黄昏の宙で

24世紀。人類は宇宙に広がっていた。超光速航行ネットワークが銀河中に広がり、ナノテクノロジーによる自己修復素材、惑星規模の環境テラフォーミング、完全没入型VR、遺伝子工学による不老長寿、そして自律思考型AIなど、想像上の物でしかなかった人類の夢が実現されていた。

が、2302年に悲劇が起きた。全宇宙の情報を繋いでいた超高度AIネットワーク『ユニバーサル・マインド』が、何らかの理由で機能停止を起こした。
これは社会インフラ、特に惑星間航行システム、通信網、エネルギー供給網の連鎖的な麻痺を広範囲に発生させ、多くの星系が孤立したのである。

この悲劇は、『大静寂』と呼ばれた。

それから、およそ200年。人類は緩やかな衰退と再編の時代にある。かつての星間国家は瓦解し、中央集権的な統治機構はほぼ存…続きを読む