吉沢亮の吸血鬼に「童貞を守られる可憐な高校生」役を演じたヒット作『ババンババンバンバンパイア』から一転、『ミーツ・ザ・ワールド』で板垣李光人は、髪を金や青に染めた歌舞伎町のホストとなった。

板垣李光人 撮影=榎本麻美

原作小説に漂う“希死念慮のようなもの”

 お話をいただいた時、今までやったことのない役柄で、自分にとってひとつの挑戦になるだろうと思いました。僕が演じるアサヒは一見チャラいホストなんですが、原作が金原ひとみさんですから、どこか不安定なところがあって、そこにやりがいを感じたんです。

©金原ひとみ/集英社・映画「ミーツ・ザ・ワールド」製作委員会

 金原さんとは、以前、NHKのバラエティでご一緒したことがありました。それまでも『蛇にピアス』などの作品を読んでいたんですが、実際にお会いしてお人柄が本当に素敵で面白い方だと思いました。今回は本業で、映画で俳優としてご一緒できる。それが嬉しかったです。

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 原作の『ミーツ・ザ・ワールド』は、新宿の歌舞伎町を舞台に、今の人たちが抱えている苦悩が描かれています。物語の中で明快な解決策が示されるわけではないですが、金原さんが小説という形でその苦悩に触れてくれるだけで救われる人がいるのだろうと思いました。また、金原さんの作品全てに言えることかもしれませんが、「死」というか、希死念慮のようなものがずっと漂っている。「死」は忌避されがちですが、実際は一番近くにあるものだということをすごく感じさせてくれるんです。

 

 小説が好きで、女性作家の作品を読むことが多く、ほかには西加奈子、湊かなえらの作品が好きだと語った。

 ホストの世界を何も知らなかったので、取材というか、勉強としてホストクラブに行きました。驚きでした。多くのテーブルをまわってどう接客していくのかとか、料金の形態や、すべてが新鮮でした。実際にホストの方からお話を伺って、アサヒの接客スタイルはこの方とこの方を足して割った感じで行こうかと、イメージできました。