先日の記事「#5560. 7月27日(土)の朝カル新シリーズ講座第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」のご案内」 ([2024-07-17-1] ) でお知らせした通り,昨日朝日カルチャーセンター新宿教室 にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」 の第4回「現代の英語に残る古英語の痕跡」を開講しました.今回も教室およびオンラインにて多くの方々にご参加いただき,ありがとうございました.
古英語と現代英語の語彙を比べつつ,とりわけ古英語のゲルマン的特徴に注目した回となっています.古英語期の歴史的背景をさらった後,古英語には借用語は比較的少なく,むしろ自前の要素を組み合わせた派生語や複合語が豊かであることを強調しました.とりわけ複合 (compounding ) からは kenning (隠喩的複合語)と呼ばれる詩情豊かな表現が多く生じました.ケルト語との言語接触に触れた後,「#1124. 「はじめての古英語」第9弾 with 小河舜さん&まさにゃん&村岡宗一郎さん」 で注目された Beowulf からの1文を取り上げ,古英語単語の語源を1つひとつ『英語語源辞典』で確認していきました.
以下,インフォグラフィックで講座の内容を要約しておきます.
古英語の語彙を探る
1
古英語の時代
・ 449年:アングロサクソン人のブリテン島到来
・ 597年:キリスト教の導入
・ 8世紀末:ヴァイキングの侵攻開始
・ 1066年:ノルマン征服(古英語時代の終わり)
2
古英語の語彙
・ 約3万語
・ 97%が固有語彙,3%が借用語
・ 現代英語の基本語彙の大半が古英語起源
・ ラテン語からの借用語は450--600語
3
古英語の語形成
・ 派生と複合が豊か
・ 接頭辞は主に意味を変化,接尾辞は品詞を変化
・ kenning (隠喩的複合語(例:「海の木」=船)
・ 頭韻が詩で広く使用される
4
古英語へのケルト語の影響
・ ケルト語からの一般的な借用語は少ない
・ キリスト教を通じて一部の宗教用語を採用
・ 例:ass(ロバ),cross(十字架),curse(呪い),dun(暗色の)
・ 地名には大きな影響(例:Cumberland, Exeter)
5
Beowulf より: Wyrd oft nereð unfǣgne eorl, þonne his ellen dēah.
・ 訳:「運命はしばしば死すべき運命にない勇士を救う,
彼の勇気が役立つ時に」
・ wyrd(運命):印欧祖語の語根 *wer-(回す,曲げる)から,weird と関係
・ oft(しばしば):歴史的に often と競合
・ unfǣgne(死すべき運命にない):fey に否定の接頭辞 un- を付加
・ eorl(伯爵):元々は「貴族」,後に「伯爵」に特化
・ þonne(〜の時):<þ>(ソーン)は中英語で <th>に置き換わる
・ ellen(勇気):初期中英語後に廃語となる
・ dēah(良い/強い):古英語 "dugan" から,doughty と関連
次回第5回は8月24日の開講となります.「英語,ラテン語と出会う」と題して,古英語期のラテン語との接触に注目します.お申し込みはこちら からどうぞ.多くの方々のご参加をお待ちしています.
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