JP3540744B2 - 車両の車体前部構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の車体前部構造、特に歩行者脚部保護を主目的としたエネルギー吸収構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば特開平6−255533号公報「車両の前部車体構造」の図1(B)には、クラッシュビーム4(符号は公報記載のものを流用。)を車体フレームに付設した構造が示されており、前面衝突に対して狙い通りにクラッシュビーム4を座屈、圧潰させる由の説明が同公報段落番号[0006]第6行に説明されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記クラッシュビーム4は同公報図1(D)からすると丈夫なものであり、自車が他車に(以下「車対車」という)衝突したときに座屈することを想定したものと思われる。
しかし、自車のバンパーに接触するものは、他に歩行者が考えられるが、上記クラッシュビーム4では歩行者の保護にはならない。
すなわち、従来の車両の前部車体構造では、車対車の衝突を前提とした衝撃吸収は考えられていたものの、歩行者保護を前提としたものは無く、あったとしても不十分なものであった。
【0004】
そこで、本発明の目的は車対車のみならず、歩行者保護を図ることのできる車両の前部車体構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、左右のサイドフレームの前端に車両との衝突に起因する衝撃を吸収する左右の第1衝撃吸収部材を各々設け、これらの左右の第1衝撃吸収部材の前端に歩行者保護用の第2衝撃吸収部材を各々設けた車両の車体前部構造であって、第2衝撃吸収部材は、第1衝撃吸収部材から前へ延ばした上フランジ及び下フランジと、これら上下のフランジの前端同士を繋ぐウエブとから構成した略コ字形状の部材であり、上下のフランジよりウエブを厚くしたことを特徴とする。
【0006】
車対車に起因する衝撃エネルギーは、第1衝撃吸収部材を座屈させることで吸収させる。歩行者保護の際には、第2衝撃吸収部材を座屈させるが、このときに厚いウエブは座屈させずに、薄い上下のフランジを座屈させるようにした。
上下のフランジは前後に延びているため、塑性変形開始から塑性変形終了までの距離並びに時間を稼ぐことができ、衝撃エネルギーを平均的に長時間継続して吸収させることができる。この結果、比較的小さな力で塑性変形が始まるとともに、反力を小さくすることができため、良好に歩行者保護をなせる。
【0007】
さらに請求項1は、上下のフランジを第1衝撃吸収部材から前へ延ばす際に斜め上又は斜め下へ傾斜させ、フランジの厚さをT、フランジの長さをLとしたときに、少なくとも(T/L)ラジアンに上下のフランジの傾斜角を設定し、上下のフランジとウエブとのなすコーナを湾曲させ、これの曲げ半径をフランジの厚さの3〜5倍に設定したことを特徴とする。
【0008】
上下フランジを水平線に対して傾斜させることにより、フランジの曲げ変形を促し、応答性を高め一層の歩行者保護を図る。
フランジを曲げ変形させるので、少ないストロークでより多くのエネルギーを吸収させることができ、第2衝撃吸収部材の収納スペースをより短縮することができる。
加えて、フランジとウエブとのコーナに丸み(アール)を付けることで、フランジを下(又は上)へ滑らかに変形させる。
曲げ半径がフランジの厚さの3倍未満ではアールが小さ過ぎてコーナが簡単に展開しないという不都合が認められた。また、曲げ半径がフランジの厚さの5倍を超えると、アールが大きくなり過ぎて、フランジの直線部が不足し、ピークG増加によるエネルギー吸収効率悪化の虞れがあるからである。従って、前記曲げ半径はフランジの厚さの3〜5倍の範囲から選択することが望ましい。
【0009】
請求項2では、ウエブは、フランジの厚さTと同じ厚さの部材に補強板を添えることで、フランジより厚くしたことを特徴とする。
【0010】
ウエブは厚さTに厚さtの補強板を添え、(T+t)=Wとなるようにした。こうすれば、厚さTのブランク材を曲げ加工して略コ字形状の中間加工材を造り、これに厚さtの補強板を後付けするだけで、第2衝撃吸収部材を得ることができる。又は、厚さTのブランク材に厚さtの補強板を溶接したものを曲げて第2衝撃吸収部材としてもよく、加工の自由度が増す。
または、圧延工程で中央が厚さWでその両側が厚さTの平板を製造し、これを曲げることで、第2衝撃吸収部材を製造することもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る車体前部構造の平面図であり、車両の車体の前部構造は、左右のサイドフレーム11L,11R(Lは左、Rは右を示す。以下同じ)のバンパービーム12を渡してボルト13・・・(・・・は複数を示す。以下同じ)で固定し、このバンパビーム12に且つ左右のサイドフレーム11L,11Rのほぼ前方に車対車の衝突に起因する衝撃を吸収する左右の第1衝撃吸収部材14L,14Rを各々設け、これらの左右の第1衝撃吸収部材14L,14Rの前端に歩行者保護用の第2衝撃吸収部材15L,15Rを各々設け、これらをバンパーフェース16で覆ったものである。
【0012】
なお、バンパフェース16の中央部に外力が作用した場合にはバンパーフェース16が十分に撓む。これに対して、左右のサイドフレーム11L,11Rの直前はサイドフレーム11L,11Rが抵抗となり十分にエネルギーを吸収させることができない。そこで、サイドフレーム11L,11Rの前端にのみ第1衝撃吸収部材14L,14R並びに第2衝撃吸収部材15L,15Rを設ける。これで車幅方向における衝撃吸収性能を均一にすることができる。
【0013】
図2は図1の2部拡大図であり、バンパビーム12に溶接で第1衝撃吸収部材14Lを固定し、この第1衝撃吸収部材14Lに溶接で歩行者保護用の第2衝撃吸収部材15Lを固定した構造を示す。
【0014】
図3は図2の3−3線断面図であり、第1衝撃吸収部材14Lは、いわゆるジャバラ管であり、図左から大きな力を受けたときに堤灯を畳むように塑性変形することで衝撃エネルギーを吸収させる。そして、第1衝撃吸収部材14Lの前壁17に十分に大きな開口18を設けておく。この開口18は次に述べる第2衝撃吸収部材15Lが大きく塑性変形したときの収納口の役割を果たす。
【0015】
第2衝撃吸収部材15Lは、第1衝撃吸収部材14Lから長さLだけ前へ延ばした上フランジ21及び下フランジ22と、これら上下のフランジ21,22の前端同士を繋ぐウエブ23とから構成した略コ字形状の部材であり、上下のフランジ21,22よりウエブ23を厚くしたことを特徴とする。すなわち、上下のフランジ21,22の厚さをT、ウエブ23の厚さをWとしたときに、T<Wの構造にした。
【0016】
なお、実施例では、ウエブ23は厚さTに厚さtの補強板24を添え、(T+t)=Wとなるようにした。こうすれば、厚さTのブランク材を曲げ加工して略コ字形状の中間加工材を造り、これに厚さtの補強板24を後付けするだけで、第2衝撃吸収部材15Lを得ることができる。又は、厚さTのブランク材に厚さtの補強板24を溶接したものを曲げて第2衝撃吸収部材15Lとしてもよく、加工の自由度が増す。
または、圧延工程で中央が厚さWでその両側が厚さTの平板を製造し、これを曲げることで、第2衝撃吸収部材15Lを製造することもできる。
【0017】
先ず、ウエブ23をフランジ21,22より厚くしたことによる作用を説明する。
仮に、ウエブ23とフランジ21,22を同厚にすると、外力を最初に受けるウエブ23がフランジ21,22に先行して「く」の字状に屈曲する。詳しくは、ウエブ23の両端はフランジ21,22で支えられ、一方、ウエブ23の中央部はフリーであるため、水平外力がウエブ23に加わるとウエブ23が「く」の字状に屈曲する。この屈曲は小さな加速度(以下「G」と記す。)で発生する。反面、次に起こるフランジ21,22の座屈はウエブ23に比べて格段に大きなGで発生することになる。
この結果、ウエブ、フランジ同厚の第2衝撃吸収部材は、塑性変形の前半ではGが小さいく、後半でGが大きくなることになる(このことは図5(a)で説明する。)。衝撃エネルギーの吸収の観点からは、Gのピークを小さくする必要がある。
【0018】
本発明では、ウエブ23を厚くすることでウエブ23の変形を抑制する。その替りに、フランジ21,22を薄くして、その塑性変形を促すことにした。この結果、塑性変形の全域に亘ってフランジ21,22が変形し、このためにGを平均化することで、ピークを小さくすることに成功したものである(図5(b)参照)。
【0019】
さらに好ましくは、上下のフランジ21,22を図の様にθラジアンの傾斜角で斜め下に傾斜させるとともに、フランジ21とウエブ23とのなすコーナを曲げ半径Rで湾曲させる。これらの作用を図で説明する。
図4(a),(b)は本発明に係る傾斜角及びコーナにアールを設けたことの作用説明図である。
(a)は想像線が変形前、実線が変形途中を示し、外力Fが作用するとフランジ21,22が座屈に先立って下方へ曲ることを示す。これは、フランジ21,22を傾斜させたことによる効果である。そして、ウエブ23は下へ移動する。(b)は塑性変形の末期の状態を示し、フランジ21,22が下方へ引きずられる様に塑性変形したことを示す。フランジ21,22が下方へ引きずられる様に塑性変形させるためには、フランジ21,22とウエブ23とのコーナに曲げ半径R(図3参照)のアールを設けることが有効である。すなわち、アールが大きければ容易に展開して図の様になるからである。
【0020】
本発明者らが検討したところ、前記曲げ半径Rはフランジの厚さの3〜5倍の範囲から選択すべきであることが判明した。曲げ半径Rがフランジの厚さの3倍未満ではアールが小さ過ぎてコーナが簡単に展開しないという不都合が認められた。また、曲げ半径Rがフランジの厚さの5倍を超えると、アールが大きくなり過ぎて、フランジ21,22の直線部が不足し、ピークG増加によるエネルギー吸収効率悪化の虞れがあるからである。
従って、前記曲げ半径Rはフランジの厚さの3〜5倍の範囲から選択することとした。
【0021】
また、傾斜角θは、フランジの厚さをT、フランジの長さをLとしたときに、少なくとも(T/L)ラジアンに設定すべきであることが分かった。
傾斜角が(T/L)ラジアン未満であると、フランジ21,22が下方に曲ると共に、フランジ21,22自体の座屈が起こり、図4(a)→(b)の作用が得にくくなる。
そこで、傾斜角θを(T/L)ラジアン以上に設定することにする。
ただし、傾斜角θは5×(T/L)ラジアン以下、好ましくは3(T/L)ラジアンに設定する。傾斜角θが5×(T/L)ラジアンを超えると、衝撃入力時にフランジ21,22の先端(ウエブ23との交点)のみが曲げ変形を起こし、エネルギー吸収が少なくなってしまう。
【0022】
(T/L)ラジアンを補足説明すると、例えばL=100mm、T=1.0mmであれば、(T/L)ラジアン=(1/100)ラジアン=0.01ラジアンとなる。なお、tan(0.01ラジアン)=0.010となり、0.2ラジアン以下では、近似的にtan(T/Lラジアン)=(T/L)である。
従って、(T/L)ラジアンの傾斜は、フランジ21,22の先端(ウエブ23との交点)が、水平線からTだけ下がった(又は上がった)形態に合致する。
【0023】
図5(a),(b)は衝撃吸収効果を示す比較グラフであり、横軸はストローク、縦軸は加速度である。
(a)はフランジとウエブとを同じにしたところの比較例を示す。ストロークの末期に極めて大きなピークが出ていることが分かる。
(b)はフランジを薄く、ウエブを厚くした実施例を示す。ピークが小さいことが分かる。
【0024】
尚、「サイドフレームの前端に第1衝撃吸収部材を設け」という文章は、サイドフレームの前端に直接に第1衝撃吸収部材を設けたもののほか、バンパービームやブラケットなどを介して間接的にサイドフレームの前に第1衝撃吸収部材を設けたものを含む。
【0025】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、左右のサイドフレームの前端に車両との衝突に起因する衝撃を吸収する左右の第1衝撃吸収部材を各々設け、これらの左右の第1衝撃吸収部材の前端に歩行者保護用の第2衝撃吸収部材を各々設け、第2衝撃吸収部材を第1衝撃吸収部材から前へ延ばした上フランジ及び下フランジと、これら上下のフランジの前端同士を繋ぐウエブとから構成した略コ字形状の部材にするとともに上下のフランジよりウエブを厚くしたことを特徴とする。
【0026】
車対車に起因する衝撃エネルギーは、第1衝撃吸収部材を座屈させることで吸収させる。歩行者保護の際には、第2衝撃吸収部材を座屈させるが、このときに厚いウエブは座屈させずに、薄い上下のフランジを座屈させるようにした。すなわち、ウエブを厚くすることで極力ウエブを塑性変形させずに、代わりにフランジを薄くすることでフランジを塑性変形させるようにした。
上下のフランジは前後に延びているため、塑性変形開始から塑性変形終了までの距離並びに時間を稼ぐことができ、衝撃エネルギーを平均的に長時間継続して吸収させることができる。この結果、比較的小さな力で塑性変形が始まるとともに、反力を小さくすることができため、良好に歩行者保護をなせる。
【0027】
さらに、請求項1は、上下のフランジを第1衝撃吸収部材から前へ延ばす際に斜め上又は斜め下へ傾斜させ、フランジの厚さをT、フランジの長さをLとしたときに、少なくとも(T/L)ラジアンに上下のフランジの傾斜角を設定した。
上下フランジを水平線に対して傾斜させることにより、フランジの曲げ変形を促し、応答性を高め一層の歩行者保護を図る。
フランジを曲げ変形させるので、少ないストロークでより多くのエネルギーを吸収させることができ、第2衝撃吸収部材の収納スペースをより短縮することができる。
加えて、請求項1では、上下のフランジとウエブとのなすコーナを湾曲させ、これの曲げ半径をフランジの厚さの3〜5倍に設定した。フランジとウエブとのコーナに丸みを付けることで、フランジを下又は上へ滑らかに変形させる。曲げ半径がフランジの厚さの3倍未満ではアールが小さ過ぎてコーナが簡単に展開しないという不都合が認められた。また、曲げ半径がフランジの厚さの5倍を超えると、アールが大きくなり過ぎて、フランジの直線部が不足し、ピークG増加によるエネルギー吸収効率悪化の虞れがあるからである。従って、曲げ半径はフランジの厚さの3〜5倍の範囲から選択する。
【0028】
請求項2では、ウエブは、フランジの厚さTと同じ厚さの部材に補強板を添えることで、フランジより厚くしたことを特徴とする。
ウエブは厚さTに厚さtの補強板を添え、(T+t)=Wとなるようにした。こうすれば、厚さTのブランク材を曲げ加工して略コ字形状の中間加工材を造り、これに厚さtの補強板を後付けするだけで、第2衝撃吸収部材を得ることができる。又は、厚さTのブランク材に厚さtの補強板を溶接したものを曲げて第2衝撃吸収部材としてもよく、加工の自由度が増す。
または、圧延工程で中央が厚さWでその両側が厚さTの平板を製造し、これを曲げることで、第2衝撃吸収部材を製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車体前部構造の平面図
【図2】図1の2部拡大図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】本発明に係る傾斜角及びコーナにアールを設けたことの作用説明図
【図5】衝撃吸収効果を示す比較グラフ
【符号の説明】
11L,11R…左右のサイドフレーム、14L,14R…左右の第1衝撃吸収部材、15L,15R…第2衝撃吸収部材、21…上フランジ、22…下フランジ、23…ウエブ、24…補強板、L…フランジの長さ、R…コーナの曲げ半径、T…フランジの厚さ、W…ウエブの厚さ、θ…傾斜角。
Claims (2)
- 左右のサイドフレーム(11L、11R)の前端に車両との衝突に起因する衝撃を吸収する左右の第1衝撃吸収部材(14L、14R)を各々設け、これらの左右の第1衝撃吸収部材(14L、14R)の前端に歩行者保護用の第2衝撃吸収部材(15L、15R)を各々設けた車両の車体前部構造であって、
前記第2衝撃吸収部材(15L、15R)は、前記第1衝撃吸収部材(14L、14R)から前へ延ばした上フランジ(21)及び下フランジ(22)と、これら上下のフランジ(21、22)の前端同士を繋ぐウエブ(23)とから構成した略コ字形状の部材であり、前記上下のフランジ(21、22)より前記ウエブ(23)を厚くし、
前記上下のフランジ(21、22)を前記第1衝撃吸収部材(14L、14R)から前へ延ばす際に斜め下へ傾斜させ、前記フランジ(21、22)の厚さをT、フランジ(21、22)の長さをLとしたときに、少なくとも(T/L)ラジアンに前記上下のフランジ(21、22)の傾斜角を設定し、
前記上のフランジ(21)とウエブ(23)とのなすコーナを湾曲させ、これの曲げ半径Rを前記フランジ(21)の厚さTの3〜5倍に設定したことを特徴とする車両の車体前部構造。 - 前記ウエブ(23)は、フランジ(21、22)の厚さTと同じ厚さの部材に補強板(24)を添えることで、フランジ(21、22)より厚くしたことを特徴とする請求項1記載の車両の車体前部構造。
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