グーテンモルゲン。煎田ナリよ。
最近は、ほのかに暖かくなってきたと思ったらまた寒くなっての繰り返しで、気まぐれな天気に振り回されっぱなし。まったくもう、嫌になっちゃう。
でも、こんな天気を見捨てず付き合ってられるのは、わたしだけなんだから。ほんっと、しょうがない奴……///(サポートに徹する後方彼女ヅラ)
(関羽休題。まとも)
なんでしょう、前回の近況ノートでテニスの話をしたせいでしょうか。発作的に漫画「ベイビーステップ」の好きな試合を思い出して、熱い文字起こしをせずにいられなくなってきちゃいました。ムラムラ悶々。
ベイビーステップは、かつて週刊少年マガジンで連載していた、テニスを題材にしたスポーツ漫画です。ざっくり概要を説明すると、
「ガリ勉真面目なトサカ頭の高校生男子、丸尾栄一郎(エーちゃん)が、健康維持のために始めたテニスにドハマりして、そこから地道な努力と分析を重ねて、テニス選手として成長していく物語」って感じ。
なんか、何年か前にも同じようなことを書き殴った気がするので、ドメスティックバイオレンスはほどほどにしておきましょう。山吹色の暴力。
(以下、ネタバレのハリケーン。未読者はサヨウナラ)
作中でお気に入りの試合は色々あるんですが、個人的に思い出深い試合の一つは、高校2年生の三月、全日本ジュニア神奈川県予選大会のvs荒谷戦でしょうか。
前にも書いた気がしますが、主人公のエーちゃんは作中で何段階か劇的なレベルアップを繰り返しており、ざっくり高校編だと、
一段階目:高1(ただのガリ勉トサカ)~高2夏(基礎トレを積み重ねたトサカ)
二段階目:高2夏(地獄の肉体改造開始)~高2冬(アメリカ短期留学)
三段階目:高2冬(帰国後、サーブ魔改造)~高2終盤(全日本ジュニア県予選)
って感じでパワーアップしてきました。
全日本ジュニア神奈川県予選は、高校世代最高峰の大会である全日本ジュニア選手権の地区予選。
色々あって本格的にテニスのプロ選手を目指すことになったエーちゃんが、地獄の肉体改造・アメリカ留学・徹底的なサーブ特訓といった過酷な修練を積み重ねて、一気に才能を開花させる大会なのです。
この全日本ジュニア編(コミック12巻~28巻あたり)は、リアルタイムで読んでて超面白くて、今でもたま~に読み返しちゃいます。
で、取り上げた荒谷戦は、神奈川県予選大会の決勝戦。
半年以上に渡る猛特訓によって、自分より格上だった神奈川のシード選手たちを次々に圧倒する力をつけたエーちゃんは、一気に県内でも注目の選手となり、ノーシードから勢いそのままに、決勝までコマを進めます。
決勝の相手は、幼年期から神奈川No.2で、全国的にもトップレベルの実力を誇る、荒谷寛(あらやひろし)。
パワー&スピードテニスの申し子であり、フィジカルも抜群。所属するテニスクラブのプロ育成コースの熾烈な競争を勝ち残り、幼少の頃からプロ選手を志望している、まさにエリート中のエリート選手。
顔面は素晴らしく個性的で、ムキムキで獅子鼻が凄い。あと、声が滅茶苦茶デカくてうるさい。
実はエーちゃん、第一段階パワーアップを終えた高2夏の大会でも荒谷と対戦しており、その時は3セットマッチで1セットも取ることができず、敗北しています。
しかし、今回の決勝戦は一味違う。
本格的にプロを目指し、地獄の肉体改造を経て全ての能力が向上したパーフェクトエーちゃんは、純粋なパワーでは荒谷に劣るものの、各段に威力を増したサーブと、持ち前のボールコントロールをもって、序盤は互角に試合を展開していきます。
途中、テニス歴の浅さから、左利きである荒谷の微妙な打球の違いに戸惑い、3セットマッチの1セット目を落としはするものの、自慢の分析力によって何とか立て直し、その後、全国大会常連である荒谷から2セット目を取り返すことに成功。
うろ覚えだけど、エーちゃんの代名詞「チェンジオブペース」のスタイルが作中でハッキリ確立されたのは、ここが初だったと思います。コントロールを主体にするプレーは前からやってましたが、「チェンジオブペース」の初出はここだったはず。
そして、勝負はラストの3セット目へ。
余談ですが、この辺りでエーちゃんの友人である影山くんが試合を応援しながら呟いた言葉が好きです。
「エーちゃん今、本当に楽しいと思うんだよね。全力のあいつに、全力で応えてくれる人がいるんだもん。それも、強くなればなるほどたくさん。誰かと全力でぶつかる楽しさを、あいつはテニスで見つけたんだよ」
……(泣)。影山は小学校からの友人なので、ガリ勉真面目野郎だったエーちゃんがテニスを始めてからの変化を、誰よりも近くで実感してきたのでしょう。
そんな熱いファイナルセットは、自身と同じくプロを目指すエーちゃんの実力を認め、さらなるフルパワーで攻めかかる荒谷と、チェンジオブペースで多彩な攻撃を繰り広げるエーちゃんのサービスキープ合戦となり、超接戦の様相を呈していきます。
しかし、試合が長くなるにつれて、エーちゃんの身体に徐々に蓄積していく疲労。
いくら肉体改造で鍛えてきたとはいえ、相手は全国でもトップレベルのフィジカルを誇る、ムキムキ戦士の荒谷。
ただでさえ頭脳をフル回転させなければならないエーちゃんのプレースタイルと、慣れない左利きへの対応なども重なり、じわじわと自力と経験の差がでてきます。
おまけに、エーちゃんの疲労を察した荒谷は、勝負を早くつけるためにリスクを上げて攻めなければならないエーちゃんに対し、守備的なゲームを展開。
これにより、勝負はさらなるサービスキープ地獄へ。エーちゃんは心身頭脳ともに限界に近づき、どんどん追いつめられていきます。
「今、お前が追いつめられているのは、速く動き続けて、強く打ち続けることができないから。……つまり身体の差こそが、力の差なんだよ!」
生粋のフィジカルエリートである荒谷の猛攻により、エーちゃんは自身のサーブゲームでも押され始め、もはや敗北寸前。
絶体絶命のピンチを迎えますが、脳の疲労がピークに達し、ほとんど無心となったエーちゃんは、一縷の望みを自身のサーブに託し、思考度外視、本能に任せた全力サーブによって、最後の挽回を図ります。
これにより、一時はエーちゃんが盛り返すか……と思われますが、ここで荒谷が、すかさずフォアのクロスによる反撃。
無心で打ち返すエーちゃんでしたが、ゲーム序盤から苦しめられていた左利き対応に考えが回っておらず、バックでの返球が浅くなり、そのまま失点。
結局、ここから挽回は叶わず、最後は3-6、6-3、7-9で、エーちゃんの敗北となります。
一応、県予選の決勝まで進んだ時点で、次の関東大会への進出は決まっていたのですが、全国トップレベルの荒谷に勝つことはできませんでした。
ですが、ノーシードから決勝戦に進出し、荒谷相手にファイナルセットで7-9という激戦を繰り広げたエーちゃんに対して、観客からは拍手喝采が沸き起こったのでした。
試合後、疲労と大会が終わったことで茫然としていたエーちゃんですが、コーチとしてエーちゃんの才能を最初に見出した三浦コーチ(こちらも顔面が個性的)は、エーちゃんの奮闘を次のように評します。
「俺は半年前にもキミと荒谷君の試合を観ていたが、あの時点であった実力差をここまで縮めたのは、驚異的なことだぞ。負けはしたが、この半年で神奈川で一番進化したのは、間違いなくキミだ」
……ほんとそうなのよ。エーちゃんは高校一年からテニスを始めたトサカ男で、初めは準備運動のアップがキツくて失神してたレベルですからね。それが二年足らずで全国トップレベルの相手と拮抗できるようになるって、ヤバすぎでしょ。
と、さらにそこに、かつてエーちゃんと試合をしたことのあるテニス選手、岩佐くんという男が現れます。
岩佐くんは、神奈川の高校生でも5本の指に入る名選手でしたが、テニスよりも絵を描くことに興味関心があり、試合中も天才的なボールコントロールを活かして「ボールの軌道でコートに絵を描く」という、作中で唯一、テニプリ的なプレースタイルを有する変態男(?)でした。
そんな彼は、夏に一段階目レベルアップを遂げたエーちゃんに敗れた後、自分がテニスよりも本当にやりたかった絵の勉強を本格的に始めることとなり、今回の試合も、スケッチの練習を兼ねて観戦していました。
岩佐くんは、以前の試合でエーちゃんに負けた後、エーちゃんがなぜテニスをやっているのか理由を尋ね、当時まだプロ選手を目指していなかったエーちゃんは、「楽しいからです」と回答しました。
それに対し、岩佐くんは「楽しいだけだと、(プロを目指している選手である)荒谷に勝つのは厳しいかもな」と評していました。
実際、その後の荒谷との初対戦でエーちゃんは敗北し、今回も接戦まで持ち込んだものの、結果的には再度敗北を喫しました。
しかし、今回の決勝戦、凄まじい試合展開で荒谷を追い込んだエーちゃんの試合を観て、岩佐くんは自身の考えを改めたと、次のように述べます。
「僕も本当にやりたい絵を志して気付いたけど、人生懸けて何かを目指すなら、『楽しい』って感情より原動力になるものは無いと思う。幾度も壁に当たり、何とか全力で乗り越えようと考えて、その度に前を向いて立ち上がる丸尾君は、誰より試合を楽しんでいるように見えた。あの荒谷をあそこまで追い込むことができたのは、キミが誰よりもテニスを楽しんだからじゃないかな」
最上級の褒め言葉ですが、その言葉に対して、エーちゃんはポロポロと、突然の涙をこぼします。
「ありがとうございます……。でも、やっぱりダメです。いくら楽しめても、強くなれても……それだけじゃ、ダメです。…………勝てなきゃ……!」
煎田、この場面を読んで、同じくボロ泣きしました。
エーちゃんがテニスにのめり込んだのは、本当に「楽しかった」からなんです。
ふとしたきっかけで始めたテニスでしたが、「目と反応が良い」とコーチに才能を見出され、地道な努力の積み重ねで上達していき、徐々に力をつけて。
やがて、同い年でプロとして世界で戦っている日本人選手「池爽児(いけそうじ)」の存在を知り、楽しいテニスを全力で仕事にできるという立場に憧れを抱き、自身もプロ選手を目指すことを決心して。
それでも、高校生からプロ選手を目指すというのは苛烈な道で、エーちゃんは本当に苦しい地獄の肉体改造期間を、死に物狂いで乗り切ってきました。
その中でメキメキ実力を伸ばしてきましたし、県内でもトップクラスの選手に大躍進を遂げましたが、「テニスが楽しかったから目指したプロ選手」になるためには、何よりも実績が伴わないといけない。勝たなければ終わってしまう。
そのことを、強くなった今だからこそ、同じプロ志望の荒谷に勝てなかったことで、実感し、痛感していたのです。
せっかく異次元に強くなった今のエーちゃんに、こんな台詞を言わせるのか……と、作者の勝木先生のドSっぷりに、ドMの煎田は心を震わされるばかりでございました。
ガリ勉真面目青年だったエーちゃんが、真にテニスのアスリートとなった瞬間。涙せずにはいられませぬ。
さっきも書きましたけど、別にこの試合に負けたから終わり、とかじゃないんですよ? 次の関東大会には、普通に進めるんですよ?
物語的には消化試合でも良い試合で、こんな熱い展開を書けるとは……。
全日本ジュニア編ではまだまだ序盤の方なんですが、リアルタイムで読んでいたこともあって、凄まじく印象に残っている試合でありました。
(関羽休題……。あれ、なんか久しぶり)
……やばっ、気づいたら単行本二冊くらいの概要を、一気に書き殴っちゃった。
ベイビーステップ未読の方は、読まないほうが賢明です。
ずらずらっと書き殴った後、さすがに細かい台詞とかは単行本で確認したんですが、内容はけっこう合ってたので、やっぱり印象深いエピソードだったんだな、という感じです。もう、十数年前ですものね……。
リアルテニスの方は、全豪オープン、錦織選手が一回戦勝ったのは感動しました。ジョコビッチもズべレフ戦で棄権したとはいえ、今のアルカラスに勝てるのは流石としか言いようがありません。リアルテニスのほうも、気ままに追いかけてゆくとしましょう。
あ、カクヨムコンも、絶賛続いてますね! もうちょっとしたら、気ままに色々読みに行くよ! 先っちょだけ、本当に先っちょだけかもしれないけど! 煎田の読書週間は、だいたい1月の終わりころから始まるんだ! 多分ねっ!
それでは、非常に長くなりましたが、万が一、ここまでお読みいただいた方がいらっしゃいましたら、お付き合い感謝いたします。さようならー。どどっひゅひゅーん。
「人生を懸けた勝負だから、楽しい!!」
うん。まこと、至言である!