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六ヶ所再処理工場の事業指定処分取り消し訴訟  大陸棚外縁断層と六ヶ所断層の活動性について(1) | 原子力資料情報室(CNIC)   
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六ヶ所再処理工場の事業指定処分取り消し訴訟  大陸棚外縁断層と六ヶ所断層の活動性について(1)

『原子力資料情報室通信』第620号(2026/2/1)より

青森県東方沖の地震(2025年12月8日)

 昨(2025)年12月8日23時15分のマグニチュード7.5(震源の深さ54km)の青森県東方沖地震では、八戸市で震度6強(最大加速度は517Gal)の揺れを観測したのをはじめ、青森県と岩手県の太平洋沿岸部を中心に広い範囲で大きな揺れが観測された。岩手県久慈港で64cm、北海道浦河で50cmの津波が観測された。
 六ヶ所村では、村役場近くに設置された地震計により地表付近の値として、震度5弱、最大加速度196Galを観測した。また、六ヶ所村では長周期地震動階級3を観測し、「間仕切り壁などにひび割れ・亀裂が入ることがある」ほどの揺れがあったことを示している。六ヶ所再処理工場での揺れの大きさは公開されておらず、使用済み燃料プールから1メートルの止水板を超えて650リットルの水が揺動(スロッシング)によってあふれたことだけがわかっている。
 12月9日2時に、内閣府と気象庁が「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表し、日本海溝・千島海溝沿いの想定震源域で巨大地震が発生する可能性が高まったとして、注意を呼びかけた(12月16日に呼びかけ期間終了)。想定震源域の範囲の中には、六ヶ所再処理工場の耐震性をチェックするにあたってきわめて重要な大陸棚外縁断層がふくまれている。

下北半島と大陸棚外縁断層・六ヶ所断層

 図1で下北半島の東側に沿って海底に南北に描かれているのが大陸棚外縁断層であり、総延長は150kmにもおよぶ。大陸棚外縁断層の南端付近では、活断層は2つに分かれていて、一方はそのまま海底下を南方に延長している。もう一方は陸側に潜り込んでいき、日本原燃の核燃料サイクル施設の敷地内をとおって、鷹たか架ほこ沼南岸まで達しているとみられる。陸側部分は渡辺満久・東洋大教授によって六ヶ所断層(六ヶ所撓曲(とうきょく))と名付けられている。
 大陸棚外縁断層の活動性については、本誌の第545号(2019年11月1日)や第592号(2023年10月1日)などで簡単にとりあげてきた。大陸棚外縁断層が活断層である根拠は、下北半島の太平洋側に海成段丘が連続的に分布し、それに対応して海底に高さ200mほどの崖が連続してできていることである。

図1 下北半島周辺の活断層と六ヶ所再処理工場(渡辺2016の図1をもとに筆者改変)

海上音波探査

 日本原燃・東北電力・東京電力・リサイクル燃料貯蔵の下北半島の4つの原子力事業者は、大陸棚外縁断層の活動を否定するためにさまざまな調査をおこない、データを取得して否定するための解釈をつくりだしている。海上音波探査の解釈もそのひとつである。海上音波探査は、海上の船から音波を発信し、はねかえってくる音波の強弱から海底下の地層の様子を読みとる調査である。図2に示したのは、図1のNo.3測線の位置で東北電力と東京電力によっておこなわれた調査の記録(反射断面図)を地質学的に解釈したものである。上の図が池田安隆・元奈良大教授(変動地形学)のもので、下の図が日本原燃らによるものである。
 2025年12月19日に青森地裁で開かれた六ヶ所再処理工場の事業指定処分取り消し訴訟の口頭弁論では、池田・元教授に以前に解説していただいた内容(2016年4月6日の内部学習会)をもとに、あらためて日本原燃のデータの捏造ともいえる解釈の間違いについて上澤がくわしく説明をおこなった。

No.3測線での地質学解釈の違い

 まず、池田・元教授の解釈は次のようなものである(図2の上の図):反射断面図から図2の上の図の位置に大陸棚外縁断層を読みとった。日本海が広がって形成された時期に、大陸棚外縁断層は東西方向に引っ張られる力によって正断層として活動した(1400万年前頃まで)。その後、大陸棚外縁断層は断層活動の休止期をへて、東西方向に圧縮する方向に力が加わるように変化したため(応力場の逆転)、かつての正断層の跡をなぞるように、350万~500万年前以降には逆断層として活動するようになった。その際、大陸棚外縁断層の上に堆積していた地層が押し曲げられ大陸棚斜面ができたり、地層と地層の間の弱い部分がずれ動いて断層(層面すべり断層)が多数生じた。その後は、力の加わる方向が変化していないため、大陸棚外縁断層は現在も逆断層として活動を続けている。
 日本原燃は大陸棚外縁断層の存在自体は認めている。しかし、25万年前には活動は停止しており現在は活断層ではない、としている。日本原燃は図2の下の図で示した右側の破線の位置に大陸棚外縁断層を想定している。この断層の位置の上の方の延長線上にある25万年前の地層(Bp層)の底面に変位や変形がみられないことを根拠に、(日本原燃が想定する)大陸棚外縁断層は活断層ではない(12万~13万年前以降の活動がみとめられないから、将来活動する可能性のある断層等には該当しない)、と結論している。

図2 No.3測線上の海上音波探査反射断面図に基づく地質学的解釈
上:池田安隆,『科学』,2012年6月号(白抜き文字など筆者加筆)
下:日本原燃,第85回審査資料,2015年11月27日(白抜き文字など筆者加筆)

大陸棚外縁断層はどこにあるのか

 図2の上の図と下の図とのもっとも重大な違いは、大陸棚外縁断層の位置と形状である。池田・元教授は反射断面図を読みとって描いている。日本原燃がこの位置に大陸棚外縁断層を想定したのは、活断層研究会編の『新編 日本の活断層』の平面図に記載された位置を単純になぞっている。音波探査の結果からは、はっきりとした地層のくい違いがみえないので、大陸棚外縁断層が実線ではなく不確かであることを示唆して破線で示されている。日本原燃が想定している大陸棚外縁断層は、本来想定すべきものではないという疑いが強くなった。

異常な海上ボーリングデータ

 日本原燃・東北電力・東京電力・リサイクル燃料貯蔵は共同で2014年に「No.3測線」およびその延長部(No.3_2014測線)とその南約25kmの地点(12ML-01_2014測線)で、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」をつかって、海上ボーリング調査などをおこなっている。図2の下の図中に海上ボーリングの位置が記載されている。No.3測線では、CH-1、CH-2、CH-3、CH-6の4本の穴が掘られ、ボーリングコア(地層のサンプル試料)が採取された。
 No.3測線では、日本原燃が想定している大陸棚外縁断層をはさむ形でCH-2とCH-6が採取された。その部分を拡大したものが図3である。それぞれのコアの柱状図が反射断面にはりつけられている。この図と次の図4は、前述の内部勉強会の際に池田・元教授が作成したもので、日本原燃の審査資料(第85回)をもと図にコメントメモ(大きめのゴチック体と矢印)がつけられている。
 図3のCH-6の柱状図を見ると、「ノンコア掘削区間」を示す灰色に大きな×印が描かれた部分がかなり大きな範囲を占めている。この区間の位置は、E層の上端の延長部にあたるので、E層のあるなしを含め地層の様子を詳細に確かめる必要があるにもかかわらず、最初からコアを採取するつもりがなく掘削をおこなったことを意味する。池田・元教授は「この間230m分のコアを採っていない」とメモしている。さらに図4には「コアを採らずに掘った区間(深度120~350m)で何故か年代が変わらない→異常に早い堆積速度 ??????」と、コア未回収区間の上端の年代が「1.0Ma」(100万年前)で、下端の年代が「1.03Ma」(103万年前)とほとんど差がないデータが得られていることに大きな疑問を呈している。これらの海上ボーリングデータは科学的にまったく信頼できるものではない。

図3 CH-6の海上ボーリング調査結果(1)日本原燃,第85回審査資料,2015年11月27日(池田・元教授のコメント付)

図4 CH-6の海上ボーリング調査結果(2)日本原燃,第85回審査資料,2015年11月27日(池田・元教授のコメント付)

大陸棚外縁断層の活動性は否定されていない

 日本原燃は、このように得られた海上ボーリングのデータから、CH-2でのE層上端とCH-6でのE層上端では、深さの差が約200mあるので、この位置に断層があり、それが大陸棚外縁断層であるとしている(図2)。そして、前述のように、大陸棚外縁断層の上の地層(Bp)に変位・変形がないことが、活断層ではないことの根拠であるとしている。
 しかし、これまでみてきたように、捏造されたともいうべき海上ボーリングデータを根拠にしており、日本原燃が想定している大陸棚外縁断層は、存在すら怪しい。池田・元教授の解釈に示された大陸棚の急斜面や海成段丘を発達させる真の大陸棚外縁断層の活動は否定されていない。大陸棚外縁断層が一気に動けばマグニチュード8.5の地震を起こしうる。こんな巨大な地震が六ヶ所再処理工場(東通原発なども)を襲えば、施設はひとたまりもない。
 次回の通信掲載では、六ヶ所断層の活動性の根拠となる層面すべり断層について説明する予定。

(上澤 千尋)

■参考資料
渡辺 満久 「六ヶ所断層周辺における海成段丘面の変形と地形発達」,『活断層研究』,2016 www.jstage.jst.go.jp/article/afr/2016/44/2016_1/_article/-char/ja/
池田 安隆 「下北半島沖の大陸棚外縁断層:地下に横たわる巨大な断層を原発安全審査はどうあつかったのか」,『科学』,岩波書店,2012年6月号
池田 安隆 「日本原燃による海域活断層調査資料(2015/11/27)の検討」,2016年4月16日
日本原燃 第85回 核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合 資料1-1,2015年11月27日www.da.nra.go.jp/detail/NRA022002548

 

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