野菜嫌いで“偏食”な3歳の息子
3歳児Kは、偏食だ。
好きな物は、エビフライ、ウナギ、卵焼き、そして肉類全般。ある日の夕食で、鶏もも肉のグリルをつくった。包丁を入れるといい感じに焦げ目がついた皮がサクッと切れた。我ながらうまそうだ。
YouTubeを視聴するKに、皿に盛ったグリルを見せると興奮気味に「おぉー!」と声を上げる。この日はYouTubeをすんなり見終え、食卓につく。親子3人で焼き立てのグリルを食べようとした瞬間。
「トット(Kは父である私をそう呼ぶ)は、食べないで! Kがぜんぶ食べるんだから」
そう言うとKは母親にハサミでカットしてもらった肉を満足そうに口にした。何はともあれ、食べてくれてよかった。私は安心してビールを飲んだ。Kは気に入った物をたくさん食べる反面、そうでない物には見向きもしない。慎重な性格なのか、はじめての料理にはほとんど手を付けない。
そこで積ん読中の『定本 育児の百科(下)』(岩波文庫)のページをめくる。〈子どもの偏食〉と題された項にこのように書かれている。
そしてこう続く。
保育園の給食では“野菜を食べている”
私は深く安心した。が、一瞬の安堵のあと、いや、と思い返す。野菜嫌いをなんとかしてなくては、と。
というのも、Kは便秘がちで、ウサギのフンのように硬くて小さな「コロコロうんち」が続く日がある。私たち夫婦は、その原因を野菜不足と睨んでいた。珍しく野菜を摂った翌日は、ふっくらとした太いうんちが出るからだ。何よりも親として、うんちがなかなか出ずに苦労しているKの姿を見るのはつらい。
野菜嫌いをどう克服するか。目下の悩みをお茶の水女子大学特任教授の宮里暁美先生に打ち明けた。宮里先生は、国立大学が運営するこども園の園長を日本ではじめてつとめたことでも知られる保育学者だ。
この悩みも宮里先生の質問からはじまった。インタビュワーとして、取材相手から質問を受けるのは妙な気分だ。
「Kくんは、保育園には通っているんですよね。給食の様子はどうですか?」
保育園からのお知らせを見ると家よりは野菜を食べてはいるようだ。推測だが、友だちがみんな食べるから、自分も、という気持ちになるのではないか。


