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JP3540166B2 - プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板 - Google Patents
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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、組織中に残留γ(残留オーステナイト)を有する、プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高強度かつ優れた延性を有する鋼板については、例えば特開平6−264182号公報や特開平6−264183号公報に記載されているように、組織中に残留γを生成させ、加工変形中に残留γが誘起変態して延性を向上させる残留γ鋼板が知られている。この種の鋼板は加工変形中に前記誘起変態が生じるため、プレス成形性の指標となる張り出し成形性に優れている。
【0003】
一方、伸びフランジ性すなわち局部的な延性に優れる組織としては、例えば特開平6−293910号公報や特開平7−118740号公報に記載されているように、フェライト・ベイナイト2相組織やベイナイト単相組織が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の残留γ鋼板はパンチなどによる打ち抜き加工において強い加工変形を受けたとき、残留γ組織が硬度の高いマルテンサイトに変態し、軟質相との界面に多くのボイドが発生する。このため、伸びフランジ性が極端に劣化するという問題がある。一方、上記のようにフェライト・ベイナイト2相鋼板、ベイナイト単相鋼板は伸びフランジ性に優れるものの、プレス成形性に劣るという問題がある。
本発明は、かかる問題に鑑みなされてもので、張り出し成形性のみならず、伸びフランジ性にも優れた高強度熱延鋼板を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来の残留γ鋼板の残留γの生成形態を観察したところ、残留γが塊状に生成していることがわかった。さらに、残留γが誘起変態して硬質のマルテンサイトになる際、塊状の形状のまま硬質化(マルテンサイト化)し、この硬質相の界面からボイドが発生するため、伸びフランジ性が劣化することが知見された。そこで、発明者は残留γの形態を制御することにより、このボイドの生成を抑えることができるとの観点から本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の高強度鋼板は、mass%で、
C :0.10〜0.30%、
Mn:0.5〜2.5%、
Si:0.5〜2.5%、
P :0.05%以下、
S :0.02%以下、
Al:0.10%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなり、残留γ量が3%以上、残留γの平均軸比(長軸/短軸)が3〜20、母相の平均硬度が150Hv以上、270Hv以下である組織を有するものである。
【0007】
以下、本発明の高強度熱延鋼板について詳しく説明する。
まず、組織中の残留γの形態について説明する。残留γが塊状(軸比がおよそ1)に存在する場合、打ち抜き加工を施すと塊状のまま硬質相(マルテンサイト)に変態し、硬質相の周りの軟質相(母相)の変形が進むと、軟質相との界面にボイドが発生しやすくなる。もっとも、軸比がおよそ1の場合、等2軸変形を加えると塊状の残留γには縦方向および横方向ともに歪みが加わり、歪み誘起変態が最大限に働き、張り出し成形はよい。
一方、残留γが針状に存在する場合、打ち抜き加工を施すとベイナイトを構成するベイナイト・ラスの界面などに挟まれた針状残留γは、周囲の相の変形に沿って回転移動していくため、歪み誘起変態をあまり起こさない。さらに、残留γの軸比が極端に大きくなる場合(フィルム状の場合)、等2紬変形を加えても短軸方向の残留γ量が極端に小さいために、歪み誘起変態を起こさないようになる。
【0008】
以上の考察を基に、本発明者が鋭意研究した結果、伸びフランジ性を損なうことなく、張り出し成形性に有効な残留γの形態は、その平均軸比(長軸/短軸)が3〜20であることを知見した。すなわち、残留γの軸比が3以上であればボイド生成を抑えることができ、一方軸比が20を越え、残留γがフィルム状になると、張り出し成形のような等2軸成形では十分な歪誘起変態が起こらずに、張り出し成形性が劣化する。このように、残留γの軸比を3〜20とすることでフェライト・ベイナイト組織鋼板と同等の伸びフランジ性を有し、しかも優れた張り出し成形性を実現することができる。
【0009】
残留γ量については、残留γが張り出し成形時に歪み誘起変態を引き起こすためには3%以上が必要である。本発明においては、残留γ量の上限については特に規定しないが、実際上の工業的製造可能な範囲を考慮すると、15%以下となるであろう。
【0010】
また、残留γが張り出し成形時に歪み誘起変態を引き起こすためには、残留γの周囲の母相の変形が必要であり、母相の平均硬度をある程度低く抑える必要があり、本発明では母相の平均硬度を270Hv以下とする。一方、母相硬度が低過ぎると高強度を得ることができないため、平均硬度で150Hv以上とする。なお、母相の組織は、最も伸びフランジ性を向上させるベイナイト組織が望ましいが、上記の硬度を得る組織であれば針状フェライト単相組織あるいはフェライト+ベイナイト複合組織であってもよい。
【0011】
次に、本発明鋼板の成分限定理由について説明する。以下、単位はmass%である。
C:0.10〜0.30%
Cは高強度を得るため、また残留γを生成させるために必要な元素であり、C量が0.10%未満では残留γを生成させることができない。一方、0.30%を越えると溶接性が劣化する。このため、C量の下限を0.10%、上限を0.30%とする。
【0012】
Mn:0.5〜2.5%、Si:0.5〜2.5%
Mnはオーステナイト中の炭素量の固溶限を上げて残留γを安定化する一方で、焼き入れ性を促進する元素であり、低温変態生成物の生成を促進させる。Siとのバランスにおいて残留γの生成量や形態を制御するが、Mn量が0.5%未満では、Si量にかかわらず残留γの生成は困難である。一方、2.5%を越えるとスラブの中心偏析の原因となり、加工割れや加工劣化の原因となる。
Siは熱処理中に残留γがパーライトに分解することを抑える効果がある。この効果を奏するためには、Siが0.5%以上必要である。一方、2.5%を越えて添加すると組織中にポリゴナル・フェライト組織が生成し易くなり、母相の硬度を低下させたり、残留γの形態が塊状になりやすくなる。MnとSiはラス状の残留γを生成させるために重要であり、もっとも好ましい軸比(長軸/短軸)のラス状残留γを生成させるためには、好ましくはMn:0.8〜1.5%、Si:0.8〜2.0%とするのがよい。
【0013】
P:0.05%以下
Pは固溶強化として有効な元素であるが、偏析しやすい元素でもあり、0.05%を超えて添加した場合には偏析して割れや加工性劣化を招くようになる。
【0014】
S:0.02%以下
SはMnSの形態で介在物として鋼中に存在して、熱間割れや加工割れ発生の原因となるので、0.02%以下に止める。
【0015】
Al:0.10%以下
Alは鋼の脱酸成分として、0.02〜0.10%程度存在する。多量にAlを添加した場合には、アルミナなどの介在物が生成して材質劣化を招くので、0.10%以下に止める。
【0016】
本発明の熱延鋼板は、以上の基本成分のほか残部実質的にFeからなるが、必要に応じて基本成分にさらに、Ca:0.0020%以下を含有することができる。Caは鋼中硫化物の形態を制御して、伸びフランジ性を向上させる作用を有する。0.0020%を越えて添加しても効果は飽和するため、経済性を考慮して0.0020%以下とする。
【0017】
【実施例】
表1に記載した成分の鋼を真空溶製し、実験用スラブとした後に、図1および表2に示す熱延条件に従って、1200℃で30分加熱後、仕上げ温度(FDT)をおよそ950℃とし、T1℃まで空冷した後、20〜50℃/sの冷却速度(CR)にて450〜510℃の温度(CT)まで冷却して巻き取り、板厚1.6mmの熱延鋼板を得た。
また、前記実験用スラブを用いて、1200℃に加熱した後、950℃で仕上げ圧延を終了後空冷し、この後に冷延率80%で冷間圧延をした後、図2に示す焼鈍条件に従って焼鈍処理を行い、板厚1.6mmの冷延鋼板を得た。
【0018】
【表1】
Figure 0003540166
【0019】
得られた鋼板について、母相平均硬度、残留γの平均軸比および残留γ量を測定した。また、これらの鋼板を用いて引張強さ(TS)、伸び(El)、張り出し成形性、伸びフランジ性を調べた。これらの結果を表2に併せて示す。
この際、残留γは、X線測定によってその量を測定し、レペラ腐食によって残留γを白色に腐食させた後に残留γの軸比を調査した。張り出し成形性は、150×150mmの鋼板を用いて120mmφの液圧バルジ成形(液圧:およそ300kgf /cm2)により,張り出し成形加工を行い、膨出部の最大高さ(張り出し成形高さHmax )を測定し、この値によって評価した。伸びフランジ性は、70×70mmの鋼板に10mmφの初期穴d0をパンチにより開け、頂角60°のポンチにて穴拡げ加工を施し、クラックが板厚貫通した時の穴拡げ後の穴径d1を用いて、λ(%)=(d1−d0)×100/d0より穴拡げ率(λ)を求め、これにより評価した(規格名:JFST1001)。
【0020】
【表2】
Figure 0003540166
【0021】
表2のデータに基づいて、試料No. 1〜4、No. 7、No. 8、No. 14、No. 15について、残留γの軸比と伸びフランジ性(λ値)との関係を整理したものを図3に示す。これより、残留γの平均軸比が3以上であれば優れた伸びフランジ性が得られることがわかる。なお、本発明のNo. 3,4の組織は、No. 3が残留γのあるフェライト+ベイナイト複合組織、No. 4は残留γのあるベイナイト組織であった。
【0022】
また、試料No. 1〜4、No. 7、No. 8、No. 12〜15について、伸び(El)および残留γの平均軸比(データポイントに付した括弧内の値)と張り出し成形性との関係を整理したものを図4に示す。なお、同図には組織中に残留γのないフェライト+ベイナイト複合組織を有するNo. 13,14の例も併せて示した。これより、通常の場合、Elと張り出し成形性には相関があること、また残留γの平均軸比が20以下では20を超えるもの(No. 14,15)より張り出し成形高さHmax が高く、張り出し成形性に優れることがわかる。図3と図4から、優れた伸びフランジ性と張り出し成形性を兼備させるには、残留γの平均軸比を3〜20にすればよいことがわかる。
【0023】
また、No. 3,4、No. 9〜11およびNo. 12,13について、伸び(El)および母相平均硬度(データポイントに付した括弧内の値)と張り出し成形性との関係を整理したものを図5に示す。No. 3,4、No. 9〜11はいずれも残留γの平均軸比が3〜20のものであるが、母相平均硬度が270Hv超のもの(No. 9〜11)では十分な張り出し成形性が得られていないことがわかる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の高強度熱延鋼板によれば、所定成分、所定量の残留γの存在の下、特に残留γの平均軸比を3〜20として残留γの生成形態を制御するとともに、母相の平均硬度を150Hv以上、270Hv以下としたので、残留γ鋼板の特徴である優れたプレス成形性を損なうことなく、優れた伸びフランジ性を確保することができ、高強度熱延鋼板として工業的利用価値は著大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における熱延鋼板の熱延条件を示す説明線図である。
【図2】実施例における冷延鋼板の焼鈍条件を示す説明線図である。
【図3】実施例における残留γの平均軸比と伸びフランジ性(λ値)との関係を整理したグラフである。
【図4】実施例における伸び(El)および残留γの平均軸比(データポイントに付した括弧内の値)と張り出し成形性との関係を整理したグラフである。
【図5】実施例における伸び(El)および母相平均硬度(データポイントに付した括弧内の値)と張り出し成形性との関係を整理したグラフである。

Claims (2)

  1. mass%で、
    C :0.10〜0.30%、
    Mn:0.5〜2.5%、
    Si:0.5〜2.5%、
    P :0.05%以下、
    S :0.02%以下、
    Al:0.10%以下、
    残部Feおよび不可避的不純物からなり、残留γ量が3%以上、残留γの平均軸比(長軸/短軸)が3〜20、母相の平均硬度が150Hv以上、270Hv以下である組織を有するプレス成形性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 請求項1に記載の成分のほか、さらに
    Ca:0.0020%以下を有する請求項1に記載した高強度熱延鋼板。
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