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JP3200133B2 - フェリ磁性薄膜fm変調器 - Google Patents
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JP3200133B2 - フェリ磁性薄膜fm変調器 - Google Patents

フェリ磁性薄膜fm変調器

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JP3200133B2
JP3200133B2 JP02278892A JP2278892A JP3200133B2 JP 3200133 B2 JP3200133 B2 JP 3200133B2 JP 02278892 A JP02278892 A JP 02278892A JP 2278892 A JP2278892 A JP 2278892A JP 3200133 B2 JP3200133 B2 JP 3200133B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、直流磁界を印加したフ
ェリ磁性体部材に高周波電磁波との相互変換により発生
させた静磁波の伝搬速度を印加直流磁界の変調により変
化させてFM変調出力高周波電磁波を得る静磁波利用の
FM変調器、特に、フェリ磁性体薄膜を用いて小型で製
造容易な構成により良好な直線性が得られるフェリ磁性
薄膜FM変調器に関し、高感度をもって安定に動作する
ようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】従来、FM変調器としては種々の回路方
式のものが用いられているが、従来の代表的FM変調器
は、電圧制御発振器(VCO)を用いたもの、および、
バラクタを用いたものである。
【0003】電圧制御発振器(VCO)を用いたFM変
調器は、図1に示すように、VCO1の発振出力高周波
信号の一部をプリスケーラ2に導いて周波数を1/n に逓
降したものを比較器5に供給し、基準発振器4の発振出
力と位相比較した結果の直流電圧を、低域通過フィルタ
(LPF)6を介し、VCO1のバラクタC0を含む共振
回路に印加して発振周波数を一定に保持しながら、変調
器2からの変調信号電圧を重畳印加して発振周波数を変
調する。かかる構成の従来のFM変調器は、低域通過フ
ィルタを必要とするので、低い周波数の変調信号で変調
するのが困難である、という欠点があった。
【0004】一方、バラクタを用いた多段フィルタによ
り位相変調を行なうようにしたFM変調器においては、
図2(a) に示すようにバラクタC1, C3, C5--- およびイ
ンダク6 L2, L4--- からなるn段の低域通過フィルタ
(LPF)の位相は、図2(b)に示すように
【外1】 ラジアンだけ遅れる。いま、バラクタC1, C3, C5--- の
容量を変化させるとLPFの遮断周波数が変化し、例え
ば、容量が増すと、図2(b) に実線で示した位相特性が
点線で示すように変化し、周波数 fo では位相が△θだ
け変化する。
【0005】一方、かかる位相変調を受けた信号を VPM
で示すと、
【数1】 VPM =Αcos { 2π fc t + V (t) - θo } (1) となり、FM信号の瞬時角周波数はこの(1) 式の{ }
内を時間微分した
【数2】 となる。いま、変調周波数 fm 、最大位相おくれθmax
について
【数3】 V(t) = θmax sin( 2π fm t) (2) とすると、瞬時角周波数は
【数4】2π{ fc + θmax fm cos( 2π fm t)} となり、最大周波数変位を△f とすると、
【数5】△f = θmax ・ fm
【数6】 となる。なお、この(3) 式は周知のものであり、θmax
は変調指数と呼ばれている。
【0006】したがって、変調周波数 fm と周波数変位
△f とが与えられると, 図2(a) のLPFにおけるバラ
クタの印加電圧を変化させて△θ=θm となるまで動か
すことによって周波数変調を行なうことができる。しか
しながら、かかる構成の従来のFM変調器では、(3) 式
から判るように、変調周波数 fm が低い程、位相の変化
△θが大きくなり、バラクタの印加電圧を大きく変化さ
せなければならなくなるので、バラクタの特性によって
非線形歪が生ずる、という欠点があった。かかる欠点を
それぞれ有する従来のFM変調器に替るものとして、波
動の伝播位相を変化させて周波数変調波を得る回路方式
のFM変調器が従来開発されて来ている。
【0007】いま、長さLの線路にn個の波が乗って進
行している場合を考えると、その波の波長λは
【数7】 であり、この波長λを何らかの手段によりηλだけ変化
させるると、長さLの線路における位相変化△θは、
【数8】 となる。しかして、かかる方式のFM変調器を小型に構
成するためには線路の長さLが小さくなければならず、
また、その直線性をよくするためにもηは小さい程よい
ことになる。
【0008】一方、前述したように、変調周波数 fm
低い程、位相の変化△θが大きくなる必要があり、した
がって、(5) 式から波長λは小さいことが必要となる。
例えば、変調周波数 fm = 150Hz で最大周波数変位△f
= 5kHz とすると、(3) 式から
【数9】 なる位相の変化△θが必要となる。
【0009】いま、L=3mm , η=0.1 として波長λ
を求めると、(5) 式から
【数10】 となる。かかる短い波長の線路伝搬波としては、(イ)
弾性波および(ロ)磁気波があるが、(イ)弾性波は外
部から線路に電界もしくは磁界を印加してその波長を変
化させることが困難であり、したがって、弾性波を用い
てこの種の方式のFM変調器を実現することは極めて困
難であり、実現の可能性があるのは(ロ)磁気波を用い
たこの種の方式のFM変調器である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかして、磁気波は、
一般に直流磁界を印加したフェリ磁性体内を伝搬する波
動であり、印加磁界のベクトルをで示したときに、
【数11】 なる条件を満たす電界のエネルギーがほぼ零である波を
指す。例えば、無限の領域を有するフェリ磁性体内を伝
搬する波動の角周波数ωと1cmに含まれる波の数kとの
関係は図3に示すようになる。図3において、θは直流
磁界と波の伝搬方向とがなす角度を示し、領域Iの波動
は電磁波であり、領域IIの波動は静磁波であり、また、
領域III の波動は交換スピン波と呼ばれるものである。
【0011】かかる3種類の波動のうち、領域III の変
換スピン波は、図3に示したように、単位長当りの波数
が大きく、したがって、波長が小さく、例えば、図3に
おいてk=105 としたときの波長λは、
【数12】 となる。一方、この種の方式のFM変調器につき後述す
るように、電磁波から磁気波に変換する際に用いる電極
の形状寸法は、少なくともそれらの波の波長程度の精度
を必要とするので、波長λがあまり小さいと、この種の
方式のFM変調器の実現が困難となる。その点、図3に
おける領域IIの静磁波では波長が数10μm程度になるの
で、実現可能な範囲で十分に小さい波長λが得られ、
(6) 式で示したような値の波長とするには、この静磁波
を用いるのが最適である。
【0012】さて、図3は、前述したように無限の領域
を有する伝搬媒質について示したものであるが、有限の
形状寸法、例えば細長い円筒状のフェリ磁性体単結晶に
軸方向の直流磁界を印加した場合には、軸方向に伝播す
る静磁波が発生し、その位相速度υp はつぎの(8) 式で
表わされる。
【数13】 ここに、Rは円筒状フェリ磁性体の半径、υ0 は真空中
における電磁波の速度、∈r はフェリ磁性体の比誘電
率、μ+,r は正の円偏波比透磁率であり、図4に示すよ
うに、共鳴磁界 Hr においてその値が急激に変化する。
【0013】なお、
【外2】v´p は、(8) 式から判るように、比透磁率μ+ および比誘電
【外3】∈r の等方性媒質内を伝播する電磁波の位相速度であり、し
たがって、静磁波の位相速度υp は、電磁波の位相速度
外2に対し、R/λc に比例して遅くなり、円筒状フェリ
磁性体の半径Rが小さくなる程静磁波の位相速度υp
遅くなる。その結果、静磁波の波長λは、
【数14】 に従って小さくなる。
【0014】一方、図4から判るように、印加直流磁界
の強さH inを変化させると、比透磁率|μ+,r |が変化
し、したがって、電磁波の位相速度外2が変化し、さら
に、静磁波の位相速度υp が変化して、その結果、波長
λが変化することになる。かかる印加磁界強度 Hinの変
化に対する波長λの変化の感度、すなわち、
【数15】 は、比透磁率|μ+ |の変化が大きい共鳴磁界強度 Hr
の近傍で急激に大きくなる。したがって、フェリ磁性体
円筒の長さLを短くして上述の波長変化の感度を増大さ
せるためには、
【外4】 となる共鳴磁界の近傍領域を利用しなければならないこ
とになる。しかして、共鳴磁界の近傍領域においては、
印加磁界強度 Hinが何らかの理由で少し変化しても、上
述したところから判るように、静磁波の波長λが大きく
変化して不安定になる。
【0015】しかしながら、静磁波のかかる動作不安定
を避けるために印加磁界強度 Hinを共鳴磁界強度 Hr
らできるだけ離隔すれば、比透磁率変化の感度∂|H +
|/∂ Hin、したがって、波長変化の感度∂λ/∂ Hin
が小さくなって、全体の位相量変化の感度∂θ/∂ H
inも減少する。その結果、静磁波の波長λを小さくし
て、円筒状フェリ磁性体の長さLの中に多数の波を乗せ
るようにすることが必要になり、したがって、(8) 式お
よび(9) 式から判るように、円筒状フェリ磁性体の半径
Rをできるだけ小さくすることが必要となる。
【0016】しかしながら、円筒状フェリ磁性体の半径
を小さくすることは製造上極めて困難であるうえに、構
造的にも弱くなる。本願発明者による特公昭47−22
050号公報記載の円筒状フェリ磁性体使用のFM変調
器においても実際にかかる製造上および実用上の欠点が
認められ、その欠点の排除が解決すべき従来の課題とな
っていた。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、上述し
た従来の欠点を除去し、微細構造のフェリ磁性体素子を
用いたできるだけ小型で良好な直線性を有し、安定に動
作する高感度のFM変調器を提供することにある。
【0018】すなわち、本発明フェリ磁性薄膜FM変調
器は、基板上に被着したフェリ磁性体薄膜上に入力およ
び出力のストリップ電極を相互に離隔して対向配置し、
当該入力ストリップ電極を介して高周波電磁波を入力す
るとともに、前記フェリ磁性体薄膜に直流磁界を印加し
て当該入力および出力のストリップ電極の相互間に前記
高周波電磁波から変換した静磁波を伝搬させ、印加した
前記直流磁界の強さを信号により変調して前記静磁波の
波長を変化させることにより、前記信号によって周波数
変調された高周波出力電磁波を取出すように構成したこ
とを特徴とするものである。
【0019】
【作用】したがって、本発明によれば,小型で製造容易
な構成により直線性が良好で安定に動作する高感度のF
M変調器を実現することができる。
【0020】
【実施例】以下に図面を参照して実施例につき本発明を
詳細に説明する。まず、本発明フェリ磁性薄膜FM変調
器の基本となる静磁波の励起および取出しの構成例を図
5(a) に示す。図示の基本的構成においては、誘電体基
板7の裏面に接地板8を被着するとともに、基板7の表
面にストリップ線路よりなる入力電極9と出力電極10と
を所要の静磁波伝搬間隔を置いて対向配置し、低損失の
フェリ磁性体、例えば、イットリウム−鉄−ガーネット
(YIG)の薄膜11をYIGと格子定数が一致する材
料、例えば、ガドリニウム−ガリウム−ガーネット(G
GG)の基板12に被着形成したものを、入出力ストリッ
プ電極9,10を覆うようにして誘電体基板7上に密着配
置し、例えば、後述するように変調用コイルを巻回した
磁性体枠に挟んだ磁石(図示せず)によりYIG薄膜11
の全体に膜面に垂直の直流磁界を印加するとともに、入
力ストリップ電極9に所要の高周波電磁波を供給してY
IG薄膜11内に図5(b) に示すように静磁波を発生させ
ると、その静磁波は入力ストリップ電極9に直角にYI
G薄膜11内を伝搬して出力ストリップ電極10に達し、そ
の伝搬中に位相変調を受けた静磁波から変換した周波数
変調出力高周波電磁波が出力ストリップ電極10から取出
される。
【0021】しかして、YIG薄膜11内における静磁波
発生の態様は、図6(a), (b), (c)に示すように、印加
直流磁界の方向によって異なるが、いずれも、入出力ス
トリップ電極9,10に直交する方向に伝搬して遅延線路
を構成し、その遅延時間は印加直流磁界の強さに応じて
変化するので、直流磁界に重畳して信号磁界を印加すれ
ば、その信号に応じた位相変化が生じ、再変換出力高周
波電磁波が周波数変調を受けることになる。
【0022】上述のように、YIGなどフェリ磁性体の
薄膜に直流磁界を印加して磁化した状態でストリップ電
極から高周波電磁波を供給すると、磁性体薄膜内で磁気
結合して、図6に示すように、磁化の先端が、直流磁化
に垂直の面内で円形の才差運動をおこし、その円運動の
ベクトルmが波の伝搬方向kに沿って変化し、静磁波が
生ずる。直流磁界をYIG薄膜11に垂直に印加すると、
図6(b) に示す態様の体積前進静磁波(MSFVW)が
発生し、直流磁界をYIG薄膜11の膜面に平行に印加し
た場合には、図6(a) に示すように直流磁界を伝搬方向
kに垂直にすると表面静磁波(MSSW)が発生し、図
6(c) に示すように直流磁界を伝搬方向kにも平行にす
ると体積後退静磁波(MSBVW)が発生する。
【0023】しかしながら、表面静磁波(MSSW)
は、図6(a) に示したように、磁性体薄膜11の表面部分
にエネルギーが密集するので、入力電極9に供給する電
磁波の電力が0dB以上になると、フェリ磁性体の非線形
効果によって高調波が生ずる。また、体積後退静磁波
(MSBVW)においては、静磁波の伝搬方向に沿って
直流磁界を印加するので、直流磁界の強度 H0 の変化に
よって大きい位相変化を与えるためには、磁性体薄膜11
における伝搬路長Lを長くする必要があるので、所要の
強度 H0 の直流磁界を印加するための直流磁気回路が大
型となる。したがって、小型のフェリ磁性薄膜FM変調
器を実現するには、図6(b) に示した体積前進静磁波
(MSFVW)を用いるのが好適となり、以下には、こ
の体積前進静磁波(MSFVW)を発生させるようにし
た図5に示す構成について本発明フェリ磁性薄膜FM変
調器の説明を行なう。
【0024】まず、図示の構成による入出力電極9,10
間の伝搬路における静磁波の位相θと直流磁界強度 Hin
との関係について説明すると、その関係は、つぎの(10)
式に示すような角周波数ωと単位長波数kとの関係を表
わした分散方程式から求めることができる。
【0025】
【数16】 ここに、 Hinはフェリ磁性体内の内部磁界強度であり、
MS は飽和磁化である。
【0026】いま、(10)式におけるΩとkdとの関係をΩ
H をパラメータとして図示すると図7に示すようにな
り、Ωは
【数17】 の範囲内に存在することになり、角周波数ωが与えられ
ると、体積前進静磁波が発生するに要する磁界強度は(1
1)式の範囲内になければならないことになる。
【0027】いま、Lを図5に示した構成における入力
電極9と出力電極10との間の距離として
【数18】θ= kL (12) なる関係式と(10)式とを用いて内部磁界強度 Hinのわず
かな変化δH inに対する位相の変化δθ求めると、
【数19】 となり、この(13)式からつぎのことが判る。 (イ)直流磁界強度 Hinが増すと位相θは減少する。 (ロ)直流磁界強度 Hinの変化に対する位相θの変化の
感度は、YIG薄膜11の厚みdに逆比例し、体積前進静
磁波(MSFVW)の伝搬路長Lに比例する。
【0028】例えば、(12)式において、ΩH = 0.2, Ω
= 0.38に選ぶと、位相の変化δθは
【数20】 となる。いま、飽和磁化 MS =750ガウスの磁性材料を用
いた磁性体薄膜11の膜厚をd=20μm とし、内部磁界強
度の変化δH in=10 エルステッドに対して位相の変化δ
θ= 30ラジアンを得るためには、(14)式から
【数21】L = 1.784mm となり、また、ΩH の値から
【数22】 内部磁界強度 Hin= 0.2 ×750= 150(ガウス)
【数23】 外部磁界強度 Hex= Hin + N・ MS = 150 + 750= 900 (ガウス) (ここに、Nは反磁場係数であり、薄膜では1)が得ら
れ、さらに、Ωの値から
【数24】 角周波数ω=|γ|M S ・Ω= 2.8 ×750 ×0.38= 798 (ガウス) が得られる。
【0029】このように、長さ1.784mm 、厚み20μm の
大きさで飽和磁化750 ガウスのフェリ磁性体薄膜11を用
いると、外部磁界900 エルステッドを中心にして10エル
ステッドの磁界強度変化を与えることにより、周波数79
8MHzの電磁波に30ラジアンの位相変化を与え得ることに
なる。この位相変化30ラジアンは、(3) 式から判るよう
に、変調周波数150Hz に対して4.5kHzの周波数変位を呈
するFM信号を得るために必要な位相変調である。
【0030】つぎに、上述の数値例からも判るように、
【数25】ΩH / Ω= 0.526 であって、(13)式においてΩ= ΩH なる特異点からは充
分に離れているので、内部磁界強度 Hinが何らかの原
因、例えば、温度変化に伴う飽和磁化 MS の変化などに
よって動作点がシフトしても充分に安定であり、かかる
安定な動作状態で30ラジアンの位相変調が得られること
が判る。
【0031】つぎに、静磁波のかかる位相変調によって
電磁波のFM変調を行なったときの歪を求めると、第2
および第3の高調波にそれぞれ基づいた歪K2′および
K3′は
【数26】 を(10)式から求めて歪みの大きさを検討すればよく、例
えば、第2高周波に基づく歪K2′を求めてみると、
【数27】 となる。いま、前述の数値例、すなわち、
【数28】ΩH = 0.2 , Ω = 0.38
【数29】△H1= 10 , M S = 750を(16)式に代
入すると、
【数30】K2′= 0.298% となり、歪が極めて少ないことが判る。
【0032】つぎに、静磁波の位相変調によって電磁波
のFM変調を行なったときの挿入損失 LS を求めると、
【数31】 となり、この(17)式から、低挿入損失とするにはつぎの
ようにする必要があることが判る。
【0033】(イ)磁気共鳴半値幅△Hを小さくするこ
と。通常、Xバンドで0.5 エスルテッドの△H が得られ
ており、周波数が低くなる程小さくなる。しかしなが
ら、ある周波数帯以下では飽和磁化 MS を小さくしない
と低磁界損失のために△H が増大するのが一般である。
したがって、上述した△H の減少はフェリ磁性体の低磁
界損失によって達成し得るものである。
【0034】一方、飽和磁化 MS を小さくすると、一般
に、キューリー点が低くなるために、温度変化によって
MS が変化し、内部磁界強度 Hinが変化する。すなわ
ち、温度が上昇すれば飽和磁化 MS が小さくなり、比率
ΩH が増大し、その結果、位相変調感度∂H /∂H in
変化する。したがって、温度変化による位相変調感度の
変化を補償する必要が生ずる。しかして、この温度補正
は、変調周波数の磁界成分を付加する駆動素子トランジ
スタの駆動電流を温度変化に応じて変化させる構成の温
度補正回路によって容易に達成することができる。
【0035】(ロ)比率の比ΩN をできるだけ小さくす
ること。このΩN の値は、(11)式から判るように、
【数32】 の範囲で図8に示すように変化し、さらに(17)式から判
るように、ΩN の値が1に近づくほど損失が少なくな
る。例えば、△H = 0.5 エルステッドなる値を用いたと
きに、
【数33】 δθ= 30ラジアン , δH in = 10 , Ω = 0.38 とした数値例では、損失 LS = 6.51(dB)となる。
【0036】つぎに、図5に示した本発明フェリ磁性薄
膜FM変調器の基本的構成に直流磁界印加のための磁気
回路を付加した本発明FM変調器の全体構成を図9に模
式的に示す。図示の全体構成においては、鉄心磁気回路
14における中央のポールピースの空所に磁石板13に載せ
た図5に示す構成の積層体を挟むとともに、中央のポー
ルピースにコイル15を巻回して信号電流を流すように構
成してある。磁石板13は、フェリ磁性体薄膜11に印加す
る磁界の主成分をなす直流磁界を形成するものであり、
コイル15には、図10に示すように、変調器2からの変調
信号により駆動するトランジスタ TR からの信号電流を
流し、フェリ磁性体薄膜11の印加直流磁界に信号磁界を
重畳して印加するものである。さらに、前述した温度変
化による変調感度変化を補償するためには、図11に示す
ように、変調信号により駆動するトランジスタ TR のベ
ース電位設定回路に温度によって抵抗値が変化するサー
ミスタ RT を用いる。温度が上昇して飽和磁化 MS が減
少すると、外部磁界強度Hexから MS を減算したものが
内部磁界強度 Hinであるから、 Hinが増大する。したが
って、図11に示したサーミスタ RT の抵抗値を温度上昇
に伴って増大させることによりトランジスタ TR の電流
を減少させ、コイル15に流れる直流電流の減少により、
磁石板13による直流磁界に重畳される直流磁界成分を減
少させる。
【0037】さて、一般に、静磁波FM変調器の位相変
調感度∂θ/∂H inを増大させるためには波長λを小さ
くしなければならない。一方、入出力ストリップ電極
9,10は、その寸法、例えば幅を波長λ程度に小さく
し、しかも、寸法精度よく製作する必要があるので、電
磁波と静磁波とを結合させる入出力ストリップ電極製作
のうえからは波長λが小さくない方が望ましい。そこ
で、入出力電極9,10近傍の領域では波長λを大きく
し、体積前進静磁波(MSFVW)の伝搬領域では波長
λを小さくするのが好適である。
【0038】しかして、静磁波の波長λを大きくするこ
とは、単位長当りの波数k = 2 π/λであるから、波数
k を小さくすることであり、図7に示した特性曲線にお
いてΩが一定となる水平領域と曲線領域との変曲部分か
ら判るように、ΩH が大きくなることが必要であり、し
たがって、(10)式から判るように、入出力電極近傍の領
域においては内部磁界強度 Hinを中間領域に比して増大
させる必要がある。そのためには、図12(a) に模式的に
示すように、図9に示した全体構成における鉄心磁気回
路14における中央のポールピースの空所の両端近傍を狭
くし、図12(b) に示すように、磁性体薄膜11の両端領域
における波長λが、内部磁界強度 Hinの増大によって中
間領域における波長λより大きくなるようにする。
【0039】一方、本発明フェリ磁性薄膜FM変調器の
挿入損失 LS が大きい場合には、所要量の周波数変調を
達成するに要する長さの静磁波伝搬路を複数段に区分
し、それらの各段をそれぞれ図9もしくは図12(a) に示
したように構成して各FM変調段を順次に高周波トラン
ジスタ増幅素子を介して直列に接続し、各段の挿入損失
を補償するのが好適である。なお、かかる直列接続にお
ける各段の変調用コイル15に流れる変調電流がすべて同
位相で各コイル15を励振するように, 各段の変調用コイ
ル15を、図13に示すように、順次に直列に接続してトラ
ンジスタ TR により直列に駆動するのが好適である。
【0040】さらに、かかる複数のフェリ磁性薄膜FM
変調段を同一磁性体薄膜上に縦続配置して順次に直列接
続した場合には、各段間の入力および出力のストリップ
電極9,10を、図14に示すように、それぞれ方向性電極
の形態に構成し、不所望の段間結合により発振などの不
所望の事態が生じないようにするのが好適である。すな
わち、各ストリップ電極9および10を、それぞれ、互い
に2n+1 /4λ間して平行に対向配置した2本のストリ
ップ電極9a, 9bおよび10a, 10bにより構成して相互間を
例えば容量C9およびC10 によりそれぞれ接続し、出力ス
トリップ電極10a, 10bに到達し、および、入力ストリッ
プ電極9a, 9bから放出する静磁波が、所定の伝搬方向に
は相加され、逆方向には相殺されて、所定方向のみに伝
搬するようにし、さらに、相隣る入出力ストリップ電極
の相互間は充分に離隔するとともに接地ストリップ導体
16を介在させて不所望の電磁波による浮遊結合が段間に
生じないようにし、かかる状態で出入力電極10, 9のそ
れぞれ手前のストリップ電極10a, 9a 間に段間増幅用高
周波増幅トランジスタ Tr を接続する。
【0041】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、フェリ磁性体における静磁波の伝搬位相を信
号により変調するFM変調器を小型で製造容易な構成に
より良好な直線性および高感度をもって低損失で安定に
動作させ得る、という格別顕著な効果を奏することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のFM変調器の代表例を示すブロック線図
である。
【図2】(a) および(b) は従来のFM変調器の他の代表
例の要部の構成および動作の態様をそれぞれ示す回路図
および特性曲線図である。
【図3】フェリ磁性体内における波動伝搬の態様を示す
特性曲線図である。
【図4】フェリ磁性体の印加直流磁界強度の変化による
磁化変化の態様を示す特性曲線図である。
【図5】本発明フェリ磁性薄膜FM変調器の要部の基本
構成を示す斜視図である。
【図6】(a) 〜(c) はフェリ磁性体薄膜における静磁波
発生の態様をそれぞれ示す線図である。
【図7】フェリ磁性体内における静磁波の波長による位
相変調の変化の態様を示す特性曲線図である。
【図8】フェリ磁性体薄膜における静磁波の波長による
動作変化の範囲を示す特性曲線図である。
【図9】本発明フェリ磁性薄膜FM変調器の全体構成を
模式的に示す断面図である。
【図10】本発明FM変調器における印加磁界強度変調
回路の構成例を示す回路図である。
【図11】本発明FM変調器における印加磁界強度変調
回路の他の構成例を示す回路図である。
【図12】(a) および(b) は本発明FM変調器の全体構
成の他の例およびその動作の態様をそれぞれ模式的に示
す断面図および線図である。
【図13】本発明FM変調器における印加磁界強度変調
回路のさらに他の構成例を示す回路である。
【図14】本発明FM変調器における入出力ストリップ
電極の他の構成例を示す線図である。
【符号の説明】
1 電圧制御発振器(VCO) 2 変調器 3 プリスケーラ 4 基準発振器 5 比較器 6 低域通過フィルタ(LPF) 7 誘電体基板 8 接地板 9,9a, 9b 入力ストリップ電極 10, 10a, 10b 出力ストリップ電極 11 フリエ磁性体(YIG)薄膜 12 磁性体(GGG)基板 13 磁石板 14 磁気回路 15 コイル 16 接地ストリップ導体

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に被着したフェリ磁性体薄膜上に
    入力および出力のストリップ電極を相互に離隔して対向
    配置し、当該入力ストリップ電極を介して高周波電磁波
    を入力するとともに、前記フェリ磁性体薄膜に直流磁界
    を印加して当該入力および出力のストリップ電極の相互
    間に前記高周波電磁波から変換した静磁波を伝搬させ、
    印加した前記直流磁界の強さを信号により変調して前記
    静磁波の波長を変化させることにより、前記信号によっ
    て周波数変調された高周波出力電磁波を取出すように構
    成したことを特徴とするフェリ磁性薄膜FM変調器。
  2. 【請求項2】 前記フェリ磁性体薄膜の膜面に垂直で前
    記入力および出力のストリップ電極にも垂直に前記直流
    磁界を印加して前記静磁波を体積前進静磁波としたこと
    を特徴とする請求項1記載のフェリ磁性薄膜FM変調
    器。
  3. 【請求項3】 前記直流磁界の強さを前記信号により変
    調する変調素子の駆動電流を温度変化に応じて変化させ
    ることにより、前記信号による前記高周波出力電磁波の
    周波数変調感度の温度変化による変化を補正するように
    したことを特徴とする請求項1または2記載のフェリ磁
    性薄膜FM変調器。
  4. 【請求項4】 前記フェリ磁性体薄膜における前記入力
    および出力のストリップ電極近傍の領域に印加する前記
    直流磁界の強さを当該入力および出力のストリップ電極
    相互間の領域に印加する前記直流磁界の強さより大きく
    したことを特徴とする請求項1,2または3記載のフェ
    リ磁性薄膜FM変調器。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のフェ
    リ磁性薄膜FM変調器の複数個を同一フェリ磁性体薄膜
    上にそれぞれ増幅素子を介して順次に縦続配置し、それ
    ぞれの当該フェリ磁性薄膜FM変調器において前記直流
    磁界の強さを変調する変調素子を前記信号により同一位
    相に駆動するように構成したことを特徴とするフェリ磁
    性薄膜FM変調装置。
  6. 【請求項6】 同一フェリ磁性体薄膜上にそれぞれ増幅
    素子を介して順次に縦続配置した前記複数個のフェリ磁
    性薄膜FM変調器の相互間における順次の前記出力スト
    リップ電極と前記入力ストリップ電極とを、接地ストリ
    ップ導体を介在させて相互に離隔するとともに、それぞ
    れ、正の整数nに対し前記静磁波の2nH/4 波長相互に離
    間して容量もしくはインダクタンスを介し相互に接続す
    ることにより方向性をもたせた少なくとも2本の平行ス
    トリップよりなる方向性電極により構成して前記出力ス
    トリップ電極と前記入力ストリップ電極との結合を低減
    したことを特徴とする請求項5記載のフェリ磁性薄膜F
    M変調装置。
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