概要
ひとりの孤独な少年がさまざまな人間と出会い、過酷な青春を乗り越えて大人になるまでを、19世紀末のフランス・パリを中心に描きます。
R15ですが直接的な性描写はありません。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!悲しくて、切なくて、苦しくて、痛くて、重くて――でもこのうえなく美しい
ああ……「この作品が出版されてないなんて絶対におかしい!」と叫ばずにはいられない物語に、またもや出逢ってしまいました。
類稀な美しさを持つ山羊飼いの少年、ジュール。ジュールに「太陽のよう」と形容される、明るく朗らかなブルジョワの青年、ヤン。
同性愛が差別されていた時代と場所で、身分ちがいの恋に落ちた二人を……特にジュールを待ち受けていたのは、想像を絶するほどの過酷な運命でした。
作者様のキャッチコピーに「運命に翻弄される」ということばがあるので、つらい運命なのだろうと覚悟して読みはじめた私も、「えっ、えっ、えっ、ちょっと待って、ここまで、ここまでですか!?」と悲鳴を上げそうになったほどの過…続きを読む - ★★★ Excellent!!!苦しみが押し寄せてくるけれど、それでも……
この物語は、行き倒れた山羊飼いの少年が裕福な家の子息である青年と出会うことから始まります。
この少年は美しく、自分の意思に反して人を惹きつけてやまず、色々な人が彼の虜になります。
けれど、彼自身はとても一途で、心に決めた人だけを想い続けます。
それこそ、どんな目に遭っても。
彼の行く手には困難が待ち受けていますが、それでも、満身創痍になっても、本来の彼が持つ善良さは失われません。
だからこその苦悩も見事な筆致で描かれています。
作者様が初めて書かれた長編とのことですが、とてもそうは思えないほどの作品です。
19世紀末フランスの空気の中にリアルな人の葛藤が見えます。
読み終えた後は満足感に浸…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人生の明暗について、繊細に深く描かれている素晴らしい物語
一言では言い表せられない、深い余韻を与えてくれる作品に出逢えたことがとても嬉しく、真摯に物語を綴ってくださった作者さまに心から感謝を伝えたいです。
人間の弱さや強さが、本作品では誠実な文章で綴られています。人間の心理が豊かに奥深く描かれているため、登場人物たちの思いや考えがまっすぐに胸の中心へと向かい、時には刺されるような思いにもなりながら読ませていただきました。痛切な苦しみや思いは、現実的な実感を伴って読者に訴えてきます。そんな素晴らしい作品や文章を書ける思慮深さに、大きな感動を覚えました。
ジュールとヤンの台詞には、考えさせられる言葉が随所に光っており、立ち止まりながら読ませて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!純文学とは何か
「カクヨムにおける不朽の名作」と一部で称されているこの作品。読み始めてすぐに、私はかつて読んだ数々の純文学の名作を読んでいるような気分になった。
言い換えれば、読者として手加減をするのを忘れてしまった。「素人が書いているとは思えない程素晴らしい・尊敬・羨望」ではなく、プロの作品を読むように読み手として真剣に対峙し、物語に入っていった。
勿論、物語の構成も見事で、心理・心情、情景描写もまるで自分がそこにいるかのように感じられる素晴らしい筆致である。
その上で、自分の魂を揺さぶられる。作者の人間に対する洞察力と深い愛情で描かれた登場人物の言動に一喜一憂してしまう。主人公の過酷な運命に何度泣…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人が人を愛するということ
この小説を読んで思ったのは、国がどこでも、時代がどうでも、愛する相手が同性でも異性でも、人間の営みは普遍的だ、ということ。
小説の中でジュールは本当にひどい目にあうけれど、でもそれは多分、ジュールだけに起こっていることではない。
フランスでなくても、19世紀でなくても、ジュールと同じ思いをして生きている人はたくさんいると思う。
泣きながら苦しみながら傷つきながら、それでもジュールが生きていけたのは、ヤンがいたから。一度でも誰かを心の底から信頼し、信頼され、愛し、愛された、という経験があるからなのではないか。それこそが、自覚はなくとも「自分はそれでも生きていく価値のある人間なんだ」…続きを読む - ★★★ Excellent!!!限りなく純粋で、限りなく悲しくて、限りなく美しい愛の物語です。
背景は19世紀のフランス。
山羊飼いの貧しい少年ジュールとブルジョワの子息ヤン。
惹かれあう二人。
引き裂かれる二人。
そこには数知れない壁があった。
過去のしがらみに苦しみながら抗えない運命の波にどこまでも翻弄され続けるジュール。
ジュールとヤンの二人に未来はあるのか?
登場人物の一人一人が人間味に溢れ、人間の根底の善悪、明暗が鮮やかに描かれていることも見逃せません。
この物語は『カクヨム』史上に残る名作です。
二人の運命の過酷さに胸が締め付けられます。
二人の純粋さに涙が溢れます。
涙なしでは読めません。
私は10回泣きました。
是非、ご覧ください。
きっと、あなたの心を揺さぶります…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しき少年の人生を真心を込めて綴った愛の物語
主人公ジュールの人生において得られたものは何か。読み終えてそれをふと考えました。
苦難多き人生を歩んできた彼の本当の望みは幸せにいきることだったのだろうと、それは疑いようもありませんが彼にはそれを得ることがとても難しかった。人々の思わぬ悪意に晒されて、喜びを見つけるたびに不幸に突き落とされて光を見失うんです。
汚泥のような日々の中でもがき、やっと見つけた幸せさえも手の中から滑り落ちてしまう。ああ、ジュール!
もう泣かないでジュールとは言えませんでした。辛いものね、平気なふりして冷めたふりして笑うのがジュールもこちらもまた辛いんです。
そんな中で彼にとっての太陽、ヤンという存在は特別で埋もれて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この物語には人の強さ、弱さ、美しさと醜さがある
この物語の主人公は二人。
一人は魔性ともいえる美貌を持つ少年『ジュール』。
もう一人は不遇な出自ながら、太陽のような明るさを持った貴族の子『ヤン』。
ある日、森の中で行き倒れになっていたジュールを、ヤンが見つけ介抱するところから物語は始まります。
男性同士でありながら互いに惹かれあう二人。
それは友情なのか、恋なのか、それ以上のものなのか?
同性愛をモチーフにした作品だけあって、この辺りの感情表現、愛情の表現がとても美しく描かれています。
そう。この物語で特筆すべきはやはり作者の表現力です。
フランスの風景の描写、少年・青年たちの心の描写、二人をとりまくキャラクター達の描写。
それらがな…続きを読む