JP3433172B2 - 固体高分子型燃料電池 - Google Patents
固体高分子型燃料電池Info
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- Y02E60/50—Fuel cells
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- Fuel Cell (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は固体高分子型燃料電
池,特に,芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分を有
する電解質膜と,その電解質膜を挟み,且つ芳香族炭化
水素系高分子イオン交換成分を含む空気極および燃料極
とを備え,燃料極側からのみ加湿するようにしたものに
関する。 【0002】 【従来の技術】従来,前記空気極および燃料極として
は,それら両極にプロトン伝導性を付与すると共にバイ
ンダとして機能する高分子イオン交換成分と,カーボン
ブラック粒子の表面に触媒金属を担持させた複数の触媒
粒子と,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子
とより構成されたものが知られている。このPTFE粒
子は撥水性を有し,空気極および燃料極の保水性を調整
する機能を有する。 【0003】また電解質膜を湿潤状態に保持して,その
プロトン伝導性を確保すべく,従来は空気および水素
を,それらに加湿処理を施してから空気極および燃料極
にそれぞれ供給する,といった手段を採用している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら空気極お
よび燃料極の構成成分としてPTFE粒子を用いる,と
いうことは,発電性能の一層の向上を図るべく,空気極
および燃料極の厚さを減じて,プロトン伝導性を高める
と共に抵抗過電圧を低く抑える,といった要件を満たす
上で障害となっていた。 【0005】また従来の加湿手段によると,空気供給管
路および水素供給管路にそれぞれ,面倒なシール作業を
行って加湿器を装置しなければならず,設備コストの上
昇および構造の煩雑化を招く,という問題があった。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は,空気極および
燃料極の厚さを減じて発電性能の一層の向上を図ること
ができ,また空気極および燃料極として特定のものを備
えることによって燃料極側からの加湿のみで運転するこ
とが可能な前記固体高分子型燃料電池を提供することを
目的とする。 【0007】前記目的を達成するため本発明によれば,
芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分を有する電解質
膜と,その電解質膜を挟む空気極および燃料極とを備
え,前記空気極および燃料極は,それぞれ,カーボンブ
ラック粒子の表面に触媒金属を担持させた複数の触媒粒
子および高分子イオン交換成分からなり,その高分子イ
オン交換成分は,前記芳香族炭化水素系高分子イオン交
換成分と同じ芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分お
よび異なる芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分の一
方であり,前記燃料極において,前記カーボンブラック
粒子は,60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量Aが
A≦80cc/gである,といった撥水性を持ち,且つ
前記高分子イオン交換成分の配合重量をWpとし,また
前記カーボンブラック粒子の配合重量をWcとしたと
き,両配合重量Wp,Wcの比Wp/Wcが0.2≦W
p/Wc≦0.8であり,前記空気極において,前記カ
ーボンブラック粒子は,60℃の飽和水蒸気圧下におけ
る水吸着量AがA≧150cc/gである,といった親
水性を持ち,且つ前記高分子イオン交換成分の配合重量
をWpとし,また前記カーボンブラック粒子の配合重量
をWcとしたとき,両配合重量Wp,Wcの比Wp/W
cが0.6≦Wp/Wc≦1.25であり,前記燃料極
側からのみ加湿するようにした固体高分子型燃料電池が
提供される。 【0008】前記のように構成すると,撥水性カーボン
ブラック粒子および親水性カーボンブラック粒子に,そ
れぞれ空気極および燃料極の保水性を調整する機能を持
たせて,PTFE粒子の使用を止めることが可能であ
る。これは空気極および燃料極の厚さを減じる上で有効
である。 【0009】また空気極および燃料極における前記配合
重量Wp,Wcの比Wp/Wcを前記のように設定する
と,PTFE粒子を含まないこともあって,空気極およ
び燃料極の厚さを減少させて,プロトン伝導性を高める
と共に抵抗過電圧の上昇を抑制して発電性能を向上させ
ることが可能である。 【0010】ただし,燃料極において,比Wp/Wcが
Wp/Wc<0.2では燃料極の厚さは一層減少するが
触媒粒子の被覆率が悪化して発電性能が低下する。一
方,Wp/Wc>0.8では燃料極の厚さ増で加湿水の
流通が悪くなる。空気極において,比Wp/WcがWp
/Wc<0.6では水の保有性が悪化し,一方,Wp/
Wc>1.25では高分子イオン交換成分の分散度が悪
化するため空気極の厚さが増加する。 【0011】さらに,加湿器は水素供給管路側にのみ装
置すればよいから,設備コストを低減し,また構造の簡
素化を図ることができる。 【0012】この場合,燃料極側から加湿を行うと,そ
の加湿水は燃料極のカーボンブラック粒子が撥水性であ
ることから電解質膜にスムーズに流入し,また空気極の
生成水の電解質膜への逆拡散も生じるので電解質膜が湿
潤状態となる。一方,空気極のカーボンブラック粒子が
親水性であることから,生成水の一部および電解質膜中
から空気極に流入した水は,そこに保有される。この空
気極の水の保有と,燃料極への加湿とにより電解質膜が
湿潤状態に保持される。空気極および燃料極において,
過剰の水は外部に排出される。 【0013】ただし,燃料極において,カーボンブラッ
ク粒子の前記水吸着量AがA>80cc/gではその撥
水性が低下して加湿水の流通が悪化し,一方,空気極に
おいて,カーボンブラック粒子の前記水吸着量AがA<
150cc/gではその親水性が低下して水の保有が不
十分となる。 【0014】 【発明の実施の形態】図1において,固体高分子型燃料
電池(セル)1は,電解質膜2と,その電解質膜2を挟
んでその両側にそれぞれ密着する空気極3および燃料極
4と,それら両極3,4にそれぞれ密着する一対の拡散
層5,6と,それら両拡散層5,6に密着する一対のセ
パレータ7,8とよりなる。この場合,燃料極4側から
のみ加湿が行われる。電解質膜−電極集成体9には,実
施例では,電解質膜2,空気極3,燃料極4および両拡
散層5,6が含まれる。 【0015】電解質膜2は,プロトン伝導性を有する芳
香族炭化水素系高分子イオン交換成分より構成されてい
る。空気極3および燃料極4は,それぞれ,カーボンブ
ラック粒子の表面に複数の触媒金属としてのPt粒子を
担持させた複数の触媒粒子ならびにプロトン伝導性およ
びバインダとしての機能を有し,且つ前記と同じまたは
異なる芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分からな
り,第三の成分であるPTFE粒子を含まない。 【0016】各拡散層5,6は多孔質のカーボンペー
パ,カーボンプレート等よりなり,また各セパレータ
7,8は,同一の形態を有するように黒鉛化炭素より構
成され,空気極3側のセパレータ7に存する複数の溝1
0に空気が,また燃料極4側のセパレータ8に在って前
記溝10と交差する関係の複数の溝11に水素がそれぞ
れ供給される。 【0017】芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分
は,無フッ素であって溶剤に可溶であるといった特性を
有する。この種の高分子イオン交換成分としては,表1
に挙げた各種の,芳香族炭化水素系高分子のスルホン化
物が用いられる。 【0018】 【表1】 【0019】溶剤としては,表2に挙げた各種極性溶剤
が用いられる。 【0020】 【表2】 【0021】加湿側である燃料極4において,そのカー
ボンブラック粒子は.60℃の飽和水蒸気圧下における
水吸着量AがA≦80cc/gである,といった撥水性
を持つ。また燃料極4において,芳香族炭化水素系高分
子イオン交換成分の配合重量をWpとし,またカーボン
ブラック粒子の配合重量をWcとしたとき,両配合重量
Wp,Wcの比Wp/Wcは0.2≦Wp/Wc≦0.
8に設定される。 【0022】一方,空気極3において,そのカーボンブ
ラック粒子は,60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着
量AがA≧150cc/gである,といった親水性を持
つ。また空気極3において,芳香族炭化水素系高分子イ
オン交換成分の配合重量をWpとし,またカーボンブラ
ック粒子の配合重量をWcとしたとき,両配合重量W
p,Wcの比Wp/Wcは0.6≦Wp/Wc≦1.2
5に設定される。 【0023】前記のように構成すると,撥水性カーボン
ブラック粒子および親水性カーボンブラック粒子に,そ
れぞれ空気極3および燃料極4の保水性を調整する機能
を持たせて,PTFE粒子の使用を止めることが可能で
ある。これは空気極3および燃料極4の厚さを減じる上
で有効である。 【0024】また空気極3および燃料極4における前記
配合重量Wp,Wcの比Wp/Wcを前記のように設定
すると,PTFE粒子を含まないこともあって,空気極
3および燃料極4の厚さを減少させて,プロトン伝導性
を高めると共に抵抗過電圧の上昇を抑制して発電性能を
向上させることが可能である。 【0025】さらに,加湿器は水素供給管路側にのみ装
置すればよいから,設備コストを低減し,また構造の簡
素化を図ることができる。 【0026】この場合,燃料極4側から加湿を行うと,
その加湿水は燃料極4のカーボンブラック粒子が撥水性
であることから電解質膜2にスムーズに流入し,また空
気極3の生成水の電解質膜2への逆拡散も生じるので電
解質膜2が湿潤状態となる。一方,空気極3のカーボン
ブラック粒子が親水性であることから,生成水の一部お
よび電解質膜2中から空気極3に流入した水は,そこに
保有される。この空気極3の水の保有と,燃料極4への
加湿とにより電解質膜2が湿潤状態に保持される。空気
極3および燃料極4において,過剰の水は外部に排出さ
れる。 【0027】以下,具体例について説明する。 I−(1) 燃料極の製造 60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量AがA=72
cc/gである撥水性カーボンブラック粒子(商品名:
Vulcan XC−72)にPt粒子を担持させて燃
料極用触媒粒子を調製した。触媒粒子におけるPt粒子
の含有量は50wt%である。 〔例−I〕芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分とし
て,表1に例1として挙げたPEEKスルホン化物を用
意し,このPEEKスルホン化物を表2のNMPに還流
溶解した。この溶液におけるPEEKスルホン化物の含
有量は6wt%である。このPEEKスルホン化物含有
溶液に,PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカーボ
ンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcがWp
/Wc=0.2となるように触媒粒子を混合し,次いで
ボールミルを用いて触媒粒子の分散を図り,燃料極用ス
ラリを調製した。このスラリを,Pt量が0.5mg/cm
2 となるように複数の多孔質カーボンペーパの一面にそ
れぞれ塗布し,乾燥して,拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例1とする。 〔例−II〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=0.4に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例2とする。 〔例−III 〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカ
ーボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/Wcを
Wp/Wc=0.6に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例3とする。 〔例−IV〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=0.8に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例4とする。 〔例−V〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=1.25に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例5とする。 〔例−VI〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=2.0に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例6とする。 I−(2)空気極の製造 60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量AがA=37
0cc/gである親水性カーボンブラック粒子(商品
名:ケッチェンブラックEC)にPt粒子を担持させて
空気極用触媒粒子を調製した。触媒粒子におけるPt粒
子の含有量は50wt%である。 〔例−I〕芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分とし
て,表1に例Iとして挙げたPEEKスルホン化物を用
意し,このPEEKスルホン化物を表2のNMPに還流
溶解した。この溶液におけるPEEKスルホン化物の含
有量は6wt%である。このPEEKスルホン化物含有
溶液に,PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカーボ
ンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcがWp
/Wc=0.4となるように触媒粒子を混合し,次いで
ボールミルを用いて触媒粒子の分散を図り,空気極用ス
ラリを調製した。このスラリを,Pt量が0.5mg/cm
2 となるように複数の多孔質カーボンペーパの一面にそ
れぞれ塗布し,乾燥して,拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(1)とする。 〔例−II〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=0.6に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(2)とする。 〔例−III 〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカ
ーボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/Wcを
Wp/Wc=0.8に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(3)とする。 〔例−IV〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=1.25に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(4)とする。 〔例−V〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=1.75に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(5)とする。 II.空気極および燃料極に関する各種考察 表3は,燃料極4の例1〜6および空気極3の例(1)
〜(5)に関するPEEKスルホン化物の配合重量Wp
およびカーボンブラック粒子の配合重量Wcの比Wp/
Wcと,保水性との関係を示す。この保水性は,ガス吸
着装置による60℃飽和水蒸気圧下の水吸着量から算出
した。 【0028】 【表3】 【0029】図2は,表3に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと,空気極および燃料極の保水性との関係をグ
ラフ化したものである。図中,例1〜6は燃料極に該当
し,また例(1)〜(5)は空気極に該当する。このこ
とは,以後の図面において同じである。図2より,両配
合重量の比Wp/Wcが同一である場合,撥水性カーボ
ン粒子を用いた燃料極は,親水性カーボン粒子を用いた
空気極に比べて保水性が低いことが判る。また空気極お
よび燃料極において,両配合重量の比Wp/Wcが増加
すると保水性も増加する,といった傾向がみられる。 【0030】表4は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する両配合重量の比Wp/W
cと,空気極3および燃料極4の厚さとの関係を示す。 【0031】 【表4】【0032】図3は,表4に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと,空気極および燃料極の厚さとの関係をグラ
フ化したものである。図3より,比Wp/Wcの増加に
伴い空気極および燃料極の厚さが増すことが判る。 【0033】表5は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する両配合重量の比Wp/W
cと触媒粒子の被覆率Ccとの関係を示す。 【0034】 【表5】 【0035】触媒粒子の被覆率Ccは,空気極および燃
料極の平面の面積をAeとし,また空気極および燃料極
の平面に露出している複数の触媒粒子の面積の和をAc
としたとき,Cc={(Ae−Ac)/Ae}×100
(%)として求められた。 【0036】図4は,表5に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと触媒粒子の被覆率Ccとの関係をグラフ化し
たものである。図4より,比Wp/Wcの増加に伴い触
媒粒子の被覆率Ccが増すことが判る。 【0037】表6は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する両配合重量の比Wp/W
cと触媒粒子の分散度Dとの関係を示す。 【0038】 【表6】【0039】触媒粒子の分散度Dは次のような方法によ
って求められた。先ず,空気極3(または燃料極4)の
製造時における触媒粒子およびPEEKスルホン化物の
配合量から触媒粒子中の理論Pt濃度TpおよびPEE
Kスルホン化物中の理論S(イオウ)濃度Tsを算出
し,次いで,それら理論値から理論値比Ts/Tpを求
めた。また,空気極3等の表面をEPMAにて観察し,
触媒粒子中の実測Pt濃度ApおよびPEEKスルホン
化物中の実測S濃度Asを面分析により求め,次いで,
それら実測値から実測値比As/Apを求めた。 【0040】その後,分散度Dを, D=[{(Ts/Tp)−(As/Ap)}/(Ts/
Tp)]×100(%) の式に則って求めた。 【0041】図5は,表6に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと触媒粒子の分散度Dとの関係をグラフ化した
ものである。図5より,比Wp/Wcの増加に伴い触媒
粒子の分散度Dが増すことが判る。 【0042】表7は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する触媒粒子の分散度Dと空
気極3および燃料極4の厚さとの関係を示す。 【0043】 【表7】 【0044】図6は,表7に基づいて触媒粒子の分散度
Dと,空気極および燃料極の厚さとの関係をグラフ化し
たものである。図6より,触媒粒子の分散度Dの増加に
伴い空気極および燃料極の厚さが増すことが判る。 III .燃料電池の発電性能 燃料極4および空気極3の製造で用いられたPEEKス
ルホン化物と同様のものを使用して厚さ50μmの電解
質膜2を成形した。また燃料極4の例1〜6と,空気極
3の例(1)〜(5)を用意し,燃料極4の各例1〜6
が空気極3の例(1)〜(5)と総当りとなるような組
合せを行う,つまり,例1について言えば,例1と例
(1),例1と例(2)……例1と例(5),といった
組合せを行って30組の電極対を得た。各電極対,した
がって一組の空気極3および燃料極4により電解質膜2
を挟み,140℃,1.5MPa,1分間の条件でホッ
トプレスを行って,電解質膜−電極集成体9を得た。各
電解質膜−電極集成体9を用いて固体高分子型燃料電池
1を組立て,燃料極4側からのみ加湿する,という条件
下で発電を行って電流密度と端子電圧との関係を測定し
た。この場合,水の拡散による端子電圧への影響が大で
あることから,各電池の端子電圧の比較値として高電流
密度側である0.8A/cm2 における端子電圧を用い
た。 【0045】表8は,燃料極4の例1〜6および空気極
4の例(1)〜(5)における両配合重量の比Wp/W
cと,各電池における空気極および燃料極の組合せと,
0.8A/cm2 における端子電圧とを示す。 【0046】 【表8】 【0047】図7は,表8に基づいて空気極3および燃
料極4の組合せと,端子電圧との関係をグラフ化したも
のである。表8,図7から明らかなように,燃料極4の
例1〜4および空気極3の例(2)〜(4)間において
組合せを行うと,燃料極4側からのみ加湿する,という
条件下で固体高分子型燃料電池1を運転した場合,その
発電性能を向上させることができる。 【0048】比較のため,燃料極4の例3と空気極3の
例(3)との組合せを行った燃料電池1において,空気
極3側からのみ加湿する,という条件下で発電を行って
電流密度と端子電圧との関係を測定したところ,電流密
度0.8A/cm2 における端子電圧は0.613Vであ
ることが判明した。この端子電圧は,表8における燃料
極の例3と空気極の例(3)とを組合せた場合の端子電
圧0.691Vに比べて約11%低いことが明らかであ
る。 【0049】この事実から,燃料極4の例1〜4と空気
極3の例(2)〜(4)との組合せを行った燃料電池1
において,燃料極4側からのみ加湿を行うことの意義が
明らかである。 【0050】空気極3および燃料極4において,両配合
重量の比Wp/Wcをそれぞれ前記のように設定する
と,表4より燃料極4の厚さtは,例1〜4のごとく,
3μm≦t≦7μmになると共に空気極3の厚さtは,
例(2)〜(4)のごとく,6μm≦t≦8μmとな
り,また表5より燃料極4における触媒粒子の被覆率C
cは,例1〜4のごとく,72%≦Cc≦97%になる
と共に空気極3における触媒粒子の被覆率Ccは,例
(2)〜(4)のごとく,95%≦Cc≦98%とな
り,さらに表6より燃料極4における触媒粒子の分散度
Dは,例1〜4のごとく,2%≦D≦7%になると共に
空気極3における触媒粒子の分散度Dは,例(2)〜
(4)のごとく,5%≦D≦8%となる。 【0051】 【発明の効果】本発明によれば前記のように構成するこ
とによって,燃料極側からの加湿のみで運転しても高い
発電性能を発揮することが可能な,安価で,且つ構造の
簡素な固体高分子型燃料電池を提供することができる。
池,特に,芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分を有
する電解質膜と,その電解質膜を挟み,且つ芳香族炭化
水素系高分子イオン交換成分を含む空気極および燃料極
とを備え,燃料極側からのみ加湿するようにしたものに
関する。 【0002】 【従来の技術】従来,前記空気極および燃料極として
は,それら両極にプロトン伝導性を付与すると共にバイ
ンダとして機能する高分子イオン交換成分と,カーボン
ブラック粒子の表面に触媒金属を担持させた複数の触媒
粒子と,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子
とより構成されたものが知られている。このPTFE粒
子は撥水性を有し,空気極および燃料極の保水性を調整
する機能を有する。 【0003】また電解質膜を湿潤状態に保持して,その
プロトン伝導性を確保すべく,従来は空気および水素
を,それらに加湿処理を施してから空気極および燃料極
にそれぞれ供給する,といった手段を採用している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら空気極お
よび燃料極の構成成分としてPTFE粒子を用いる,と
いうことは,発電性能の一層の向上を図るべく,空気極
および燃料極の厚さを減じて,プロトン伝導性を高める
と共に抵抗過電圧を低く抑える,といった要件を満たす
上で障害となっていた。 【0005】また従来の加湿手段によると,空気供給管
路および水素供給管路にそれぞれ,面倒なシール作業を
行って加湿器を装置しなければならず,設備コストの上
昇および構造の煩雑化を招く,という問題があった。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は,空気極および
燃料極の厚さを減じて発電性能の一層の向上を図ること
ができ,また空気極および燃料極として特定のものを備
えることによって燃料極側からの加湿のみで運転するこ
とが可能な前記固体高分子型燃料電池を提供することを
目的とする。 【0007】前記目的を達成するため本発明によれば,
芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分を有する電解質
膜と,その電解質膜を挟む空気極および燃料極とを備
え,前記空気極および燃料極は,それぞれ,カーボンブ
ラック粒子の表面に触媒金属を担持させた複数の触媒粒
子および高分子イオン交換成分からなり,その高分子イ
オン交換成分は,前記芳香族炭化水素系高分子イオン交
換成分と同じ芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分お
よび異なる芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分の一
方であり,前記燃料極において,前記カーボンブラック
粒子は,60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量Aが
A≦80cc/gである,といった撥水性を持ち,且つ
前記高分子イオン交換成分の配合重量をWpとし,また
前記カーボンブラック粒子の配合重量をWcとしたと
き,両配合重量Wp,Wcの比Wp/Wcが0.2≦W
p/Wc≦0.8であり,前記空気極において,前記カ
ーボンブラック粒子は,60℃の飽和水蒸気圧下におけ
る水吸着量AがA≧150cc/gである,といった親
水性を持ち,且つ前記高分子イオン交換成分の配合重量
をWpとし,また前記カーボンブラック粒子の配合重量
をWcとしたとき,両配合重量Wp,Wcの比Wp/W
cが0.6≦Wp/Wc≦1.25であり,前記燃料極
側からのみ加湿するようにした固体高分子型燃料電池が
提供される。 【0008】前記のように構成すると,撥水性カーボン
ブラック粒子および親水性カーボンブラック粒子に,そ
れぞれ空気極および燃料極の保水性を調整する機能を持
たせて,PTFE粒子の使用を止めることが可能であ
る。これは空気極および燃料極の厚さを減じる上で有効
である。 【0009】また空気極および燃料極における前記配合
重量Wp,Wcの比Wp/Wcを前記のように設定する
と,PTFE粒子を含まないこともあって,空気極およ
び燃料極の厚さを減少させて,プロトン伝導性を高める
と共に抵抗過電圧の上昇を抑制して発電性能を向上させ
ることが可能である。 【0010】ただし,燃料極において,比Wp/Wcが
Wp/Wc<0.2では燃料極の厚さは一層減少するが
触媒粒子の被覆率が悪化して発電性能が低下する。一
方,Wp/Wc>0.8では燃料極の厚さ増で加湿水の
流通が悪くなる。空気極において,比Wp/WcがWp
/Wc<0.6では水の保有性が悪化し,一方,Wp/
Wc>1.25では高分子イオン交換成分の分散度が悪
化するため空気極の厚さが増加する。 【0011】さらに,加湿器は水素供給管路側にのみ装
置すればよいから,設備コストを低減し,また構造の簡
素化を図ることができる。 【0012】この場合,燃料極側から加湿を行うと,そ
の加湿水は燃料極のカーボンブラック粒子が撥水性であ
ることから電解質膜にスムーズに流入し,また空気極の
生成水の電解質膜への逆拡散も生じるので電解質膜が湿
潤状態となる。一方,空気極のカーボンブラック粒子が
親水性であることから,生成水の一部および電解質膜中
から空気極に流入した水は,そこに保有される。この空
気極の水の保有と,燃料極への加湿とにより電解質膜が
湿潤状態に保持される。空気極および燃料極において,
過剰の水は外部に排出される。 【0013】ただし,燃料極において,カーボンブラッ
ク粒子の前記水吸着量AがA>80cc/gではその撥
水性が低下して加湿水の流通が悪化し,一方,空気極に
おいて,カーボンブラック粒子の前記水吸着量AがA<
150cc/gではその親水性が低下して水の保有が不
十分となる。 【0014】 【発明の実施の形態】図1において,固体高分子型燃料
電池(セル)1は,電解質膜2と,その電解質膜2を挟
んでその両側にそれぞれ密着する空気極3および燃料極
4と,それら両極3,4にそれぞれ密着する一対の拡散
層5,6と,それら両拡散層5,6に密着する一対のセ
パレータ7,8とよりなる。この場合,燃料極4側から
のみ加湿が行われる。電解質膜−電極集成体9には,実
施例では,電解質膜2,空気極3,燃料極4および両拡
散層5,6が含まれる。 【0015】電解質膜2は,プロトン伝導性を有する芳
香族炭化水素系高分子イオン交換成分より構成されてい
る。空気極3および燃料極4は,それぞれ,カーボンブ
ラック粒子の表面に複数の触媒金属としてのPt粒子を
担持させた複数の触媒粒子ならびにプロトン伝導性およ
びバインダとしての機能を有し,且つ前記と同じまたは
異なる芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分からな
り,第三の成分であるPTFE粒子を含まない。 【0016】各拡散層5,6は多孔質のカーボンペー
パ,カーボンプレート等よりなり,また各セパレータ
7,8は,同一の形態を有するように黒鉛化炭素より構
成され,空気極3側のセパレータ7に存する複数の溝1
0に空気が,また燃料極4側のセパレータ8に在って前
記溝10と交差する関係の複数の溝11に水素がそれぞ
れ供給される。 【0017】芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分
は,無フッ素であって溶剤に可溶であるといった特性を
有する。この種の高分子イオン交換成分としては,表1
に挙げた各種の,芳香族炭化水素系高分子のスルホン化
物が用いられる。 【0018】 【表1】 【0019】溶剤としては,表2に挙げた各種極性溶剤
が用いられる。 【0020】 【表2】 【0021】加湿側である燃料極4において,そのカー
ボンブラック粒子は.60℃の飽和水蒸気圧下における
水吸着量AがA≦80cc/gである,といった撥水性
を持つ。また燃料極4において,芳香族炭化水素系高分
子イオン交換成分の配合重量をWpとし,またカーボン
ブラック粒子の配合重量をWcとしたとき,両配合重量
Wp,Wcの比Wp/Wcは0.2≦Wp/Wc≦0.
8に設定される。 【0022】一方,空気極3において,そのカーボンブ
ラック粒子は,60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着
量AがA≧150cc/gである,といった親水性を持
つ。また空気極3において,芳香族炭化水素系高分子イ
オン交換成分の配合重量をWpとし,またカーボンブラ
ック粒子の配合重量をWcとしたとき,両配合重量W
p,Wcの比Wp/Wcは0.6≦Wp/Wc≦1.2
5に設定される。 【0023】前記のように構成すると,撥水性カーボン
ブラック粒子および親水性カーボンブラック粒子に,そ
れぞれ空気極3および燃料極4の保水性を調整する機能
を持たせて,PTFE粒子の使用を止めることが可能で
ある。これは空気極3および燃料極4の厚さを減じる上
で有効である。 【0024】また空気極3および燃料極4における前記
配合重量Wp,Wcの比Wp/Wcを前記のように設定
すると,PTFE粒子を含まないこともあって,空気極
3および燃料極4の厚さを減少させて,プロトン伝導性
を高めると共に抵抗過電圧の上昇を抑制して発電性能を
向上させることが可能である。 【0025】さらに,加湿器は水素供給管路側にのみ装
置すればよいから,設備コストを低減し,また構造の簡
素化を図ることができる。 【0026】この場合,燃料極4側から加湿を行うと,
その加湿水は燃料極4のカーボンブラック粒子が撥水性
であることから電解質膜2にスムーズに流入し,また空
気極3の生成水の電解質膜2への逆拡散も生じるので電
解質膜2が湿潤状態となる。一方,空気極3のカーボン
ブラック粒子が親水性であることから,生成水の一部お
よび電解質膜2中から空気極3に流入した水は,そこに
保有される。この空気極3の水の保有と,燃料極4への
加湿とにより電解質膜2が湿潤状態に保持される。空気
極3および燃料極4において,過剰の水は外部に排出さ
れる。 【0027】以下,具体例について説明する。 I−(1) 燃料極の製造 60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量AがA=72
cc/gである撥水性カーボンブラック粒子(商品名:
Vulcan XC−72)にPt粒子を担持させて燃
料極用触媒粒子を調製した。触媒粒子におけるPt粒子
の含有量は50wt%である。 〔例−I〕芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分とし
て,表1に例1として挙げたPEEKスルホン化物を用
意し,このPEEKスルホン化物を表2のNMPに還流
溶解した。この溶液におけるPEEKスルホン化物の含
有量は6wt%である。このPEEKスルホン化物含有
溶液に,PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカーボ
ンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcがWp
/Wc=0.2となるように触媒粒子を混合し,次いで
ボールミルを用いて触媒粒子の分散を図り,燃料極用ス
ラリを調製した。このスラリを,Pt量が0.5mg/cm
2 となるように複数の多孔質カーボンペーパの一面にそ
れぞれ塗布し,乾燥して,拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例1とする。 〔例−II〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=0.4に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例2とする。 〔例−III 〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカ
ーボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/Wcを
Wp/Wc=0.6に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例3とする。 〔例−IV〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=0.8に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例4とする。 〔例−V〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=1.25に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例5とする。 〔例−VI〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=2.0に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層6を持つ燃料極4を得
た。この燃料極4を例6とする。 I−(2)空気極の製造 60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量AがA=37
0cc/gである親水性カーボンブラック粒子(商品
名:ケッチェンブラックEC)にPt粒子を担持させて
空気極用触媒粒子を調製した。触媒粒子におけるPt粒
子の含有量は50wt%である。 〔例−I〕芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分とし
て,表1に例Iとして挙げたPEEKスルホン化物を用
意し,このPEEKスルホン化物を表2のNMPに還流
溶解した。この溶液におけるPEEKスルホン化物の含
有量は6wt%である。このPEEKスルホン化物含有
溶液に,PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカーボ
ンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcがWp
/Wc=0.4となるように触媒粒子を混合し,次いで
ボールミルを用いて触媒粒子の分散を図り,空気極用ス
ラリを調製した。このスラリを,Pt量が0.5mg/cm
2 となるように複数の多孔質カーボンペーパの一面にそ
れぞれ塗布し,乾燥して,拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(1)とする。 〔例−II〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=0.6に設定した,という点を除き,例−I
と同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(2)とする。 〔例−III 〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカ
ーボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/Wcを
Wp/Wc=0.8に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(3)とする。 〔例−IV〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=1.25に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(4)とする。 〔例−V〕PEEKスルホン化物の配合重量Wpとカー
ボンブラック粒子の配合重量Wcとの比Wp/WcをW
p/Wc=1.75に設定した,という点を除き,例−
Iと同様の方法を実施して拡散層5を持つ空気極3を得
た。この空気極3を例(5)とする。 II.空気極および燃料極に関する各種考察 表3は,燃料極4の例1〜6および空気極3の例(1)
〜(5)に関するPEEKスルホン化物の配合重量Wp
およびカーボンブラック粒子の配合重量Wcの比Wp/
Wcと,保水性との関係を示す。この保水性は,ガス吸
着装置による60℃飽和水蒸気圧下の水吸着量から算出
した。 【0028】 【表3】 【0029】図2は,表3に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと,空気極および燃料極の保水性との関係をグ
ラフ化したものである。図中,例1〜6は燃料極に該当
し,また例(1)〜(5)は空気極に該当する。このこ
とは,以後の図面において同じである。図2より,両配
合重量の比Wp/Wcが同一である場合,撥水性カーボ
ン粒子を用いた燃料極は,親水性カーボン粒子を用いた
空気極に比べて保水性が低いことが判る。また空気極お
よび燃料極において,両配合重量の比Wp/Wcが増加
すると保水性も増加する,といった傾向がみられる。 【0030】表4は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する両配合重量の比Wp/W
cと,空気極3および燃料極4の厚さとの関係を示す。 【0031】 【表4】【0032】図3は,表4に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと,空気極および燃料極の厚さとの関係をグラ
フ化したものである。図3より,比Wp/Wcの増加に
伴い空気極および燃料極の厚さが増すことが判る。 【0033】表5は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する両配合重量の比Wp/W
cと触媒粒子の被覆率Ccとの関係を示す。 【0034】 【表5】 【0035】触媒粒子の被覆率Ccは,空気極および燃
料極の平面の面積をAeとし,また空気極および燃料極
の平面に露出している複数の触媒粒子の面積の和をAc
としたとき,Cc={(Ae−Ac)/Ae}×100
(%)として求められた。 【0036】図4は,表5に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと触媒粒子の被覆率Ccとの関係をグラフ化し
たものである。図4より,比Wp/Wcの増加に伴い触
媒粒子の被覆率Ccが増すことが判る。 【0037】表6は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する両配合重量の比Wp/W
cと触媒粒子の分散度Dとの関係を示す。 【0038】 【表6】【0039】触媒粒子の分散度Dは次のような方法によ
って求められた。先ず,空気極3(または燃料極4)の
製造時における触媒粒子およびPEEKスルホン化物の
配合量から触媒粒子中の理論Pt濃度TpおよびPEE
Kスルホン化物中の理論S(イオウ)濃度Tsを算出
し,次いで,それら理論値から理論値比Ts/Tpを求
めた。また,空気極3等の表面をEPMAにて観察し,
触媒粒子中の実測Pt濃度ApおよびPEEKスルホン
化物中の実測S濃度Asを面分析により求め,次いで,
それら実測値から実測値比As/Apを求めた。 【0040】その後,分散度Dを, D=[{(Ts/Tp)−(As/Ap)}/(Ts/
Tp)]×100(%) の式に則って求めた。 【0041】図5は,表6に基づいて両配合重量の比W
p/Wcと触媒粒子の分散度Dとの関係をグラフ化した
ものである。図5より,比Wp/Wcの増加に伴い触媒
粒子の分散度Dが増すことが判る。 【0042】表7は,燃料極4の例1〜6および空気極
3の例(1)〜(5)に関する触媒粒子の分散度Dと空
気極3および燃料極4の厚さとの関係を示す。 【0043】 【表7】 【0044】図6は,表7に基づいて触媒粒子の分散度
Dと,空気極および燃料極の厚さとの関係をグラフ化し
たものである。図6より,触媒粒子の分散度Dの増加に
伴い空気極および燃料極の厚さが増すことが判る。 III .燃料電池の発電性能 燃料極4および空気極3の製造で用いられたPEEKス
ルホン化物と同様のものを使用して厚さ50μmの電解
質膜2を成形した。また燃料極4の例1〜6と,空気極
3の例(1)〜(5)を用意し,燃料極4の各例1〜6
が空気極3の例(1)〜(5)と総当りとなるような組
合せを行う,つまり,例1について言えば,例1と例
(1),例1と例(2)……例1と例(5),といった
組合せを行って30組の電極対を得た。各電極対,した
がって一組の空気極3および燃料極4により電解質膜2
を挟み,140℃,1.5MPa,1分間の条件でホッ
トプレスを行って,電解質膜−電極集成体9を得た。各
電解質膜−電極集成体9を用いて固体高分子型燃料電池
1を組立て,燃料極4側からのみ加湿する,という条件
下で発電を行って電流密度と端子電圧との関係を測定し
た。この場合,水の拡散による端子電圧への影響が大で
あることから,各電池の端子電圧の比較値として高電流
密度側である0.8A/cm2 における端子電圧を用い
た。 【0045】表8は,燃料極4の例1〜6および空気極
4の例(1)〜(5)における両配合重量の比Wp/W
cと,各電池における空気極および燃料極の組合せと,
0.8A/cm2 における端子電圧とを示す。 【0046】 【表8】 【0047】図7は,表8に基づいて空気極3および燃
料極4の組合せと,端子電圧との関係をグラフ化したも
のである。表8,図7から明らかなように,燃料極4の
例1〜4および空気極3の例(2)〜(4)間において
組合せを行うと,燃料極4側からのみ加湿する,という
条件下で固体高分子型燃料電池1を運転した場合,その
発電性能を向上させることができる。 【0048】比較のため,燃料極4の例3と空気極3の
例(3)との組合せを行った燃料電池1において,空気
極3側からのみ加湿する,という条件下で発電を行って
電流密度と端子電圧との関係を測定したところ,電流密
度0.8A/cm2 における端子電圧は0.613Vであ
ることが判明した。この端子電圧は,表8における燃料
極の例3と空気極の例(3)とを組合せた場合の端子電
圧0.691Vに比べて約11%低いことが明らかであ
る。 【0049】この事実から,燃料極4の例1〜4と空気
極3の例(2)〜(4)との組合せを行った燃料電池1
において,燃料極4側からのみ加湿を行うことの意義が
明らかである。 【0050】空気極3および燃料極4において,両配合
重量の比Wp/Wcをそれぞれ前記のように設定する
と,表4より燃料極4の厚さtは,例1〜4のごとく,
3μm≦t≦7μmになると共に空気極3の厚さtは,
例(2)〜(4)のごとく,6μm≦t≦8μmとな
り,また表5より燃料極4における触媒粒子の被覆率C
cは,例1〜4のごとく,72%≦Cc≦97%になる
と共に空気極3における触媒粒子の被覆率Ccは,例
(2)〜(4)のごとく,95%≦Cc≦98%とな
り,さらに表6より燃料極4における触媒粒子の分散度
Dは,例1〜4のごとく,2%≦D≦7%になると共に
空気極3における触媒粒子の分散度Dは,例(2)〜
(4)のごとく,5%≦D≦8%となる。 【0051】 【発明の効果】本発明によれば前記のように構成するこ
とによって,燃料極側からの加湿のみで運転しても高い
発電性能を発揮することが可能な,安価で,且つ構造の
簡素な固体高分子型燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子型燃料電池の概略側面図である。
【図2】両配合重量の比Wp/Wcと,空気極および燃
料極の保水性との関係を示すグラフである。 【図3】両配合重量の比Wp/Wcと,空気極および燃
料極の厚さとの関係を示すグラフである。 【図4】両配合重量の比Wp/Wcと,触媒粒子の被覆
率Ccとの関係を示すグラフである。 【図5】両配合重量の比Wp/Wcと,触媒粒子の分散
度Dとの関係を示すグラフである。 【図6】触媒粒子の分散度Dと,空気極および燃料極の
厚さとの関係を示すグラフである。 【図7】空気極および燃料極の組合せと,端子電圧との
関係を示すグラフである。 【符号の説明】 1 固体高分子型燃料電池 2 電解質膜 3 空気極 4 燃料極
料極の保水性との関係を示すグラフである。 【図3】両配合重量の比Wp/Wcと,空気極および燃
料極の厚さとの関係を示すグラフである。 【図4】両配合重量の比Wp/Wcと,触媒粒子の被覆
率Ccとの関係を示すグラフである。 【図5】両配合重量の比Wp/Wcと,触媒粒子の分散
度Dとの関係を示すグラフである。 【図6】触媒粒子の分散度Dと,空気極および燃料極の
厚さとの関係を示すグラフである。 【図7】空気極および燃料極の組合せと,端子電圧との
関係を示すグラフである。 【符号の説明】 1 固体高分子型燃料電池 2 電解質膜 3 空気極 4 燃料極
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 七海 昌昭
埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式
会社本田技術研究所内
(72)発明者 松尾 順二
埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式
会社本田技術研究所内
(56)参考文献 特開2001−185162(JP,A)
特開2001−266901(JP,A)
特開 平7−134995(JP,A)
特開2001−160406(JP,A)
特開 平11−339815(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
H01M 4/86 - 4/98
H01M 8/00 - 8/24
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 芳香族炭化水素系高分子イオン交換成分
を有する電解質膜(2)と,その電解質膜(2)を挟む
空気極(3)および燃料極(4)とを備え, 前記空気極(3)および燃料極(4)は,それぞれ,カ
ーボンブラック粒子の表面に触媒金属を担持させた複数
の触媒粒子および高分子イオン交換成分からなり,その
高分子イオン交換成分は,前記芳香族炭化水素系高分子
イオン交換成分と同じ芳香族炭化水素系高分子イオン交
換成分および異なる芳香族炭化水素系高分子イオン交換
成分の一方であり, 前記燃料極(4)において,前記カーボンブラック粒子
は,60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量AがA≦
80cc/gである,といった撥水性を持ち,且つ前記
高分子イオン交換成分の配合重量をWpとし,また前記
カーボンブラック粒子の配合重量をWcとしたとき,両
配合重量Wp,Wcの比Wp/Wcが0.2≦Wp/W
c≦0.8であり, 前記空気極(3)において,前記カーボンブラック粒子
は,60℃の飽和水蒸気圧下における水吸着量AがA≧
150cc/gである,といった親水性を持ち,且つ前
記高分子イオン交換成分の配合重量をWpとし,また前
記カーボンブラック粒子の配合重量をWcとしたとき,
両配合重量Wp,Wcの比Wp/Wcが0.6≦Wp/
Wc≦1.25であり, 前記燃料極(4)側からのみ加湿するようにしたことを
特徴とする固体高分子型燃料電池。
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| JP2001185162A (ja) | 1999-12-22 | 2001-07-06 | Sanyo Electric Co Ltd | 燃料電池とその製造方法 |
| JP2001266901A (ja) | 2000-03-22 | 2001-09-28 | Toyota Motor Corp | 燃料電池用の電極触媒溶液およびその製造方法 |
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2000
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