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ルミナリーファンタジーの迷宮 - 第二章31  『ソロモンの宝玉』
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ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第二章 ソロモン島編
73/187

第二章31  『ソロモンの宝玉』

 (とびら)の先は――


「お~!」

 凪が感嘆(かんたん)の声を上げる。

 俺は、景色(けしき)自体をハッキリ(みと)める前に、その(かがや)きに目を(うば)われた。

 なぜなら、部屋一面に金貨(きんか)宝石(ほうせき)短剣(たんけん)にアクセサリーに宝箱(たからばこ)()()くされ、光り(かがや)いていたからである。

「この部屋……! ここに、《ソロモンの宝玉(ほうぎょく)》があるんだ」

「だろうね。ぼくたちはやっと見つけることができたらしい」

「すごいです! お宝の山じゃないですか! なにか持って帰りましょうよ」

「これって、あの石碑(せきひ)を残した海賊(かいぞく)(かく)した財宝(ざいほう)なのよね。なんだかロマンチック~」

 逸美ちゃんは語尾(ごび)にハートが付きそうなうっとり顔でお宝を(なが)め、鈴ちゃんは(ゆか)の回転が止まるとさっそく品定(しなさだ)めに行っていた。

 ()(さき)に宝探しを始めたと思った凪がふらりと(もど)ってきた。

(かい)

 ()ばれて横目に見る。凪はふふっと嬉々(きき)とした微笑(びしよう)(たずさ)えて、目の()めるような青色をした宝玉(ほうぎよく)を俺に向ける。


挿絵(By みてみん)


「これがそうさ。やったね。まず一つ目だ」

「ああ。《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》、ゲットだな」

 綺麗(きれい)宝玉(ほうぎよく)だ。

 見せて、と言って俺は凪の手から《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》を取ると、まばゆい青い光が一層(いつそう)(かがや)くようだった。

「サファイヤとはまた(ちが)綺麗(きれい)さですね」

 鈴ちゃんが横から顔をのぞかせた。

 俺は《ソロモンの宝玉(ほうぎょく)》を見つめて言った。

「海を(わた)ったり海賊(かいぞく)と戦ったり、水の仕掛(しか)けを()いたり、水に関連(かんれん)するものが多かった。また、この神殿(しんでん)の入り方にもヒントがあった」

「開、なんの話さ」

 目を丸くする凪に、俺は推理(すいり)()べた。

「これが、七曜(しちよう)におけるどの星に当たるミッションだったかって話だよ。で、神殿(しんでん)の入り方だけど、なんの動物がいたか覚えてる?」

「ヘビ、ワシ、二匹(にひき)のオオカミです」

 と、鈴ちゃんが答えた。

「うん。そう。ヘビは《ケリュケイオン》のヘビを、ワシはメルクリウスの象徴(しようちよう)の一つ、二匹のオオカミはオーディンの二匹のオオカミを指していた」

「オーディン?」

 凪と鈴ちゃんが二人そろって首をかしげた。

「そういや、開。なんか、この《ゴダン神殿(しんでん)》のゴダンもオーディンのことだとかなんとか、そんな話してたよね?」

 うん、と俺はうなずく。

 逸美ちゃんから聞いた話を元に、解説(かいせつ)する。

北欧神話(ほくおうしんわ)において、オーディンは水曜日(すいようび)を表す神だ。ローマ神話(しんわ)のメルクリウスやギリシャ神話(しんわ)のヘルメスに当たる。で、オーディンは二匹(にひき)一対(いつつい)のオオカミを()(したが)えていた。オオカミが一匹だけなら、火曜日(かようび)(つかさ)軍神(ぐんしん)アレスのほうがそれらしいけど、オオカミの二匹にはそういう意味があったといえる」

 逸美ちゃんはなるほどとうなずいた。

「だから開くん、ヘルメスやメルクリウスやオーディンの話を聞いたのね」

「うん。おかげで、水曜日(すいようび)が《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》だとわかったわけさ。神々の中でもっとも(かしこ)いと言われるヘルメスだし、ソロモンを(かん)するアイテムにふさわしいしね」

「でも、オーディンはユグドラシル――つまり世界樹(せかいじゆ)との関連(かんれん)が深いって話もしたわよね?」

 実はあのあと、オーディンについての話を聞いたとき、そんな話も聞かせてもらった。

「名前の由来(ゆらい)だね」

「うん。ユグドラシルのユグはオーディンの異名(いみよう)のひとつから来ているって話もある。オーディンの馬を意味しているって(せつ)よ。《世界樹(せかいじゅ)(はな)》が水星(すいせい)ではないってことよね?」

世界樹(せかいじゅ)北欧神話(ほくおうしんわ)だからね。だから世界樹(せかいじゅ)との関係(かんけい)もあると思うけど、(ほか)にもなにかあるような気がするんだ」

 ただ、それがなんなのか、まだわからないけれど。(ぎゃく)に、《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》が水星だという証拠(しようこ)がそろったから、確信(かくしん)できた。

「とりあえず、ボスの蛇神(じゃしん)カドゥケウスがまんま《ケリュケイオン》だったし、《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》が水星だと推察される」

「まあ、なんだっていいじゃないか。クリアしたんだし」

 凪がのんきにそう言って、《ソロモンの宝玉(ほうぎょく)》を手に取ろうとした。

 が。

 次の逸美ちゃんの言葉で、凪の動きが止まる。

「開くん。これ、実は《賢者(けんじゃ)(いし)》なんじゃないかしら?」

 これには、俺と凪と鈴ちゃんが三人そろって(おどろ)いた。

「逸美ちゃん、それどういうこと?」

「《賢者(けんじゃ)(いし)》はメルクリウスと深い(かか)わりがあるのよ。両性具有であり、《賢者(けんじゃ)(いし)》となって光り(かがや)くと言われたりとかね、あとは錬金術(れんきんじゅつ)()でもあるから、錬金術(れんきんじゅつ)象徴(しょうちょう)でもある《賢者(けんじゃ)(いし)》は、メルクリウスのアイテムにふさわしいわ」

 そうか。

「あの石碑(せきひ)にあった《賢者(けんじゃ)(たから)》ってそういう意味だったのか。(ふね)石碑(せきひ)があったあの洞窟(どうくつ)も、《アマルガムの洞窟(どうくつ)》だったしね」

「どういうことですか?」

 と、首をかしげる鈴ちゃんに、俺は説明する。

「アマルガムは水銀(すいぎん)(ほか)金属(きんぞく)との合金(ごうきん)だ。で、この水銀(すいぎん)ってのが、水星(すいせい)やメルクリウスを表すとされている。だったよね?」

 逸美ちゃんに聞くと、うんとうなずいた。

「自由に天地(てんち)()け回ったメルクリウスやヘルメスを、流動性(りゆうどうせい)金属(きんぞく)である水銀(すいぎん)(むす)()けて考えられたのよ」

「そうだったんですか」

 深々(ふかぶか)と感心する鈴ちゃんである。

 しかし、俺の《天空(てんくう)(つるぎ)》が《魔剣(まけん)グラム》だったように、《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》は《賢者(けんじや)(いし)》だったのか。

 おもしろい(なぞ)()きになっている。わずかに残っていた、《世界樹(せかいじゆ)(はな)》が水星かもしれないという可能性(かのうせい)が消え、《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》が水星だと確信(かくしん)に変わった。ヘビ、ワシ、二匹(にひき)のオオカミは、(ほか)の神の聖獣(せいじゆう)とかぶることがあっても、ただのヒントだ。でも、水銀(すいぎん)と《賢者(けんじや)(いし)》はこれしかあり()ない。

「ふうん。なるほどね。つながるもんだ。まあ、それを知らないとクリアできないわけでもないし、製作者(せいさくしや)意図(いと)を読み取るアドバンテージをぼくらが持っている、くらいに思っていれば良さそうだね。いまのところはさ」

 凪の言い(ぶん)に、鈴ちゃんがうなずく。

「ですね。でも、そういう背景(はいけい)設定(せつてい)まで気づけると、より楽しめている気がしますね。なんかお(とく)(かん)があるっていうか」

「うん。攻略本(こうりやくぼん)をいちいち買う鈴ちゃんらしいね。でもその通り。楽しまなきゃ(そん)さ」

「そうですね。って、攻略本(こうりやくぼん)を買うくらいいいじゃないですか」

「誰もダメだなんて言ってないじゃないか」

 言い合っている凪と鈴ちゃんの横で、俺は《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》を(にぎ)りしめる。

「よし。これは俺が(あず)かろう」

「おいおい。ちょっと待っておくれよ。見つけたのはぼくだぜ? それに水星はぼくのアイテムだ」

 抗議(こうぎ)してくる凪に、俺は揶揄(やゆ)するように言い返す。

「おまえが持ってたんじゃ(あぶ)なっかしいからな」

「ひどいなあ。でも、まあいいや」

「いいのかよ」

 案外(あんがい)こういうときでもあっさりしてるというか。あっけらかんとしている凪は、頭の後ろで手を組んで、

「ぼくはキミを信頼(しんらい)してるからね。なくさないように(たの)むぜ、相棒(あいぼう)

「だっ、大丈夫(だいじようぶ)だよ。おまえじゃないんだし、絶対になくさないよ」

 信頼(しんらい)とか()ずかしいことを平気でさらりと言うやつだ。俺は顔をそむけて、自分のアイテム(らん)に《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》を追加(ついか)した。

 と。

 ここで、目の前に大きな人影(ひとかげ)()かんだ。(かげ)はすぐさまハッキリとした姿(すがた)(あらわ)す――海賊(かいぞく)だ。目には見えるが身体(からだ)()けている。

 幽霊(ゆうれい)か?

 疑問(ぎもん)を口にする前に、海賊(かいぞく)は俺たちに言った。


『このキャプテン・グスタフが生前(せいぜん)(かく)した秘宝(ひほう)――《ソロモンの宝玉(ほうぎよく)》をよくぞ手に入れた。はるか昔、この宝玉(ほうぎよく)は、ソロモン王が三賢者(さんけんじや)によって作り出し、持つ者に知恵(ちえ)をもたらしたという逸話(いつわ)がある。この宝玉(ほうぎよく)を手にした者にも、その加護(かご)があらんことを』


 それだけ言って、キャプテン・グスタフの亡霊(ぼうれい)は消えた。

(れい)となって最後に姿(すがた)(あらわ)すなんて、イイ演出(えんしゆつ)じゃないか」

 満足(まんぞく)そうに言って、凪がひらりと身をひるがえらせる。

 そして、目の前に、


『クエスト ソロモンの宝玉(ほうぎよく) CLEAR』


 の文字が()かんだ。

 メニューの画面と同じく(はし)には時計が映っている。時間はもう夕方の六時だ。

 さらに、『このままゲームを続けますか?』と文字が()かんだので、俺は三人に言った。

「今日は終わりにする?」

「そうね。わたしも終わりでいいと思う」

「あたしも賛成(さんせい)です」

 逸美ちゃん、鈴ちゃんと同意(どうい)した。

「ふむ。それではここで終わりにしようか。この《(いのち)のねじ》は明日(あす)、あの王様に(とど)けるとしてさ」

 と、凪が黄金色(こがねいろ)(かがや)く大きなねじを手にして言った。

「それって、《(いのち)のねじ》!? いつの()に……。俺はすっかり(わす)れてたよ。まったく、凪は抜け目ないな」

「当然じゃないか。(ぎゃく)に開はたまに抜けてるよね」

 余計(よけい)なお世話(せわ)だ。

 さて、俺はみんなに言った。

「それじゃみんな、お(つか)(さま)



 ゲームを終了(しゆうりよう)し、一瞬(いつしゆん)暗闇(くらやみ)のあと、現実(げんじつ)身体(からだ)感覚(かんかく)(もど)った。

 目を()けるとモニターの黒い画面。

《T3》を(はず)したら、外の光が目に入った。

 アイテムをゲットするまでに、情報収集から始まり、船の入手、海賊(かいぞく)との戦闘(せんとう)、ソロモン島を見つけ、遺跡(いせき)を探し、神殿内(しんでんない)探索(たんさく)して、手強(てごわ)いボスを(たお)して、ようやく宝の(かく)し部屋まで辿(たど)()いた。今日もなんだか長い冒険(ぼうけん)だったな。

 うーっと俺は大きく()びをした。

「今日もお(つか)(さま)でした」

 と、潮戸(しおど)さんが微笑(ほほえ)む。

「ありがとうございました」



 二日目が終了(しゆうりよう)し、俺たちはついに明日(あした)事件(じけん)()()まれることになる。

 そのときが来るまで俺は、まだなにも気づいていなかった。

 いや、事件(じけん)自体(じたい)、もうとっくに始まっていたのだけれど……。


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