バリアのようなものになりたい

　土地の名が記憶となり、誰かの涙や希望、春の残響として染みわたる10の歌。

　目に浮かぶウクライナの景色、花曇りの命、紫のネイルや耳の煌めき――戦火のなかで人のぬくもりが静かに息づいています。「バリアのようなものになりたい」という願いに、痛みも祈りも包み込む優しさがにじんで、読後、心の奥に青く淡い光がともるようでした。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（317文字）

なかなか怖くて戦争のニュースに目を向けられません。
朝、ニュースを見て、ミサイルが落ちたと聞き、そのまま何も出来ずに出かけます。

その時に感じる感情は、まさに「淋しさ」だと思いました。
きっともっと考えなくてはいけなくて、何か行動をし、何か発言しなければいけなくて、でも、今日も日常の中に身を隠してしまいます。

日々世界で命が失われる中、その事が耳に入った瞬間に、心が崩れていくようです。

こうして今、人々が崩れる心や魂を抱えて生きているのだと感じた、このままでは皆がいけないのだと気づかせる力のある渾身の十首です。

人は生きる、戦地でも。命は尽きる、平和でも。時間は平等でも、環境は不平等だから、平和の中に生きる者として何が出来るのか、何をすべきかを訴えかけてくる、強力なメッセージの十首です。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（111文字）

スクリーンの向こうにタイムリーに告げられる終わらない戦争は、決して対岸の火事ではないのだ、と気付かされます。
この今も、私たちと同じ空を見上げている罪なくして苦しむ人々。
私たちはなにを考えるべきか、何をするべきか、問いかけられる短歌です。
もっと多くの日本の方々に、この十首に触れていただきたい。

カクヨムの詩の帝王（？）、滝口アルファさんの短歌連作です。

圧倒されました。洗練された表現、揺るがない核。
私は3首目が好きです。たった31文字で、こんなに複雑な感情を共有できるなんて。

このテーマで歌える内容を、隅々まで丁寧に歌い切られた。悔しくもならないレベル。この10首を作り切った精神力に敬意を表したいです。

なんにせよ、真剣に短歌に向き合おうと感じました。隅々まで、慎重に、甘えずに。
せっかくの機会なんで、みんなで短歌をやりましょう。