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彼女に少し嫌われたい ~俺を魔王と呼ぶ美少女と運命の出会いをしたけど、忠誠度が高すぎるので少し下げて普通の恋人を目指したい~ - 59 勇者対策会議
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59 勇者対策会議

 有紗さんが帰った後。千聡がマジトーンで『南の島に行きましょう』と、潮浬みたいな事を言い出した。


 潮浬の時は『南の島で一緒に暮らしましょう』だったからちょっと違うのかもしれないが。でも千聡の言い方も移住っぽい。

 少なくとも、短期の旅行という話ではないだろう。


 そして南の島に避難する理由は、『有紗さんが勇者だから』だ。魔族云々の話にはかなり慣れてきたつもりだが、さすがにちょっとどうかと思う。


「――よし千聡、一旦落ち着こう。目をつむって、深呼吸して…………うん、よし。で、なんの話だっけ?」


「南太平洋の無人島にお移り頂けますよう、伏してお願い申し上げます。現状、あそこが一番守りやすいですから……」


 思い出したように席を立ち、床にひざまずいて頭を下げる千聡……。どうやら冷静になった結果、『逃げるほどの事でもないか』ではなく、『魔王様にお願いする時は土下座しなきゃ』という考えに思い至ったらしい。そうじゃない。


「えっと、南の島とか短期の旅行ならともかく。長期はちょっと……」


「では、ヨーロッパならいかがでしょうか? 他の場所でもかまいません。今は拠点の用意がありませんが迅速に確保いたしますので、とにかく一刻も早く。なるべく遠方への移動をお願いできませんでしょうか?」


 ……好きになった子に涙目でお願いされると、なんでもいいから『うん』と言ってしまいそうになるが、さすがにこれは無理だ。来月には学校も始まるし。


「今の所、ここから引っ越すつもりはないかな」


「そう……ですか……」


 ああ、千聡があからさまにシュンとしてうつむいてしまう。魔王としての好感度や忠誠度が下がるのは大歓迎だけど、好きな子が悲しむ姿は本気で心が痛む。


 どうしようかとアワアワしていると、千聡はしばらくして勢いよく顔を上げた……なんか目が座っている。


「承知いたしました。魔王様のお考えがあくまでここに留まり、勇者との共存を試みるという事であれば、臣千聡。この上はご直裁ちょくさいに従い、どこまでも運命を共にいたしたく思います」


「え……うん」


 千聡はなにやら吹っ切れたように。覚悟が完了したような目をして言うと、話を潮浬達に向ける。


「潮浬・リーゼ、貴女達はどうしますか? 望むなら、一時的に海外での任務に振る事も可能ですが」


「そんな事訊かないと分からないの? 陛下を死地に残して自分だけ逃げて、それで一人生き残ってなんになるのよ。わたしが生きていくには水や空気と同じくらい、陛下の存在が必要なのよ」


「自分も! 死ぬならみんな一緒がいいです!」


 ……なんか、知らない間にこのアパートは死地になったらしい。

 物騒な話である。


「わかりました。ではこれから勇者と対峙たいじ……共存するに当たって、なにか講じるべき対応について考えはありますか? 基本的な監視は当然行いますから、それ以外で」


 千聡はそう言うと、机に戻ってなにかを書き始める。


 なにやら会議っぽいものが始まったようだが、冒頭からいきなり重苦しい沈黙が流れ。しばらく無言の時間が過ぎたが、やがてリーゼがおずおずと口を開く。


「あの、やっぱり勇者を倒すのは無理なんですかね? 直接攻撃は通らないにしても、落とし穴を掘るとかで……」


「罠のたぐいは前世でも試しましたが、効果はありませんでした。反射こそされませんが、聖光石の力で無効化されます。そしてなにより、今は魔王様のご意思が平和共存である以上、それは絶対です」


 千聡の言葉に、リーゼはシュンとして言葉を引っ込め。また重苦しい沈黙が降りてくる……と、千聡がなにかを書いていたペンを置いて立ち上がった。


「魔王様。勇者の監視体制についてご裁可さいかを頂きたく思います」


 その言葉と共に机の上に置かれた紙には、簡単なイラストと共に有紗さんの部屋の監視プランが書かれていた。


 ……ていうか、千聡定規を使っている様子がなかったけど。それで完璧な直線が引けるのってすごいよね。


 感心しながら書かれている内容を読むと、部屋前の廊下に多数の監視カメラを設置。反対側の窓にも同じく。出入りを把握するためにドアにセンサーを取り付けて、隣室には高性能マイクを設置して盗聴。壁や天井にピンホールを開けて、通常のカメラと赤外線カメラで常時室内を撮影と。後半は完全に犯罪だ。


 ……廊下と窓への監視カメラ、ドアのセンサーまではギリギリ許容範囲だけど、盗聴と盗撮は却下と伝えると。千聡は『承知いたしました』と言って、意外なほどあっさりと受け入れてくれた。


 そしてそのやり取りを聞いていた潮浬が、ゆっくりと口を開く。


「日常の対策は監視でいいけどさ。もし勇者が陛下に牙を向いてきた場合の対策はどうするの?」


「その時は我々で可能な限り時間を稼ぎ。その間に魔王様を他所にお移しするしかないでしょうね。非常用の地下通路は時に侵入路ともなりうる諸刃の剣ですが、この際勇者への対応優先で整備しましょう。……リーゼ、もし勇者と戦う事になったら、貴女には矢面やおもてに立ってもらう事になります。その覚悟はありますか?」


「もちろんです! 自分は閣下の剣であり盾ですから。剣としては役に立たなくても、盾にはなりますよ! 攻撃が通じないだけで、受ける分には問題ないんですよね?」


「剣を振るだけでもリスクはありますが、受身に徹する分には問題ないはずです」


「だったら、この体でいくらでも時間を稼いでみせますよ! そのために鍛えてるんですから!」


「……たのみにしていますよ」


「はい!」


 ちょっと声が震えた千聡と、元気いっぱいに張り切るリーゼ。


 命がけの戦いにおもむく武人みたいな感じでちょっと感動的だが。これってアル中女子大生への対策会議だよね?



 今まででも最大級の困惑をいだきながら。俺はなにやら悲壮な覚悟を決めているらしい千聡達を見るのだった……。




 現時点での世界統一進行度……0.16%

・西日本の魔族と小さな拠点がいくつか

・魔族の小勢力三つ

・イリスルビーレ公爵を配下にしたかも?


 千聡の主人公に対する忠誠度……100%↑ カンスト『さすがは魔王様、私のごとき凡人では到底思いつかない発想をなさる。勇者との共存、果たして可能なのだろうか……』忠誠度上昇

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[良い点] 勇者も新キャラなのにキャラが立っていてよい 面白い
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