落ちぶれた男と、毒を持つ女。二人が出会い、交わす言葉のひとつひとつに、どこか妖しくも抗えない引力を感じます。女の正体や目的は最後まで明かされず、それがこの物語に深い余韻を残していました。男も女も決して清廉ではなく、それぞれに毒を抱えていますが、それでも作品全体の美しさが損なわれることはありません。その絶妙なバランスが、この作品を唯一無二のものにしていると感じました。 読後には、まるで毒を少しずつ飲み干したかのような、じんわりとした痺れが残ります。妖しくも美しい世界観に浸りたい方に、ぜひおすすめしたい作品です。
それは、決して美しいものではない。それは、決してなまやさしいものではない。それでもこの女には、手を伸ばしてしまうほどの、えもいわれぬ甘露のようなものがある。この文章の中には、ずっと女がいる。この女は何者なのか、どのようにして生きてきたのか、そしてこの女は、どこへ行くのか。目を離せないとは、まさにこのこと。作中には確かに女の容姿も、どのようなものかも書かれている。本当ならば目を背けるようなものであろうに、不思議と惹き付けられてやまないのだ。触れてはなりません。まさにその通り。ぜひご一読ください。
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