第8話 練習終わり、休憩中
「おにぎりの具は鮭ですよ! ゆうさん!」
「鮭か……俺の好きなおにぎりの具の内の一つなんだよ!」
俺とかなでは、それぞれ、シェイラとすいからおにぎりなどを受け取った。ひとり2つのおにぎりと沢庵ふた切れ。
ちなみに──かなでのおにぎりは、一風変わっていた。
炊飯器の中身をそのまま出してそれに海苔をつけて作った特大サイズのおにぎりだ。
しかも一つじゃないそれが、2つだ。底なしの胃袋。恐ろしい……。
「でっか……おにぎり……!」
俺は自分の、普通サイズのおにぎりを見つめる。
──なんか、普通のが……やけに小さく見える……──
「食べます?」
「いや……そんなに食べれねえよ!」
訓練ホールの床に腰を下ろすと、少し遅れて不死原たちがやってきた。
不死原の手には大きな鍋が。彼は無言で鍋を置くと、よぞらは、ゆっくりと味噌汁をお玉でよそい始めた。
「いただきます……」
──……このおにぎり、美味すぎる……!──
──鮭の塩加減が良くて、噛むたびに旨味が広がる……──
──そして味噌汁……疲れた体にしみわたる……!──
「うまっ……シェイラ、おにぎり作るの上手だな……意外と」
「ありがとうございます……でも最後の
「ごめんごめん、シェイラ! 今のは、忘れてくれ」
食べ終えて、少し間を置いたタイミングで俺は話をかなでに、切り出した。
「かなで……すいと……」
“すい”と呼び捨てにした瞬間、空気がピリッと。
かなでが、殺意を乗せたような視線で俺をにらんでくる。
「す、すいさんと……手合わせしてみたいんだけど……いい?」
「おすすめはしません。すいさん、強すぎるので……」
「どれくらい強いんだ?」
「すいさんは、“神の力”をすべて使えるんです」
「たとえば、不死原さんみたいに――相手の寿命とか、死に場所が分かります」
「……だから不死原、よぞらの死ぬ時間、分かったのか」
「それだけじゃありません。“壁の神”の力もあって、どんな攻撃も無効化できます」
「……でも、“先に当てたら勝ち”ってルールなら、いけるかもしれないだろ」
「なら、夜。
「……そういえば、恋の神は? 今日はいないのか?」
「今日は来てません。あの人、気分屋なので。神出鬼没なんですよ」
───────────────────────
そして夜8時頃。
俺たちは横浜の街中に出た。
アテレスたちがそこら中を這っている。ざっと50体、俺ひとりじゃまず勝ち目はない数だ。
「この数……一人じゃさすがに無理だろ……」
「見ててね、かなで……。すい、頑張るから!」
その瞬間、
「……あれ、雨……?」
さっきまでの快晴が、まるで嘘のように、雨が降り出す。
夜空は雲に覆われ、月の光も覆われる。湿った風と雨の匂いが街を包み込む中──
すいの淡い水色の髪が、雨に濡れてきらめく。
「今、すいさんは“天気の神”の力を使っています」
「雨を降らせて……何の意味があるんだ?」
「“天気の神”の能力で、雨のあいだ身体能力が上がるんです。
しかも、すいさんは好きに天気を操れます」
「……自己バフかけれるて……もうチートじゃん……」
「──では、すいさんの強さを」
すいは、亜空間から一振りの刀を取り出す。
一気に空気が重くなる。
静かに構え、振り下ろされたその一閃──
台風のような風が俺達を吹き抜けた。
あの華奢な腕に、何が詰まっているんだろうか。
とくと、 ご 覧 く だ さ い。
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