第三章2 『再びマグナマキナ城下町へ』
スタート地点は、昨日クエストをクリアした《ゴダン神殿》の中だった。
目の前にはもう三人の姿がある。
一番遅かったのが俺だったのか、凪は俺に言った。
「さて、準備はいいかい?」
「ああ」
「それじゃあ、ぼくのワープで《ミストフィード》に戻ろう」
「先輩、まずは《マグナマキナ城》で王様に《命のねじ》を渡さなくていいんですか?」
鈴ちゃんに聞かれて、凪は人差し指を立てる。
「いいのさ。大抵、RPGだとひとつのクエストが達成されると、そのイベント関連の町の人たちのセリフが変化して、場合によってはアイテムまでもらえるものなんだ」
「へえ」
「《マグナマキナ城》から先に行くと引き返すことになって二度手間になるし、《ミストフィード》から順に行こうと思ってね」
「そういうことですか。でも、先輩っていつも勝手になんでも決めて、相談とか説明がないですよね」
と、鈴ちゃんが小さく息をつく。
逸美ちゃんはにこにこと微笑んで、
「なんでもいいじゃない。町の人たちのセリフが変わってるなら、さっそく行ってみましょう」
「うん、そうだね。凪、頼む」
俺が言うと、凪はうなずく。
「ワープ――《ミストフィード》」
一旦、俺たちは《ミストフィード》に戻った。
そこで《ソロモンの宝玉》をゲットしたあとに街でなにかあるかと思ったが、特にこれといって変わったことはなかった。
町の人たちのセリフも変化がない。
鈴ちゃんがジト目で凪を見る。
「なんにもないじゃないですか」
「まあ、直接ここでイベントがあったわけじゃないしね。やれやれだよ」
凪は肩をすくめて、俺に聞いた。
「じゃあ、王様に会いに行くかい?」
「そうしようか」
「うむ。そうしよう。ワープ――《マグナマキナ城下町》」
次は《マグナマキナ城下町》にワープした。
《マグナマキナ城下町》
本当は一発で《マグナマキナ城》までワープで飛びたかったのだけれど、お城の中にまでは飛べないらしい。ここはお城と城下町が一体になっているので、城下町の入口のみがワープ地点に登録されていた。
そこで、これから王様に《命のねじ》を渡すため、《マグナマキナ城》へと向かって歩いていた。
相変わらず、からくりとスチームパンク的な蒸気機関が発達した、どこか幻想的な雰囲気の街だ。
頭上を走るレールを見上げて、
「今度はSLにも乗ってみたいね」
「そうね」
と、逸美ちゃんが微笑む。
すると。
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おっしゃっ! さっきのやつで海賊を倒す寸前まで行ったぞ! ありゃあきっと、あと一発食らわせれば勝てたな。おそらく、次戦えば勝てるぜ」
「そうっすね、兄貴。挑戦して早五回! そうしたら、おれたち初めて《ルミナリー》のアイテムをゲットっすよ。たぶん海賊が《ソロモンの宝玉》か《黒金の翼》か《氷雪の指輪》か《黄金の聖杯》かなんかくれるんすよ、きっと」
選択肢多いな。
「だな。このゲームを始めて一ヶ月半、長かったぜーぃ!」
ん? いや、待てよ……。
この声、もしや――
振り返ると、そこにいたのは、やっぱり三平くんたち三人組だった。
気づかれたら面倒だからできる限り離れたいけど、彼らは自分たちのおしゃべりに夢中だ。
「《天空の剣》を諦めてこっちに来た甲斐があったってもんだな」
得意げな三平くんに、太っちょの少年がぼやきつっこみする。
「まだゲットしてないし甲斐があったかは微妙じゃね? ていうか、海賊倒すだけでアイテムもらえるのか? 海でそのまんま引き返すとか微妙じゃね?」
「細かいことは気にすんな。この三平様がアイテムをゲットしてやるぜぃ!」
彼らも《ソロモンの宝玉》を狙っていたのか。しかも《天空の剣》は諦めたんだな。たぶん三平くんたちはケガしたアルタイルを倒しちゃったろうし、諦めるしかないけど。
意気揚々と三平くんたちは街を出てゆく。
「今度はやられてもすぐまた海に出られるように、《ミストフィード》の教会に寄っていくぞ」
「おう! 兄貴!」
「負ける前提かよ……」
あの三人に見つからないように凪たちを目の前のお店に押しやり、声が聞こえなくなったのを確認して、ふうとため息をつく。
「開、急にどうしたのさ?」
「さっき三平くんたちがいてさ、見つかったら面倒そうだから隠れたんだ」
しかし、凪は首をかしげる。まあ、こいつは三平くんのことなんか覚えてないだろうし、言っても無駄か。
逸美ちゃんは苦笑した。
「あんまり開くんのお友達になれそうな感じの子たちじゃなかったもんねぇ」
鈴ちゃんだけは気づいていたようで、
「あの様子じゃ、きっと《ソロモンの宝玉》までは遠いでしょうね……」
と、残念そうにぽつりとつぶやいた。
「ああ、まったく俺もそう思うよ」