※1:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」(令和4年)
※2:小・中学校の学級担任教諭を対象とした上記調査(質問紙調査)の推定値
今は“普通の子”の基準が高すぎる
――発達特性のある子が増えている、と言われている原因について教えてください。
【西村】発達特性のある子が増えているというより、病院の受診を勧められ診断を受ける子が増えていると言われています。実際、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの診断がつく子が増えているのは間違いありません。
10年ほど前まで、発達障害(現在は正式名称「神経発達症」に移行中)という表現はあまり普及していなかったですし、発達が気になって病院に行く流れも認識されていませんでした。しかし、テレビや書籍、インターネット、そしてSNSの普及で、いわゆる人と少し違う子どもたちに対して「もしかしたら発達障害かもしれない」という認識が一気に広がりました。その結果、親が心配して医療機関に繋がるケースが増えていることが要因の1つです。
また、同時期に神経発達症の診断基準も変わりました。以前は「グレーゾーン」あるいは「個性の範疇」と判断されていた子たちも、診断基準の変更により、診断対象に含まれるようになったとも言えます。その結果、なんらかの神経発達症と診断されるケースが増えたと考えられます。
テレビ番組でも個性の強いキャラが減った
ただ、昔から発達の特性がある子はたくさんいました。先日、1982年から1992年にNHK「おかあさんといっしょ」で放映されていた「にこにこ、ぷん」を観たのですが、じゃじゃ丸は衝動性と多動があるADHDタイプで、ぴっころは空気を読まない癇癪持ちのASDタイプ、ぽろりは繊細さんみたいですよね。きっと今だと“普通ではない”と思われてしまう子どもかもしれません。でも、当時は「そういう子もいるよね」と自然に捉えられていました。
同じく1990年から放映されているアニメ「ちびまる子ちゃん」のキャラクターも個性というか、特性がとても豊かです。いろいろな子供がいることが自然と受け入れられていたような気がします。
そこから30年ほど経って、“普通の子”の感覚が変わってきたなと。ここ10年ほどの『おかあさんといっしょ』を観ていると、キャラクターたちが良い子すぎるかもしれないと感じます。きっと、親も社会もまわりからはみ出さない「普通の」「良い子」を求めている傾向があるのかもしれません。

