概要
たった一人がいないだけで世界はこうも違うのか。つまり暴れ過ぎた
中年が一人寂しく酒を飲む。人生の途中で足を止め、目的意識もない。ただ、そこにいるだけの空虚。しかし大いなる、もしくは馬鹿げた陰謀に巻き込まれ、命を狙われる少年と出会った。無価値な玉座から立つ時が来た。人生の責務など果たさなかったが、大人としての面子はまだ残っている。空っぽでも見栄の残骸はある。男の生き方なんてそれがあれば十分。なにも握らなかった手で拳を作る。なにも乗せなかった肩に少年を乗せる。子供を連れた男の旅が始まろうとしていた……が。彼がいないこそ世界は睨み合っていた。彼がいないこそ強者達は栄達を極めていた。彼がいないこそ技術は発展した。結構、大いに結構。這いつくばることはない。惨めな死を迎えることもない。無価値だと捨てられることもない。偉大にして高慢なる国家は我が世の春を謳歌し、強者達