- 1二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 15:04:45
- 2125/06/20(金) 15:06:47
「───委員長?」
脳が反射的に、言語化されていない命令を身体に下す。一瞬の浮遊感の内、弾んだ身体が柔らかい椅子に受け止められる。
絞られた視界がゆっくり開けていく。高級感のあるダークブラウンの机。紫のカーペット。柱に提げられた校章。シックな雰囲気の部屋。
「あっ。...あぁ、ごめん、なさい。ちょっと、寝ちゃってたみたいで......」
ぐわん、ぐわん。頭が痛くて、重くて。
心当たりを思い出そうとして、思い出すまでもない事に直ぐに気づく。状況説明に、目の前にある山脈がごとく連ねられた紙束以上の物は必要ない。
「......どうか、ご無理のないように」
手伝ってくれていた「行政官」からの労いを素直に受け取り、再びペンを握る。 - 3125/06/20(金) 15:09:12
とある大きな学園の、風紀委員長になった。
絶大な力があった。自分で言う事では無いのかもしれないが、言葉以上の意味は無い。こと暴力においては、このキヴォトス屈指のマンモス校の中でも私に比肩する者は居ない。
少々荒れた学校ではあったが、私の存在が抑止力となって、なんとかその体裁を保っている状況だ。
気分は、良かった。抜きん出た力を遺憾無く発揮し、頂点から総てを支える。重圧はあれど、それに応えうる力もある。誰しもが私を頼り、或いは恐れ、名は広く知れた。
凡百に埋もれる有象無象では、無かった。 - 4125/06/20(金) 15:10:32
だが。
「......ッ」
それを、気に入らない者が居た。
それも、奴は私よりも上に居た。
過重労働。私の下に次々に舞い込む、無意味な業務の数々。ギザギザの歯を剥き出しにして嗤う、学園の頂点から私を見下ろす「議長」の顔。
荒む心。溜まる不満。悲鳴を上げる身体。
ある時、銃を握って、思った。
「───あっ」
──────重圧に堪える必要が、何処に在る?
上に在る物の総てを打ち壊して、首を挿げ替えてしまえば、総ては解決するのではないか?
煌々と紫色の光を放つ銃身を、じっと見下ろす。
その光が、瞼の裏に焼き付いて。 - 5125/06/20(金) 15:12:52
「────」
焼け野原が、広がっている。
学園であった物は僅かな瓦礫を残すのみ。
遠くから、サイレンの音が聞こえる。
銃口から煙を立ち上らせる銃を、がちゃりと"山"から投げ捨てる。二度、三度。嫌な音を立てて転げ落ちる銃をぼうっと見つめながら、私は腰を下ろす。
果てまで続く地平線が、私を取り囲んでいる。
「違う」
言葉が、唇から零れ落ちた。
「こんなの、じゃない」
涙が、山の───今や私の身体を支える、椅子の代わりとなった生徒たちの残骸の上に、ぽたりと滴り落ちる。 - 6125/06/20(金) 15:14:01
身長よりも長く伸びた白髪をぐしゃりと握り締め、私は叫ぶ。掌を角が穿いた痛みごと、口からその感情の総てを吐き出すように、叫び散らす。
「───違う、違う違う違う違う違うちがうちがうッッ!!!」
平凡な生活に、飽き飽きしていた。
平凡な自分に、嫌気がさしていた。
「だからって、こんなの───!!!」
自分の手で招いた破滅。
誰が、そんな事を望んでいた?
「私は、そんなのじゃ───」
───気づけば手の中には、蒼い林檎があった。 - 7125/06/20(金) 15:15:14
「......ぁ」
林檎は、何かを訴えかける様に蒼く輝いている。
赤く燃え盛る夕日すらも吸い上げ、蒼く染めて返す林檎。手を離したとて、そのままの位置で宙に浮き出そうとも違和感のない。それほどまでに神秘的な林檎。
何か言いたげな林檎を、少しだけ強く握り直し、ゆっくりと口へ近づけ────。
「ぁ────あ────、」
じゃくり。
水分を多分に含んだ果肉を噛み千切った。
───味がしたかは、分からなかった。
「門主様」
「.........あ?」
気づけば私は、玉座に腰を据えていた。 - 8125/06/20(金) 15:16:46
- 9二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 15:18:27
なんか転生林檎っぽいなとは思ってた
やはりか - 10二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 15:21:29
興味あるので埋めときますねー
- 11二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 15:35:45
転生林檎、もう3年前ってマ?
- 12二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 17:55:53
つまりヒフミが自分以外の生徒に憑依もとい転生するのを繰り返して最後は自分に戻る?
- 13二次元好きの匿名さん25/06/20(金) 18:02:53
転生独逸のせいでチェリノとドゥーチェが脳内で踊ってる。
- 14125/06/20(金) 22:30:37
とある歴史ある学園の、生徒会長になった。
歴史と伝統とを重んじる校風と、それ故に閉鎖的な文化に留まってしまう勿体無さとの板挟み。
腐らせるには惜しい魅力をキヴォトスに広めようと、制約の多い身体を引き摺って尽力した。
保守派の視線は痛く冷たい。心が折れかけた事も何度もあった。それでも、与えられた立場に報いるために、私なりに芯を通して闘い続けたつもりだった。
成果はあった。多くの生徒には「門主様」と慕われ、或いは此の理念に賛同してくれる者もいれば、私の複雑な立場に一定の理解を示してくれる友も居た。
その事が素直に、嬉しかった。自分の思いが行動となり、その成果が目に見え始める事が。先導者として一歩を踏みしめる事が。 - 15125/06/20(金) 22:36:59
───だが。
「────はぁッ、はぁ゛ッ...!!」
痛い。苦しい。世界が点滅する。苦しみから逃れようとする身体は言う事を聞かず、死を遠ざけようとただ無意味にのたうち回るだけ。
そう。無意味だ。無意味だった。何がって、全部だ。
「う、ぎ......ぐ、ぅ、う、...!!げふッ、ゴホッ、...」
信念は、たったひとりの女の野望の前に崩れ落ちた。
凪いだ水面に零された一雫の水滴。波紋は広がり、奮起が起こり───それを、止めることも叶わぬまま。
最期には摩り替えられた薬の正体にも気付かず、無様に血反吐を吐いて転げ回り、誰の目に留まる事もなく、引き摺り降ろされた玉座に向けて虚空を握るのみ。 - 16125/06/20(金) 22:38:47
足りないのは力だった。強固な威厳で鎧を着飾ろうとも、その実一匹のひ弱な小娘以上の何物でもない。
だが、身に余る力を制し、理想の為に己を殺して其れを振るうだけの人格も無い。
或いは、妾に足りなかったのは、人望だったのやもしれぬ─────私。私、?そう。私だ。私。私には。足りなかった。
...視界が、狭窄してきた。泡が弾けるような音がする。耳なんて、とうの数分前に機能を止めたはずなのに。感覚が抜け落ち、痺れた腕が、地に垂れる。
身体も、もう動かない。虚ろな瞳は呆然と、自分の物ではなくなった細い腕を見つめている。
────気づけば手の中には、蒼い林檎があった。 - 17125/06/20(金) 22:40:24
- 18125/06/20(金) 22:43:02
- 19二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 06:53:34
残念ながらこれが現実!
- 20二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 07:45:07
教職員…、おい待て次先生か?
- 21二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 07:46:15
これまさか次になるのプレ先じゃねぇよな?
- 22125/06/21(土) 10:41:35
端的に言えば、地獄。
これまでの“人生”とは比にならない程の激務すらも可愛く見える程に。「風紀委員長」よりも「門主様」よりも、その重圧は途方も無くて。
両肩に乗った「命」の重み。未成熟な“子ども”を教え導く事の難しさ。正解のない問いに向き合い続ける覚悟。「大人」という物の責任感。信じられていたって無駄だった。期待に応えられないまま、道を違えた生徒に追い縋る事も出来ないまま。
力があっても私には扱い切れない。
力が無ければ一人じゃ何も出来ない。
だから、みんなの力を借りれば。
そんな考えが、如何に浅はかだったのか、痛感させられる。
何も、無い。どれも、足りていない。何処まで行っても、何かに秀でた「彼女達」とは違うから。私自身は、私と言う個人は、“普通”でしかないから。
けれど、弱音を吐く事は許されない。
だって、“私”は、「大人」なのだから。
だから、全てを取り零してようやく、自分の愚かしさを憎む事が出来る。 - 23125/06/21(土) 10:42:47
“────────”
喉がひび割れる様に痛む。最後に水分を摂ったのはいつだっただろうか。片目が砂に潰されて、意識が朦朧とする。だけど、歩みを止める事は許されない。
ヘイローの無い体。たった一発の、コンビニに売られた銃弾ごときで潰える儚く弱い惨めな命。そこに価値を見出してくれた皆すらも裏切って、私は一人砂嵐に揺られる。
呆然と、立ち尽くす以外のことは出来なかった。
砂の中に眠っている、桃髪の少女を前にして────だって、一体、何をするべきだと言うんですか?
“う”
“うぅうぅぅ゛ッ”
“うううぅぅう゛う゛う゛う゛ぅ゛う゛ぁ゛あ゛”
膝が、折れる。もうだめだ。取り返しの付かない所に、辿り着いてしまった。守れなかった。彼女を。一番に支えてやらねばならなかった彼女を。寄り添えてやらねばならなかった彼女を。
小さな体。高校三年生にはまるで見えない。でも、その背中にはあの学校に居た中で誰よりも大きなものを背負っていた。ずっと、独りで。
“あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁああぁああああアァア゛ッッ!!!!!!”
ひび割れた指が、忌々しい砂の地面を握り締める。傷が開いて血を噴き、赤黒く斑点模様に固まった砂の上から、風に乗せられた砂埃が覆いかぶさって瞬く間にその痕跡を隠す。
それはまるで、この広大な砂原に足跡ひとつ残せない自分のちっぽけさを嘲笑っている様だった。
────気づけば手の中には、蒼い林檎があった。 - 24125/06/21(土) 10:44:25
“────────”
渦巻く。
片目の視界を覆い隠す様に吹き荒れる砂嵐のど真ん中でも、その蒼い輝きだけは輪郭までくっきりと、はっきりと見えた。世界という虚像を映し出すスクリーンの前に置かれた、唯一の実存であるかのように。
血の滲んだ掌で握ったそれは、血の色すらも蒼色に反射させて、ただ真っ直ぐに私の眼に光を注ぐ。
渦巻く。胸の、中で。疑問、が。
“一体、私に────何を、させたいんですか”
相も変わらず、状況も顧みず、林檎は何かを言いたげに、煌々と蒼く輝いている。
“────ッッ!!!”
それが、なんだか無性に腹立たしくて。力いっぱい腕を振るって、林檎を遠く放り投げた。
砂嵐の渦中に投げ出された林檎に、四方八方から砂粒が掃射される。蒼い光は砂に被せられ、掠れて滲んで溶ける様に消えてゆき、
気づけば手の中には、蒼い林檎があった。 - 25125/06/21(土) 10:47:46
”あぁ”
分かったような声が、私の口から漏れた。
望め、と。そう言いたいのだ。
平凡で退屈で、無数の一般生徒に埋もれていた事へ、やり場のない不満。「普通ではない存在になりたい」という誰しもが一度は抱く無責任な望み。────叶った。
力を持っても、正しく扱う事の出来ない自分への後悔。「身の丈に合わない力なんて要らない。力無くとも人々を率いる、そんな存在になりたい」という傲慢な望み。────叶った。
力が無くとも、信頼を勝ち取れる人間性が無くとも。ただ、その立場に立ってするべき事さえこなせば、皆から助けてもらえる。そんな、無知な私の愚かな望み。────叶った。
どれも、私ではだめだった。私ではない誰かでないと、その役割は成す事が出来ないんだと。
だから、林檎は謂うのだ。“普通”を望め、と。
“────ん────あ、ぁ゛”
じゃ、り。
噛み締めた林檎は、口の中で砂の様に崩れ、不快な音を立てた。
それが、傲慢な私への最後の罰であるかの様に──────── - 26125/06/21(土) 10:48:54
.........
雪が、降っている。
体中が痛くて、寒い。
目の前に人影が、二つ。
『でも、おかしいなぁ......。こんな子が居たなんて、おじさん全然知らなかったよ。────お名前は?』
「............は、」
────”私”が救えなかった生徒の、「後輩」になった。 - 27125/06/21(土) 10:51:36
※
一旦ここまでです。書けたら夜に更新しに来ます。うふふ。 - 28二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 11:00:22
「あー、またダメでした 転生しよ」と比べると段違いに悲壮感があるわね
そうするしかない感じ - 29二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 11:35:43
- 30二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 11:41:13
転生林檎好きだから期待してます
- 31二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 14:22:37
- 32二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 19:03:21
ヒフミ(ヒフミ)とハナコ(ヒフミ)とアズサ(ヒフミ)とコハル(ヒフミ)みたいなことになったかもしれないのか
- 33二次元好きの匿名さん25/06/21(土) 19:15:44
Andy WeirのThe Eggって短編小説がそんな感じやね。全ての人が自分であり全ての一生を経験するって話
- 34125/06/22(日) 00:18:52
※
ほんまごめん、保守。
色々あって気分が悪いので...。 - 35二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 01:53:30
お大事に
- 36二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 02:01:44
久しぶりにSSで感動の涙を流した気がする。他のSSでは感動はするけど涙は流してなかったからびっくり
- 37二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 08:27:25
乗り移った先の生徒は全員ネームドっぽいな
- 38125/06/22(日) 13:40:25
───もしかすると私は、何者にもなれないのだろうか。
夜の砂漠は寒い。凍えるように寒い。
吐息が白く色付いて、凍りついた満天の星空に溶けて消える。
手に握った四枚のタグを握り直す。よかった、まだそこにあった。持っている手の側の目が見えないから、その手の感触だけが唯一の頼りだ。
顔を下に向けちゃ、だめ。
涙がこぼれ落ちて、足が崩れ落ちて、砂の山に埋もれて、息絶える。───前の、■■■先輩のように。
今も尚、遠く砂漠の向こうの空に、極彩色の桃色を轟かせて───彼女は、キヴォトスに終焉をもたらそうとしている。
相対する紫の翼は、空を割るように光を放った。風が吹いて、身体がよろけ、倒れる。
「あ、ぅう」
この人生は、「普通」だった。
廃校に瀕した小さな高校を、存続させる為。一端の女子高生として仲間と協働し、状況は少しずつ好転しつつあった。
少しやんちゃもした。先走ったこともあった。でも、築いた絆は確かにそこにあった。
普通。普通すら、全うできない、自分。
あぁ。私。私って────
手の中では、蒼い林檎が煌々と輝いていた。 - 39125/06/22(日) 13:41:48
「────」
迷うことはない。
"また"ダメだったんだ。
これを齧れば、また新しい"人生"に立てる。
総てを無かったことにして、もう一度一から新しい「私」を歩める。
"普通"すら全うできない私が、居てもいい場所が────どこかに、あるはずだから。
じゃくり。
この食感も、もう何度目か。
────意識が切り替わる直前、視界の端に
どうにも形容できない"色"が見えた気がした。 - 40125/06/22(日) 13:43:26
「災厄」の名を冠する世紀の大犯罪者になった。
とある学園の「ビッグシスター」になった。
雪山に住むお酒好きの停学生になった。
誰からも愛される、品行方正な女の子になった。
黒装束に身を包んだ大人の研究者になった。
■■■■■■■の■番目の預■者にな■た。
ぜんぶ、ダメだった。 - 41125/06/22(日) 13:44:49
何度林檎を齧ったか分からない。毎回毎回、握らされる林檎は木から転げ落ちたそのままの形である様に、綺麗だったから。
力があっても人格が伴わず、信頼を得ても能力が伴わず、大人になっても浅慮を悔いるのみ。"普通"すらも全う出来ず、悪を貫く度胸も無ければ、正義を見失うそれ以前の段階で立ち止まり、関わりから離れても生き残れず、雪に埋もれて死んで行った。幼さに逃げても私は私で、身勝手な大人にもなりきれないまま、■■■が■■て■■■■■■■────。
その道程を辿った証は無い。林檎に歯型が残らないから。
「─────」
何度目か、"生まれ変わった世界"の床を呆然と見つめて、呟く。
幾度となく叩き込まれた「教育」。「信念」。
「────Vanitas vanitatum, et omnia Vanitas」
────全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。
────とある部活で出会った、一人の女の子に、なった。 - 42125/06/22(日) 13:46:12
※
夏バテかも。みんなも気をつけようね。 - 43二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 17:56:02
ヒフミもどこかで「平凡な自分が嫌」って思ってるのかな
何にしろこれはヒフミによく合ってる曲だわ - 44二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 19:24:37
途中男にも転生してるし自分の中の性同一性ぐちゃぐちゃになってそうで怖いな
- 45二次元好きの匿名さん25/06/22(日) 22:43:15
もう自分の性別とか分からなくなってそう
- 46二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 07:06:20
ほしゅ
- 47二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 08:20:30
もしかしてこれまで生きてきた人生も……ってなりそう
- 48二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 14:56:47
頑張ってください!
- 49二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 16:09:53
先生にはもうなったし最後は連邦生徒会長とかになるのか?
- 50二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:17:39
保守らねば
- 51125/06/23(月) 22:24:00
- 52二次元好きの匿名さん25/06/23(月) 22:41:25
まあ最悪落ちても笛吹きとかpixivで投下されたらマニアが読んでくれるさきっと
俺はここで読みたいから保守するが - 53二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 06:09:50
いいやッ限界だ
保守ね今だ - 54二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 12:05:19
- 55二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 18:08:07
待機中
- 56二次元好きの匿名さん25/06/24(火) 22:35:55
この概念見てたら書きたい欲湧いてきたんだけど勝手にSS書いていいかな
- 57125/06/24(火) 22:54:42
空虚。虚脱。虚無。無駄。空疎。無益。徒労。欠乏。飢餓。
思想の根底に刻み込まれたたったひとつの文章。三十そこらの記号の羅列が、見える世界の全てを色褪せさせる。
無為。不満。夢幻。寂寥。空漠。泡沫。空白。不毛。無足。
其の存在は、人を殺す為の道具。ナイフを研ぐ様に不要な感情を削ぎ落とし、散った火花の数だけ人間性を捨て去って。
「─────」
ある言葉を思い出した。
いつ聞いたものかは、覚えていない。
ただ、脳内を跳ね回るその声は、喉を震わせばいつだって聞ける物と一緒だった。
『────だからってそれは、全てを諦める理由にはならない』
────?
どうして?
どうしてですか?
だって、総ては無駄なのに────?
「......随分と、不思議な眼をしているね」 - 58125/06/24(火) 22:55:50
- 59二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 02:40:48
これ要はヒフミが色んな生徒や大人に憑依転生しながら何度も挫けていくやつでいいのかな
- 60二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 09:53:52
その認識でいいと思う
- 61二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 10:18:40
イッチがコユキになっちゃった。
- 62二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 16:59:45
乗り移った身体で自暴自棄になって快楽を求めて自慰に耽ったりヤケ食いしたりする世界線もあったりしそう
- 63二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 17:37:11
そういえば原曲の「あーまた駄目でした転生しよう」
の境地に至ってるんだよねここのヒフミ - 64二次元好きの匿名さん25/06/25(水) 22:41:45
原曲の転生してる子も頑張ってもどうしようもないこといっぱいあったせいで擦り切れてる感じが見ていて居たたまれない
- 65125/06/26(木) 00:09:10
視界の端で、白いレースのカーテンが嫋やかに揺れる。背後からさす月光に照らされた金色の毛髪が、空中に煌めきを灯す。
壁一面を埋め尽くす様な本棚に多様なジャンルの冊子が、天井近くまで所狭しと詰め込まれている様はまるで、図書館の一角のよう。
惜しむべきだろうか。全ての本の縁、高い位置の本に対応する為の踏み台。果ては、読書用にと誂えられたであろう小机。その総てに等しく被せられた埃が、久しく部屋の主が其処へ手を掛けていない事実を物語る。
「薄暗く濁っていながら、爛々と輝く何かを見つめているような。"諦め"と括るには、君のそれは希望を棄てていないように見える」
病人とは思えないほど饒舌に言葉を紡ぐ狐耳。埃の膜を防ぐ天蓋のついたベッドの中から、細く薄く小柄な姿をゆっくりと起こす。
「遠く遠く、交わることの無い蒼い未来から────それほどまでに荒んでいながら、どうして君は目を離そうとしないのかね」
「......知らない」
無駄だ。言葉なんて交わしたところで、此の夜に此の部屋で起きる事件には何も関わらない。
右手に銃。左手には爆弾。その実存を確かめるように双方を深く握り直しながら、私は窓枠から足を降ろす。
どうせ、死ぬんだ。不可解な問いで誤魔化そうが、泣いて喚いて命乞いしようが───お前の"結末"は、変わらない。唯々、虚しいだけだ。
私が殺す。"人殺し"になる。それが私のあるべき姿なら。
だって、ダメだったならまた、林檎を齧ればいいのだから。 - 66125/06/26(木) 00:13:24
「......観たくもない破滅は視せてくれるのに、見たくて仕方の無い人心には手が届かない。何もかも、ままならないものだね」
......文句だ。自分の力の及ばない何かへの───"世界"への、文句。矛先は違えど、その言い分には共感できる部分がある。
共感なんて、虚しいだけだというのに。
「...ならば、より明瞭に問うとしよう、"白洲アズサ"。」
ふぅ、と。一息、細い吐息。のち、言葉は続く。
「────君は、"誰"だい?」
どくりと、心臓が重く脈を打った。押し出された赤黒い血液に血管が軋み、胸が痛みを訴える。
それは、これまで露見していなかっただけの恐怖。
意識して隠していた事では無いが、それでも、何故か"悟られてはいけない"という意識があった。自身のものでは無い立場を担う事に、責任感が、あった。
それを。つい先程人心を見通せぬもどかしさを嘆いたばかりの女に、暗黙の秘密を言い当てられた、言い表しようの無い平静の瓦解。
「私が識り、視た君は、少なくともそんな眼をしている少女では無かった。────知り得ぬ物を識る者の、諦観の眼差し」
たじろぐ。一歩も動けない。手が自分のものではないみたい。
ただ、爆弾を放れば其れだけで解決する事だというのに。銃を向けて引き金を引けば、それでこの無意味な会話は終わるはずなのに。
「......何故も何もないさ。毎日、鏡越しに同じ物を見ているのだから」
そう言って、百合園セイアは自嘲的に嗤う。吐き捨てるように鼻を鳴らし、乾いた息が湿った空気に溶けていく。 - 67125/06/26(木) 00:16:50
※
なんか知らんけどブルアカのストーリー読むと創作意欲が爆上がりします。するんですが眠たいので今日はここまで。明日の自分に今思い浮かんだ描写の断片を全部丸投げ。
結局セイアちゃん出して小難しい事言わせれば物語が進んじゃうんですね。次があればそこから禁止カードにします。無理です。 - 68二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 08:11:51
いやあ良いものを読ませてもらった
スレ主のモチベが続くまで思うように書いてくれ - 69二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 15:04:36
待ってる
- 70二次元好きの匿名さん25/06/26(木) 18:05:15
神SSですね
待機 - 71125/06/26(木) 23:55:05
「............私は」
誰なのだろう。
「......ッッ、!!」
そう、脳内で自身に問い直してすぐに、道を踏み外した音が耳元で弾ける。
駄目だ。耳を貸すな。
「...知らない、知らない知らない...ッ!!」
怒りの矛先は、わからない。一足先に全てを悟って達観したかのような、諦めを浮かべながら此方を突き刺してくる目の前の少女か。
はたまた、道具としての人生すらも全う出来ない自分自身か────、
「......!?」
反射的に突き出した銃口。其の銃身を、細い指が掴む。
「......そうか」
銃を奪う意図を警戒した。しかし、予言の大天使は私の想定と違う行動をなぞる。
握った銃口を、静かに。彼女自身の、晒された白い額に、ぴとりと自ら押し当てて。
「ならば、撃ちたまえよ」
目を閉じた彼女は、変わらない調子でそう言った。 - 72125/06/26(木) 23:57:13
※
1レスずつでも更新するのと、ある程度書けてから一気に放出するのだとどっちが良いんですかね...