- 1二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 22:27:28
昔々。この緑深い島には、教養深い王様と王妃様が収める王国がありました。
彼らは内政が得意で、周辺国との戦いをあの手この手で避けながら金銭を上手く取り回し、島全体を豊かにしていきました。
特に島北部にある森の湖周辺の木々から採れる大ぶりのくるみとそれを割るために作られる立派なくるみ割り人形は、王様が島の名産として大々的に祭り上げたこともあり、島外でも大変重宝される品となりました。
全てが順調でした。
──その跡を継ぐ美しい王太子が、あまりにも平凡な才能しか持たぬ者であったこと以外は。
【前】
【閲覧注意】ヘルメッポ・スパンダム「「七光りのバカ息子」」|あにまん掲示板ヘルメッポ「被害者の特徴は20代から50代前半くらいまでの男性。あってないようなもんだなァ」コビー「このままじゃ尻尾を掴むどころじゃないね。一旦情報収集に集中しなくちゃ」★☆天竜人「──島のくるみ割り…bbs.animanch.com - 2二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 22:37:39
両親は政務に忙しく王太子に関わることができなかったため、王の臣下たちが彼の教育を担当していました。
王太子が凡人であることを、教育を開始した臣下たちはすぐ理解します。
しかし、誰もその事実を受け入れることはありませんでした。
考えてみてくれ。
優秀な王と王妃の子を平凡に育ててしまっては、まるで自分たちが無能であるようじゃないかね?
王太子を優秀にしようと、臣下たちは大変厳しく苛烈な教育を施します。
無理を強いられた王太子は、優秀になるどころか疲弊してますますおちこぼれていきました。
彼にとっての唯一の救いは、教材の一部として与えられていたメルヘェン。童話やおとぎ話です。
現実が厳しくなればなるほど、王太子は空想の世界に傾倒していきました。
そしてとうとうやって来た王位継承の前日、王太子は言いました。
「ようやく私が何者なのか、理解した」
「私はあの人たちの息子じゃない。優れた子供を羨んで王子へ成り代わった、くるみを割れない、醜く役立たずのくるみ割り人形なんだ」……と。
……王太子はとうとう現実の前に折れ、夢の世界へと逃げてしまったのです。
困ったのは臣下たちです。
王たちの引退までは王太子を脅して言いくるめて、なんとか誤魔化すことができましたが、それ以降はどうにもなりません。
"自分はくるみ割り人形だと主張する王"は、よい意味でも悪い意味でも話題になりました。
荘厳に建て替えられた王城へ数多くの作家や音楽家を呼び寄せ、そこへ民を招いてもてなす一方、その費用のために税を増やしたり臣下への給金を下げたりとなかなか好き放題に振る舞います。
しかし僅かな正気の間に無難な政策を立てるため、国内外共に悪い評判ばかりでないのが臣下たちにとっては質が悪い話です。
疲弊した臣下たちは、前王らに指示を仰ぎました。
前王らはかなり彼らに都合よく脚色された話を臣下から聞いて、鵜呑みにし、王太子に失望します。
王太子から直接話を聞こうとはしませんでした。
自分の子より国を育てることばかりに執心してきたのです。自分たちの種から産まれた以上の情報を持たぬ存在より、共に国を運営して来た部下を信じるのは、彼らにとって至極当たり前だったのです。
容赦はありませんでした。 - 3二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 22:42:42
まず臣下に最悪な政策を王太子の名で施行して悪評をばら撒くことを指示し、民の不信を煽りました。
すると身に覚えのないことで責められた王太子は更に自分の世界に逃避し、浮世離れした言動をするようになったため、それを風潮し王太子廃嫡の機運を高めます。
一部の民は「あの夢見がちな王太子がそんなことをするだろうか」と疑問に思いましたが、多くがあっさりと騙されました。
そして最後に前王らが颯爽と現れ、国家に反逆する者として"円満に"処分する運びとなったのです。
捕らえられ処刑台に送られる王太子は言いました。
「あなた方を騙していました。私は本物の王子ではありません、成り代わったくるみ割り人形なのです。申し訳ありませんでした」
それを受けて、前王は告げました。
「ああそうだ、お前は我々の息子ではなかった」
……くるみ割り人形の幻想は、苦い現実となってしまったのでした。
優秀な親の子も優秀とは限らないし、良い統治者が必ずしも良い親とは限らない。
そんな当たり前の話が産んだ悲劇でした。
──それで終わればよかったのですが。 - 4二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 22:46:30
せめて現実ではハッピーエンドになってほしい
- 5二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 22:48:46
たて乙です
気付いたら完結せずに前スレ埋まってて続き立つか不安だったから立ってて嬉しい - 6二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 22:54:18
ある日。王太子の死を疑問に思い、偲んだひとりの職人が、自分が所有していたくるみの木を切り倒しそれをくるみ割り人形にして売り出しました。
くるみの木がある湖周辺を王太子はよく好み、ボート遊びに読書に、憩いの場としていたからです。
役に立たないからと前王たちから切り捨てられてしまった王太子の魂を、少しでも慰められればという思いでした。
他のくるみ割り人形に混じって、それは何事もなく売れます。
それからしばらくしたある日、民の間で奇妙な噂がされ始めました。
「森に王太子の幽霊が出る」
島の木から作られたくるみ割り人形に王太子が乗り移り、王太子の復讐のために動いているのだと噂がたちました。更に奇妙な話は続きます。
……行方不明者が出てしまったのです。それも、島でも有名な名士の優秀な息子でした。
「やはり幽霊は居るんだ!!殺された王太子の恨みだ!!」
憶測はまたたく間に広がり、噂では済まされない騒ぎになってしまいました。
前王らは臣下たちから養子を迎えようとしていましたが、もちろん誰もなりたがりません。仕方なく臣下たち全員に仕事を分配し、王が不在でも成り立つ国を作り上げました。
そうして今度こそと隠居生活を始めた前王らは、徐々に王太子の影に怯えるようになりました。
特に晩年の狂乱ぶりは酷く「木の関節が軋む音が聞こえる!!」「くるみ割り人形が復讐にやって来た!!」と慄き、森を閉鎖し王城を捨て南側を開墾し移動してしまうほどでした。
この時に『新しく造る城とその城下町には、くるみ割り人形を作ったり持ち込んだりしてはならない』という有名な命令が出されました。
名産品を作るため毎日賑わっていた森は、まず一連の出来事を把握している者が近付かなくなり、噂に負けず意地でもくるみ関連の産業を続けようとしていた者も前王らの狂乱を見て次々と離れていきます。
静かになった森には、噂だけが残りました。
結局くるみ割り人形のせいなのか、王太子の幽霊のせいなのか、それとも別の何かが悪さをしたのか……。
真実は分からずじまいですが、噂は隠蔽と紆余曲折を経て伝承となり島に根付きました。
時は流れて王家の血筋は途絶えて久しく、臣下たちの子孫により無事に政は回され続け、現在の統治に至ってもなお。
まあ随分と歪んだ形ではあるが、ね。 - 7二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 23:01:29
「と。──島で有名な伝承の裏には、こんな悲劇的な…………な、泣いている!?」
コビー「なんてこと……」ポロ…
コビー(努力しても努力してもなんの結果も出ず、最期まで自分を含め誰にも認められないまま死んでいく。どれだけ辛く悲しいことだろう)ポロポロ
「は、ハンカチーフは居るかいお客さま!?」アワワ
コビー「ぐすっ。いえ、ぼくにはこのタオルがありますので。……街で聞いた伝承と全く違いますね」ゴシゴシ
「いつの間にか本当の話は淘汰されたが、理由は明白だ」
「今この島を治めている王国の臣下の子孫たちからすれば、自分たちのせいで王太子が病んで親も共倒れした話なんて、都合が悪いだろう?」
「こう言うと子供や孫たちには偏屈ジジイ呼ばわりされるのだけどね」
コビー(もしかして、あの噂好きの人……このおじいさんの関係者なのかな……?)
コビー(島北部への道について詳しかったのも、そういうこと?)
「偏屈ジジイ呼ばわりされようとも、わたしは正しい歴史はこちらだと信じているよ」
「誰もが自分可愛さに間違えた結果の悲劇、実に人間らしいと思わないかい?」
コビー「えっと……」
「ふふ、冗談だよ。ちゃんと根拠があるのさ」
コビー(全く冗談だと思ってない目をしていたぞ……)
コビー「何か、資料などが残って?」
「ああ。当時記された日誌に、王太子のサインが書かれた発注書なんかはもちろん、例のくるみ割り人形の実物もある。何を隠そう、わたしはくるみの木でくるみ割り人形を作った職人の子孫だからね」
コビー「……え、ええ〜〜〜ッ!!?」
「理由は察してもらえると思うが、彫刻家や木工師は王都を移す時、共に移動せず残る者が多かった」
「幸い特に差別を受けた訳ではないから、ほとんどの人々は利便性目当てで後年南に移住し、元城下町は森に飲まれた。が、私は未だにここで細々と暮らしているんだよ」
「上層部はここを悪い噂ばかりの価値がない土地として放置しているから、これ幸いと城跡を乗っ取ってね。楽しいよ、お客さまは全然来ないけど」
コビー(な、なるほど、かなり癖がある人物だなぁ) - 8二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 23:13:44
コビー「貴重なお話にステキなお土産まで、ありがとうございます」
「君は人が良過ぎて心配だ」
コビー「ありがとうございます!!」
「褒めては……いるけれど、程々にしておいた方がいいよ」
コビー「よく言われます!!」
「ぷっ。そうかいそうかい、若いねェ」
コビー(そろそろヘルメッポさんのことを聞いても大丈夫かな……?)
コビー「あのう、そういえばなんですけど」
コビー「長い金髪で顎が割れていてサングラスをかけている男の人を、この辺りで見かけませんでしたか?一緒に島に来たぼくの友達なんですけど、連絡がつかなくなっちゃって」
「!!!」
コビー(あれ、表情が険しく……)
「──あっちに森の奥に続く道があるだろう?」
コビー「道?……道…………。え、ええ……」
コビー(草が踏み倒されているだけにしか見えないぞ……。良く言えば獣道と言えなくもない、かな……?)
「その先に例の湖とくるみの木々がある」
コビー「湖?……。……ああっ!!伝承に出て来る……!?」
「そう」
「とりあえず今は間違っても踏み入ってはならないよ」
「少なくともここ数日、長くて数年間。森の奥に入った若い男は、二度と生きて戻って来れないから」
コビー「……!その話も、真実、なのですか」
「少なくともわたしが生きて、この目で見てきた間は」
「それで」
「わたしがこの話をした意味、君なら理解るだろう?」
コビー「っ!!!」 - 9二次元好きの匿名さん25/06/19(木) 23:53:48
コビー「なっ……」
コビー「な、なぜ引き止めないのですか!!?奥に行った者は帰って来ないとわかっていながら!!!」
「……そもそも止めて止まるなら、最初から声をかけているよ」
コビー「──えっ」
「ダメなんだ。一度森に呼ばれてしまった人へ、もう言葉は届かない」
コビー「森に、呼ばれる……ですか」
「森は一定周期で人を呼ぶ。何人かが帰らぬ者となった後、突然ピタリと誰も森へ寄り付かなくなる。そして何十年後かにまた森へ人が入るようになり、今度もある日突然ピタリと止まる。その繰り返しだ」
「あれこれ手を尽くして森へ入ろうとする人を止めても、結局は吸い込まれるように行ってしまって、二度と戻らない」
「まれに身体"だけ"戻って来る者や、消えた者そっくりの木の人形が湖の側に打ち捨てられていたこともある。過去の記録を辿れば更に色々な事例が見れるが、無事に帰って来た者は少なくともわたしが把握しているうちは一人として居ない」
「なんなら世界政府は……いや、君のような善き若者に世知辛い話はよそう……」
コビー「──まるで、呪いや祟りみたいだ」
「そう、真実はともかく、傍から見た実態は完全に呪いだ。幽霊の噂が出るのも必然と言える」
「孫は定期的に毒ガスが湧くんだとか、どっかのバカが変なものを捨てたんだとか、悪魔の実の能力者かわたしが悪戯してるんだなどと言って信じちゃくれないがね」
「森に入る者たちのことも『一目見て危ないと分かる森に入る連中なんて、脳にシロアリが湧いたような奴ばかりだし、死んだって気にすることないでしょ〜』と罵る始末。頭が痛いよ」
「っと、しかし、シロアリは除くとして、他は本当にそうかもしれない。何なら全てはわたしの妄想で、君の友達は何食わぬ顔で無事に戻って来るかもしれない。そうであれば……」
「……すまない」
コビー「いいんです。こちらこそ、責めるようなことを言ってしまって、すいません。あなたはあなたのやれることを精一杯頑張っていらっしゃるというのに」
「本当に優し過ぎて心配だ。君のお友達が戻るように、わたしにできることならなんでもしよう」
コビー「……では。善意に漬け込むようで申し訳ありませんが、少しの間お土産を預かっていて貰えませんか?」
「!?」
「ま、まさか。行く気かいッ!?」
「せっかく忠告して下さったのに、申し訳ありませんが……」 - 10二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 01:03:58
続きありがとう
- 11二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 01:36:31
コビー「あともう一つだけ。戻ったら、ぼくの友達に『おかえり』とおっしゃって頂けませんか」
「もちろんだ。気を付けて、絶対に戻るんだ。もしもがあったら、どんなに残酷に思えても、まずは自分の命を優先しなさい。共倒れが一番最悪の事態だよ。……いってらっしゃい」
コビー「ありがとうございます。いってきます……!!」
★☆
スパンダム「はぁ〜……」
スパンダム「海兵、ちょっと距離離せ。ちょっとでいい」
ヘルメッポ「ん?──ああ、わぁーったよ」スタスタ
ファンク「……」ソッ
スパンダム「……おい」
スパンダム「ファンクフリード」
ファンク「パオッ!」ビクッ
スパンダム(…………。)
スパンダム「…………来いよ」
ファンク「ぱおーん……」フヨヨ
スパンダム「……。」
スパンダム「お前、アイツに……あの海兵に情が湧いているな?だろう、ファンクフリード」ボソボソ
ファンク「パッ」
ファンク「パォン……」コク
スパンダム「やっぱりな」
ファンク「……、……?」 - 12二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 06:29:16
今のところあらすじ?
- 13二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 14:26:11
思ったより真実のお話が胸糞だった
ヘルメッポもスパンダムもちゃんと戻ってきてほしいしなんなら王太子の魂もちゃんと浮かばれるといいんだが - 14二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 21:13:47
待ってます!!
- 15二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 06:03:28
ファンクかわいいな
- 16二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 06:50:45
ほんそれ
- 17二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 15:28:26
店主めっちゃええ人や
そしてコビー、君はそういう男だよ
全員無事に帰ってきてくれ - 18二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 23:03:30
本当に好き
無事に帰ってきてくれ〜! - 19二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 23:03:44
スパンダム「どーりでちょくちょくアイツの話を聞くそぶりを見せるワケだ……」ボソボソ…
スパンダム「おれはな、心なんて変わりやすい曖昧なモンで信疑を決めるのは、頭の弱いヤツのやることだと思っている」ボソボソ
ファンク「ぱ……ぱお……」
スパンダム「例えばおれがお前を信じると選んだのは消去法だ。懐刀であるお前は裏切らねェと信じなけりゃ、おれの死は確定しているようなものだからよ」コソコソコソ
スパンダム「それぐらい特殊な状況下でもなけりゃ、一番分かりやすい信用を決定付ける条件は……"利益"だ」ボソボソ…ボソ
スパンダム「お互いにとって信じるに値する条件を提示して、双方納得の上で互いに得をする関係を作り上げ繋がる。契約書等、目に見える形になってりゃ更によし。反故にされ難いし、相手がボロを出したらつつける」ボソボソボソ
スパンダム「だから、ファンクフリード。あの海兵の利益になれ」コソコソッ
ファンク「……パォ?」
スパンダム「できるだけ媚びろ。どうやらアイツ、お前を気に入っているらしいしな。正式にこっち側に引き入れるために、お前を使う」コソ…ボソボソ
ファンク「……ぱぉ〜…………」
スパンダム「あ?何だその反応。別にだな……い、いや……」
ファンク「ぱお」コソ
ヘルメッポ「ん?」
スパンダム「う。……い、今はアイツがほぼ一方的に、気まぐれで利益をこちらに与えている状態だろ……?名目上は協力者だが、どう好意的に見てもほぼおれが援助されているだけだ……」コソ…コソ…コソ…
スパンダム「これじゃあ、いつその気まぐれがひっくり返って反旗を翻されるか分かったもんじゃねェ。全く尻が据わらん……」ボソボソ…
ファンク「……パ〜オン」ジッ
スパンダム「な、なんだよ」コソッ
ファンク「ぱぉっ。パオパオ」
スパンダム「もちろん用意する利益はお前だけじゃねェぞ……!?金とか、おれという政府高官へのツテとか。その辺でなびかねーなら、オススメの避暑地や世話になってる外商なんかを紹介してやるという手もある」ボソ…ボソボソボソ
スパンダム「今までの感じからして、勝算は十分あるだろ」ボソ
ヘルメッポ(ずっと何話してんだか。ファンクのケアって感じでもなさそうだし。ただ堂々と話すってことは、わるだくみじゃなさそうだがよ) - 20二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 23:25:26
スパンダム「いいな、精一杯媚びるんだぞ」コソ…
ファンク「ぱぉ」
スパンダム「……ン、いい子だ」ナデ…
ファンク「!!」パァア
スパンダム(こうして触れ合ってやったのも随分久しぶりな気がするな……?戻ったら本物にもしてやろう……)ナデナデ
ファンク「パオ〜ン!!」
ぐもももももも……
ヘルメッポ「…………は?──ちょ、ま、えっ」
ドォオーーン!!
ヘルメッポ「オアアアアアアーーー!!?親父の部屋までもがァアアア!!!」ガビーン
ファンク「パオ〜パオッ!!」モスモスモスモス
スパンダム「ンあ〜……とりあえず、お前を生贄にする作戦はァ、中止してやる〜……。ありがた〜く思え〜」グリングリン
ヘルメッポ「ありがとうございまぁす!!!──とでも言うと思ったかトンチキ野郎!!!親子揃って部屋がメチャクチャなんだがァ!!!?どうすんだよこれェエエ!!!」
スパンダム「別に……」
ヘルメッポ「自分が寝てた椅子が無事だからって生ぬるい反応してんじゃないわ!!!このクズ!!!」
スパンダム「いやだって、おれなんもしてないから。ファンクが勝手に象になっただけだし。おれ悪くないだろこれ。なんでおれが責められてんの?」
ヘルメッポ「逆になんでそんな他人事になれるんだよ!!?」
ファンク「パ!!?」ハッ
ファンク「パオッ……!」ガーン‼
ヘルメッポ「おお可哀想に。『自分はこの人みたくこんなドジじゃなかった筈なのに!!』という顔をしているぜ」
スパンダム「勝手にファンクの心情を推し量るなァ!!!あとうっかりはするが!!!ただのドジとは違う!!!他のヤツが脅かして来たりタイミングが悪かったりするせいであってだな!!!」
ヘルメッポ「いや、大した違いないじゃねーか。ドジ大魔人」
スパンダム「ムキィーーーッッッ!!!」 - 21二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 00:27:03
スパンダム「って違う違う!!話逸らしやがって!!おい、海兵!!!」
ヘルメッポ「……ッチ!!んだよ!!?喧嘩なら買うぞ!!!」
スパンダム「おれと正式に取引(ディール)しろ!!期間はここから脱出するまでだ!!条件やルールを決めて契約書も作るぞ!!いいな!!?」
ヘルメッポ「……は?」
スパンダム「おれから提示する条件は『スパンダムをここから心身共に無事な状態で脱出させる』こと!!そして『これから契約書に記載する以上の報酬を求めない』こと!!『どちらかが契約に反した場合、契約を反故にされた者が望む形で臨機応変に責任を取る』こと!!以上ッ」
スパンダム「報酬は何がいい!?金ならある!!!金が要らねェなら他の利益も用意できる!!このスパンダムに任せておけ、絶対に損はさせねェぞ!!」グイグイ
ヘルメッポ「押し強っ。お前政府高官になる前は悪質な訪問販売員やってただろ……」ススス…
ヘルメッポ「しばらく連絡無しで居なくなってた言い訳手伝ってくれりゃ、後は旨いもんてめェの奢りで食うくらいでいいだろ。契約?ものものしいわ」
ファンク「ぱおっ」
ヘルメッポ「なー?」
スパンダム「本当にその程度の報酬で構わねぇんだな!!?後からもっと交渉すりゃよかったとか考えても遅いぞ!!!」ガリガリガリ
ヘルメッポ「それ親父の……まあい、筆早っ!!えー、じゃあルール『スパンダムがヘルメッポを襲う時は正々堂々と正面から。ファンクを使わない』こと」
スパンダム「何だそのナメた条件!!『スパンダムがヘルメッポを襲撃する必要が出た際は、必ず予告を行い正面から、象剣ファンクフリードを使わない手段に限る』こと……これでいいか!!?」ガリガリ…ガリガリ…
ヘルメッポ「いや明記するのかよ。別にいいけど」
スパンダム「オラッ、できたぞ!!さっさと読んでちゃっちゃとサインしやがれ!!」カリカリ…ペラッ
ヘルメッポ「…………。……ふぅん、お前なんかでも一応、変な例外とか小さくて読み辛い補遺とかない、良識的な契約書も作れんのな」サラッ
スパンダム「誰が詐欺師だ!!!おれとしてはいつもこういうの作ってたかったわ!!!アホみたいな現実をこね回して、書類上では何とか体裁整えるのが主な仕事なんでな!!!むしろ詐欺師やる方が楽だわヴァカが!!!」 - 22二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 08:33:28
ショック受けてるファンク可愛い
- 23二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 15:22:38
前スレの最後らへん消されたレスばっかだけど何かあったの?
見てた人できればでいいから教えて欲しい… - 24二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 19:23:15
- 25二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 19:53:14
なるほど
- 26二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 22:31:13
- 27二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 08:18:52
前スレでも言ってた方がいたけど、原作に一切絡みのないコンビにハマりそう
このコンビってここでしか摂取できないんですよね
どうしてくれんだ - 28二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 13:33:42
そういや漫画じゃ絡みないな
結構共通点あるのに - 29二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:13:36
書類上で体裁整えることのしんどさがわかってきた社会人2年目です…
- 30二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 07:53:03
このレスは削除されています
- 31二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:16:36
このレスは削除されています
- 32二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 21:37:19
保守 続き楽しみ
- 33二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 22:28:29
- 34二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 23:25:59
続きあったのか
てっきりあのまま消えたのかと残念に思ってたよ
楽しみにしてます - 35二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 01:30:41
ヘルメッポ「堂々とした偽装宣言。大なり小なりどこもやってんだな」カリカリ
スパンダム「偽装じゃねぇ!!ちゃんと事実は報告するわ!!うっかり書き忘れることがあったり、ついおれの主観が混じったりするだけだ!!」
ヘルメッポ「へいへい。……わざわざ割サインまでやれるようにしてんのか」
スパンダム「互いが持つ契約書なんだぞ、それ見越して作るに決まってるだろ」ペリッ
ヘルメッポ「仕事の書類持たされた気分だわ。てか片付け手伝えよ」
スパンダム「ファンクがやる」
ファンク「パオッ!?」
ヘルメッポ「更に荒らそうとするな!!テメーがやるんだよ!!!」
スパンダム「おれは右腕を盗られた状態なんだぞ!?この状態で家事をさせようとするとは、さては鬼畜か?」
ヘルメッポ「いやついさっきまで普通に字書いてただろうがボケ」
スパンダム「政府高官がやる仕事じゃない」
ヘルメッポ「仕事じゃねーからやれ」グ…
スパンダム「オイ!!そのファイティングポーズやめろ!!さっそく契約違反しようとすんなこの不良海兵!!」
ヘルメッポ「別に脅しちゃいけないとは書かれてませんがねぇ〜?ちなみにこれは心身を脅かす目的ではなく、協力を求めているにも関わらず応じないたわけを教育するための拳で〜す」
スパンダム「ちょ、ちょ、どうせ現実じゃねェのに部屋の汚れなんぞ気にすることかァ!?」
ヘルメッポ「お前はよくてもおれは木くずとホコリまみれの部屋で寝るなんざ真っ平ごめんなんでね!!せめてちり取り係くらいできるだろうが!!まともにやれっ!!」ゴンッ
スパンダム「ギャアッ!!!ヤメロ頭が割れる!!!」
シャッ シャッ シャッ
ガラガラ…… パリパリパリ
ヘルメッポ「とりあえず木くずやらガラス片やら危ないものは取り除けた。我ながら手際いいぜ、ひえっひえっ!!伊達に雑用からの叩き上げで少佐になったワケじゃねェぞ!!」
スパンダム「はんっ、汗水垂らして得た割にケチな地位とちゃっちいコートなんぞ自慢されても。笑えばいいか?ワハハハハ!!」
ヘルメッポ「えっと?逆にお前のその、何?なんでちょっと掃除するだけでそんな汚れまみれになれんの?」
スパンダム「……床が汚ねーのが悪い」
ヘルメッポ「そうかもな。1割くらいは。9割はその汚い床にズッコケまくりで人間雑巾になってたお前自身の責任な気がしてならねェがな」 - 36二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 09:53:19
コーヒーもよくこぼしてたもんな
- 37二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 12:31:25
家にいた頃は使用人が全部世話してたんだろうか
日常生活がままならないレベルのドジだし - 38二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 21:59:18
むしろヘルメッポは生粋の坊ちゃんなのによく雑用やりとげたな
- 39二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 23:05:38
こう見ると同じようなところを持ちつつ正反対な二人、良い…
- 40二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 07:31:18
タバコ吸ったりはしてたけど軍からは逃げなかったからな
- 41二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 12:26:56
このレスは削除されています
- 42二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 20:34:28
その辺りコビーの存在は本当大きかったんだろうなあ
- 43二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 20:56:36
スパンダムっててっきり帰ってきたルッチたちに始末されるかと思ってたな
逮捕されたみたいだけどまだ親父のコネが残ってるのかな - 44二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 21:31:12
ヘルメッポ「きたねーからとりあえず全身ホコリだけでも落とせ、その服装でシャツまで汚れるってよっぽどだぞ。おれの服……はつんつるてんだな。親父の服貸すからその無駄な縦の長さ分けろ、10cmくらい」
スパンダム「は?イヤだが?おれだって絶賛第三次成長期待ち中だわクソったれ。だから貴様の親父のモンは要ら……いや、なんだそのノースリーブのシャツ!!それ着るくらいならパンツ一丁のがマシだわ!!着替えたい放題の立場からグチグチ言いやがって!!」パンッ
ヘルメッポ「おれんちだからなぁ。代わりにちょっと死にかけたしこれくらいなきゃ割にあわねー。というかそんなノースリーブってダメ?ダサくはないしドン引くこたないだろ。お前着たらだるんだるんだし」
スパンダム「ノースリーブがダメとかダサいとかじゃなくて……ああもう面倒くせェ〜〜!!自分で考えろ!!グギギ……おれにはここじゃ幸福のキャッシュバックはないっつーことが確定してるってのに……」パタパタ
ファンク「プフー」ヒュルル
ヘルメッポ「実際なんでお前の?幻覚?ああなってんだろうな」
スパンダム「知るかボケ!!それはこっちのセリフだわ!!お前と顔合わせた後、目が覚めたら森の中に放り出されてた挙句、ずっと親父に追い回されてんだぞ!!!」
ヘルメッポ「おれもソーロに会った後は海兵のみんなに寄って集って襲われてたな……。あれも『本物の息子をつくる』作業の一貫だったんだろうが、なんの意味があったんだ?聞いときゃよかったかぁ……?」
スパンダム「……愛に目覚めた結果、何とかなったっつってたよな?実際はどうだったんだよ」スパン
ヘルメッポ「だーかーらー、残念ながら嘘じゃねェんだってば。まず海兵のうちの一人にぶっ刺されて血まみれになってたら、親父が助けに来るだろ?次に「親父には世話にならない、自分の力で頑張る」って思ったから口でも言うだろ?そしたらなんかこの姿に戻ってたし愛の力でなんかしたことになってて、親父とソーロも協力してくれたんだよ」
スパンダム「メルヘンで気色悪ィ展開だなァ!!!真似しろと!!?虚偽の宣言しろってか!!!身近に使い放題の権力とコネがあるならバリバリ使うに決まってンだろーが!!!」ダムッ - 45二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 22:14:23
ヘルメッポ「いや、だから……。……もう隠すのも面倒だし言っちまうか。察しの通り、愛に目覚める以外に脱出する方法もある」
ヘルメッポ「お前、愛以外の脱出方法があると知ったら、代償があってもそれを選びかねないだろ?」
スパンダム「当たり前だァ!!!よく分からん方法より確実性!!!多少の犠牲がなんだ!!!」パシィ
ヘルメッポ「ほらやっぱりなァ〜!!ゼッテー教えん!!!」
スパンダム「チッ!!!」
ヘルメッポ「親父がお前のこと『自分を見失いかけてるから、このまま脱出すると無事じゃすまねェ』って言っててよ。あん時のてめェじゃ最悪それでもいいと思いかねないから黙ってた。……実際、どうよ」
スパンダム「…………。これがそのままになるかもしれない、と」スカスカ
ヘルメッポ「そーいう物理的なモンじゃなくても、心のどっかに欠けが出るとかよくない後遺症が残るかもな」
スパンダム「ゲッ……そういう自覚し辛いあれそれが一番困んだよ……。知ってる穴は使いようだが、知らん穴は落とし穴にしかならん」
ヘルメッポ「冷静でなにより。じゃあえーっと……『愛は時に人の心を鏡のように写す』から、見失った自分も取り戻せるらしいぞ。とりあえず愛見つける方向でガンバレ」
スパンダム「結局その抽象的な上に気色悪い結論に行き着くのかよォ!!!」
ヘルメッポ「しょうがないだろ……。何度だって言うからな!!おれだって最初親父に言われた時は相当耳疑ったし、キモ過ぎて思わず笑っちまったんだ!!」
スパンダム「だからといってナニをどうガンバレってんだよヴァ海兵!!今のおれに愛が無いと仮定して、愛がある状態と判定される条件がそもそも分からねェんだぞ!!あ、ファンク、これ持っとけ」ススス
ファンク「パオ」
ヘルメッポ「そういう細かいこと気にしてる間はムリなんじゃねーの?」
スパンダム「これで細かいとかほざいててよくも治安維持の一端担ってられるな!!?いや、おれ含めて上下どっちもこんなんばっかだったわ!!!畜生!!!」シュルシュルッ
ヘルメッポ「自覚はあるのか──って」
ヘルメッポ「──お前、その関節……!!」
スパンダム「……フン」 - 46二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 00:28:29
ヘルメッポ「う、腕だけじゃなかったのか、木になったってのは……!?」
スパンダム「そのレベルかよォ!!?とっくに全身木の人形だわ!!!最低限頭ぶん殴った時に気付いとけや!!!」バサバサ
ヘルメッポ「手応えがちと軽いとは思ったが、てっきりてめェの頭蓋骨のことだから強度が微妙なのかと」
スパンダム「貴様ァ!!!死なない程度にファンクフリードブッ刺すぞ!!?フザケてんのはケツアゴだけにしろ!!!」
ファンク「ぱおん」
ヘルメッポ「別にフザケてねーから……わ、悪かったな……」
ヘルメッポ「そりゃあ、いきなり全身木になっちまったら取り乱すし焦る。理屈じゃなく、"死にたくない"って必死になりもするよ」
スパンダム「フンッ、同情するならこのスパンダム様を無事に脱出させることだ。……あっ、もちろんおれもキリキリ働きますよ?お互い頼りあっていきましょ〜!!ねっ?ヘルメッポ少佐っ」
ヘルメッポ「うん。やっぱりうらやましいわ。あんなに無様晒しといてそんだけ偉そうにしたり媚び売ったり忙しくできるのはもう才能だしある意味大物だぜ」
スパンダム「ほっとけ!!!」 - 47二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 00:47:50
こっからどうやってスパンダムが愛に目覚める展開に行くのかさっぱりでおもしろいな
ファンク絡みのような気はしてるけどはたして… - 48二次元好きの匿名さん25/06/27(金) 01:34:20
スパンダム「…………」
スパンダム「貴様は何故おれにここまでする?」
ヘルメッポ「あ?急になんだよ」
スパンダム「ここは殺人鬼が徘徊する家みたいなもんだ。出くわして散々な目に遭った後に何とか脱出方法を知ったんなら、他に閉じ込められている奴らが居ようが、まず自分だけでも逃げようとするのが正気の人間だろ。理由がなけりゃ不自然だ」
ヘルメッポ「そうかァ?別に『なんかほっとけないから』とかでよくね?」
スパンダム「よくねェ!!『海兵は市民を助けるものです』なんつう一般論なんぞ、普通こんな切迫した状況でほざけねェ!!契約したとはいえ、わけわからん理由で裏切られそうで怖いんだよ!!マトモに回答しやがれッ」
ヘルメッポ「んな無茶な。度が過ぎた人間不信なんですねドンマイとしか……理由……理由なんて……。あっ」
ヘルメッポ「コビーなら目の前で困ってるヤツが居たらどんな相手だろうが手を差し伸べるし、絶対に見捨てないだろうなとは思うぞ」
スパンダム「人がそうするから?それだけの理由で他人のためなんぞに命を危険に晒すのか?」
ヘルメッポ「ひえっひえっひえっ……。おれにとっちゃ"それだけ"じゃねーよ。コビーはただの人じゃない、友達兼ライバルだ!!」
ヘルメッポ「勝手な意地っつうか……競争心?アイツの後ろじゃなくて隣に立っていたいし、そこに居ても恥ずかしくない自分で居たいんだよ。そのためにアイツがやるだろうことをおれもやってやろうと思う……ってのは"理由"になるんじゃねーか?」
スパンダム(充分"それだけ"だわ、ヴァカが!!)
スパンダム(化物の中じゃ凡庸な腕で、もっと格上の化物だらけの海に飛び出すんだぞ!?血が好きな根っからの異常者でも、幼少から訓練されたワケでもない正気の人間が、命を脅かされる恐怖や痛みを感じながらだ!!)
スパンダム(それでも折れずに進み続けられる理由にしちゃ、あまりにもちゃち過ぎる……!)
スパンダム(………………ん?)
スパンダム「──あっ」
ヘルメッポ「あ?」
スパンダム(もしかしてこれ?これが"そう"なのか?じゃあ──)
スパンダム「おれ、一生"愛"無理だわ」
ヘルメッポ「ハァ!?急にどうした!!?」
スパンダム「お前と違って命惜しいもん」
ヘルメッポ「おれもメチャクチャ命惜しいですがァ!!?」