概要
翌朝、馬車ごと崖下へ――炎の中で「事故死」として帳簿から抹消されるはずだった。
目覚めた彼女の手元に残っていたのは、父が命を賭して託した《帝国破産の帳簿》と、まだ署名されていない自分の死亡届。帝都ではすでに「エリアーナは死んだ」と処理済み。
死んだことにされた元悪役令嬢は、名前も身分も捨てて「死人文官シュアラ」として雪深い辺境ヴァルム砦へ向かう。
そこは、補給は横流し、兵は飢え、「冬を越せば半数が死ぬ」と囁かれる死の最前線。しかも帝都は、この砦ごと「切り捨てる実験」を始めようとしていた。
「三ヶ月で、この砦の死亡率をゼロにしてみせます」
数字を武器に帝国の腐敗を抉る死人文官と、敗戦の汚名を背負いながらも兵を
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!静かに崩れて、静かに立ち上がる物語
最初の数行で「あ、この作者さん、空気の層を扱える人だな」と思いました。
派手な展開を求める人には向かないかもしれません。
けれど、構造の密度が高い物語が好きな人には、かなり刺さるタイプです。
舞踏会での温度、視線の重さ、布の張りつき、人物同士の認識の速度差。
こういう細かい観測が、物語全体の土台を静かに形づくっています。
テンプレ風のシーンでも、
外側ではなく 内側の論理で動いているのがよく分かりますね。
気を抜いて読むと見落とすような小さな歪みが、後半に入る頃にはちゃんと効いてくる。
個人的には、エリアーナの「感情より構造が先に動く」描写が好みでした。
彼女の視点は淡々としてい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!数字しか信じない悪役令嬢が、帝国の破産帳簿を抱えて辺境へ
「あなたは数字しか見ていない」
——婚約破棄の舞踏会で王太子に告げられた言葉。しかし財務長官の娘エリアーナにとって、それは侮辱ではなく事実でした。
シャンデリアの蝋燭の本数、式典の予算、聖女への寄進額
——すべてを帳簿で見る彼女は、崩壊寸前の帝国を数字で理解していました。そして婚約破棄の翌日、彼女は「事故死」します。
父から託された『帝国破産帳簿』を胸に、死人文官「シュアラ」として向かうのは辺境ヴァルム砦。そこで出会ったのは、敗戦の責を負わされ左遷された騎士団長カイ・フォン・ヴォルフ——。
帝都に見捨てられた砦で、帳簿を武器に帝国再建を目指す手腕が見どころです。感情より計算、ロマンスより財政…続きを読む - ★★★ Excellent!!!死人文官が辺境砦から帝国の帳簿を書き換える
王都で婚約破棄を言い渡されるのは、“泣き叫ぶ悪役令嬢”ではなく、冷静にシャンデリアの維持費を計算している財務長官令嬢。
彼女が帳簿と条文で殿下を論破していく序盤から、かなり毛色が違います。
帝国帳簿上では「死亡」と処理されつつ、手元には父の遺した『帝国破産帳簿』と、宛名の空欄のままの死亡届をもって。髪も名前も捨てて、辺境砦へ向かいます。
敗戦将カイとの出会いも含め、「世界を見て盤面を組み替える」物語としてのワクワクがすでに詰まっています。ここから本格的に“帝国建て直し編”が始まる予感しかしません。
悪役令嬢×辺境再建×帳簿チートにピンときた方にお薦めです!