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JP3554119B2 - 硬質炭素膜被覆部材 - Google Patents
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JP3554119B2 - 硬質炭素膜被覆部材 - Google Patents

硬質炭素膜被覆部材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬質炭素膜を被覆した部材、特に、時計用外装部品、ネックレス、ピアス、眼鏡フレーム、釣り具などの装飾用として用いられる部材の改良に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、時計ケース、バンドなどの時計用外装部品やネックレス、ピアス、眼鏡フレームなどの装飾用として使用されている部材としては、天然の鉱物を加工したもののが一般的である。しかし、装飾部材が直接人に触れたり、海水や雨等に晒されることから、優れた耐スクラッチ性や汗等に対する耐食性が要求されている。
【0003】
このような要求に対して、最近では、着色アルミナセラミックス、着色ジルコニアセラミックス等の着色セラミックスや、例えばWCやTiC、TiN等の炭化物、窒化物をNi、Co等の鉄族金属とともに焼結した超硬合金やサーメット合金等の金色や銀色などを呈した焼結合金等が知られている。
【0004】
一方、種々の基体に対して、耐摩耗性等を高めるために、最も化学的に安定なダイヤモンドを被覆することも提案されている。このダイヤモンド膜は、例えば熱CVD法、マイクロ波プラズマCVD法等によって各種基体の表面に薄膜として形成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの焼結合金は、構成成分としてNiやCoなどの鉄族金属を含有するが、これらの金属元素は、汗などによって遊離金属として溶出し、これらの金属が肌への接触によって皮膚の炎症などのアレルギーが発生する可能性があることが懸念され、国内外でこれらアレルギー源の溶出に対する規制も強化されつつある。
【0006】
そこで、このようなアレルギー源の溶出を防止する上で、ダイヤモンド膜等の被覆によって溶出を防止することが期待できる。ところが、熱CVD法やマイクロ波CVD法によって形成されたダイヤモンド膜は、優れた耐摩耗性を有するものの、結晶粒子が大きく、その結晶間には粒界が存在するとともに、膜中にはボイド等が存在する。そのために、海水や汗等に長時間晒された場合、基体中のアレルギー源が溶出する可能性があった。
【0007】
しかも、従来のダイヤモンド膜は、表面が大きな結晶粒の自形による凹凸を有するために、装飾用として鏡面加工する必要がある。しかし、ダイヤモンド膜自体が非常に高硬度であるためにその加工が困難であるという問題があった。
【0008】
従って、本発明は、アレルギー源金属を含有する部材に対して、優れた耐食性を有するとともに、アレルギー源となる金属の溶出のない、特に装飾用として適した硬質炭素膜被覆部材を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するための方法について鋭意検討を重ねた結果、Ni、CoおよびCrの金属アレルギーを引き起こす金属を合計1重量%以上含有する基体の表面に、ラマン分光スペクトルにおいて、1160±40cm−1、1340±40cm−1および1500±60cm−1にピークが存在し、且つ1160±40cm−1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH、1340±40cm−1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH、1500±60cm−1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をHとした時、H/Hで表されるピーク強度比が0.05以上であり、H<H<Hの関係を満足する硬質炭素膜を被覆することにより、上記目的が達成されることを見いだし、本発明に至った
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における硬質炭素膜被覆部材は、特に、時計用外装部品、ネックレス、ピアス、眼鏡フレーム、ボタン、ブローチなどの人の肌に直接触れる可能性のある装飾用の部材に好適に使用される。
【0011】
本発明において用いられる基体は、金属アレルギーを引き起こす金属(以下、アレルギー源金属という。)を1重量%以上含有する基体である。具体的には、アレルギー源金属としては、Ni、Co、Cr、Al、Mn、Fe、Rh、Pd等が報告されているが、本発明では、これらの金属の合計が1重量%以上である基体である。特に、これらの中でもNi、Co、Crの量が1重量%以上の基体に有効である。
【0012】
このような基体としては、TiC、TiCN、TiN、WCを主体とする硬質相と、Ni、Co等の鉄族金属からなる結合相を1〜20重量%程度含有する超硬合金、TiC基サーメット、TiCN基サーメット、TiN基サーメット等の焼結合金が挙げられる。尚、硬質相成分としては、上記主成分以外に、Ti,Zr,Ta、V,Nb、Cr等の周期律表第4a、5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物等が含まれる場合もある。
【0013】
その他、基体としては、上記の焼結合金以外に、前記のアレルギー源金属を1重量%以上含有するような、アルミナセラミックス、ジルコニアセラミック等のセラミック材料や、金、銀、銅等を含む合金、さらには、貴金属メッキが施されて基体で、その下地層として、Niメッキ等が施された基体等も挙げられる。
【0014】
本発明によれば、上記のような基体の表面に、ダイヤモンドを含有する硬質炭素膜を被覆する。
【0015】
従来から一般に知られるダイヤモンド膜は、熱CVD法、マイクロ波CVD法などの薄膜形成法によって形成されることが知られているが、このようなダイヤモンド膜は、通常、高純度のダイヤモンドからなり、炭素原子間がSP混成で結合された構造からなる。特に、ラマン分光スペクトルにおいて、1340±40cm−1にのみピークを有するものが多用されている。また、一部において、SP混成で結合されたグラファイト構造の炭素等を含む、上記のピークに加え、1500〜1600cm−1付近にブロードなピークを有するダイヤモンド膜も知られている。また、このダイヤモンド膜は、ダイヤモンド結晶粒が大きいことにより、結晶の自形による成膜後の表面の凹凸が大きく、そのために結晶間の粒界が存在し、また薄膜内部にはボイドが多量に存在する。
【0016】
これに対して、本発明における硬質炭素膜は、ダイヤモンドを主とするものであるが、ラマン分光スペクトルにおいて、少なくとも1340±40cm−1、1160±40cm−1および1500±60cm−1にピークを有するものである。上記ピークのうち、1340±40cm−1のピークはダイヤモンド結晶のピークを示し、1500±60cm−1のピークはアモルファスカーボン相の存在を示し、1160±40cm−1のピークは、ダイヤモンド前駆体またはポリエン構造の存在を示すものと考えられ、極めて微細な結晶によって形成されることを意味するものと考えられる。従って、本発明における硬質炭素膜は、ダイヤモンド結晶が極めて微細で平均粒径が1μm以下の結晶により構成され、膜中にはほとんどボイドが存在しない高緻密質な膜からなる。
【0017】
このように、硬質炭素膜自体が非常に緻密質で結晶粒界成分がほとんどなく、しかも膜中にボイドが存在しないために、部材が汗や海水等と接触した場合において、膜中のボイドや結晶粒界の局所的な浸食が生じず、優れた耐食性を有するために、基体中のアレルギー源金属が部材表面に溶出するのを防止することができる。
【0018】
しかも、この硬質炭素膜は、従来のようなダイヤモンド結晶の自形による凹凸がなく平坦性に優れたものであるために、表面を加工する必要がなく、平滑な鏡面加工する場合においても短時間で容易に加工することができるというメリットも有する。また、上記硬質炭素膜を上記所定の基体表面に形成する場合において、あらゆる形状の基体表面に対して、基体表面形状に整合した平滑で緻密な膜面を形成でき、優れた耐食性が要求される部材表面に高い平滑性をもって形成することができる。
【0019】
本発明における硬質炭素膜のラマン分光スペクトルにおけるピーク強度について具体的に説明する。本発明の硬質炭素膜は、図1に示すように、少なくとも1340±40cm−1と1160±40cm−1にピークが存在する。1160±40cm−1のピーク強度は、1100cm−1と1700cm−1の位置間で斜線を引き、これをベースラインとして、1160±40cm−1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度をH、1340±40cm−1に存在するピークのうち最も強度の高いピーク強度をHとした時、H/Hで表されるピーク強度比が0.05以上、望ましくは、0.2〜1.0であることが重要である。
【0020】
このピーク強度比が0.05よりも小さすぎると、ダイヤモンド結晶粒子が大きく成長し過ぎ、膜中にボイドが発生したり膜の表面粗さが大きくなり局所的な腐食が進行しやすくなる。また、ピーク強度比が大きすぎるとダイヤモンド結晶の比率が少なくなる結果、膜強度が低下してしまう。上記H/Hで表されるピーク強度比が1.0以下であることが望ましい。
【0021】
また、ラマン分光スペクトルにおいては、図1に示すように、1500±60cm−1にピークを有し、該領域内のピークのうち最も強度の強いピーク強度をHとした時、H<H<Hの関係を満足するものであることが望ましい。このピークは、ダイヤモンド結晶間に存在する非晶質相を示すものであるが、Hの強度が低く、H>H、またはH>Hとなると、膜の緻密性が低下し、アレルギー源金属が溶出するという問題が発生する。
【0022】
本発明における硬質炭素膜被覆部材によれば、硬質炭素膜が、緻密質であるために、その膜厚が薄い場合でも、基体中のアレルギー源金属の溶出を防止することができるが、膜厚が薄すぎると、膜自体の強度が低下するために、衝撃が加わった時に膜にクラックが生じる場合があるため、0.5μm以上であることが望ましい。また、製造上のコストの点からは20μm以下が望ましい。
【0023】
また、本発明における硬質炭素膜被覆部材によれば、基体との密着性を高める上で、基体と硬質炭素膜との間に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物との複合体からなる中間層を介在させることにより、極めて密着性の良い硬質炭素膜を形成することができる。
【0024】
このような中間層の介在によって硬質炭素膜と母材との密着強度が向上する理由は次のように考えられる。原子同士は電子を介在することにより結合されているが、一般に、原子間の電子が一方に存在して電気的な結び付きにより結合しているイオン結合よりも、電子を双方の原子で共有している共有結合の方が強い結合力を持つ。ダイヤモンドは炭素の共有結合により構成されているので強い結合力を有している。したがって、ダイヤモンドと異種化合物との密着強度を向上させるためには類似の結合様式である共有結合性の化合物であることが望ましいと考えられる。またダイヤモンドの成分である炭素を含む化合物の方がより整合性がよいと思われる。金属炭化物は数多く存在するがその多くはイオン性結合を主体としたものである。共有結合性炭化物としては炭化ケイ素や炭化ホウ素があるが、本発明の装飾用被覆部材においては炭化ケイ素が最も望ましい。
【0025】
このような金属炭化物とダイヤモンドが混在する中間層を硬質炭素膜と基体との間に形成することにより、硬質炭素膜と基体との密着強度が向上する。またこのダイヤモンドと、金属炭化物は層分離して存在しているのではなく、ダイヤモンドの周りを金属炭化物が取り囲むような構造を呈し、ダイヤモンドが島状に分布した構造となるために、いわゆるアンカー効果により密着性が向上する。
【0026】
本発明における硬質炭素膜を作製する方法としては、従来よりダイヤモンド膜を生成する手段として、マイクロ波や高周波によりプラズマを発生させて所定の基体表面に炭素膜を形成する、いわゆるプラズマCVD法あるいは熱フィラメント法が主流である。しかしながら、プラズマCVD法では、プラズマ発生領域が小さいために、成膜できる面積が小さく、成膜できる面積が一般に直径20mm程度であり、加工用部材としての応用が限られる。また圧力が高すぎるか、もしくはプラズマ密度が低すぎるために基体が複雑な構造を有する場合や曲面構造を有する場合、その構造に沿った均一なプラズマが得られず、膜厚分布が不均一になりやすい。
【0027】
一方、熱フィラメントCVD法では、フィラメントが切れやすく、また膜厚のバラツキを抑制するために基体の形状に合わせてフィラメントを設置する必要があり、装置が汎用性に欠けるなどの欠点を有している。
【0028】
これに対して、プラズマCVD法におけるプラズマ発生領域に磁界をかけた、いわゆる電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法によれば、低圧下(1torr以下)で高密度のプラズマを得ることができるために、プラズマを広い領域に均一に発生させることができ、通常のプラズマCVD法に比較して約10倍程度の面積に均一に膜の形成を行うことができる。
【0029】
よって、ここでは、電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD法(ECRプラズマCVD法)を例にとって説明する。この方法では、内部に所定の基体が設置された反応炉内に反応ガスを導入すると同時に2.45GHzのマイクロ波を導入する。それと同時にこの領域に対して875ガウス以上のレベルの磁界を印加する。これにより電子はサイクロトロン周波数f=eB/2πm(但し,m:電子の質量、e:電子の電荷,B:磁束密度)にもとづきサイクロトロン運動を起こす。この周波数がマイクロ波の周波数(2.45GHz)と一致すると共鳴し、電子はマイクロ波のエネルギーを著しく吸収して加速され、中性分子に衝突、電離を生じせしめて高密度のプラズマを生成するようになる。この時の基体の温度は150〜1000℃、炉内圧力1×10−2〜1torrに設定される。
【0030】
かかる方法によれば、成膜時の基体温度、炉内圧力および反応ガス濃度を変化させることにより成膜される硬質炭素膜の成分等が変化する。具体的には、炉内圧力が高くなるとプラズマの領域が小さくなり、膜の成長速度が下がるが結晶性は向上する傾向にある。また、反応ガス濃度が高くなると、膜を構成する粒子の大きさが小さくなり、結晶性が悪くなる傾向にある。これらの条件を具体的には後述する実施例に記載されるように適宜制御することにより、前述したH/H比を制御することができる。
【0031】
上記の成膜方法において、本発明の装飾用被覆部材を作製する場合、硬質炭素膜の形成にあたっては原料ガスとして水素と炭素含有ガスを用いる。用いる炭素含有ガスとしては、例えば、メタン、エタン、プロパンなどのアルカン類、エチレン、プロピレンなどのアルケン類、アセチレンなどのアルキン類、ベンゼンなどの芳香族炭化水素類、シクロプロパンなどのシクロパラフィン類、シクロペンテンなどのシクロオレフィン類などが挙げられる。また一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトンなどの含酸素炭素化合物、モノ(ジ、トリ)メチルアミン、モノ(ジ、トリ)エチルアミンなどの含窒素炭素化合物なども炭素源ガスとして使用することができる。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以上で併用することもできる。また、前述したようなダイヤモンドと炭化ケイ素の混合物からなる中間層を形成するには、所望によりダイヤモンド核発生処理を行った後、反応ガスとして、水素と、炭素含有ガスおよびケイ素含有ガスを導入する。前記ケイ素含有ガスとしては、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素などのハロゲン化物、二酸化ケイ素などの酸化物の他に、モノ(ジ、トリ、テトラ、ペンタ)シラン、モノ(ジ、トリ、テトラ)メチルシランなどのシラン化合物、トリメチルシラノールなどのシラノール化合物などが挙げられる。これらは一種単独で用いることもできるし、二種以上で併用することもできる。
【0032】
このように、本発明における硬質炭素膜は、微粒組織のダイヤモンドを主体とするものであり、しかも緻密質で膜表面および内部にボイド等の欠陥がなく、また膜表面も平滑性に優れたものである。したがって人の肌に触れる部材表面にこの硬質炭素膜を形成すると、高い耐食性を付与することができ、特に汗や酸性雨によるボイド等への局所的な腐食の発生を防止するとともに、汗や酸性雨の膜のボイドや凹部への残留も防止することができる。
【0033】
また、部材表面と硬質炭素膜との間に、少なくともダイヤモンドと金属炭化物とを含む中間層を介在させることにより、硬質炭素膜の基体への密着性を高めることができるために、硬質炭素膜の基体からの剥離等を防止できる。
【0034】
【実施例】
(実施例)
電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD装置の炉内に、基体として超硬合金(80重量%WC−10重量%Co−10重量%Ni)、TiC基サーメット(80重量%TiC−15重量%Cr−5重量%Ni)、TiN基サーメット(85重量%TiN−15重量%Ni)のいずれかからなる100ml容器を設置した。
【0035】
そこに、H297sccm、CH3sccmのガスを用いて、ガス濃度1%、基体温度650℃、炉内圧力0.1torrで1.5時間処理して、ダイヤモンド核を発生させた後、原料ガスとしてHガス、CHガスおよびSi(CHガスを用いて、
297sccm
CH 3sccm
Si(CH 0.3sccm
の割合でガス濃度1%、基体温度650℃、炉内圧力0.05torrの条件で電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマCVD法により最大2kガウスの強度の磁場を印加させ、マイクロ波出力3.0KWの条件で5時間成膜して容器内面にダイヤモンドと炭化ケイ素が混在した平均膜厚0.8μmの中間層を形成した。
【0036】
また、表1中、試料No.4については、中間層形成を
300sccm
Si(CH 0.3sccm
のガス比とする以外は前記と全く同様にして、炭化ケイ素からなる中間層を1μmの厚みで形成し、同様に評価を行った。
【0037】
次に、中間層の上に、純度99.9%以上のHガス、CHガス、COガスを用いて、表1に示すガス比、ガス濃度、基体温度、炉内圧力で成膜を行い、容器内面にさらに2μmの硬質炭素膜を形成した。
【0038】
成膜した硬質炭素膜に対して、膜表面のラマン分光スペクトル分析を行い、ラマン分光スペクトルチャートから1100cm−1と1700cm−1の位置間で線を引き、これをベースラインとし、1160±40cm−1に存在する最大ピークのピーク強度をH、1340±40cm−1に存在する最大ピークのピーク強度をHとして、H/Hで表される強度比を算出した。また、1500±60cm−1の領域内のピークのうち最も強度の強いピーク強度をHとし、H、HおよびHの大小関係を示した。表1中、試料No.3と試料No.9についてチャートを図1、図2に示した。なお、ラマン分光分析における発振源として、レーザーはArレーザー(発振線488.0nm)を用いた。また、膜単体を取り出し、ぎ酸タリウム水溶液の比重液を用いた浮沈法で膜の密度を測定した。
【0039】
次に、内面に硬質炭素膜が被覆された容器内に45%フッ化水素酸溶液80mlを注ぎ込み、温度40℃で48週間放置した。放置後の膜面を双眼顕微鏡で観察し腐食の状態を表1に示した。また、ICP法により溶液に溶出した金属量を測定し結果を表1に示した。
【0040】
(比較例1)
硬質炭素膜を被覆しないTiC基サーメットを用いて、実施例1と同様の腐食試験を行い、その結果を表1試料No.17に示した。
【0041】
(比較例2)
基体として実施例において用いたTiC基サーメットを用いて、マイクロ波CVD法によって、中間層形成を実施例と同じガス比でガス濃度1%、基体温度950℃、炉内圧力30torrの条件で3時間成膜した後、さらに表1の試料No.9に示す条件で成膜し1μmの硬質炭素膜を形成した。これに対して、実施例1と同様の腐食試験を行い、その結果を表1試料No.9に示した。
【0042】
【表1】
Figure 0003554119
【0043】
表1の結果によれば、H/Hが0.05以上、H<H<Hを満足する硬質炭素膜を形成した本発明の試料は、いずれも強酸溶液に対しても全く腐食が認められず、優れた耐食性を示し、また、アレルギー源金属の溶出は検出限界以下であった。しかも、密度も3.1g/cm以上の高密度を有していた。
【0044】
また、比較例として従来のTiC基サーメットでは、強酸に対して0.5時間で表面が白く変色し、アレルギー源金属の溶出が確認された。また、マイクロ波CVD法等で作製された試料No.9の部材や、成膜条件によってH/Hの比率が0.05よりも小さい試料No.1、2、9、10の部材では、いずれも試験後の膜表面に腐食によると思われる10〜1000μmのスポットが多数観察され、腐食が局所的に進行したことがわかり、その結果、微量のアレルギー源金属の溶出が確認された。
【0045】
また、上記と同様にして、作製した部材を入れた容器内に40%NaOH溶液のアルカリ溶液を80ml注ぎ込み、40℃で48時間放置後の腐食の状態を観察した結果、試料No.17のTiC基サーメットからなる容器では、全面に腐食が見られたが、それ以外の試料No.1〜16についてはほとんど変化は見られなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の硬質炭素膜被覆部材は、強酸や強アルカリとの接触においても局所的な腐食等の進行を抑制し長期にわたり優れた耐食性を発揮することができる。その結果、海水や汗等との接触においても、基体中のアレルギー源金属の溶出を防止することができる。これにより、人の肌と接触する、特に装飾用部材の長期にわたる安全性および信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における硬質炭素膜(試料No.3)のラマン分光スペクトルチャート図である。
【図2】比較例における硬質炭素膜(試料No.9)のラマン分光スペクトルチャート図である。

Claims (1)

  1. Ni、CoおよびCrの金属アレルギーを引き起こす金属を合計で1重量%以上含有する基体の表面に、ラマン分光スペクトルにおいて、1160±40cm−1、1340±40cm−1および1500±60cm−1にピークが存在し、且つ1160±40cm−1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH、1340±40cm−1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をH、1500±60cm−1に存在するピークのうち最も強度の強いピーク強度をHとした時、H/Hで表されるピーク強度比が0.05以上であり、H<H<Hの関係を満足する硬質炭素膜を被覆したことを特徴とする装飾用の硬質炭素膜被覆部材。
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