PSE法問題は、中古家電や楽器やオーディオだけの問題じゃない! [PSE]
先日、割と気軽にAVヲタク的切り口で、この問題を取り上げたわけですが、これからが本論です。
本問題は、ビンテージ楽器やビンテージオーディオを愛する音楽家やA&V;ファン、中古電気製品の売買を行う中古品販売業者の狭い範囲の問題に矮小化されて報道される傾向がありますが、実際には、そのような小さな問題ではありません。(坂本龍一氏らの署名活動それ自体は評価しますが、その一方で、一般の人々の生活に無関係な特殊な世界のものと、誤解される危険性をはらんでいます)
電気用品の範囲等の解釈について 平成17年11月1日作成(平成17年11月14日更新)を見ますと非常に広範囲の電気製品が対象になっているのがお分かりと思います。ニュースで、中古家電と扱われていますが、それが誤りであることがお分かりと思います。この文章では、今後、中古電気製品という言葉を使います。
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/haninokaishaku.pdf
工場で使われるような高価(ものによっては、何千万円の値段です)な工作機械や医療器具のようなものが、転売付加になることにより、市場価値がなくなり、企業としての資産価値を失います。企業資産や経営に深刻なダメージを与える可能性も指摘されています。特に、町工場といった中小企業のダメージは大きいのではないでしょうか?
さて、本法案にかかわった、経産省消費経済部長の谷みどり氏が開設していて、反論コメントの多さからか閉鎖されてしまった“谷みどり消費者情報”にこのようなエントリーがありました。丸写しに成りますが、(どう言い訳しようと)経産省官僚である公人が業務の一環として開いたBlogですので、特に問題はないでしょう。引用記号と改行は私のほうで付け加えました。
> 2006年02月13日
> 電気用品安全法のPSEマーク
> テレビや冷蔵庫など電気製品を買う時は、技術についてそれほど詳しくない
> 私でも、感電したりしないような安全な製品を買えるようにしてほしいと思いま
> す。親戚の家や旅館など、私が行く先の電気製品も、安全な物であってほしい
> と思います。
> うちのご近所の人が電気製品を買う時も、漏電で火事を出したりしないよう
> な製品を買ってほしいと思います。特に日本は、人口密度が高い街や燃えや
> すい住宅も多く、火事はとても怖いのでできるだけ防いでほしいと思います。
はい。ここまでは、私もそのとおりだと思います。だれだって、火災の危険があるような電気製品なんて要りませんね。行政に何かを望むとすれば、たとえば粗悪な海外製電気機器が国内で流通しないような検査であり、仕組みづくりだと思います。
さて、ここから彼女のBlogでは、とんでもない論理の飛躍があるのです。論理の飛躍というよりはすり替えといったほうが正しいかもしれません。
> こんな願いをかなえようとするもののひとつに、製品安全の制度があります。
> 今の制度では、対象となる製品には安全のために製品ごとに作られた基準に
> 合っているというPSEマークをつけて、この製品を製造又は輸入してその基準
> に合っていることを確認した事業者の名前なども表示することになっています。
> この制度は、7年前に改正され5年前に施行された「電気用品安全法」という
> 法律で決められています。施行からしばらくの間は、改正前の古い法律の表
> 示をつけた製品も販売が認められていましたけれど、猶予期間が5年の製品
> については、今年度末で期限が切れます。猶予期間の後に販売事業を行う人
> が対象製品を売る時は、今の法律に合った表示がついている必要がありま
> す。個人が自分で使うために買った物を不要になった時などに売る場合は、
> この法律の対象外です。
> 詳しくは、こちらをごらんください。
>http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/keikasochi/keikasochi_q&a.htm
さて、どうですか?
PSEマーク以前の電気製品がすべて危険なものであるのであれば、この論法も正しいのでしょうが、もちろん、その答えはNo.です。一部の、現在の安全規格に適合しない製品や、経年変化で劣化して危険な状態のもの以外は、なんら問題が無いはずです。もちろん、PSEマーク以前にも電気製品に関する法律はありました。電気用品取締法といいます。〒マークのようなものに見覚えがあるでしょう。
http://www.jet.or.jp/consumer/pse/index.html
今回、PSEマーク以前の電気製品を駆逐するために、それ以前のすべてのものを市場から排除しようとする、非常に不自然な行為が行われようとしています。このことが、いろいろな憶測を呼ぶ原因にもなっているのですが、本Blogではそういった内容は取り扱わないことにします。
また、PSEマーク取得自体、非常にコストがかかるため、一種の非関税障壁のような働きをしているのも問題なのですが、この件は機会があれば、別途取り上げようと思っています。
さて、繰り返しますが、本来の目的は、“経産省消費経済部長の谷みどり氏のBlog”にもありましたとおり、消費者が「安全な製品を買えるようにする。」事であるはずです。PSEマークを取得していない電気製品の流通ストップではありません。
電気的知識を持たない中古販売店により、ノーメンテナンスの状態で販売される中古電気製品は私も危険だと思います。電子部品は劣化しますし、内部にたまったホコリは、ショートや火災の原因にも成ります。そのままは電源をONにすることも危険な中古電気製品が販売店(業者から購入した中古電気製品が危険と思う一般消費者は少ないでしょう)経由で流通するのは問題があると思います。中古電気製品の扱いが、(古物商であることは別として)、何の資格もなしにできることは問題かもしれません。
当初の目的から考えると、私は、中古電気製品の販売にある種の免許や状態を確認する資格、一定の基準を満たすことを証明するためのテスト項目等を設定(一度、電気用品取締法下で許可が得られているものですから、このテスト項目は、ある程度力のある販売店であれば可能な範囲のものになるはずです。)し、販売業者にはテストを義務付けることが必要でしょう。販売者に対すて、PL法のような形の制限や、何らかの保険制度も必要に成るかもしれません。これらのように、考えなければならないことは山ほどありますが、世の中の既存の資産をすべて捨ててしまう暴挙からみたら、よほど意味のあることではないでしょうか?
ある目的を達成するには、いくつかのやり方が考えられますが、そのもっとも乱暴なやり方を経済産業省が行おうとしています。何をなすべきで、何をなすべきでないか?それすらもまともに理解できていない能力の欠落を感じずに入られません。
私は、地元の国会議員にメールを出すところから、次のステップを始めました。
いま、一番危険なのは、国民全体に無関係な、ビンテージ楽器やビンテージオーディオを愛する音楽家やA&V;ファン、中古電気製品の売買を行う中古品販売業者、オークション利用者の狭い範囲の問題に矮小化されることです!!!
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2006/02/19(Sun) <!--adsense#default2--> 2006年4月1日から、PSEマークがついていない2000年以前に製造の電機製品が中古販売できないということで、ハードオフなどの中古販売店では、先々週末から、特別価格で、これら対象製品の投売...[続く]
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