読了したので書きます。
源頼朝、平清盛。この名前を聞くと、私は腹の読めない老獪な存在というイメージが常に先行してしまいます。
ネタバレになるので詳細は省きますが、気に入っているシーンで連想させる描写がるのでこの印象も間違ってはいないのではないかと思います。ここは画のようにシーンが思い描けるので見てほしいところです!!
この先も木曾義仲との戦い、そして、壇ノ浦の戦いと話はまだまだ続きます。如何なるものにも常に終わりがあるのです。
しかし、若かりし日の頼朝と三浦や梶原など彼の幕僚たちがときに絶体絶命の危機に頭を抱えたり、ときに勝鬨を上げたり…。
そんな意外な一面に思いを馳せるのもまた歴史の愉しみ方の1つではないかと思いました。
本作で描かれるのは小説キャッチフレーズ(北条政子と源頼朝――二人が出会い、挙兵し、やがて鎌倉に入るまで)のとおり。のちに鎌倉幕府成立の土台になる『伊豆に流刑となった頼朝が地方豪族の娘である政子に出会う』場面から始まるお話です。
小中学校で習いましたよね。鎌倉幕府。当時のテストでしっかり点数取れてるくらいの知識があれば、びっくりですが本作もきっと読みこなせます。
そう。すごく内容濃いのに、すらすら読めちゃうんです。
作者様の配慮でしょう。わたしみたいな歴史に触れるのは学校で習ったのが最初で最後みたいな人間にも分かるように、さりげなく状況がわかる補足情報を入れてくださってます。
学校で学習した鎌倉時代あたりの歴史のあれこれをより深く知れた気分です。
怨霊のイメージしかなかった平将門にも人間味があったし、人々が争う理由にも当時の空気を感じました。あの当時の人々が何を考え、どう関係しあっていたかがリアルに想像できて、とても面白かったです。
本作のタイトルにもある『笹竜胆』に注目して読むのもおススメ!
より良い読書体験になると思います♪
本作はあの有名な源頼朝を中心としたお話が展開されていきます。
1185つくろう鎌倉幕府!の頼朝さんは、きっと名前を聞いたことがない人はいないのでは?というくらいに有名なのに、確かに彼を中心とした作品って少ないんですよね。そんな中、彼の人間性や会話の構成などもこうして再現されているのが凄いと思いました。
彼を取り巻く人間関係や情勢などの描写も緻密でとても興味深く、最後まで楽しく拝読させて頂きました。
笹竜胆は源氏の家紋としても有名ですが、この描写がまた彩を豊かにしているようにも感じられます。歴史が好きな方にはお勧めの作品です。
簡潔で力強くリズミカルな文体で綴られる、権謀術数うずまく歴史群像劇です。
同時代を生きた武将でも、源義経や平清盛、木曽義仲などは、後世につくられたものだとしても、ある程度一般的なイメージというものが固まっていると思います。
でも、源頼朝は……もちろん平家を滅ぼして鎌倉幕府をつくったひとではありますが、あまりイメージが湧きません。
と、ちょっと気の毒な(?)頼朝ですが、本作では、先の先を読み裏の裏をかく冷徹な軍略家として描かれています。最終的な勝利をつかむためなら、あえて負け戦をすることも厭わない。
そんな頼朝が、彼に負けず劣らず聡明で意志の強い北条政子と出会い、惹かれあい、流人の身から“国”をつくるまでにのぼりつめていく。
また、先に挙げた源義経や平清盛、木曽義仲といった武将も、一般的なイメージとは一線を画した解釈で描かれています。「悲劇の武将」ということばの似合わない(誉めてます!)、気まぐれで飄々とした義経なんて、実に新しくて魅力的です。ちょっと頼りないものの子ども好きで人望のある北条義時や、ずけずけとものを言う亀もいいキャラ。
さぁ、日本の歴史が大きく変わった瞬間を、あなたも目撃してみませんか?
今からおよそ八百年前の鎌倉時代。この時代を作ったのは、日本史を習った人間なら誰でも知ってる源頼朝。平家を倒して鎌倉幕府を開いた人物という程度の知識なら、大抵の日本人は持っているはずです。
しかしその頼朝、平家打倒に立ち上がったのはいいが、あっという間に討伐軍を差し向けられ、石橋山の戦いでは絶体絶命のピンチに陥ります。そんな彼が、どうして武門の棟梁になれたのでしょうか?
そしてもっと驚くべきことには、八月に石橋山で敗れた頼朝が、翌月には千葉の諸勢力を糾合して南関東を制圧、十月には平家の討伐軍を富士川の戦いで撃破しています。日本史は割と得意な私も、これらのイベント期間がわずか二か月だったことを本作で知って衝撃を受けました。
本作では、一介の流刑者だった頼朝が、いかにして関東の覇者となったかを描いています。が、この文だけでは本作の魅力の百分の一も説明できていません。
軍事力をバックに経済面でも覇権を握りたい平家、それを阻止せんと暗躍する勢力。帝位争いに敗れ不遇をかこつ「王」。そして、これらの群像劇の中心に立つ頼朝の底知れぬ智謀は、彼の目的の成就、その一点を目指しています。必要なら、あえて敗北することも辞さない、と。まさに権謀術数で「国」を作ったのが頼朝です。
頼朝が最終的に勝利を収めることは、ネタバレでも何でもありません。しかし、
何故何も持たない流人が勝者となったのか?
何故石橋山の戦いでは窮地を脱し得たのか?
何故敗北から二か月後に、平家の大軍に「勝利」できたのか?
本作におけるこれらの疑問の答え、これは絶対にネタバレできません。読み終えている方には同意いただけると思いますし、未読の方は読み終えてから、ネタバレされなくてよかったと同意いただけるでしょう。
是非ご自身の目で、この疑問の答えを、頼朝の権謀術数の全てを、全52話の大河ドラマを、ご覧になってください!
権もはかりごと、謀もはかりごと、術もはかりごと、数もはかりごと
――司馬遼太郎『国盗り物語』より
1192(イイクニ)年にせよ、1185(イイハコ)年にせよ鎌倉幕府の創始者として日本で教育を受けたならまず知らない人はいない源頼朝。
ただ、物語の主人公になるにはエピソードに欠け、イマイチ地味な印象がぬぐえません。
戦闘に能力を特化させ派手な活躍をする義経という弟が悲劇的な最期を迎えたために余計に印象がよろしくない。
ただ、旗頭という一面があったにせよ、逆境から政権を作り上げた男は無能ではありえません。
本作の頼朝は戦略眼に優れた人物であり、冷徹に未来を読んで関東に地方政権を打ち立てるべく行動します。
挙兵直後の石橋山の戦いに敗れてからが頼朝の本領発揮。
実は敗戦すらが計画通りだったという。
この後の頼朝の戦略の冴えは本作で直接お確かめください。
『群像劇を面白く組み立てるのは難しい』
群像劇がお好きで目の肥えている方は、これに深く頷いていただけるのではないでしょうか。
そんな方は間違いなく本作に満足いただけるに違いありません。
全ての人物は、登場回数の多少にかかわらず、読み手の印象に残るフックや、エモーショナルな掘り下げがあります。
これにより、意識が散漫になりがちな群像劇にありながら、どの人物にも鮮明な印象が与えられ、各人への思い入れや行く末への興味を抱かせる事に成功しています。
ストーリーには、一つの到達点へ向かってこちらを引っ張っていく筆者の意思が強く感じられ、読み手は安心してその意図に振り回され、快感を楽しむ事ができます。
また、対立あるいは協調関係にある人物達の視点の切り替えがとても巧みで、中心人物である頼朝を、各人の目線でパズルのピースのように形作っていく過程はゾクゾクするほど面白いです。
頼朝の行動のひとつひとつに人々が反発を抱いたり、恭順したり、脅威を抱いたりする描写には、「こういう人は確かにいる」「こんなふるまいをするなら確かに偉人だろうな」など、読み手に、生きた人物としての納得を与えてくれます。
生々しさと歴史に名を遺す人物としてのカリスマ性が絶妙なバランスで、大きな見どころの一つです。
さらに、みんな大好きなあの人物やあの人物も、美しく! かっこよく! 魅力的に描かれてるところはサービスも満点。
お腹いっぱい満たされる事必至な作品です。ぜひご一読を。
源頼朝の挙兵、その少し前から始まるこの物語。
話の中心は、間違いなく頼朝であり、その知謀の相方としての北条政子、そして大いなる敵としての平清盛などが登場します。
しかし、それだけではない。
この物語は、遠く都を離れた自分たちのものであるはずの土地に、自分たちの不羈の国を興す。
頼朝が掲げたであろうそんな灯火に心を傾けた武士たちが身命を賭して戦う。
そんな物語であると、少なくても現時点(2025年1月21日)では思っています。
すでに舞台は伊豆鎌倉周辺ばかりではなく、駿河も巻き込んでいます。
その先の木曽、そして京都と舞台が広がるにつれ、どう変わるか。
まだまだ目が離せません。
誰もが知る鎌倉幕府の祖・源頼朝は流人であった。
仲間は認められず、所領もなく、監視され、謹慎の日々。しかし、最後は勝った。
だれもが学ぶ教科書には、決起した石橋山で梶原景時に見逃されて九死に一生を得たとある。
何故か?
たぶん、なんで敵将を見逃しちゃうの? そう思われた人も多いと思う。
そもそも、明らかに兵数に劣る状況で、どうやって勝つつもりだったのか?
それ以前に、寡兵なりとどうやって決起のための兵を集めることができたのだろう?
普通に考えたら絶望しそうなスタート。
なのに最後は勝利の栄冠を手にすることができた。
この不思議を推理し、筋の通った歴史物語に整えた本作。
男たち、女たちの生き様を綴る、読み応えのある作品です。
ご一読を。