」を支える基盤として、「コンプライアンス・企業倫理」の徹底を何より重視しています。企業市民としての責務を果たすため、「コンプライアンス」と「消費者重視の姿勢」は、すべてのサステナビリティの取組みと事業活動の前提であり、私たちの基本的な価値観です。
私たちは、「健土健民」の理念のもと、「食の持続性」の実現を通じて、次世代に継承できる持続可能な社会の構築を目指し、サステナビリティ経営に真摯に取り組んでまいります。
2025年6月25日
代表取締役社長
佐藤 雅俊