モノを大事にすることにより、モノの尊厳を傷つけてしまう『器物丁重罪』……しかし、モノは魂を宿し、本当はもっと使ってほしいと願う。その念が最後に姿を現す……オチが秀逸な、素晴らしい掌編です。
日々使うモノへの意識が変わる。反転する。周りのモノからの切実な声が、聞こえ始めるような気がする。読む前と後では、確実にモノへの見方が変わる、深く心に沁みる作品です。それぞれのモノの働きをより身近に感じる擬声語が、耳に心地良く残ります。モノはだれでも使う。人間はだれでも老いる。避けられない現実ですが、読後感はさわやかで、救いを感じました。年齢を問わず、幅広く多くの人に読んでいただきたい作品です。
「まだ使えるのに捨てるなんて勿体ない!!」という題材はよく目にするでしょう。こちらは、壊れるギリギリまで道具の寿命の最後の最後まで使い続けられる道具たちからの訴えから始まります。まだ使える、まだ動く。寿命ギリギリ、ガタが来ている老体を酷使される苦痛を訴える道具達、一方弁護人(物体)をはじめとする最後まで使われることが嬉しかった道具達の訴え。様々道具達の想いを主人公と一緒に、受け止め、道具の捨て時について考えさせられる。愛を感じるお話でした。最後のオチまで綺麗に纏まってる作品です。是非ご一読ください✨
「あなたは捨てられる物の気持ちを考えたことがありますか?」という問いは凡庸だろう。今作は違う。「あなたは使い続けられる物の痛みと喜びを考えたことがありますか?」いや、普通考えないって・・・!?でも物を大切に使うあなたなら、裁かれる主人公に必ずや共感するはず!そんな主人公を一人弁護してくれる「彼女」は誰(何)?最後に明らかになるのでオチまでしっかり楽しめます!
主人公は所謂「物持ちが良い」人。これは本来誉め言葉ですが、本作ではそれが原因で裁判にかけられます。無理やり物を使い続けたことを酷使したと表現されています。その一方で、それを擁護する物も現れ、この展開には脱帽しました。
ちょうど断捨離中のため、このお話が目に留まりました。設定は、物が原告で使用していた人間が被告。罪名は器物破損罪ではなくて、器物丁重罪。つまり、ものを大切にしすぎたことを理由に訴えられるという面白い設定。 この話を読んで、最初はものを大切にして何が悪いのだろう?と思いながら読み進めると、あ、そうではないのだな。と様々な物の声からわかってきます。 確かに物は大切に使うに越したことはないけれど、その物がくたびれてしまうほど使うことは、果たして「大切にしている」と言えるのだろうか? 一話完結ですが、非常に密度の濃いお話でした。
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