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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜 - 香水で結ばれた証 ※第一王女→第2王子視点
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第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜  作者: 国士無双
第2章:王子様、ぼくを探さないで

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香水で結ばれた証 ※第一王女→第2王子視点

【※注意】最初は第一王女視点です。

途中から、第2王子視点になります。

後書きは、ルル視点です。

 あの後、変なトラブルに巻き込まれることもなく、ぼくの性別が他の吸血鬼族にバレないように、ニコくんが香水をつけてくれた。


「これで……もう大丈夫だ」

「あっ、ありがとう。ニコくん……」


 目を合わせた途端、ニコくんは照れ隠しするようにそっぽを向いた。


「気にするな。オレが勝手にやっただけだ」


 そんなことを言いながらも、ニコくんの横顔の耳たぶが赤くなっているのに気づいて、ぼくはクスクス笑ってしまった。


(知ってるよ。ぶっきらぼうでも、本当は面倒見が良くて、優しいってこと……)

 

「えへへ。ニコくん、耳たぶが赤くなってるよ?」

「仕方ないだろ。君の顔だって、真っ赤じゃないか」

「えっ……!」


 図星を指されて、ぼくも照れくさくなった。


(まさか、あんな風に触られるとは思っていなかったから。恋人みたいに……)

 

 その恥ずかしい理由には触れず、別のことを口にした。


「うん……香水をつけてもらうの、初めてだったから」

「そうか……」


 二人して黙ってしまい、気まずい空気になる。


(どうしよう……なんだか、意識しちゃう。ニコくんが触れたところ……まだ温かくて、そこだけ時間が止まっているみたい)


 息がつまりそう。

 

 だけど、この甘ったるい雰囲気に、耐えきれなくなったのか――キーホルダーだったルルが、ぱっと本来の姿に戻った。


「お二人さん! イチャイチャしてるところ悪いけど、そろそろ行かないと遅刻よ〜?」


 天使の羽をパタパタさせながら、声をかけてくれた。


「ルル!」

「とりあえず、学校に行きましょう? まぁ……ニコくんが移動魔法を使うのなら、話は別だけど」

「ダメだよ! 今日はもう、これ以上迷惑をかけられないから、歩いて行くよ!」

「そうね。あら、この香水……ちょっぴり、アールグレイの香りがするわ。わたしの好きな匂いよ。これなら、サラちゃんのこともバレないし、“この子はオレのもの”って、主張できるわね。さすが、ニコくん」


 ニコくんのことを褒めてから、ルルはくるりと回転し、再びキーホルダーの姿に戻っていった。

 ニコくんは、ルルの褒め言葉に、ニヤリと笑っていた。


(ルルったら……。“この子はオレのもの”だなんて、少女漫画みたいなセリフ……)

 

 でも、ルルの言う通りだ。

 柑橘系――ベルガモットの爽やかな香りがした。


「あっ。確かに……紅茶の香りもするね! じゃあ、ニコくん。一緒に、学校行こうよ?」

「あぁ」


 こうして、ぼくは、ニコくんと並んで歩き出す。

 行き先は、いつもの学校なのに、今日はどこか特別な気がした。


(あれっ……?)

 

 風が吹いた瞬間――ニコくんと同じ香りが、自分の体からもふわりと漂った。

 まるで、二人だけの秘密を、こっそり共有しているみたい。


(香水って……すごい……!)


「ねぇ、ニコくん! 同じ香りだね!」

「ん……」

「その……さっきはありがとう。教えてくれて……」

「気にするな」


 ニコくんはポケットに手を入れたまま、前を向いて歩いている。だけど、歩幅はちゃんと、ぼくに合わせてくれていて、ぼくが小走りする必要はなかった。


(クールなのに、そういうところは紳士なんだよね……)


 意外な一面を知って嬉しくなったぼくは、自然と笑みがこぼれていた。

 なんだか、ニコくんの秘密を見つけた気がして。


「なに笑ってるんだ?」

「ううん! なんでもないよ〜?」


 二人で校門をくぐると、周囲がざわついていた。


 ふと前方を向くと、ダン先輩が、一般科の生徒たちと並んで立っていた。

 いつもと同じように前髪を上げていたけれど、白いTシャツに学ラン姿――一般科の制服を着ていた。


(珍しい……! ダン先輩、今日は一般科で活動するのかな? それにしても、Tシャツ姿、初めて見たかも!)


 驚いて見とれていたら、「サラ、おはよう!」とダン先輩の方から挨拶してくれた。


「ダン先輩! おはようございます!」

「あぁ! ニコもおはよう」

「うす……」

「ニコ……その……」


 ニコくんも一応、挨拶は返していたが、その素っ気なさに、ダン先輩は片眉を上げた。


(待って! 他の生徒がいる前で注意されたら、ニコくんが悪目立ちしちゃう……。今日、ぼくはニコくんに助けてもらった。あぁっ、考えてる時間がない……!)


「だっ、ダン先輩! がっ、学ラン……す、素敵ですっ!」


 朝の校舎で、自分の声がやまびこのように反響した。

 

 時間がピタリと止まる。


(うわぁあああっ! なんで、学ランのことを言っちゃったんだろう! もっと気の利いた言葉、絶対あったのに……。久しぶりに学ラン姿を見たから、つい気になっちゃって……)


 ぼくは一気に羞恥を覚えた。


(今のぼくの目、ぐるぐる渦巻いてるかもしれない! はぁ……穴があったら入りたい。この際、ドーナツの穴でもいいから……)


 でも、ダン先輩は怒るどころか、すぐに屈託のない笑顔をみせた。

 

「サラ……! 本当か? ありがとう! またな!」

「はい! それでは、失礼します! 行こう、ニコくん!」

「そうだ。サラ……いつもと違う香りが……」


 ぼくは慌ててニコくんの背中を押し、早歩きでその場を離れることにした。

 去り際に、ダン先輩が何かを言おうとしていたけれど、聞き取れなかった。


 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎


「あぁ……行ってしまった」


 二人の後ろ姿を見送りながら、気付かない振りをしたかった。

 でも、もうわかっていた。


(さっきの香り……)


 スパイシーで上品な香りに、蜜柑のような爽やかさがほんのり混じっていた。

 そして、その香りは、ニコの制服の襟元からも漂っていた。


 サラが誰と登校しようと、どんな香水を纏おうと、自由でいてほしい。


 そう思っているが……二人とも、同じ香りを纏っていた。

 その事実に、胸が締め付けられる感じがした。


(サラは、香水をつけたことがない。なのに、あの香りをまとっていたということは。まさか、ニコが直接つけてやったのか? もしかして、二人は親しい間柄に……?)


 それに、サラが言ってくれた「学ラン、素敵です!」というあの唐突な一言が、今になって、じわじわ効いてくる。


「サラは……ニコのことを守ろうとした。そして、わたしのことも気遣ってくれた……」


 その素直さが、可愛くて仕方ない。

 できることなら、何があっても、わたしのもとに置いておきたい。


 だが、ニコも王子だ。

 もし、サラがニコを選んだら……?

 

「はぁ……」


 朝の、ごく短い時間だったのに。

 どうして、こんなにも、心を揺さぶられてしまうのか――。


(やっぱり、ちゃんと話をしたい。君と、二人きりで)


 放課後、部室で集合する予定だったけれど……サラのクラスに、顔を出してみようと思う。

 

 責めるつもりなんて、ない。ただ、知りたいんだ。

 あの香りを、なぜまとうことになったのか――その理由を。


「よし……」


 わたしは深呼吸して、心に決めた。


「サラ、待っていてくれ」


(どうしてなんだろう。サラのことが、気になる。目で追ってしまうし、誰にも渡したくないとさえ思ってしまう……)


 本当に、わたしらしくない。

<余談:ルル視点>【わたしは、恋の提唱者】


(やっぱり、わたしの見立ては正しかったわね)


 サラちゃんに香水をつけてあげるなんて、ニコくんったら、やるじゃない。

 ぶっきらぼうに見えて、あんなに優しく触れるなんて……。

 サラちゃんもドキドキしちゃうわよね。


 けれど、今朝の一幕で、ニコくん以外にも気になった人物が現れた。


 第2王子ことダン先輩。

 彼は“第一王女”だけでなく、“サラ”ちゃん本人にも、心を動かされているわ。


(うふふ……やっぱり、恋の香りは隠せないのよ)


 サラちゃんのあの一言。唐突だったけど、響いたみたい。

 ダン先輩は照れながら、嬉しそうに笑ってた。


 それに、わたしは見ていた。

 サラちゃんとニコくん、ふたりの後ろ姿をじっと見つめていたあの表情――あれは、恋の矢が刺さった証拠。


(こりゃ、ますます面白くなってきたわね)


 ニコくんは不器用な片想い。

 ダン先輩は、想いが揺れている複雑な恋心。

 そして、サラちゃんは、自分が誰に惹かれているのか、全く気づいていない。


 そんな三角関係が、動き始めている。


(でも、いつか必ず、誰かの矢が“的”に届く。恋の矢って、そういうものだから)


 わたしの使命は、その瞬間まで、そっと背中を押してあげること。


 サラちゃんが本当に好きな人と結ばれるように――。


 がんばれ、みんな。どの恋にも、ちゃんと“光”がありますように。


(あっ、でも思い返せば……第5王子に、第7王子のルーさん。それに、エスプレッソ伯爵も……。うふふ、三角関係どころじゃないかも!)


 それにしても、ダン先輩とニコくん。

 磁石のN極とS極のように、性格が正反対の二人から好かれるなんて。


(わたしの主人は、本当に素敵な王女様ね)


 さあ、次の矢は、誰の心に刺さるのかしら?

 恋のキューピーラビット、ルルの出番は、まだまだこれからよ。

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