とにかく、とんでもないリアリティです!
超能力って本当にあるんだ、ついそう思ってしまいます!
〈催眠〉で相手の脳の中に侵入していく感覚、〈身体強化〉でビル群を飛び越えていく感覚……実際には起こり得ない事象を、感覚レベルで詳細に伝えてくるその描写力には圧巻される他ありません!
そして、詳細を極めに極めた設定……特にチャプター2の境界空間〈リミナル・スペース〉についての説明は、これぞSF!と思わず叫んでしまいました!
超能力者の社会的な立場について真摯に考え抜いている点も、SF好きな方々にはハマるかと思います。
さらには、登場人物たちの日常風景や会話のやり取り。
主人公・神前亜由美を通して見ることのできる人間関係からは、人と接することの楽しさや大切さ、その危うさ、面倒くささを知ることできます。
(己の内面とも!)
SFだけでなく、人間ドラマとしても最高の傑作です!是非ともご一読下さい!
異能者たちの群像劇です。
古き良きラノベのテイストを持ちつつもアップデートされた世界観が感じられます。
作中では注力された情景描写が物語に厚みを与えつつ、情感ある台詞の土台となっています。
またそれと共に日常の世界が非日常のそれへと変遷する描写に現実味を与えてくれてもいます。
能力を得て常人より高次のレイヤーにある者が一般社会のレイヤーから隠れた場所。いわば下層のレイヤーで暗闘する。
これらの描写から、現実はいくつもの階層にあるという考えが感じられ、タイトルにも繋がるのでしょう。
作中の最大の特筆点でもある異能。
これはある意味ポピュラーな種類がほとんどです。
明らかなのは催眠や念動力などですが、そのため読む側には理解しやすく、使用者の心情や能力の反応と効果などの描写に高い解像度で楽しめます。
それら異能を用いた戦闘場面では、経過を追うだけでなく、その闘争で明らかにするべき点や読者の気にするであろう要素が外すことなく書かれていて、読む者にも作中のキャラクターたちが戦う必然性が感じられることでしょう。
いままで述べたように、詳細で堅実な場面構成が本作の特長とも言えますが、作品全体を通しての印象は決して重鈍ではありません。
時にコミカル、軽妙な要素も交えられていてメリハリがあり、全体読み口は軽妙です。
令和最新版の異能力バトルストーリー。
ご覧になってはいかがでしょうか。
(このレビューは、チャプター1にあたる冒頭17話を読んだ時点で書かれています)
本作は、果無 可惟 Haténashi Kai さまのカクヨムデビュー(?)作。現在チャプター4、全100話が公開済です。
カクヨムでは昨年12月中旬から掲載(転載)開始ですが、2か月足らずでもう300近くの★を集めているのも納得の面白さ。文章が洗練されていて読みやすく、後でも書くようにとても「リアル」な世界観です。
「リアル」ではあるものの、メインのキャラたちはみな超能力の持ち主。彼女たちが「能力を駆使して悪と立ち向かう!」的な話と思いきや(いや、それもあるのですが)、どうもそれだけではなさそうな作品です。
チャプター1は、都内の大学2年生、神前亜由美の視点を中心に語られます。頭がよく活発な彼女ですが、心の病気や悪夢にも悩まされている。その理由の一端は、彼女がもつ並外れた超能力と、その力にまつわる過去の出来事にあるようです。
物語は、彼女がバイトしているカフェにお客さんとして来た少女サラ・アーヴィンと出会うところから、急速に動き出します。サラもまた、特殊な能力をもっているのですが、実はこの世界にそうした能力のある人間はそこそこいる様子。
自分も作品のなかで超能力を登場させているので思うのですけど、こういう「現実離れ」した設定は「両刃の剣」のようなところがありますね。作品世界を面白くする要素にもなると同時に、いわばその作品世界の「ゲームバランス」を掻き乱してもしまいうる。
もし超能力者が社会のなかに一定数いたら、おそらく、その力を悪用しようとするやつが出てくる。逆に、そうしたことを阻止しようとする能力者も出てくるはずです。ただ、そうした善意にもとづく力の駆使であっても、能力がもたらす全能感とか優越感と無縁ではいられないでしょう。
非能力者や低次の能力者の世界より、自分のほうが「高次のレイヤー」(ep. 1-14)にアクセスできるという感覚――そこから来る抑えがたい高揚感と誘惑。
亜由美は、自分の能力の魅力と怖さをよく知っています。彼女の過去と心の傷も、どうやらそのことと関係している様子。だから彼女は、自分で能力を封印している。日常の世界が非日常の世界と交錯して、輪郭を失ってしまわないように……。
でも、能力者にとって、日常の世界と非日常の世界とは切り離せないし、両者はなんの脈絡もなく繋がってしまうことがある。「まるで映画の編集中に、なぜか全く違う作品のシークエンスが混ざってしまったみたい」(ep. 1-15)な感覚です。
日常と非日常の間のこの危うい重なり合い――まだチャプター1までしか読んでいないので、推測ですが、作品のタイトル『オルタナティブ・レイヤー』もこうしたテーマと関連していそうです――を作者さんはとても「リアル」な筆致で描いています。知らない間に動き出している物語、日常と隣り合わせにある見知らぬ「レイヤー」に、読む者は一気に引きこまれてしまうでしょう。
ちなみに、物語は2019年4月後半から語り始められます(転載元である Pixiv での連載も2022年開始)。この設定にどんな意味があるのかも、個人的には気になるところです。
最初の描写から続きがどうなるのか気になる始まりです。一番自分が凄いと思ったのは日常の描写です。物語はSFなのに学生生活、家での生活面、プライベート生活……そこらの描写が細かく何より、
「ショートヘアの子には宮崎産のマンゴーを使ったヴァージン・モヒート」
と、カクテルの種類を事細かにまで綴られており、そこまで大事じゃない何気ない所も読み手が想像しやすくするためにバトル場面だけでなく、そういう日常の部分まで全てに力を入れて綴られてる所を素直に勉強になったと感じました。
内容自体も超能力についての登場人物達の感情を事細かに描写しており、他の人が書くようにヒューマンドラマとしても非常に心に来るような物語でした。自分は同じく小説を作るものとして全てにおいて勉強になりました!!
是非一読を!!
読了途中ながら、現代社会の闇と超能力者たちの葛藤が交錯する『オルタナティブ・レイヤー』は、まるで現実の「裏レイヤー」に覗き込んだかのような緊張感に満ちています。主人公・今仲の冷徹さと、それを覆す脆さが描かれるたび、私たち自身が持つ力とその責任を問い直されるようです。特に、アユミの登場シーンでは、彼女の一見穏やかなバーテンダーという仮面と、超能力者としての厳しい覚悟が対照的で、心を掴まれました。
また、「力を持つ者の責任」とは何かを巡る議論が、物語を通して浮かび上がる一方で、サラの戸惑いやアユミとの友情の微妙なズレが、物語にリアルな人間味を加えています。視線ひとつで心を操る能力〈催眠〉を持つ今仲の戦闘シーンは、私たち読者の想像力を掻き立て、息を呑む展開が続きます。
現代社会の問題ともリンクする本作は、単なるバトルものに留まらず、人間の倫理観や生き方に深く切り込むダークファンタジー。最後まで読み進めれば、新たな気づきが待っている予感がします。
主人公は医大生でアルバイト先の店でバーテンダーをしている。その上美女。出身は奈良県で、怒ると関西弁になる。主人公には兄がいたが、主人公が幼い日に亡くなっている。そんな彼女を襲おうと、一人の男がやって来る。そんな主人公を助けたのは、超能力を持った客の女性だった。この時から主人公は、超能力者たちの戦いに巻き込まれていく。
女性に負けた男は、ある犯罪組織の一員だった。そしてその犯罪組織のトップは兄妹の超能力者だった。男が他の超能力者に負けたと知り、報復のために主人公と女性は組織から追われる身に。そして二人は組織から送り込まれた男たちを死に追いやった。このことで、主人公と女性は今度は警察から目を付けられることになる。
警察の男は、探偵の男に事件の調査を依頼する。しかしこの事件に関して調査ができるのは秘書的な立場にいた女性だという。女性はこの事件を超能者が起こした事件だとして、主人公と女性を追うことに。
「主人公VS闇組織VS警察・探偵秘書」の構図は、物語が進むうちに変化していきます。敵対すると思いきや協力したり、駆け引きも見どころの一つ。
戦闘シーンはシリアスで重厚感があり、相手の超能力を看破する頭脳戦でもある。それなのに文章自体が重たくならず、戦闘シーン特有の爽快感がある。
文章力、構成力、表現力が光る素晴らしい作品です。
是非、御一読ください。