25 sideアメリア
火球が命中した瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなった。
──できた。ちゃんと、当たった。
この数日間、お兄ちゃんと練習したあの時間が、無駄じゃなかった。
思わず、観戦席にいるお兄ちゃんの顔を探したくなる。……だけど、気を抜くのはまだ早い。
次の瞬間だった。
対戦相手の火球が、空気を裂いて暴れ出した。軌道がめちゃくちゃで、どう見ても制御されていない。熱風と共に燃え上がる塊が、真っ直ぐにわたしの方へ――
「っ、いや……! お兄ちゃん、助けて!」
足がすくむ。避けようとしても身体が動かない。
頭の中が真っ白になるその瞬間――
「離れてろ、アメリア」
聞き慣れた、低くて落ち着いた声がすぐそばに落ちた。
次の瞬間、目の前にお兄ちゃんの背中が現れる。
すっと、右手が空へ掲げられ、そして、見たことのない魔法が展開されていく。風の音が唸り、雪のような粒子が炎を包み込む。肥大化した火球が、嘘みたいにすうっと消えていった。
目の前の世界が、白く染まる。綺麗。だけど……それよりも、恐怖の底から引き上げてくれたその背中が、何よりも、あたたかかった。
気がつけば、わたしはお兄ちゃんの袖をぎゅっと握っていた。
「……ごめんなさい、私、ちゃんとやれたのに……最後、迷惑かけちゃった……」
言葉が震える。情けなくて、悔しくて、でも安心して……涙が滲みそうになる。
「ちゃんとうやれてたな、偉いぞ……むしろおまえを守れて俺は嬉しい」
お兄ちゃんの声は、ひどくやさしくて。その一言で、張り詰めていたものが一気にほどけてしまいそうになる。
「おまえの魔法は凄かったぞ。胸を張れ、アメリア」
この手を取ってくれる人がいる。
どんなときも守ってくれる人が、こんなに近くにいてくれる。
あの頃の私には、想像もできなかった。
今なら言える。心から言える――
私のお兄ちゃん……私の家族。世界で一番、大切で、あたたかい人。
わたしは今、とても幸せだ。