ポーカーの世界的な大会「WSOP Ladies Championship」で2024年に日本人初優勝を果たし、2025年には2連覇という“歴史的快挙”を成し遂げた、ポーカープレイヤーの岡本詩菜さん。

 2024年の初優勝時には日本円で約2500万円、2025年の2連覇達成時には約2700万円の賞金を獲得し、現時点での獲得賞金総額は約1億6000万円にも及ぶ。

 岡本さんは京都大学工学部建築学科を卒業後、外資系の大手投資銀行で10年間働き、ポーカープレイヤーに転身した。会社員時代には年収2000万円以上あったという。

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 彼女は、なぜ安定した仕事と収入を手放すことにしたのか。どのような経緯でポーカープレイヤーになったのか。岡本さんに、生い立ちから現在に至るまでの話を聞いた。(全3回の2回目/3回目に続く)

岡本詩菜さん ©志水隆/文藝春秋

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「会社から徒歩10分以内のところに住め」新人は朝5時には出社してレポート作成

――岡本さんが新卒で入社した外資系の投資銀行は、給与が高い分、とても忙しいと聞きます。実際の働き方はどうでしたか?

岡本詩菜さん(以下、岡本) 入社してすぐ、教育担当の先輩から「会社から徒歩10分以内のところに住め。土日も絶対に会社に来い」と言われました。

――なぜ徒歩10分以内のところに住まないといけないのでしょうか。

岡本 配属が決まるまでの数カ月間は、いろんな部署を回る研修期間だったんですけど、そのときは毎朝新聞から1つ話題をピックアップして、自分の意見をレポートにまとめ、先輩たちが出社するまでにメールで送信する、という課題があったんです。

 先輩達は朝7時くらいから出社し始めるので、それまでにレポートを書き終えていないといけない。だから、私たち新人は朝5時には出社するように言われていました。

岡本詩菜さん ©志水隆/文藝春秋

――なるほど、公共交通機関の始発に乗っても間に合わないですね。

岡本 そうなんです。当時、家を出てから自分のデスクに着くまでの時間が7分のマンションに住んでいて。私はとにかく要領が悪くて、朝5時だとギリギリになってしまうので、朝4時には出社して準備していましたね。