ふいに、私の中のもう一人の私が、沢田こあきさんを思い出した。ただ思いだしたんじゃない。読みたいと伝えてきた。私はその声に従う。読み進める。胸が苦しい。私がずっと昔に失った繊細な痛みが、煌々とその舞台の上で回っていた。輝かしさを散りばめながら。揺さぶられる。やっぱり涙が浮かんでしまう。苦しい。でもまだ、乾いてはいない。パキッと、音も鳴りきらない。生乾きは残酷だ。ミシミシと裂けながらも、ちぎれきらない。折れない筆を眺めながら、わたしはまだ、書くのだろうか。
カラッポ、廃棄場、ネジ、劇場、舞台、バレエ……作中に出てくるそれぞれの要素が歯車のように重なり、うまく噛み合っています。美しい文章によって描かれる物語は、まるで本当に劇場で舞台の踊りを見ているような気分にさせられます。ラストダンス……最後まで読めばタイトルの意味がわかると思うので、皆様もこの作品の観客に是非なってみてください。
幻想的な機械仕掛けの世界観が美しいです。文章を読んでいるとネジを巻く音や、オーケストラの音楽が聞こえてくるようでした。完璧と欠落の二面性を上手く表現されていて、“カラッポ”という存在に感情移入しました。
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