イノベンティア・リーガル・アップデート アーカイブ
発明承継後に導入された職務発明規程の適用及び再審査期間中の独占の利益に関する日本新薬職務発明譲渡対価請求事件大阪地裁判決について
2025年9月3日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (135)
大阪地方裁判所第21民事部(武宮英子裁判長)は、令和7年(2025年)3月28日、職務発明の対価請求訴訟において、発明者の同意がないことを理由に発明完成後に導入された職務発明規程の適用を否定し、平成16年改正前特許法に基づいて算出した相当の対価の額の支払いを命じる判決をしました。
存続期間の延長登録がされた医薬用途発明に係る特許権侵害訴訟(「止痒剤」事件)の知財高裁判決について
2025年9月2日 裁判例情報(特許・意匠) 竹下 慎吾 (1)
知的財産高等裁判所第2部(清水響裁判長)は、本年(令和7年・2025年)5月27日、存続期間の延長登録がされた医薬用途発明に係る特許権に基づく損害賠償請求を一部認容する判決を下しました。本判決は、特許発明の技術的範囲における有効成分の意義、延長登録された医薬用途発明に係る特許権の効力範囲、及び延長登録の延長期間等について判示するものです。なお、本判決に対しては、被告両名から上告および上告受理の申立てがなされています。
過去の特許無効審判・侵害訴訟で排斥されたサポート要件違反にかかる無効主張の許否に関するプラルエント損害賠償請求事件知財高裁判決について
2025年8月27日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (135)
知的財産高等裁判所第3部(中平健裁判長)は、令和7年(2025年)4月16日、過去の特許無効審判や特許権侵害訴訟(差止請求訴訟)で排斥された無効理由(サポート要件違反)を後の特許権侵害訴訟(損害賠償請求訴訟)で主張することについて、具体的な事案のもとでは訴訟上の信義則に反しないとし、当該無効理由の審理をしたうえで、特許無効の抗弁を認める判決をしました。
GX推進法及び資源法の改正について(2)―資源法の改正内容
2025年8月21日 立法・政策動向(環境・コンプライアンス) 町野 静 (40)
令和7年5月、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)及び資源の有効な利用の促進に関する法律(資源法)の一部を改正する法律が成立しました。施行日は、一部を除き、2026年4月1日です。
GX推進法及び資源法の改正について(1)―GX推進法の改正内容
2025年8月19日 立法・政策動向(環境・コンプライアンス) 町野 静 (40)
令和7年5月28日、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)及び資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)の一部を改正する法律が成立しました。一部の規定を除き、2026年4月1日から施行されます。本稿では、GX推進法の改正のポイントを解説します。
知的財産訴訟の国際裁判管轄に関する「LegalForce」事件東京地裁判決について
2025年6月25日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (135)
東京地方裁判所民事第46部(高橋彩裁判長)は、令和7年(2025年)1月14日、日本の登録商標や日本でサービスを提供する会社の商品等表示の外国企業による使用の差止請求や損害賠償請求について、日本の裁判所に国際裁判管轄がないとして請求を却下する判決をしました。なお、判決は、ドメイン名の不正取得行為については国際裁判管轄を認めましたが、本案で図利加害目的を否定し、請求を棄却しています。
営業秘密管理指針の改訂について
2025年6月4日 立法・政策動向(知財・IT) 町野 静 (40)
2025年3月、経済産業省が公表している営業秘密管理指針が改訂されました。今回の改訂では、営業秘密を取り巻く環境の変化や、不正競争防止法の見直し、裁判例の動向等を踏まえた加筆や修正が行われており、実務上も把握をしておく必要があると思われるため紹介いたします。
部品の製造販売事業者である原告が完成品の製造販売事業者である被告に対して部品の発明に係る特許権を行使した事案において、特許法102条2項による損害額の算定を認めた知財高裁判決について
2025年5月12日 裁判例情報(特許・意匠) 町野 静 (40)
知的財産高等裁判所(宮坂昌利裁判長)は、令和6年(2024年)4月24日、「レーザー加工装置」「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」との名称の特許に係る特許権侵害を理由とする事案の損害賠償の算定につき、原告が特許発明の完成品ではなく部品を製造販売していた場合において、102条2項を適用し、被告製品中の特許発明の実施品の価格に相当する割合に基づき損害額を認定しました。
ネットワーク関連発明の構成要素となるサーバの一部が海外にあっても国内での実施行為の存在を肯定したドワンゴ事件最高裁判決について
2025年4月9日 裁判例情報(特許・意匠) 飯島 歩 (135)
最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は、令和7年(2025年)3月3日、ネットワーク関連発明を構成するサーバが海外にあるために、我が国における実施行為といえるかが争われた事案において、日本国内の端末で効果を生じ、サーバが日本国外にあることに特段の意味がないこと、及び、特許権者に経済的な影響を及ぼさないというべき事情がないことを根拠に、実質的に我が国の領域内で実施行為が行われていると評価するのが相当であるとの判断を示しました。
AIの利用・開発に関する契約チェックリストの公表について
2025年4月7日 立法・政策動向(知財・IT) 神田 雄 (35)
経済産業省は、令和7年(2025年)2月、「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」を公表しました。本チェックリストは、AI利活用に関するユーザ・ベンダ間の契約における条項のチェックリストを提示し、留意点の説明を付しています。
新聞に掲載された写真を撮影した画像をツイッターに投稿した行為につき引用の成立を認め著作権侵害を否定した東京地裁判決について
2025年2月17日 裁判例情報(著作権) 神田 雄 (35)
東京地方裁判所は、令和6年9月26日、新聞紙面に掲載された写真をスマートフォンで撮影し、その画像を被告が自らの投稿文章と併せてツイッターに投稿した行為につき、原告が保有する新聞掲載写真の著作権の侵害が争点となった訴訟において、著作権法上の引用に該当し適法である旨の判断をしました。
競業避止義務及び秘密保持義務に違反した代理店及びその役員に対して限界利益相当額の損害賠償を命じた「レキシル」事件東京地裁判決について
2025年1月22日 裁判例情報(商標・不正競争) 飯島 歩 (135)
東京地方裁判所民事第47部(杉浦正樹裁判長)は、令和6年(2024年)10月10日、代理店契約に違反して競業行為を行った代理店に対し、競業避止義務違反及び秘密保持義務違反があったとし、代理商の競業避止義務違反に関する会社法17条2項を適用して、被告会社が得た限界利益に相当する額の賠償を命じる判決をしました。判決は、被告会社の代表取締役についても、会社法429条1項に基づき同額の損害賠償を命じ、両者の支払義務の関係を連帯債務としています。
営業秘密を理由とする訴訟記録閲覧制限の申立てを却下したテレビ宮崎事件最高裁決定について
2024年12月26日 裁判例情報(紛争解決手続) 飯島 歩 (135)
最高裁判所第一小法廷(深山卓也裁判長)は、令和6年(2024年)7月8日、訴訟記録の記載が不正競争防止法上の営業秘密に該当することを理由とする閲覧制限の申立てを却下する決定をしました。同決定には、深山卓也裁判官による補足意見が付されているところ、同補足意見は、改めて不正競争防止法にいう「営業秘密」の意義を確認し、閲覧制限が認められるためにはその該当性について疎明が求められることを示すとともに、「近年、民事訴訟法92条1項2号による訴訟記録の閲覧等の制限の申立てにおいて、申立てに係る部分が営業秘密に該当することの疎明が十分にされていない事案が少なからず見受けられることに鑑み、本件申立てが却下を免れない所以を補足した次第である。」と述べています。
特許権に係る事業を行わない持株会社による権利行使に特許法102条2項の適用を認めた知財高裁判決について
2024年12月17日 裁判例情報(特許・意匠) 神田 雄 (35)
知的財産高等裁判所第1部(本多知成裁判長)は、令和6年7月4日、特許権侵害における損害額の算定に関し、権利行使をした特許権者が事業を行わない純粋持株会社であって特許発明はグループ内の他の会社が実施していた事案において、特許法102条2項の適用を認める判断をしました。
引用発明に内在する自明の課題を認めるとともに、比較例の解釈に基づいて発明の効果を否定した「ワクチンアジュバントの製造の間の親水性濾過」事件知財高裁判決について
2024年11月8日 裁判例情報(特許・意匠) 小林 由佳 (2)
知的財産高等裁判所第2部(清水響裁判長)は、主引用発明に記載されていない自明の課題を認定して、本件発明の構成は容易想到であるとし、さらに本件効果が顕著なものであったと評価できず、本件発明の効果は予測可能であるとして、本件発明の進歩性を否定し、無効審判不成立とする審決を取り消しました。
椅子の形態の不正競争防止法上の商品等表示性を認めたTRIPP TRAPP事件知財高裁判決について
2024年11月7日 裁判例情報(商標・不正競争) 町野 静 (40)
知的財産高等裁判所(清水響裁判長)は、令和6年(2024年)9月25日、「TRIPP TRAPP」という商品名で知られる子供用の椅子の形態が不正競争防止法上の商品等表示に当たると判断しました。
婦人服につき不正競争防止法上の商品形態模倣の成立を否定した大阪地裁判決について
2024年11月1日 裁判例情報(商標・不正競争) 秦野 真衣 (18)
大阪地方裁判所第21部(武宮英子裁判長)は、令和5年10月31日、原告が製作・販売していた商品(婦人服)について、被告がこれを模倣した商品を販売したと主張した事案において、被告商品は不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に当たらないと判示しました。
商標権侵害の主張の一部が出願経過禁反言により許されないとされた事例
2024年10月25日 裁判例情報(商標・不正競争) 金村 玲奈 (2)
大阪地方裁判所第21民事部(武宮英子裁判長)は、令和5年(2024年)12月14日、被告による商標権侵害が争われた事案につき、原告が出願過程で指定商品・役務の一部を除外して商標の登録を受けた経緯を踏まえ、商標権侵害の主張の一部が禁反言の原則により許されないとの判断を示しました。
「知的財産取引に関するガイドライン」の改正 ~知財訴訟等のリスクの転嫁について~
2024年10月11日 立法・政策動向(知財・IT) 神田 雄 (35)
中小企業庁は、令和6年10月、「知的財産取引に関するガイドライン」を改正しました。今回の改正は、同ガイドラインにおける「第三者との間に生じる知財訴訟等のリスクの転嫁」の項目を加筆するものであり、契約における知的財産権の非侵害保証・補償にも関連します。
女性向けドレスにつき不正競争防止法上の商品形態模倣の成立を認めた東京地裁判決について
2024年10月10日 裁判例情報(商標・不正競争) 秦野 真衣 (18)
東京地方裁判所第46部(柴田義明裁判長)は、令和5年10月28日、原告が製作・販売していた女性用ドレスについて、被告がそのドレスを模倣したドレスを製作させて輸入し、自らのインターネット通信販売サイト等で販売したことが不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に当たると判示しました。






