日本の「近視治療」の幕開け
いま、子どもの近視の増加と重症化が日本をはじめ世界的に問題になっていて、近視治療はこれまでにないスピードで進化しています。さまざまな近視進行抑制治療が、世界で開発されているのです。
これは近視を放置すると年齢が上がるにつれて進行し、ただ不便なだけでなく、将来的に白内障や網膜剥離、緑内障になるリスクが高まるため。こうしたなかで、日本における子どもの近視治療は世界に遅れをとりながらも、ようやく幕開けを迎えたところです。
というのも、日本では2024年12月末に国内で初めて、子どもの近視進行抑制治療として「低濃度アトロピン点眼液(点眼剤リジュセア®ミニ点眼液0.025%)」が承認され、今春販売されました。「多焦点ソフトコンタクトレンズ(MiSight®1day)」も、8月19日に承認され、年明けには販売される見込みです。小児用の「近視管理用眼鏡」も近く処方可能になると思われます。「レッドライト」の臨床試験も近く始まる見通しです。
効果が期待できる5つの治療法
子どもの近視治療はすべて保険適応外。自由診療――つまり自費での治療ですから、治療法によっては比較的費用がかかる場合もあります。それでも、将来のリスクを考えれば、大事な子どもの眼を守るために必要な先行投資ともいえるでしょう。ただし、近視進行抑制を謳う治療法には、明確なエビデンスやコンセンサスが得られていないものもあるため、注意が必要です。
日本で現在、5歳以上の子どもの近視進行抑制に有効性・安全性が示されている治療としては、①低濃度アトロピン点眼、②オルソケラトロジー、③レッドライト治療、④多焦点ソフトコンタクトレンズ、⑤近視管理用眼鏡があります。
軽度から中程度の近視には、アトロピン点眼とオルソケラトロジーで抑制効果が期待できます。が、一方、強度近視(-6D以上)の場合はレッドライト治療や多焦点コンタクトレンズ、近視管理用眼鏡などが選択肢となります。これまで、医師の個人輸入などで子どもに処方されてきたこれらの治療法が国内で正式に承認されれば、今後は多くのクリニックで扱われることになり、患者さんも治療を受けやすくなっていくでしょう。以下で、それぞれの治療法のメリットとデメリット、費用などについて説明します。

