JP3466076B2 - 耐食性と溶接性に優れた鋼材 - Google Patents
耐食性と溶接性に優れた鋼材Info
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Description
の遂行が困難な構造物で、無塗装乃至塗装してで使用さ
れる構造材用に適した鋼材に関し、耐食性と溶接性に優
れた鋼材に関するものである。
塩が飛来するなどの塩分腐食環境下にある道路橋等の橋
梁構造物に使用する鋼材は、耐食性向上のため、従来か
ら塗装されて用いられている。しかし、この塗装塗膜は
必ず経時劣化するため、耐食性維持のために、一定周期
で塗装しなおす維持管理の必要性がある。
の多数桁橋梁に代わり、2主桁橋梁に代表されるような
主桁の数が少ない少数主桁橋梁が多く用いられるように
なっている。この少数主桁橋梁は、多数桁橋梁に比し
て、使用鋼材量(鋼重)や橋材片数が削減可能で、施工
性も良く、環境保護や工期の短縮の点で利点を有する。
そして、このような少数主桁橋梁には、橋梁設置後の維
持管理の負荷やコストの最小化と、橋梁自体の高寿命化
が強く求められている。
含め、鉄塔や建築物などの構造材に用いられる鋼材に
は、前記塩分腐食環境下において、無塗装で使用(裸使
用)されても、また、塗装されて使用され、使用中に塗
装皮膜が劣化乃至破壊されても、いずれにしても橋梁設
置後の維持管理が不要であるような高い耐食性を維持す
る鋼材が強く求められている。
に、母材である鋼材側からの改善技術が種々提案されて
いる。例えば、この代表例として、P :0.15% 以下やC
u:0.2〜0.6 % 、Cr:0.3 〜1.25% 、Ni:0.65% 以下を
含む耐候性鋼がある。この耐候性鋼は、JIS G 3114 (溶
接構造用耐候性熱間圧延鋼材) あるいはJIS G 3125 (高
耐候性圧延鋼材) の2 種が規格化されている。この耐候
性鋼は、前記微量元素の作用によって、鋼材の使用中
に、鋼表面に生成する錆が、裸耐候性に代表される高い
耐食性を有する緻密な安定錆層 (耐候性錆) となる自己
防食機能を有している。そして、このような性質によ
り、耐候性鋼は、前記橋梁など、これまで様々な構造物
のメンテナンスフリーの構造材として、基本的に無塗装
で使用されてきた。
影響により、耐候性鋼の特徴である前記安定錆層が形成
されにくくなる。そして、この安定錆層が形成されなく
なると、前記耐候性鋼の耐食性は著しく低下してしま
う。これは、前記塩分の多い腐食環境下では、鋼の腐食
に伴って、錆皮膜中のpHが特に低下することに起因して
いる。即ち、通常、鋼の腐食がわずかでも始まると、ま
ず、Fe→Fe2++2e- と、これに続くFe2++2H2O→Fe(OH)
2 +2H+ なる反応により、鋼表面のpHは低下し、錆皮膜
中乃至錆皮膜と鋼との界面のpHも低下する。そして、こ
れらのpHが一旦低下すると、電気的中性を保つために錆
皮膜中の塩素イオンの輸率が増大し、塩素イオンの濃縮
が錆皮膜と鋼との界面で生じる。この結果、この界面部
分に塩酸雰囲気が形成され、鋼の腐食を促進するもので
ある。また、これと同時に、錆皮膜中のpHの低下によっ
て、鉄イオンの溶解度が大きくなり、耐候性鋼など耐食
低合金鋼の防食機構の要である前記安定錆層の形成を阻
害する現象も生じ、腐食加速状況が形成される。
するため、耐候性鋼の表面をアルカリ化し、前記腐食加
速状況の形成を阻止する技術が提案されている。より具
体的には、耐候性鋼の表面をアルカリ化するBe、Mg、C
a、Sr、Ba等の酸化物 (化学種) を、予め鋼中に分散し
ておき、前記鋼の腐食反応と同時に、これら化学種を作
用させ、鋼表面のpHの低下を抑制する方法が、例えば、
特開昭58−25458 号や特許第2572447 号公報などで提案
されている。
て、腐食加速状況の形成を阻止する技術は、確かに、外
界からの塩分等の影響を抑制する点では効果がある。し
かしながら、やはり前記安定錆層自体を形成するのは、
前記耐候性鋼と同様に困難乃至限界があり、十分な耐食
性が得られていないのが実情である。また、鋼中に添加
する酸化物自体が、溶接性や強度などの特性に悪影響を
及ぼす懸念もある。
ば、特に、前記少数主桁橋の構造材に求められている、
無塗装で使用可能な耐食性のレベル、即ち1 年間大気暴
露 (週1回の5%塩水散布を含む) 後の、腐食による鋼材
の平均板厚減少量が0.8mm 以下、より好ましくは0.5mm
以下のレベルまでには、耐候性鋼の耐食性を改善できな
い。また、前記少数主桁橋梁などでの構造材の施工上重
要な、予熱なし(予熱フリー)で、入熱量5KJ/mm以上、
場合によって100 乃至300KJ/mm以上の大入熱溶接などの
高効率の溶接ができる溶接性の要求特性も満たすことが
できていない。したがって、前記少数主桁橋に代表され
る、塩分腐食環境下であっても無塗装乃至塗装して使用
される構造材に適した鋼材は、これまで実質的に無かっ
たのが実情である。
鋼の問題に鑑み、前記少数主桁橋などの構造材として使
用可能な耐食性を有するとともに、予熱なしで、入熱量
5KJ/mm以上の大入熱溶接などの高効率の溶接ができる溶
接性に優れた鋼材を提供することを目的とする。
は、鋼材の組成成分を、質量% にて、 C:0.15% 以下、
Si:0.10〜1.0 % 、Mn:1.5 % 以下、S :0.02% 以下、
P :0.05% 以下、Cr:0.05% 以下、Ti:0.01〜 1.0% 、
Ca:0.0001〜0.01% 、およびCu:0.05〜3.0 %とNi:0.0
5〜6.0 % の1 種または2 種、およびMo:0.05〜3.0 %
とW :0.05〜3.0 % の1 種または2 種を含有し、残部Fe
および不可避的不純物からなり、かつ炭素当量A (%) を
0.20以下 [但し、炭素当量A =C+Si/22 +Mn/6+P/10−
Cu/20 −Ni/15 +Cr/2−Ti/2−Ca−Al/35 +Mo/4+W/6
(%)] とし、この鋼材の表面に生成した錆の、X線回折
法により求めた非晶質成分の分率が30wt%以上で、β−
FeOOH 成分の分率が20wt%以下とすることである。
面に生成した錆を緻密な安定錆層にすることができ、鋼
材を塩分腐食環境下でも、塗装無しで使用できる裸耐候
性を有することが可能となる。より具体的には、鋼材の
裸耐候性を、好ましくは、 1年間大気暴露 (週 1回の塩
水散布を含む) 後の腐食による鋼材の平均板厚減少量が
0.8mm 以下、より好ましくは0.5mm 以下の優れたものと
することができる。
り、前記裸耐候性とともに、鋼材の厚みが50mm以上であ
っても、好ましくは、予熱無しで入熱量5KJ/mm以上、場
合によって100 乃至300KJ/mm以上の大入熱溶接を施すこ
とができる溶接性を有することが可能となる。
アルカリ化する化学種を鋼中に分散させた耐候性鋼材
が、特に、前記少数主桁橋などの構造材に求められてい
る、耐候性などの耐食性のレベルまでに改善できない理
由を鋭意検討した。その結果、従来の耐候性鋼材の高耐
食性が再現性良く発揮されない原因が、鋼材の成分組成
の内の、S やCrが腐食因子として作用していることを知
見した。そして、一方でTiを含有することにより、耐候
性鋼材の高耐食性が著しく向上することを知見した。
下に説明する。鋼材表面に生成した錆においては、緻密
な安定錆層か否かの目安として、錆の非晶質度 (非晶質
度合い) が重要となる。即ち、鋼材表面に生成する鉄錆
の主要な成分は、α−FeOOH、β−FeOOH 、γ−FeOOH
およびFe3O4 の結晶性の錆と、非晶質の錆との5 種類か
らなる。この内、非晶質の錆は、結晶性の錆よりも極め
て微細で緻密な安定錆層を形成する。しかも、例え、鋼
材の使用中に結晶性の錆により錆皮膜としての欠陥部分
が形成されたとしても、非晶質の錆部分がこの穴埋めを
行い、欠陥部分を減少させる欠陥補修機能も有する。こ
の結果、鋼材の長期の裸耐候性を保障する。したがっ
て、鉄錆中の非晶質の錆の割合 (非晶質度) が高いほ
ど、また、結晶性の錆成分の内でも微細で緻密なα−Fe
OOH の割合が高いほど高い耐食性を有する。
の結晶性の錆は、錆中の前記非晶質やα−FeOOH の割合
が高くても、この錆が起点となって腐食を進行させるた
め、極力抑制する必要がある。したがって、鉄錆中の非
晶質の錆の割合 (非晶質度)や、微細で緻密なα−FeOOH
の錆の割合が高いほど、安定錆層と言える。また、結
晶性の錆成分の内でも特に腐食を促進しやすいβ−FeOO
H の割合が少ないほど、緻密な安定錆層と言える。
有量されると、前記安定錆層の形成を阻害して、耐食性
劣化を招く。したがって、S 含有量を0.02% 以下とする
ことも本発明の特徴の一つである。。
Cu、Niとともに、前記安定錆層を形成させるために必須
の添加元素と認識され、前記した通り、JIS 規格などで
も0.30〜1.25% 含有されている。また、前記特開昭58−
25458 号や特許第2572447 号公報などでは、Crの添加は
明示されていないものの、鉄原料や製鋼過程などからの
不純物として、必然的に0.05% 以上含有されている。
のミクロな表面欠陥部において腐食がわずかでも始まる
と、化学平衡的に鉄原子に伴い微量溶解するCrイオン
が、Clイオンの作用も加わり、前記鋼のミクロな表面欠
陥部内におけるpHの低下の原因となり、欠陥内での凝縮
水分の酸化性を促進し、腐食を誘発する作用がある。し
たがって、Crは前記緻密な安定錆層が生成したとして
も、安定錆層の下部において、鋼の腐食を促進する作用
があり、錆層と鋼との密着性を阻害して、錆層の剥離を
助長したり、結果として、緻密な安定錆層の生成乃至維
持を阻害する。それゆえ本発明では、Crの含有量を可能
な限り少なくすることが必要で、Cr含有量低減の経済性
も考慮して、その上限を0.05% 未満とする。
進元素として、本発明では、Tiを選択した。Tiは、Crの
ような前記pHの低下の原因とならずに、前記安定錆層の
形成促進効果があり、耐食性を著しく高めるという特異
な性質を有する。具体的には、鉄錆中の非晶質の割合や
α−FeOOH の錆の割合を高めるとともに、結晶性の錆成
分の内でも特に腐食を促進しやすいβ−FeOOH の生成を
抑制して、微細で緻密な安定錆層の形成を促進する。こ
の結果、錆層への塩化物イオンなどの腐食因子の進入を
阻止し、緻密な安定錆層を維持して、耐食性を向上させ
る。
強度維持のために添加されることが公知であり、前記特
許第2572447 号公報などでも、この公知の目的のために
0.03% 以下程度添加している。しかし、本発明における
Tiの目的は、前記した通り緻密な安定錆層の形成であ
り、この点が前記S やCrの低減とともに本発明の特徴の
一つである。
よび炭素当量の限定理由について、以下に説明する。 C :0.15% 以下。C は、鋼の構造材用途としての390 〜
630N/mm2級、乃至それ以上の要求強度を確保するための
必須の元素であるが、0.15% を越えて含有量されると、
鋼の溶接性や裸耐候性を劣化させる。したがって、C 含
有量は0.15% 以下の、前記要求強度を確保できる量とす
る。
強化のために必須の元素であり、また、緻密な安定錆層
の形成を促進し、裸耐候性などの耐食性を向上させる効
果も有する。しかし、0.10% 未満ではこれらの効果が不
十分であり、逆に1.0 % を超えると、溶接性が低下す
る。したがって、Si含有量は0.10〜1.0 % の範囲とす
る。
630N/mm2級、乃至それ以上のの強度確保のための必須の
元素であるが、1.5 % を越えて含有量されると、MnS が
鋼中に多量に生成して、裸耐候性などの耐食性劣化を招
くおそれがある。したがって、Mn含有量は1.5 % 以下の
範囲とする。
02% を越えて含有量されると、腐食の起点となるFeS 、
MnS が鋼中に多量に生成して、前記安定錆層の形成を阻
害して、耐食性劣化を招く可能性がある。また、Niなど
を過剰に含有した場合に、Sとの反応により、溶接金属
の粒界に低融点のNiS 化合物を析出させ、凝固金属の粒
界の延性を劣化させやすくなる。この点、S 含有量を0.
02% 以下とすれば、前記低融点のNiS 化合物を析出させ
ずに、Niをより多量に含有することが可能になるという
利点もある。例えば、S が0.02% を越えた場合には、Ni
の上限値は3.0% とすべきであるが、S 含有量を0.02%
以下とすることにより、前記した通り、Niを6.0 % まで
含有することが可能となる。したがって、S 含有量は0.
02% 以下、好ましくは0.01% 以下、更に好ましくは0.00
5 % 以下の範囲とする。
て、鋼表面に生成する錆への塩化物イオンの進入を阻止
し、緻密な安定錆層を形成して、耐食性を向上させる効
果を有する。そして、前記従来の耐候性鋼では、この効
果を発揮させるために、0.05%程度以上、0.15% 以下程
度の含有を必須としている。しかし、本発明において
は、P の0.05% 程度以上の過度の含有は、溶接性を著し
く阻害し、前記少数桁橋梁の施工上重要な、予熱なし
(予熱フリー)で、高効率の大入熱溶接ができる溶接性
の要求特性を満たすことができない。また、本発明で
は、Tiなどの含有により、緻密な安定錆層の形成が達成
できるゆえ、P の過度の含有は必要ない。このP量の低
減は、溶接性の向上にも寄与する。
のミクロな表面欠陥部内におけるpHの低下の原因とな
り、欠陥内での凝縮水分の酸化性を促進し、腐食を誘発
する作用があり、鋼材の裸耐候性を低下させる。したが
って、本発明ではCrを0.05% 未満に可能な限り含有量を
少なくする。このCr量の低減は、溶接性の向上にも大き
く寄与するものである。
本発明では、Crに代わる前記安定錆層の形成促進元素と
して重要な元素であり、Crの如き前記pHの低下の原因と
なるような耐食性への悪影響はない。また、Tiは鋼材組
織の結晶粒微細化による生成錆の微細化、あるいは靱性
向上や溶接性の向上効果も有する。即ち、Tiの含有によ
って、溶接部の冷却過程において強力なフェライト変態
核となるTiC やTiN 等を鋼中に分散析出させ、溶接熱影
響部の組織のフェライト微細化に大きく寄与する。Ti含
有量が0.01% 未満ではこの効果がなく、また1.0 % を越
えてもその効果は飽和し経済的ではない。この点、Tiの
効果をより発揮させるためには、0.05%以上含有するこ
とが好ましく、またTiが0.5 % を越えると鋼の脆化が問
題となる場合もあり、前記した通り経済的でもない。し
たがって、好ましくは、Ti含有量は0.05〜0.5 % の範囲
とする。
種または2 種。CuとNiは、共に耐食性向上効果や溶接性
の向上効果を有する元素であり、これらの1 種または2
種を含有することにより、これらの効果が発揮される。
この内、Cuは電気化学的に鉄より貴な元素であり、鋼表
面に生成する錆を緻密化して、安定錆層の形成を促進
し、耐候性などの耐食性を向上させる効果を有する。ま
た、溶接性の向上にも寄与する。Cu含有量が0.05% 未満
ではこの効果がなく、3.0 % を越えてもそれ以上の効果
は得られず、逆に鋼材の製造のための熱間圧延などの加
工の際に、素材の脆化を引き起こす可能性がある。この
観点からは、Cu含有量の上限を0.5 % 以下とするのが好
ましい。したがって、Cu含有量は0.05〜3.0 % の範囲、
好ましくは0.05〜0.5 % の範囲とする。
緻密化して、安定錆層の形成を促進し、耐候性などの耐
食性を向上させる効果を有する。また、溶接性の向上に
も寄与する。更にNiは、Cuの前記熱間加工脆性を抑制す
る効果もある。したがって、Cuと併せて含有すると、耐
食性向上効果、熱間加工脆性の抑制効果の相乗効果が期
待できる。Niが0.05% 未満の含有量ではこのような優れ
た効果を得ることができない。しかし、一方、Niの過剰
な含有は、完全オーステナイト組織における固液凝固温
度範囲を広げて、低融点不純物元素のデンドライト粒界
への偏析を助長するとともに、S と反応して溶接金属の
粒界に、低融点のNiS 化合物を析出させ、凝固金属の粒
界の延性を劣化させる。したがって、Niの過剰な含有
は、耐溶接高温割れ性に悪影響を与えるので、その上限
の含有量は6.0 % とすべきであり、結果としてNi含有量
は0.05〜6.0 % の範囲とする。
種または2 種。Mo:0.05〜3.0 % とW は、TiやNiと共存
することにより、耐食性を向上させる効果を有する元素
であり、選択的に含有させる。これらの1 種または2 種
を含有することにより、鋼表面に生成する錆を緻密化し
て、安定錆層の形成を促進し、耐候性などの耐食性を向
上させる効果を有する。更に具体的には、生成する錆を
緻密化するとともに、錆の性質を、塩化物イオンなどの
腐食性アニオンと結びつきにくいカチオン選択性とし
て、腐食性アニオンの錆層の浸透を抑制させる。この効
果が、TiやNiの緻密な安定錆生成効果( 非晶質の錆や、
α−FeOOH の錆の生成促進と、腐食を促進するβ−FeOO
H の抑制) と相まって、鋼材の耐食性を向上させる。Mo
やW の含有量が、各々0.05 %未満ではこの効果がなく、
また、含有量が各々3.0 % を越えると、この効果は飽和
する。したがって、MoとW の含有量は0.05〜3.0 % とす
る。
向上させる元素であり、また溶接性の向上効果も有す
る。Caの耐食性向上の作用の1 つは、耐食性に有害なS
を固定して、鋼マトリックスを清浄化することである。
また、更に他の作用として、鋼中に微量固溶したCaが鋼
表面やミクロ的な欠陥部での腐食進行過程において、鉄
の腐食反応に伴い微量溶解してアルカリ性を呈する。し
たがって、腐食 (アノード) 先端部の溶液pH緩衝効果を
有し、腐食先端部での腐食を抑制する効果を有する元素
である。これらは、前記Crのような溶解時にpHを下げる
元素の作用とは全く逆の作用を持っている。したがっ
て、CaをTiと併用すると、本発明のCrの低減効果やTiな
どの安定錆層の形成促進効果と合わせ、裸耐候性などの
耐食性向上の相乗効果が生じる。この相乗効果は、Caの
含有量が0.0001% 未満ではこの効果が発揮されないが、
過度に含有しても、その効果は飽和し、経済的ではな
い。特にCaは、過度に含有されると、鋼の清浄度を悪く
し、耐候性鋼材の製造時、特に製鋼中の炉壁を損傷する
可能性も有している。したがって、Caの含有量は0.0001
〜0.01% の範囲とする。
明する。Al:0.05〜0.50% 、La:0.0001〜 0.05 % 、C
e:0.0001〜 0.05 % 、Mg:0.0001〜0.05% の1 種又は2
種以上。 Al 、La、Ce、Mgは、共に耐食性向上効果を
有する元素であり、選択的に含有させる。これらの1 種
または2 種以上を含有することにより、鋼表面に生成す
る錆を緻密化して、安定錆層の形成を促進し、耐候性な
どの耐食性を向上させる効果を有する。
安定錆層の形成を一層促進する効果も有する。またAlは
溶接性の向上効果も有する。したがって、本発明鋼材の
耐食性をより一層向上させる場合には、Alを0.05〜0.50
% の範囲で含有させる。更に、Alは、溶鋼の脱酸元素と
して、固溶酸素を捕捉するとともに、ブローホールの発
生を防止して、鋼の靱性の向上のためにも有効な元素で
ある。Al含有量が0.05% 未満では、これらの十分な効果
が得られず、一方、Al含有量が0.50% を超えると、前記
耐食性向上効果は飽和し、逆に、溶接性を劣化させた
り、アルミナ系介在物の増加により鋼の靱性を劣化させ
る。
陥部での腐食進行過程において、鉄の腐食反応に伴い微
量溶解してアルカリ性を呈する。したがって、腐食 (ア
ノード) 先端部の溶液pH緩衝効果を有し、腐食先端部で
の腐食を抑制する効果を有する元素である。これらは、
前記Crのような溶解時にpHを下げる元素の作用とは全く
逆の作用を持っている。したがって、本発明の、Crの低
減効果やTiなどの安定錆層の形成促進効果と併用する
と、より一層の耐食性向上の相乗効果が期待できる。こ
の効果は、各々の含有量が0.0001%未満では発揮されな
いが、過度に含有しても、その効果は飽和し経済的では
ないし、鋼の機械的性質も悪くする。したがって、各々
の含有量は、La:0.0001〜 0.05 %、Ce:0.0001〜 0.0
5 %、Mg0.0001〜0.05%の範囲とする。
種以上を合計で0.50% 以下。Zr、Ta、Nb、V は、Tiと同
様の効果を発揮し、生成する錆の非晶質化やα−FeOOH
の割合を高くして、微細で緻密な錆を形成するととも
に、β−FeOOH を抑制した安定錆層を形成する。しか
し、その効果はTiに比べると劣っている。したがって、
これらの元素は、Tiの効果を補完するものとして、選択
的に含有する。
の元素の1 種または2 種以上を、合計 (総量) で、Tiの
必要含有量以上、好ましくは、0.1%以上含有することに
より発揮される。但し、0.50% を越えて含有しても、効
果は同じであり、上限量は、合計 (総量) で0.50% 程度
とする。
を0.20以下 [但し、炭素当量A =C+Si/22 +Mn/6+P/10
−Cu/20 −Ni/15 +Cr/2−Ti/2−Ca−Al/35 +Mo/4+W/
6(%)] と低く規定する。これは、特に少数主桁橋梁など
の構造物用の鋼材の優れた耐候性とともに、板厚が厚く
ても溶接性を確保するためである。より具体的には、50
mm厚み以上、あるいは更に80mm厚み以上の厚板でも、予
熱なしに、しかも溶接割れ等の溶接不良を生じないで、
入熱量5KJ/mm以上、場合によって100 乃至300KJ/mm以上
の大入熱溶接などの高効率溶接施工を可能とする溶接性
を確保するためである。この鋼の低炭素当量化は、鋼マ
トリックスの焼入れ性を低下させ、溶接時の溶接熱影響
部の組織のフェライトの微細化にも有効である。したが
って、鋼材の炭素当量A (%) が0.20を越えた場合には、
溶接性が悪くなり、50mm厚み以上の厚板で、予熱なしに
入熱量5KJ/mm以上の大入熱溶接などの高効率溶接施工が
できなくなり、本発明が特に対象とする少数桁橋梁用途
には使用できなくなる。
み以上の厚板の前記溶接性を確実に確保乃至より溶接性
を向上させるために、鋼材の厚みが50mm厚み以上の場合
には前記炭素当量A (%) を0.19以下とする、鋼材の厚み
が80mm以上の場合には前記炭素当量A (%) を0.18以下と
することが好ましい。更に鋼材の厚みが100mm 以上の場
合には前記炭素当量A (%) を0.16以下とすることがより
好ましい。
く変わり、板厚が大きいほど溶接性が悪くなる。また、
鋼材の耐候性と溶接性も往々にして相矛盾する課題であ
り、合金元素を添加して耐候性を向上させようとする
と、溶接性が犠牲になる。しかし、本発明では主として
耐候性の観点からCr、Pを低減しているが、これが溶
接性を向上させる結果にもつながっており、前記相矛盾
する課題である鋼材の耐候性と溶接性とを共に改善向上
させている。
溶接工業規格の炭素当量Ceq [ 炭素当量Ceq=C +Si/24
+Mn/6+Cr/5+Mo/4+Ni/40 +V/14(%)]に基づき、本発
明独自の前記炭素当量A として設定している。これは、
本発明の成分組成範囲内外の鋼材について試験し、耐食
性と溶接性の両方から評価した結果、各含有元素の作用
が、従来の炭素当量Ceq の考え方と異なる部分があり、
本発明の成分組成範囲内の鋼について、耐食性と溶接性
とを兼備させるために、これを改良する必要があること
を知見したためである。例えば、Cu、Niは、従来の炭素
当量Ceq では溶接性を阻害する元素であるが、本発明で
は、耐食性の向上に寄与するとともに、逆に溶接性を改
善する効果もある。また、Ti、Ca、Alは、従来の炭素当
量Ceq では考慮されていないが、溶接性を改善する効果
もある。更に、P も、従来の炭素当量Ceq では考慮され
ていないが、溶接性を阻害する。したがって、本発明で
は、これらの元素の耐食性と溶接性の両方の作用を加味
して、前記炭素当量A =C+Si/22 +Mn/6+P/10−Cu/20
−Ni/15 +Cr/2−Ti/2−Ca−Al/35 +Mo/4+W/6(%)を
規定した。
いて以下に説明する。本発明では、錆の主成分がα−Fe
OOH および/ または非晶質の錆からなるものとする。こ
の内、特に非晶質の錆は、結晶性の錆よりも極めて微細
で緻密な安定錆層を形成し、前記した通り、錆皮膜とし
ての「欠陥部分」が形成されたとしても、非晶質の錆部
分がこの穴埋めを行う「欠陥補修機能」を有する。した
がって、鉄錆中の非晶質の錆の割合 (非晶質度) が高い
ほど高い耐食性を有する。このため、本発明では、鋼材
表面に生成する錆の、X線回折法により求めた非晶質成
分の分率を30wt%以上と規定する。
の結晶性の錆は、錆中の前記非晶質やα−FeOOH の割合
が高くても、この錆が規定となって腐食を進行させるた
め、極力抑制する必要がある。このため、本発明では、
鋼材表面に生成する錆の、X線回折法により求めたβ−
FeOOH 成分の分率を20wt%以下に規制する。錆の非晶質
成分の分率が20wt%未満、およびβ−FeOOH 成分の分率
が20wt%を越える場合には、前記α−FeOOH 、β−FeOO
H 、γ−FeOOH およびFe3O4 の結晶性の錆成分が多くな
り、鋼材表面の錆が緻密な安定錆層を形成していないの
で、鋼材の高耐食性を保証出来なくなる可能性がある。
の、高い耐食性とは、塩分腐食環境下での鋼材の耐食性
である。したがって、この高い耐食性を保証するために
は、鋼材の1 年間の大気暴露、それも塩分腐食環境下を
模擬した塩水散布 (週 1回の5%塩水散布) を含む大気暴
露後の鋼材の耐食性で評価する必要がある。そして、大
気暴露後の鋼材の平均板厚減少量が好ましくは0.80mm以
下、より好ましくは0.50mm以下とする錆であるかどうか
が、鋼材の耐食性の重要な目安となる。これを越える腐
食減量 (板厚減少) では、前記各従来技術を越える高い
耐食性を保証することができない。
としては、「腐食防食 95 C −306(341 〜344 頁) 」の
「粉末X 線回折法による鉄錆成分の定量化およびその応
用」に開示された粉末X 線回折法が有効である。この文
献では耐候性鋼材を対象に粉末X 線回折法により、鋼材
表面の前記鉄錆成分の定量化を試み、鉄錆中の非晶質の
錆の割合 (非晶質度) が高いほど、緻密な安定錆層とな
る耐食性改善モデルを裏付けている。そして、より具体
的な粉末X 線回折法として、同文献では、内部標準とし
て一定重量比のCaF2あるいはZnO などを鋼材から採取し
た錆試料に混合し粉末化したものを通常のX 線回折法に
より同定し、前記5 種類の錆の各々の固有の回折ピーク
の積分強度比と、予め求めた各々の錆成分の検量線か
ら、各々の結晶性の錆成分の定量化を行い、錆の合計量
からこれら各々の結晶性の錆成分量を差し引いて非晶質
成分の割合を算出している。これは、非晶質成分自体の
回折ピークの積分強度比が求めにくく、定量化しにくい
ためである。
X 線回折法以外の、赤外分光分析法などの他の分析法で
は、錆成分の定性的な分析は可能であるものの定量的な
分析は困難であり、錆成分の確率された定量分析法が無
い。したがって、本発明で言う鋼材表面の錆の非晶質度
とは、このX 線回折法、特に前記文献に開示された粉末
X 線回折法により定量的に測定したものを言う。
ついて、本発明鋼材は、特に積極的に処理せずとも、ま
た、塩水や融雪塩が飛来するなどの塩分腐食環境下であ
っても、橋梁などの構造材として使用中に、緻密な安定
錆層が生成する点が、大きな利点である。しかし、確実
な裸耐候性などの耐食性を保障する品質保証の観点か
ら、鋼材を製造後、必要により酸洗等の前処理を施した
後、酸化ポテンシャルを制御したガスなどの雰囲気中で
熱処理する、あるいは、燐酸塩やクロメートや酸化剤な
どの薬剤により化学的に表面処理し、鋼材の製造過程中
で生成している錆を非晶質化するなどの処理を行って、
積極的に緻密な安定錆層を形成しても良い。
求める対象鋼材としては、例えば実際に橋の構造材とし
て使用される前の鋼材であっても、あるいは、1 年間大
気暴露 (週 1回の塩水散布を含む) した鋼材であって
も、また実際に橋の構造材として使用された後の鋼材で
あっても良い。
的にはフェライト+パーライトの混合組織であるが、例
えば橋梁などの構造物としての構造材としての必要強度
390〜630N/mm2級、乃至それ以上の強度や靱性を確保
し、また、優れた耐食性を有するためには、フェライト
量が90%以上であることが好ましい。フェライト量が多
くなり、鋼組織がフェライト相単層に近づくほど、鋼組
織自体がミクロ電池を作りにくく、裸耐候性などの耐食
性が向上する。したがって、鋼材組織は、95%以上のフ
ェライト量とするのがより好ましい。
本発明鋼材は、通常の厚鋼板の製造方法により製造可能
である。即ち、鋼の連続鋳造や造塊法による溶製後、分
塊圧延乃至熱間鍛造や、厚板圧延などの熱間加工を行
い、所定の製品板厚に製造される。なお、これら熱間加
工条件や熱間加工後の冷却や熱処理の条件は、鋼材の、
例えば橋梁の構造材としての、390 〜630N/mm2級乃至そ
れ以上の強度などの機械的性質の要求や仕様に応じて、
適宜決定される。したがって、通常の熱間加工の他に、
溶接性を保障する低合金化乃至低炭素当量化を確保した
上で、前記強度等の機械的性質を確保し、本発明の鋼材
組織を、好ましくはフェライト量が90%以上とするため
に、熱間加工後の加速冷却などの強制冷却や制御圧延が
施されても良い。また、熱間加工後の熱処理も、必要に
より、圧延オンラインでの直接焼入れ(DQ)やオフライン
での焼入れ焼戻し(QT)などが適宜施される。
義について、実施例を挙げて説明する。表1 、2 に示す
化学成分、炭素当量などを有する鋼塊を各々溶製し、こ
れら鋼塊を熱間圧延後加速冷却による強制冷却して厚鋼
板を製造した (表1 、2 の内、比較例No.3の板厚は16mm
で、他の比較例No.1、2 、4 〜10の板厚は30mm、本発明
例の板厚は全て50mmとした) 。なお表1 、2 にに示す化
学成分において残部はFeおよび不可避的不純物である。
ついて、各々試験片を採取し、塗装使用を模擬して、50
μm 厚みのブチラール樹脂塗装を行った試験片を各々準
備し、予め塗膜に切れ目を設けて人工的な塗膜欠陥を設
けた上で、各々の試験片を0.1%の塩水噴霧による腐食促
進試験と、0.5%の塩水噴霧とによる腐食促進試験、更
に、週1 回の5%の塩水散布を含む1 年間の大気暴露試験
を行い、その長期耐久性を評価した。評価は、各試験後
の試験片の鋼材の外観評価、塗膜欠陥部のふくれ幅(mm)
の測定を行い、総合評価( ◎○△×) を行った。なお、
各比較例は0.1%の塩水噴霧による腐食促進試験の結果が
悪かったため、0.5%の塩水噴霧とによる腐食促進試験は
行わなかった。その結果を表3 、4 に示す。
促進試験とともに、あえて1 年間の大気暴露試験を行っ
たのは、本発明鋼材の用途が、特に塩分腐食環境下の橋
梁等の構造材であるため、この実際の使用条件下の腐食
に適合した試験でないと、正確な評価ができないためで
ある。
霧による腐食促進試験は、0.1%および0.5%の塩水噴霧
を、紫外線照射(8hr) →塩水浸漬(2分) →恒温恒湿(60
℃、95RH、16hr) のサイクルを60サイクル繰り返して行
う条件とした。また、塩水噴霧を含む1 年間の大気暴露
試験の条件は、実際の塩分腐食環境下に合わせて、週 1
回の5%塩水散布を行い、供試材は南向き、水平に対し30
°の傾斜で設置した。また、試験片の外観評価は、JIS
に規定の方法に準拠したレイティングナンバー法(RN法)
により行い、最も良いものを10、最も悪いものを1 と
して10段階で評価した。
の樹脂の種類による影響を見るため、表1 、2 に示す供
試材の内、比較例No.1、2 および発明例No.17 、28につ
いて、塗装する樹脂の種類を変えた試験片を準備し、予
め塗膜に切れ目を設けて人工的な塗膜欠陥を設けた上
で、前記耐食性試験1 と同様に、週1 回の塩水散布を含
む1 年間の大気暴露試験を行い、この後、試験片の鋼材
の外観、塗膜欠陥部の塗膜ふくれ幅(mm)を各々測定し、
総合評価( ◎○△×) を行った。この結果を表5 に示
す。
は、前記RN法により行い、最も良いものを○、最も悪い
ものを×、中間を△として3 段階で評価した。また、ふ
くれ幅は、0.80mm以上を×、0.5 〜0.8mm を△、0.5mm
以下を○として評価した。
塗装) 使用を模擬して、表1 、2 に示す供試材の試験片
を、そのまま前記耐食性試験1 と同様に、週1 回の塩水
散布を含む1 年間の大気暴露試験を行い、この後、供試
材の鋼材の平均板厚減少量(mm)、および試験片表面の錆
の組織( 非晶質度) を各々測定し、総合評価( ◎○△
×) を行った。この結果を表6 に示す。
進試験および大気暴露試験の前後での供試材の平均板厚
をマイクロメーターで測定し、密度を考慮して平均板厚
減少量(mm)を算出した。
前記「腐食防食 95 C −306(341 〜344 頁) 」に開示さ
れた粉末X 線回折法により行い、内部標準として一定重
量比のZnO を鋼材から採取した錆試料に混合し粉末化し
たものをX 線回折法により同定し、前記α−FeOOH 、β
−FeOOH 、γ−FeOOH およびFe3O4 の5 種類の結晶性錆
の各々の固有の回折ピークの積分強度比と、予め求めた
各々の錆成分の検量線から、各々の結晶性の錆成分の定
量化を行い、錆の合計量からこれら各々の結晶性の錆成
分量を差し引いて非晶質成分の割合(%) を算出した。な
お、表6 、4 において、非晶質の錆成分の分率はA :0〜
30wt% 、B:31〜40wt% 、C:40wt% 以上で示している。
す供試鋼材( 比較例No.1、2 、発明例No.17)の表面に予
め錆を形成するとともに、錆成分の内、特にβ−FeOOH
の結晶性の錆と、非晶質の錆との成分割合を、前記酸化
ポテンシャルを制御した熱処理により変えて積極的に非
晶質の錆を設けた鋼材を、各々複数例、前記耐食性試験
1 と同様に、週1 回の塩水散布を含む1 年間の大気暴露
試験を行い、この後、鋼材の平均板厚減少量とともに、
試験片表面の錆の非晶質度とβ- FeOOH の割合を、前記
粉末X 線回折法により各々測定し、総合評価( ◎○△
×) を行った。この結果を表7 に示す。なお、表7 にお
いて、非晶質の錆成分の分率はA :0〜30wt%、B:31〜40w
t% 、C:40wt% 以上で示し、β−FeOOH の結晶性の錆成
分の分率はA:20wt%以上、B:10〜20wt% 、C:10wt% 以下
で示し、鋼材の平均板厚減少量は○:0.5mm以下、△:0.5
〜0.8mm 、×:0.8mm以上で示している。
す供試鋼材の一部 (比較例No.1〜3 、発明例No.23)を、
熱間圧延後加速冷却乃至直接焼入れして、16〜100mm ま
で板幅および強度を変えた厚板とした。これらの鋼板を
基本的に予熱すること無しに大入熱溶接し、溶接部につ
いて、高温割れ、低温割れを防止できる最低予熱温度、
引張強さ(N/mm2) 、靱性(vE-40) を評価し総合評価 (◎
○△×) を行った。これらの結果を表8 に示す。
引張強さを種々変えたものを7 例準備して試験した。大
入熱溶接は、入熱量35KJ/cm のサブマージアーク溶接法
により行った。具体的な評価試験の方法と条件は、供試
鋼材の高温割れ率は、JIS 規格で制定されているC 型ジ
グ拘束突き合わせ溶接割れ試験 (高温割れ試験) で行っ
た。供試鋼材の低温割れは、JIS 規格で制定されている
斜めY 型拘束突き合わせ溶接割れ試験 (低温割れ試験)
にて割れの発生を防止できる供試材の予熱温度で評価し
た。靱性は、溶接継手ボンド部の−40℃における吸収エ
ネルギーvE-40(N/mm2)で評価している。なお、表8 供試
鋼材のNo.( 表の略号) は、各々表1 、2 および表3 、
4 のNo. ( 表の略号) に対応している。
1、2 、12、17の供試材鋼の組織のフェライト量を変え
たものの裸耐候性について、試験片を前記耐食性試験1
と同じ条件で1 年間大気暴露 (週 1回の塩水散布を含
む) 後の鋼材の平均板厚減少量で評価した結果を、表9
に示す。なお、表9 において、鋼材の平均板厚減少量
は、○:0.5mm以下、△:0.5〜0.8mm 、×:0.8mm以上で示
している。
試験結果を、各表を用いて評価結果を説明する。
普通鋼、No.2〜8 は従来の耐候性鋼である。この内、N
o.1、6 はCu、Niの含有量を少なすぎるとともにTiの含
有も無く、本発明の炭素当量A が0.20を越えている。N
o.2、3 、7 はCrの含有量が多すぎるとともにTiの含有
も無く、本発明の炭素当量A が0.20を越えている。No.
4、5、7 、8 は、各々C 、 P、 Cr 、S の含有量が多す
ぎるとともに、No.8を除いてTiの含有も無く、本発明の
炭素当量A が0.20を越えている。更に、No.9、10はTiの
含有が無い。
比較例も、各耐食性試験の結果、鋼材表面の外観評価が
悪く、また塗膜のふくれ幅も、腐食促進試験で1.42mm以
上、大気暴露試験で0.39mm以上と大きく、耐食性が著し
く劣っている。また、表5 に示す通り、塗装の樹脂の種
類に拘らず、外観評価が悪く、また塗膜のふくれ幅も大
きく、耐食性が著しく劣っている。
塗装の裸使用でも耐食性が著しく劣っている。そして、
これら比較例の塗装乃至無塗装での耐食性が劣る理由
は、同じ表6 から分かる通り、鋼材表面の錆の非晶質度
が低く(Aレベル) 、かつ表7 の通り、β錆の割合が多い
からである。そして、これら本発明の意図する安定錆が
形成されていない理由は、各々の比較例の鋼材の成分組
成が本発明範囲より外れることによるものである。
当量A が0.20を越えており、表8 に示す通り溶接性も悪
い。具体的には、16〜30mmの比較的板厚の小さい厚板の
レベルでも、高温割れ率はまだしも、予熱なしでは低温
割れが生じ、この割れの発生を防止するための予熱が必
要である。更に、溶接継手ボンド部の靱性も極端に低
い。
量が本発明範囲よりも高くはずれており、熱間圧延中に
高温脆化割れを起こしたため、厚板の製造自体ができな
かった。したがって、比較例No.8は耐食性の試験などの
評価も行わなかった。また、表3 において明示していな
いが、比較例No.1〜10の鋼材表面の錆は、いずれもβ−
FeOOH の結晶性錆成分の割合( 分率) が20wt% を越えて
いるのに対し、発明例No.11 〜30は、いずれもβ−FeOO
H ( β錆) の結晶性錆成分の割合が20wt% 以下である。
、2 の発明例No.11 〜30は、いずれも鋼材の成分組成
が本発明範囲を満足しており、表3 、4 、5 、6 の塗装
乃至無塗装での、腐食促進試験と大気暴露試験の、いず
れにおいても外観評価も良く、塗膜のふくれ幅も腐食促
進試験(0.1% 塩水) で0.50mm以下、大気暴露試験で0.33
mm以下、また、無塗装材の大気暴露試験での平均板厚減
少量も0.8mm 以下、より耐食性に優れたものは0.8mm 以
下と小さい。この結果から、本発明鋼材の耐食性が優れ
ており、特に塩分腐食環境下での使用に適していること
が分かる。そして、これら発明例の塗装乃至無塗装での
耐食性が優れる理由は、同じ表6 から分かる通り、鋼材
表面の錆の非晶質度が高く(B、C レベル) 、かつ表7 の
通り、β錆の割合が少ないからである。そして、これら
本発明の意図する安定錆が形成されている理由は、各々
の発明例の鋼材の成分組成が、Tiを含む、Crが少ない、
MoとW の一種以上を含むなど本発明範囲内であることに
よるものである。
例が、他の発明例に比して、耐食性に劣るのは、炭素当
量A が比較的高いためである。No.18 、22の発明例が、
他の発明例に比して、耐食性に劣るのは、Cr量と炭素当
量A が規格内ではあるが比較的高く、表6 、7 に示す通
り、他の発明例に比して錆の非晶質度が劣り(B) 、また
β錆の割合が比較的多いからである。
おけるCr量やP 量の規制とTiおよびMoとW の一種以上含
有の重要性が裏付けられる。また、Ni量が比較的高い発
明例No.25 、26、30も、S 量が低いために、熱間圧延中
に高温脆化割れを起こすことなく製造することができ、
かつ特性も他の発明例と同様に良好であった。
表8 から明らかな通り、表2 の発明例鋼材No.23 は、50
〜100mm の比較的板厚の大きい厚板のレベルでも、また
610 〜630N/mm2級の比較的強度の高い鋼板でも、溶接性
に優れている。より具体的には、高温割れも無く、低温
割れ防止予熱温度が25℃以下であり、予熱なしでも大入
熱溶接が可能であることが分かる。更に、比較例に比し
て、強度も高く溶接継手ボンド部の靱性も著しく高い。
表1 、2 のNo.1〜30の供試材の、本発明で規定する炭素
当量A と溶接性との関係を整理した結果を示す。図1 に
おいて、●印は表3 、4 の裸耐候性や溶接性を含めた総
合評価が悪いことを示し、○印はこの総合評価が良いこ
とを示している。図1 から明らかな通り、本発明で規定
する炭素当量A が0.20の点で、溶接性の良し悪しが別
れ、本発明で規定する炭素当量A が0.20以下である点に
臨界的意義があることが分かる。
から明らかな通り、テストNo.43 〜48の比較例では、β
−FeOOH の結晶性の錆の割合 (分率) にかかわらず、非
晶質の錆成分の割合が30wt% 未満のために、鋼材の平均
板厚減少量が0.8mm を越えている。これに対し、テスト
No.49 〜54の発明例は、全て非晶質の錆成分の割合が30
wt% 以上であるために、鋼材の平均板厚減少量が0.8mm
以下となっている。ただ、β−FeOOH の結晶性の錆の割
合が20wt% を越えるテストNo.49 の発明例は鋼材の平均
板厚減少量が0.5 〜0.8mm であり、β−FeOOH の結晶性
の錆の割合が20wt% 以下の他の発明例の鋼材の平均板厚
減少量が0.5mm 以下であるのに比して、裸耐食性が若干
劣っている。したがって、この結果から、本発明の鋼表
面の錆の非晶質化と、β−FeOOH の結晶性の錆の抑制
が、裸耐候性の点から重要であることが分かる。
に、表9 において、鋼材の平均板厚減少量は、表7 と同
様、○:0.5mm以下、△:0.5〜0.8mm 、×:0.8mm以上で示
している。表9 から明らかな通り、テストNo.55 〜60の
比較例は全て鋼材の平均板厚減少量が0.8mm を越えてお
り、裸耐候性に劣る。特にテストNo.57 、60の比較例で
は、フェライト量が90%以上であるにもかかわらず、鋼
材の平均板厚減少量が0.8mm を越えており、これは、用
いた供試材No.1、2(表1)の鋼材のP やCrの含有量が高
く、本発明の範囲を上限にはずれているためである。一
方、テストNo.61 〜66の発明例では、フェライト量が90
%以上であるテストNo.62 、63、65の発明例では鋼材の
平均板厚減少量が0.5mm 以下であるのに比して、フェラ
イト量が90%未満であるテストNo.61 の発明例では平均
板厚減少量が0.5 〜0.8mm であり、裸耐候性の向上に対
しては、フェライト量が90%以上の方が有利であること
が分かる。
少数主桁橋梁などの構造物として、無塗装で使用可能な
優れた裸耐候性を有するとともに、予熱なしで、入熱量
5KJ/mm以上の大入熱溶接などの高効率の溶接施工ができ
る鋼材を提供することができる。したがって、特に、こ
の種耐候性が優れた鋼の用途を新規に、しかも大幅に拡
大するものであり、工業的な価値は大きい。
溶接性の総合評価との関係を示す説明図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 質量% にて、 C:0.15% 以下、Si:0.10
〜1.0 % 、Mn:1.5% 以下、S :0.02% 以下、P :0.05%
以下、Cr:0.05% 以下、Ti:0.01〜 1.0%、Ca:0.0001
〜0.01% 、およびCu:0.05〜3.0 % とNi:0.05〜6.0 %
の1 種または2 種、およびMo:0.05〜3.0 % とW :0.05
〜3.0 % の1 種または2 種を含有し、残部Feおよび不可
避的不純物からなり、かつ炭素当量A (%) を0.20以下
[但し、炭素当量A =C+Si/22 +Mn/6+P/10−Cu/20 −N
i/15 +Cr/2−Ti/2−Ca−Al/35 +Mo/4+W/6(%)] と
し、この鋼材の表面に生成した錆の、X線回折法により
求めた非晶質成分の分率が30wt%以上で、β−FeOOH 成
分の分率が20wt%以下であることを特徴とする耐食性と
溶接性に優れた鋼材。 - 【請求項2】 前記鋼材が、更にAl:0.05〜0.50% 、L
a:0.0001〜 0.05 %、Ce:0.0001〜 0.05 % 、Mg:0.00
01〜0.05% の1 種又は2 種以上を含有する請求項1に記
載の耐食性と溶接性に優れた鋼材。 - 【請求項3】 前記鋼材が、更にZr、Ta、Nb、V 、Hfの
内から1 種又は2 種以上を合計で0.50% 以下含有する請
求項1または2に記載の耐食性と溶接性に優れた鋼材。 - 【請求項4】 前記鋼材組織のフェライト量が90%以上
である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の耐食性と
溶接性に優れた鋼材。 - 【請求項5】 前記鋼材が構造物用である請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の耐食性と溶接性に優れた鋼
材。 - 【請求項6】 前記構造物が橋梁である請求項5に記載
の耐食性と溶接性に優れた鋼材。 - 【請求項7】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載さ
れた鋼材を用いた橋梁。 - 【請求項8】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載さ
れた鋼材を用いた溶接継ぎ手。
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| JP04786898A JP3466076B2 (ja) | 1998-02-27 | 1998-02-27 | 耐食性と溶接性に優れた鋼材 |
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