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リアルか? バーチャルか? それとも……音楽イベント『VEE Presents “Seek the Brilliance”』で探る音楽ライブの可能性① | Cocotame(ココタメ) – ソニーミュージックグループ
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連載Cocotame Series
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エンタメビジネスのタネ

リアルか? バーチャルか? それとも……音楽イベント『VEE Presents “Seek the Brilliance”』で探る音楽ライブの可能性①

2024.12.26

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2024年10月、バーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト「VEE」が、東京都足立区の「ギャラクシティ まるちたいけんドーム」と宮城県仙台市の「仙台市天文台」のふたつのプラネタリウムを舞台に、VTuber音楽イベント『VEE Presents “Seek the Brilliance”』(以下、“Seek the Brilliance”)を開催した。

プラネタリウムのスクリーンに映し出された3D VR映像と会場にあふれる立体音響、そして、VTuberたちが織り成すパフォーマンスが生み出したイマーシブ体験は、どのように制作されたのか。その舞台裏に迫る。

  • タカオミ氏プロフィール画像

    タカオミ氏

    Takaomi

    VR Creative Team“MIGIRI”Director

  • 畠中光行プロフィール画像

    畠中光行

    Hatanaka Mitsuyuki

    ソニー株式会社 技術開発研究所

  • 三浦 紹プロフィール画像

    三浦 紹

    Miura Sho

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 中居佑輝プロフィール画像

    中居佑輝

    Nakai Yuki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

記事の後編はこちら:リアルか? バーチャルか? それとも……音楽イベント『VEE Presents “Seek the Brilliance”』で探る音楽ライブの可能性②

メタバースライブにはどんな可能性があるのか?

――「VEE」所属のVTuberによる音楽イベント『VEE Presents “Seek the Brilliance”』は、どういった経緯でスタートしたプロジェクトだったのでしょうか。

中居:そもそもは、私がキヌ(kinu)さんがやられていたメタバース(インターネット上の仮想空間)ライブを拝見して、感動体験を得たことが出発点でした。メタバースについては、当時から多くの企業がさまざまな分野で研究を進めており、現在も稼働、運営されているコンテンツが複数あります。

音楽ライブについても、いくつか見てはいたのですが、キヌさんのメタバースライブを見たときに、こんなに感動的なライブが仮想空間でも実現できるようになっていることに驚きました。

ただ、現状を調べていくと、メタバースライブの感動を得るには、VRゴーグルやハイスペックなゲーミングPCなどの高価な機材が必要で、導入ハードルが高いんです。でも、これだけの感動体験が世間に普及していないことが、非常にもったいないと思いまして。

自分は、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)で、エンタテインメントビジネスにまつわる、さまざまな新規事業のインキュベーションを行なうEdgeTechプロジェクト本部という部門に所属していることもあり、この感動体験をオンライン上だけでなく、現実世界にまで拡張させて、メタバースアーティストの活動の幅を広げる新しい取り組みができないかと考えたのがきっかけでした。

笑顔で話す中居佑輝

『VEE Presents “Seek the Brilliance”』実現までの道のり

――メタバースライブの魅力を、リアルでもっと手軽な体験に落とし込もうということですね。

中居:はい。なので、最初はメタバースで活躍するクリエイターやアーティストをもっと知ってもらうことを狙って、フェス形式のリアルイベントを考えていました。

ですが、いきなり大規模なフェスをやろうとしても、技術的なハードルが高いですし、我々、技術畑の人間だけではクリエイターやアーティストをアサインしながら、イベントをプロデュースするのも難しい。そこでSMEが運営するVTuberプロジェクト「VEE」を手がけている三浦さんに、声がけをさせてもらいました。

三浦:プロジェクト初期は、メタバースライブの未来像や、VR上でどういうイベントやライブをやったらその価値を高められるか、面白いものになるのか、というブレストから始まり、いろいろアイデアを出し合いました。

出演者も、本当にVTuberがいいのかというゼロベースからのスタートで。『“Seek the Brilliance”』のクリエイティブとしての世界観や総合演出を担当していただいたタカオミさんのチームにも、その段階からご相談をしていましたね。

顎に手を当てながら話す三浦紹

――タカオミさんは、ソーシャルVRプラットフォーム(アプリ)である「VRChat」のワールドやイベント制作などを手がけるクリエイティブチーム「MIGIRI」に所属し、VRコンテンツのトップクリエイターのおひとりとして知られています。本プロジェクトの話を聞いたときの、率直な感想から教えてください。

タカオミ:中居さんも言っていた通り、VRで最新の視聴環境を整えるのはハードルが高いので、いいコンテンツを作っても見てもらえる数に限りがあることは、私も実感していました。特に音楽好きの若い世代にとっては、VRゴーグルもかなり高価なので手が出しづらい。

その意味でも、リアル会場で開催するVRを活用したイマーシブなイベントには可能性を感じていたので、とても面白そうだと思いました。また、私自身、リアル会場での本格的な演出はやったことがなかったので、ぜひチャレンジしてみたいと思って参加させてもらいました。

やわらかい表情のタカオミ氏

――そして立体音響システムのエンジニアとして参加されたのが、ソニー株式会社(以下、ソニー)の畠中さんです。

畠中:私はソニーで、空間音響技術開発部という部署に所属し、立体音響の研究開発を担当しています。イマーシブなVRライブ環境を作るために、立体音響をいかせる会場探しや我々の立体音響技術の実用度を計る段階から、合流させてもらいました。

――メタバースライブを起点に、それぞれのスペシャリストが揃ったわけですね。それにしても、プラネタリウムでVRイベントをやろうというのは、斬新な試みだと感じました。

中居:メタバースをリアルに持ってくる方法について試行錯誤していたころ、周囲をLEDで囲ったZepp Shinjukuのような場所を会場にするのはどうかという案が出て、メタバースのクリエイターの方々と実験してみたんです。ところが、LEDが設置されていない部分があることで、想定よりも没入感が感じられなくて。

そのあと、何か良い方法はないかとプロジェクトメンバーと議論していたときに、昨年、アメリカにオープンしたドーム型のコンサートホール「MSG Sphere(スフィア)」はゴーグルなしでVR体験できるのが評判だという話が上がって。それなら、それに近い形としてプラネタリウムを会場にするのはどうかという意見が出たんです。

日本には施設もたくさんあるし、実際にレーベル関係者やメタバースクリエイターの方々を呼んで体験会のようなことやってみたら可能性を感じて……「これならいけるかもしれない!」と、プラネタリウムを会場にすることになりました。

プラネタリウムで立体音響を再現するための課題とは?

――技術的な面で『“Seek the Brilliance”』を紐解いていきたいのですが、まず立体音響の導入には、どんな課題がありましたか?

畠中:大変だったことは、大きくふたつありました。ひとつは、プラネタリウム2拠点の同時開催だったことです。今回のイベントは、東京都足立区の「ギャラクシティ まるちたいけんドーム」と宮城県仙台市の「仙台市天文台」のふたつのプラネタリウムで開催しましたが、当然ながらプラネタリウムごとに広さ、形状をはじめ、席数も違えばスピーカーの数も違いますし、客席の傾斜も異なります。

東京会場は傾斜が大きいのですが、仙台は割とフラットなので、それだけでも音の響き方が変わってきます。その2会場の差異を鑑みながら、最適な立体音響環境を構築する必要がありました。

そのために、それぞれの会場で音響の測定をして、キャリブレーション(調整)を行なったのですが、これが1日では終わらず……中居さんに、会場のスケジュール調整をしてもらって、なんとか本番にこぎつけました。

――もうひとつの難しさは何でしょうか?

畠中:プラネタリウムのスピーカーの配置ですね。我々の立体音響向けリファレンス再生システムは上層、中層、下層の3層でスピーカーを構成します。ここで中層は耳と同じ高さ、上層は仰角30度、下層は仰角-20度を前提としています。サウンドエンジニアは、こうしたスピーカー構成を踏まえて楽器を空間に配置しますが、主にベースやキックドラムなどの低域楽器を下層に置くことが多いです。

ところが、一般的なプラネタリウムでは下層スピーカーがありません。こうした場合に、これまでの個人向けの聴取環境では、中層の複数のスピーカーを鳴らすことで対応してきましたが、プラネタリウムのような大きな会場ですと、このやり方では音の定位がぼやける問題が起きてしまうことがわかりました。

そこで下層に置かれた楽器の定位をクリアにするために、我々は新たなレンダリング手法を検討し解決することができました。

手を使い話す畠中光行

なぜ、東京と宮城の2拠点で開催したのか?

――ちなみに、今回の東京と宮城という2拠点同時開催は必須条件だったのでしょうか。

中居:当初から多拠点開催は目指していました。理由は単純で、ビジネスとしてどうやって収益を確保するかという課題ですね。プラネタリウムの座席数は200程度なので、やはりビジネスとして成り立たせるためには、複数会場開催や、全国同時、世界同時での開催を視野に入れなければいけないので、今回も複数拠点から始めることにしました。

イベントの根本のシステムとしては、都内の某スタジオからVTuberの皆さんが動きや声、音などを、各会場に伝送しているので、畠中さんのチームに加えて、伝送系に詳しいエンジニアも含めて、複数のソニーのエンジニアに協力してもらって、他拠点接続を実現しました。

ギャラクシティ まるちたいけんドームの外観

ギャラクシティ まるちたいけんドーム

仙台市天文台外観

仙台市天文台
提供:仙台市天文台

後編では、『“Seek the Brilliance”』制作の舞台裏と今後のメタバースやVRライブの展望を語る。

後編につづく

文・取材:阿部美香
撮影:冨田 望

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