JP3555593B2 - レーザ溶接における照射位置決め方法および照射位置決め装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ね合せたパネル接合部同士をレーザ溶接する際の照射位置決め方法および照射位置決め装置に関し、特に、パネル接合部の少なくとも片側のパネルが側壁部を介して隆起して形成されたワークに好適なレーザ溶接における照射位置決め方法および照射位置決め装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、重ね合せたパネル接合部同士をレーザ溶接する際には、溶接対象のパネル接合部間の隙間が大きいと、溶接部分にブロ一ホールが発生して強度が低下する可能性があるため、隙間矯正治具でパネル接合部を上側から押さえ付けて、この隙間を小さく矯正した状態で溶接するようにしている。
【0003】
前記隙間矯正治具は、例えば、図8に示すように、基端部1Bが加工ヘッド2に固定され、先端部1Aが図示しない集光レンズによりレーザ光10が焦点を結ぶ位置に先行するよう配置され、加工ヘッド2のアクチュエータ8によるワークW側への接近移動により先端部1Aは、レーザ溶接される部位に先行してパネル接合部W1同士を接触させるよう押さえ付け、その矯正状態でレーザ溶接している。
【0004】
ところで、自動車の外表面部分を構成するパネル接合部W1においては、図9に示すように、パネル接合部W1を外表面部分から溝状に陥没させて表面に露出させない接合法が外観を向上させるために採用されている。
【0005】
そして、前記溝の底部に配置されるパネル接合部W1に対して、隙間矯正治具1によりパネル接合部W1間の隙間を矯正しつつレーザ溶接する場合には、一般的に、隙間矯正治具1と溝の側壁Sとが干渉しないように溝幅の寸法が設定される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、溝幅は、隙間矯正治具と干渉しないように設定されるために、隙間矯正治具の幅寸法に、パネルの形状精度による寸法のバラツキを吸収する寸法と、隙間矯正治具を位置決めするロボットのロケート位置精度による位置のバラツキを吸収する寸法を夫々加算して決定する必要があり、溝幅を小さくできず、外観品質を向上できないものであった。
【0007】
一例として、図9に示す自動車の車体ルーフ部周縁の接合部の断面図により説明すると、例えば、隙間矯正治具1の幅寸法がAmm、車体の寸法バラツキおよびロボットの位置決めバラツキがトータルで±Bmmである場合には、隙間矯正治具1は溝内で左右にBmmずつ点線図示のごとく位置が振れるため、干渉しないようにするためには溝幅を(A+2B)mm必要とすることとなる。
【0008】
また、上記溝幅は隙間矯正治具と溝の側壁とが干渉しない最小寸法であることから、隙間矯正治具の移動軌跡をロボットにティーチングする場合においても、溝の側壁と隙間矯正治具との干渉状態が生じないように慎重に行う必要があり、ティーチング工数が多大となっていた。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、溝幅を減少できティーチングも容易なレーザ溶接における照射位置決め方法および照射位置決め装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、レーザ溶接における照射位置決め方法に係り、パネルの一部がパネル接合部として重ねられ、少なくとも一方のパネルは前記パネル接合部に連なる側壁部を介して前記パネル接合部から隆起されているパネル接合部へのレーザ溶接における照射位置決め方法であって、パネル接合部にレーザ光を照射する加工ヘッドおよび加工ヘッドに設けられレーザ光に先行してパネル接合部に当接してその間の隙間を矯正する隙間矯正治具を、加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段を介して位置決め手段により位置調整および移動させるよう構成し、前記位置決め手段によって、パネル接合部に押圧力をもって当接させた前記隙間矯正治具の先端側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させ、上記回動状態で加工ヘッドからレーザ光を照射しつつ、加工ヘッドおよび隙間矯正治具を加工進行方向に移動させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接した隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動させて、隙間矯正治具の先端側面を側壁部に当接させ、次いで、隙間矯正治具を前記横方向と同一方向に更に所定距離移動させて隙間矯正治具の側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記位置決め手段は、その移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、レーザ溶接における照射位置決め装置に係り、パネルの一部がパネル接合部として重ねられ、少なくとも一方のパネルは前記パネル接合部に連なる側壁部を介して前記パネル接合部から隆起されているパネル接合部へのレーザ溶接における照射位置決め装置であって、パネル接合部にレーザ光を照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッド先端に固定され、加工ヘッドから照射されるレーザ光に先行してパネル接合部に押圧力をもって当接してパネル接合部の隙間を矯正しつつ加工ヘッドの照射位置を調整する隙間矯正治具と、加工ヘッドを加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段と、前記支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具の位置を調整しつつ進行方向に移動させる位置決め手段とから構成し、前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって当接した隙間矯正治具の先端の側方を前記側壁部の上端縁に接触させ、前記支持手段により加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させた状態で加工進行方向に移動させるものであることを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接した隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動させて、隙間矯正治具の先端側面を側壁部に当接させ、次いで、隙間矯正治具を前記横方向と同一方向に更に所定距離移動させて隙間矯正治具の側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させ、上記回動状態で加工ヘッドからレーザ光を照射しつつ、加工ヘッドおよび隙間矯正治具を加工進行方向に移動させるよう教示されることを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、第4または第5の発明において、前記位置決め手段は、その移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したことを特徴とする。
【0016】
【発明の効果】
したがって、第1および第4の発明では、隙間矯正治具および加工ヘッドを加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具の位置を調整しつつ進行方向に移動させる位置決め手段を備え、位置決め手段により、パネル接合部に押圧力をもって当接された隙間矯正治具の先端側方を前記側壁部の上端縁に接触させ、前記支持手段により加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させた状態で加工進行方向に移動させるものであるため、隙間矯正治具先端およびレーザ照射点は、側壁を基準として一定距離範囲内に位置させることができる。
【0017】
このため、車体の形状精度やロボットの位置決め精度によって側壁の位置と隙間矯正治具の位置とにズレが生じたとしても、それにより生ずる隙間矯正治具先端およびレーザ照射点の移動は無視できる程度に小さいものとでき、パネル接合部が底部に配置される溝であっても幅を狭くしたルーフ溝にも適用可能できる。
【0018】
第2または第5の発明では、第1または第4の発明の効果に加えて、位置決め手段により、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接された加工ヘッドと一体の隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動され、先端側面が側壁部に当接され、次いで、更に所定距離移動されてその側方が側壁部の上端縁に接触されることで、加工ヘッドおよび隙間矯正治具は支持手段の軸回りに回動されるため、ワーク形状を基準に照射位置決めできる。
【0019】
第3または第6の発明では、第1、2および第4、5の発明の効果に加えて、位置決め手段の移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したため、曲線部のティーチングが容易となり、ティーチング工数が大幅に小さくなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用可能なレーザ溶接における照射位置決め装置の一例を示し、隙間矯正治具1と、隙間矯正治具1を固定保持しワークWにレーザを照射する加工ヘッド2と、加工ヘッド2をワークWに対し接近離脱方向に駆動可能なヘッド移動軸3を介して保持する支持手段としての第1基板4と、第1基板4を前記ヘッド移動軸3に直交する軸7回りに弾性的に保持し位置決め手段としてのロボットアーム6先端に結合された第2基板5とから構成されている。
【0022】
前記隙間矯正治具1は、その先端部1AがワークWのパネル接合部W1を外方から前記ヘッド移動軸3により所定の接触圧で押圧し、パネル接合部W1間に存在する隙間はパネルを撓ませて減少させる。
【0023】
前記隙間矯正治具1の先端部1Aの位置は、加工ヘッド2からのレーザビーム10の進行方向(図1中の矢印11方向)前方のパネル接合部W1に接触しており、パネル接合部W1の隙間が矯正された状態で後続するレーザビーム10によりパネル接合部W1が溶接される。
【0024】
前記加工ヘッド2は、前記隙間矯正治具1の基端部1Bを一体に固定して備え、光ファイバ12を介して図示しないレーザ発振器から発せられたレーザ光を導入し、図示しない集光レンズを介して点線図示のごとくワークWのパネル接合部W1を焦点としてレーザビーム10を照射してパネル接合部W1同士を融接させる。
【0025】
前記照射位置は、先行する隙間矯正治具1で隙間矯正されたパネル接合部W1を追いかけて照射するよう設定される。
【0026】
前記加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1は一体となって、ヘッド移動軸3によりワークWへの接近離脱方向に移動され、位置決めされる。
【0027】
前記ヘッド移動軸3に直交する軸7回りに弾性的に結合される支持手段としての第1、2基板4、5は、図2、3に示すごとく、スペーサ15を介して対向する面4A、5A同士が対面し、四隅には対向した位置において、第2基板5に丸穴5Bが、また、第1基板4には長穴4Bが夫々形成されている。
【0028】
前記丸穴5B、および、長穴4Bには、カラー16を嵌合したボルト17が挿入され、ボルト17先端にナット18を締結することで、カラー16は前記長穴4B内でボルト17の頭部17Aと第2基板5の対向する面5Aとの間で軸力をもって締結される。
【0029】
上記締結により、ボルト17の頭部17Aは夫々第2基板5に対して位置決めされ、長穴4Bの外側の縁に係合して第1基板4の第2基板5からの離反を阻止し、結果として第1基板4は第2基板5に対して、その対向面4A、5Aが互に傾斜しないように規制され、両者は平行に維持される。
【0030】
また、第1基板4の四隅の長穴4Bは、カラー16に対して左右方向に隙間を備えて係合しているため、第1基板4が第2基板5に対して面直角方向の軸7周りの回転が許容される。
【0031】
前記第1、2基板4、5間には、ブチルゴム等からなる弾性体19が配置され、弾性体19の第1、2基板4、5への接触面は、接着、若しくは、図示しないが、弾性体の両面に接着した端板がピン等の機械的手段により、夫々固定される。
【0032】
前記弾性体19は、前記第1、2基板4、5の面直角方向の軸7周りの回転移動に伴ない弾性変形量が増加することから、第1基板4の回転変位に対向して作用し、第1基板4を中立方向に引き戻すよう機能する。
【0033】
前記第1基板4の回転変位は、第1基板4上に搭載しているヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1を共に回転変位させる。
【0034】
従って、位置決め手段としてのロボットアーム6により加工ヘッド2をワークWのパネル接合部W1に位置決めし、その隙間矯正治具1をヘッド移動軸3によりパネル接合部W1に所定の押圧力で接触させる際には、各カラー16を長穴4B内で短径方向に移動させる荷重であるため、これらのヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1は傾斜することはない。
【0035】
しかし、隙間矯正治具1から回転方向の荷重を受ける際には、前記カラー16は長穴4B内で長径方向に移動させる荷重であるため、弾性体19を変形させ、これらのヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1はその荷重に応じた復元反力を生じつつ回転変位、即ち、傾斜する。
【0036】
なお、前記回転方向の荷重は、隙間矯正治具1の先端1A側面を固定してロボットアーム6により第2基板5を横方向に移動させる際にも、カラー16が長穴4Bの長径方向に荷重を受け、アーム6の移動量に応じて弾性体16を変形させ、これらのヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1をその変位に応じた復元反力を生じつつ回転変位、即ち、傾斜する。
【0037】
図4は、レーザ溶接されるパネル接合部W1を構成するパネル構成の一例を示すものであり、図示されたパネル構成はボデーサイドアセンブリBSとルーフパネルRPとの結合部位である。
【0038】
図4において、ボデーサイドアセンブリBSは、ルーフレールサイドインナパネルRIとレインフォースルーフレールサイドパネルRSとのフランジ結合によりルーフサイドの骨格を形成し、この骨格にボディサイドアウタパネルBOを結合することで構成されている。
【0039】
前記ボディサイドアウタパネルBOの図中上方には、水平部P1と水平部P1に連なる側壁部S1が形成され、水平部P1上に、端部が側壁部S2と水平部P2に形成されたルーフパネルRPの水平部P2が載置され、水平部P1、P2同士がパネル接合部としてレーザ溶接される部位となる。
【0040】
次に、上記構成のレーザ溶接における照射位置決め装置の位置決め作動について、図5に基づき説明する。
【0041】
図5はルーフパネルRP、および、ボディサイドアウタパネルBOの夫々の側壁部S1、S2、および夫々の水平部P1、P2で形成されたルーフ溝の断面図を示し、水平部P1、P2同士がパネル接合部W1を形成する。
【0042】
先ず、図5(A)に示すごとく、ロボット6により位置決めされヘッド移動軸3により矢印20方向に押出して隙間矯正治具1の先端1Aをルーフ溝内に挿入し、その先端1Aをルーフ溝の底部の水平部P1、P2同士のパネル接合部W1に図5(B)のごとく当接させる。
【0043】
この挿入作動における隙間矯正治具1の先端1Aの位置はルーフ溝内で溝の中央に挿入する必要はなく、挿入できれば横方向にずれていても差し支えない。
【0044】
次いで、図5(B)に示すごとく、矢印21方向に所定の押圧力を付与する。この押圧により、水平部P1、P2同士で形成するパネル接合部W1の隙間が矯正される。押圧力の大きさは、加工ヘッド2をワークWに向けて駆動するヘッド移動軸3の駆動モータの駆動電流値により検出することができる。
【0045】
次いで、ロボットハンド6により軸7をルーフ溝と交差する方向(矢印22参照)に移動させる。この移動中において、図5(C)のごとく、隙間矯正治具1の側面を一方の側壁部であるルーフパネルRPの側壁部S2に当接させる。この当接は、ロボットハンド6に設けた駆動モータの駆動抵抗により上昇する駆動電流の立ち上がりで検出することができる。
【0046】
続いて、図5(C)に示すように、さらに当接を増加させるよう矢印23方向に軸7を所定量Xだけ移動させ、図5(D)の状態となる。隙間矯正治具1の先端1AはルーフパネルRPの側壁部S2に当接していることから、前記移動は、第1基板4を第2基板5の面直角方向の軸7周りに回転させるよう作用し、両基板4、5間に配置された弾性体19を弾性変形させつつ回転する。
【0047】
この回転は、隙間調整治具1、および、加工ヘッド2を傾斜させ、図5(D)に示すようにルーフパネルRPの側壁部S2の上端縁S3を転がり部分としてパネル接合部W1に接触している先端部1Aは図中右側に移動し、第1、2基板4、5は加工ヘッド2を含めて図中左側に移動する。
【0048】
即ち、加工ヘッド2から照射されるレーザ光10も同様に傾斜するが、傾斜することによるレーザ光10の焦点のズレ量は、ルーフ溝の側壁部S2の上端縁S3の高さに対して側壁部S2の上端縁S3と第1基板4との間の距離が極めて大きい(例えば、50〜100倍)ため、無視できる程度に小さくできる。
【0049】
例えば、側壁部S2の上端縁S3の高さを7〜10mmとすれば、第1基板4とレーザ照射点との間隔を側壁部S2の高さの50〜100倍の長さに設定すれば、第1基板4を4mm〜10mm横方向に移動させた場合でも、レーザ照射点の移動距離は0.1mm未満〜0.2mm程度と極めて小さい値のズレとなる。
【0050】
この状態で、ロボット6により隙間矯正治具1、および、加工ヘッド2をルーフ溝に沿って移動させることで、ルーフ溝の底部の水平部P1、P2同士のレーザ溶接を行う。
【0051】
従って、ルーフ溝の形状にバラツキがあり、また、ロボット6の位置決め精度にバラツキがあったとしても、そのバラツキに追従して隙間矯正治具1、および、加工ヘッド2が微小に傾くが、ルーフ溝の底部の水平部P1、P2同士を位置ずれすることなくレーザ溶接することができる。
【0052】
しかも、隙間矯正治具1は、常時ルーフ溝の側壁部と2の上端縁と3に接触し、追従するものであるため、ルーフ溝の溝幅を隙間矯正治具1の微小な傾斜を許容する幅まで狭めることが可能である。
【0053】
また、ルーフ溝が水平方向から見てカーブを描いて配置されている場合には、図6に示すように、第1基板4の軸7がルーフ溝の一方の側壁部S2から、設定した距離(例えば、10mm)以上離れないように、ロボット6の教示点T1〜4を複数箇所設定し、教示点間は教示点を直線で結んだ移動軌跡となるよう実線のごとくティーチングすればよい。
【0054】
この場合、隙間矯正治具1は、各教示点ではルーフ溝の一方の側壁部S2にゼロタッチ(接触圧を生じることなく単に接触している状態)し、移動軌跡とルーフ溝の一方の側壁部S2とが乖離している点では乖離量に応じてルーフ溝の一方の側壁S2の上端縁S3に微小な傾きをもって接触する。
【0055】
なお、側壁部S2が上記のごとく凸なる曲線に対しては、曲線の接線に平行な線同士を接続してロボット6の移動軌跡を形成すればよいが、図示しないが、側壁部が凹なる曲線を持つ場合には、側壁部の凹なる曲線の接線同士を接続してロボットの移動軌跡を形成することとなる。
【0056】
図7は、支持手段としての第1、2基板4、5の締結構造の変形例を示したもので、図2、3の例では四隅に長穴4Bとカラー16を配してボルト17で締結する構造であったが、この変形例においては、3点の締結部位で締結したものである。
【0057】
即ち、前記3点の締結部位の上部の一点25は水平、垂直方向に移動しないタイトな構造であり、下部の二点26は前者の一点25を中心とした円周方向に配置した長穴27とカラー28とで締結するようにしたものである。
【0058】
なお、29は第1、2基板4、5間に配置したスペーサであり、30は第1、2基板4、5に両端が固定された弾性体である。
【0059】
この例においては、タイトな締結部位を中心に第1基板4が回転可能となっているため、回動範囲をより微小に設定することができる。
【0060】
なお、隙間矯正治具1、および、ヘッド移動軸3を含めて加工ヘッド2を回動可能とする構造は、上記した構造に限られず、図示しないが、ヘッド移動軸の基部をロボットハンド部に回動可能に軸支し、基部の両回動位置にストッパを配置し、ストッパと基部との間に基部の回動を制限する弾性材を配置したものであってもよい。
【0061】
以上説明した、本実施の態様においては、以下に説明する効果を奏しうる。
【0062】
即ち、隙間矯正治具1および加工ヘッド2を加工進行方向に平行な軸7回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段としての第1、2基板4、5を介して加工ヘッド2および隙間矯正治具1の位置を調整しつつ進行方向に移動させる位置決め手段としてのロボット6を備え、ロボット6、若しくは、ヘッド移動軸3により隙間矯正治具1の先端1Aをパネル接合部W1に押圧力をもって当接させ且つロボット6により隙間矯正治具1の側方を前記側壁部S2の上端縁S3に接触させ、前記第1、2基板4、5により加工ヘッド2および隙間矯正治具1を軸7回りに回動させた状態でロボット6により加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1を加工進行方向に移動させるものであるため、隙間矯正治具1先端1Aおよびレーザ照射点は、側壁S2を基準として一定距離範囲内に位置するようにできる。
【0063】
このため、車体の形状精度やロボットの位置決め精度によって側壁S2の位置と隙間矯正治具1の位置とにズレが生じたとしても、それにより生ずる隙間矯正治具1先端1Aおよびレーザ照射点の移動は無視できる程度に小さいものとでき、パネル接合部W1が底部に配置される溝であっても幅を狭くした溝にも適用可能できる。
【0064】
また、加工ヘッド2と一体の隙間矯正治具1は、その先端1Aがパネル接合部W1に押圧力をもって当接され、次いで、側壁部S2がある横方向に移動され、先端1Aの側面が側壁部S2に当接され、次いで、更に所定距離移動されてその側面が側壁部S2の上端縁S3に接触されることで、加工ヘッド2および隙間矯正治具1は第1、2基板4、5の軸7回りに回動されるため、ワーク形状を基準に照射位置決めできる。
【0065】
しかも、位置決め手段の移動軌跡を側壁部S2が画く曲線に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したため、曲線部であってもティーチングが容易となり、ティーチング工数が大幅に小さくできる。
【0066】
なお、上記実施形態において、パネル接合部W1の両側に側壁S1、S2が形成された溝形状のワークWに対するレーザ溶接における照射位置決め方法および装置について説明したが、図示はしないが、片側のみに側壁が形成されたパネル接合部に対しても、同様に照射位置決めできるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すレーザ溶接における照射位置決め装置の概略側面図。
【図2】同じく第1、2基板の取付け構造を示す分解斜視図であり、(A)は第1基板側の斜視図、(B)は第2基板側の斜視図。
【図3】同じく第1、2基板の取付け状態を示す正面図(A)、および、側面図(B)。
【図4】レーザ溶接されるパネル接合部を構成するパネル構造の一例を示す断面図。
【図5】照射位置決め装置の位置決め作動を(A)〜(D)により順に示す作動図。
【図6】ロボットのティーチングの例を示す説明図。
【図7】第1、2基板の締結構造の変形例を示す正面図。
【図8】従来例を示す側面図。
【図9】従来技術における隙間矯正治具とワークとの関係を説明する説明図。
【符号の説明】
W ワーク
W1 パネル接合部
P1、P2 水平部
S1、S2 側壁部
S3 上端縁
1 隙間矯正治具
2 加工ヘッド
3 ヘッド移動軸
4 第1基板(支持手段)
4B、27 長穴
5 第2基板(支持手段)
6 ロボット(位置決め手段)
7 軸
10 レーザビーム
15 スペーサ
16、28 カラー
17 ボルト
18 ナット
19 弾性体
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ね合せたパネル接合部同士をレーザ溶接する際の照射位置決め方法および照射位置決め装置に関し、特に、パネル接合部の少なくとも片側のパネルが側壁部を介して隆起して形成されたワークに好適なレーザ溶接における照射位置決め方法および照射位置決め装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、重ね合せたパネル接合部同士をレーザ溶接する際には、溶接対象のパネル接合部間の隙間が大きいと、溶接部分にブロ一ホールが発生して強度が低下する可能性があるため、隙間矯正治具でパネル接合部を上側から押さえ付けて、この隙間を小さく矯正した状態で溶接するようにしている。
【0003】
前記隙間矯正治具は、例えば、図8に示すように、基端部1Bが加工ヘッド2に固定され、先端部1Aが図示しない集光レンズによりレーザ光10が焦点を結ぶ位置に先行するよう配置され、加工ヘッド2のアクチュエータ8によるワークW側への接近移動により先端部1Aは、レーザ溶接される部位に先行してパネル接合部W1同士を接触させるよう押さえ付け、その矯正状態でレーザ溶接している。
【0004】
ところで、自動車の外表面部分を構成するパネル接合部W1においては、図9に示すように、パネル接合部W1を外表面部分から溝状に陥没させて表面に露出させない接合法が外観を向上させるために採用されている。
【0005】
そして、前記溝の底部に配置されるパネル接合部W1に対して、隙間矯正治具1によりパネル接合部W1間の隙間を矯正しつつレーザ溶接する場合には、一般的に、隙間矯正治具1と溝の側壁Sとが干渉しないように溝幅の寸法が設定される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、溝幅は、隙間矯正治具と干渉しないように設定されるために、隙間矯正治具の幅寸法に、パネルの形状精度による寸法のバラツキを吸収する寸法と、隙間矯正治具を位置決めするロボットのロケート位置精度による位置のバラツキを吸収する寸法を夫々加算して決定する必要があり、溝幅を小さくできず、外観品質を向上できないものであった。
【0007】
一例として、図9に示す自動車の車体ルーフ部周縁の接合部の断面図により説明すると、例えば、隙間矯正治具1の幅寸法がAmm、車体の寸法バラツキおよびロボットの位置決めバラツキがトータルで±Bmmである場合には、隙間矯正治具1は溝内で左右にBmmずつ点線図示のごとく位置が振れるため、干渉しないようにするためには溝幅を(A+2B)mm必要とすることとなる。
【0008】
また、上記溝幅は隙間矯正治具と溝の側壁とが干渉しない最小寸法であることから、隙間矯正治具の移動軌跡をロボットにティーチングする場合においても、溝の側壁と隙間矯正治具との干渉状態が生じないように慎重に行う必要があり、ティーチング工数が多大となっていた。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、溝幅を減少できティーチングも容易なレーザ溶接における照射位置決め方法および照射位置決め装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、レーザ溶接における照射位置決め方法に係り、パネルの一部がパネル接合部として重ねられ、少なくとも一方のパネルは前記パネル接合部に連なる側壁部を介して前記パネル接合部から隆起されているパネル接合部へのレーザ溶接における照射位置決め方法であって、パネル接合部にレーザ光を照射する加工ヘッドおよび加工ヘッドに設けられレーザ光に先行してパネル接合部に当接してその間の隙間を矯正する隙間矯正治具を、加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段を介して位置決め手段により位置調整および移動させるよう構成し、前記位置決め手段によって、パネル接合部に押圧力をもって当接させた前記隙間矯正治具の先端側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させ、上記回動状態で加工ヘッドからレーザ光を照射しつつ、加工ヘッドおよび隙間矯正治具を加工進行方向に移動させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接した隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動させて、隙間矯正治具の先端側面を側壁部に当接させ、次いで、隙間矯正治具を前記横方向と同一方向に更に所定距離移動させて隙間矯正治具の側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記位置決め手段は、その移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、レーザ溶接における照射位置決め装置に係り、パネルの一部がパネル接合部として重ねられ、少なくとも一方のパネルは前記パネル接合部に連なる側壁部を介して前記パネル接合部から隆起されているパネル接合部へのレーザ溶接における照射位置決め装置であって、パネル接合部にレーザ光を照射する加工ヘッドと、前記加工ヘッド先端に固定され、加工ヘッドから照射されるレーザ光に先行してパネル接合部に押圧力をもって当接してパネル接合部の隙間を矯正しつつ加工ヘッドの照射位置を調整する隙間矯正治具と、加工ヘッドを加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段と、前記支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具の位置を調整しつつ進行方向に移動させる位置決め手段とから構成し、前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって当接した隙間矯正治具の先端の側方を前記側壁部の上端縁に接触させ、前記支持手段により加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させた状態で加工進行方向に移動させるものであることを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接した隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動させて、隙間矯正治具の先端側面を側壁部に当接させ、次いで、隙間矯正治具を前記横方向と同一方向に更に所定距離移動させて隙間矯正治具の側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させ、上記回動状態で加工ヘッドからレーザ光を照射しつつ、加工ヘッドおよび隙間矯正治具を加工進行方向に移動させるよう教示されることを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、第4または第5の発明において、前記位置決め手段は、その移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したことを特徴とする。
【0016】
【発明の効果】
したがって、第1および第4の発明では、隙間矯正治具および加工ヘッドを加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具の位置を調整しつつ進行方向に移動させる位置決め手段を備え、位置決め手段により、パネル接合部に押圧力をもって当接された隙間矯正治具の先端側方を前記側壁部の上端縁に接触させ、前記支持手段により加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させた状態で加工進行方向に移動させるものであるため、隙間矯正治具先端およびレーザ照射点は、側壁を基準として一定距離範囲内に位置させることができる。
【0017】
このため、車体の形状精度やロボットの位置決め精度によって側壁の位置と隙間矯正治具の位置とにズレが生じたとしても、それにより生ずる隙間矯正治具先端およびレーザ照射点の移動は無視できる程度に小さいものとでき、パネル接合部が底部に配置される溝であっても幅を狭くしたルーフ溝にも適用可能できる。
【0018】
第2または第5の発明では、第1または第4の発明の効果に加えて、位置決め手段により、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接された加工ヘッドと一体の隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動され、先端側面が側壁部に当接され、次いで、更に所定距離移動されてその側方が側壁部の上端縁に接触されることで、加工ヘッドおよび隙間矯正治具は支持手段の軸回りに回動されるため、ワーク形状を基準に照射位置決めできる。
【0019】
第3または第6の発明では、第1、2および第4、5の発明の効果に加えて、位置決め手段の移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したため、曲線部のティーチングが容易となり、ティーチング工数が大幅に小さくなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用可能なレーザ溶接における照射位置決め装置の一例を示し、隙間矯正治具1と、隙間矯正治具1を固定保持しワークWにレーザを照射する加工ヘッド2と、加工ヘッド2をワークWに対し接近離脱方向に駆動可能なヘッド移動軸3を介して保持する支持手段としての第1基板4と、第1基板4を前記ヘッド移動軸3に直交する軸7回りに弾性的に保持し位置決め手段としてのロボットアーム6先端に結合された第2基板5とから構成されている。
【0022】
前記隙間矯正治具1は、その先端部1AがワークWのパネル接合部W1を外方から前記ヘッド移動軸3により所定の接触圧で押圧し、パネル接合部W1間に存在する隙間はパネルを撓ませて減少させる。
【0023】
前記隙間矯正治具1の先端部1Aの位置は、加工ヘッド2からのレーザビーム10の進行方向(図1中の矢印11方向)前方のパネル接合部W1に接触しており、パネル接合部W1の隙間が矯正された状態で後続するレーザビーム10によりパネル接合部W1が溶接される。
【0024】
前記加工ヘッド2は、前記隙間矯正治具1の基端部1Bを一体に固定して備え、光ファイバ12を介して図示しないレーザ発振器から発せられたレーザ光を導入し、図示しない集光レンズを介して点線図示のごとくワークWのパネル接合部W1を焦点としてレーザビーム10を照射してパネル接合部W1同士を融接させる。
【0025】
前記照射位置は、先行する隙間矯正治具1で隙間矯正されたパネル接合部W1を追いかけて照射するよう設定される。
【0026】
前記加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1は一体となって、ヘッド移動軸3によりワークWへの接近離脱方向に移動され、位置決めされる。
【0027】
前記ヘッド移動軸3に直交する軸7回りに弾性的に結合される支持手段としての第1、2基板4、5は、図2、3に示すごとく、スペーサ15を介して対向する面4A、5A同士が対面し、四隅には対向した位置において、第2基板5に丸穴5Bが、また、第1基板4には長穴4Bが夫々形成されている。
【0028】
前記丸穴5B、および、長穴4Bには、カラー16を嵌合したボルト17が挿入され、ボルト17先端にナット18を締結することで、カラー16は前記長穴4B内でボルト17の頭部17Aと第2基板5の対向する面5Aとの間で軸力をもって締結される。
【0029】
上記締結により、ボルト17の頭部17Aは夫々第2基板5に対して位置決めされ、長穴4Bの外側の縁に係合して第1基板4の第2基板5からの離反を阻止し、結果として第1基板4は第2基板5に対して、その対向面4A、5Aが互に傾斜しないように規制され、両者は平行に維持される。
【0030】
また、第1基板4の四隅の長穴4Bは、カラー16に対して左右方向に隙間を備えて係合しているため、第1基板4が第2基板5に対して面直角方向の軸7周りの回転が許容される。
【0031】
前記第1、2基板4、5間には、ブチルゴム等からなる弾性体19が配置され、弾性体19の第1、2基板4、5への接触面は、接着、若しくは、図示しないが、弾性体の両面に接着した端板がピン等の機械的手段により、夫々固定される。
【0032】
前記弾性体19は、前記第1、2基板4、5の面直角方向の軸7周りの回転移動に伴ない弾性変形量が増加することから、第1基板4の回転変位に対向して作用し、第1基板4を中立方向に引き戻すよう機能する。
【0033】
前記第1基板4の回転変位は、第1基板4上に搭載しているヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1を共に回転変位させる。
【0034】
従って、位置決め手段としてのロボットアーム6により加工ヘッド2をワークWのパネル接合部W1に位置決めし、その隙間矯正治具1をヘッド移動軸3によりパネル接合部W1に所定の押圧力で接触させる際には、各カラー16を長穴4B内で短径方向に移動させる荷重であるため、これらのヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1は傾斜することはない。
【0035】
しかし、隙間矯正治具1から回転方向の荷重を受ける際には、前記カラー16は長穴4B内で長径方向に移動させる荷重であるため、弾性体19を変形させ、これらのヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1はその荷重に応じた復元反力を生じつつ回転変位、即ち、傾斜する。
【0036】
なお、前記回転方向の荷重は、隙間矯正治具1の先端1A側面を固定してロボットアーム6により第2基板5を横方向に移動させる際にも、カラー16が長穴4Bの長径方向に荷重を受け、アーム6の移動量に応じて弾性体16を変形させ、これらのヘッド移動軸3、加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1をその変位に応じた復元反力を生じつつ回転変位、即ち、傾斜する。
【0037】
図4は、レーザ溶接されるパネル接合部W1を構成するパネル構成の一例を示すものであり、図示されたパネル構成はボデーサイドアセンブリBSとルーフパネルRPとの結合部位である。
【0038】
図4において、ボデーサイドアセンブリBSは、ルーフレールサイドインナパネルRIとレインフォースルーフレールサイドパネルRSとのフランジ結合によりルーフサイドの骨格を形成し、この骨格にボディサイドアウタパネルBOを結合することで構成されている。
【0039】
前記ボディサイドアウタパネルBOの図中上方には、水平部P1と水平部P1に連なる側壁部S1が形成され、水平部P1上に、端部が側壁部S2と水平部P2に形成されたルーフパネルRPの水平部P2が載置され、水平部P1、P2同士がパネル接合部としてレーザ溶接される部位となる。
【0040】
次に、上記構成のレーザ溶接における照射位置決め装置の位置決め作動について、図5に基づき説明する。
【0041】
図5はルーフパネルRP、および、ボディサイドアウタパネルBOの夫々の側壁部S1、S2、および夫々の水平部P1、P2で形成されたルーフ溝の断面図を示し、水平部P1、P2同士がパネル接合部W1を形成する。
【0042】
先ず、図5(A)に示すごとく、ロボット6により位置決めされヘッド移動軸3により矢印20方向に押出して隙間矯正治具1の先端1Aをルーフ溝内に挿入し、その先端1Aをルーフ溝の底部の水平部P1、P2同士のパネル接合部W1に図5(B)のごとく当接させる。
【0043】
この挿入作動における隙間矯正治具1の先端1Aの位置はルーフ溝内で溝の中央に挿入する必要はなく、挿入できれば横方向にずれていても差し支えない。
【0044】
次いで、図5(B)に示すごとく、矢印21方向に所定の押圧力を付与する。この押圧により、水平部P1、P2同士で形成するパネル接合部W1の隙間が矯正される。押圧力の大きさは、加工ヘッド2をワークWに向けて駆動するヘッド移動軸3の駆動モータの駆動電流値により検出することができる。
【0045】
次いで、ロボットハンド6により軸7をルーフ溝と交差する方向(矢印22参照)に移動させる。この移動中において、図5(C)のごとく、隙間矯正治具1の側面を一方の側壁部であるルーフパネルRPの側壁部S2に当接させる。この当接は、ロボットハンド6に設けた駆動モータの駆動抵抗により上昇する駆動電流の立ち上がりで検出することができる。
【0046】
続いて、図5(C)に示すように、さらに当接を増加させるよう矢印23方向に軸7を所定量Xだけ移動させ、図5(D)の状態となる。隙間矯正治具1の先端1AはルーフパネルRPの側壁部S2に当接していることから、前記移動は、第1基板4を第2基板5の面直角方向の軸7周りに回転させるよう作用し、両基板4、5間に配置された弾性体19を弾性変形させつつ回転する。
【0047】
この回転は、隙間調整治具1、および、加工ヘッド2を傾斜させ、図5(D)に示すようにルーフパネルRPの側壁部S2の上端縁S3を転がり部分としてパネル接合部W1に接触している先端部1Aは図中右側に移動し、第1、2基板4、5は加工ヘッド2を含めて図中左側に移動する。
【0048】
即ち、加工ヘッド2から照射されるレーザ光10も同様に傾斜するが、傾斜することによるレーザ光10の焦点のズレ量は、ルーフ溝の側壁部S2の上端縁S3の高さに対して側壁部S2の上端縁S3と第1基板4との間の距離が極めて大きい(例えば、50〜100倍)ため、無視できる程度に小さくできる。
【0049】
例えば、側壁部S2の上端縁S3の高さを7〜10mmとすれば、第1基板4とレーザ照射点との間隔を側壁部S2の高さの50〜100倍の長さに設定すれば、第1基板4を4mm〜10mm横方向に移動させた場合でも、レーザ照射点の移動距離は0.1mm未満〜0.2mm程度と極めて小さい値のズレとなる。
【0050】
この状態で、ロボット6により隙間矯正治具1、および、加工ヘッド2をルーフ溝に沿って移動させることで、ルーフ溝の底部の水平部P1、P2同士のレーザ溶接を行う。
【0051】
従って、ルーフ溝の形状にバラツキがあり、また、ロボット6の位置決め精度にバラツキがあったとしても、そのバラツキに追従して隙間矯正治具1、および、加工ヘッド2が微小に傾くが、ルーフ溝の底部の水平部P1、P2同士を位置ずれすることなくレーザ溶接することができる。
【0052】
しかも、隙間矯正治具1は、常時ルーフ溝の側壁部と2の上端縁と3に接触し、追従するものであるため、ルーフ溝の溝幅を隙間矯正治具1の微小な傾斜を許容する幅まで狭めることが可能である。
【0053】
また、ルーフ溝が水平方向から見てカーブを描いて配置されている場合には、図6に示すように、第1基板4の軸7がルーフ溝の一方の側壁部S2から、設定した距離(例えば、10mm)以上離れないように、ロボット6の教示点T1〜4を複数箇所設定し、教示点間は教示点を直線で結んだ移動軌跡となるよう実線のごとくティーチングすればよい。
【0054】
この場合、隙間矯正治具1は、各教示点ではルーフ溝の一方の側壁部S2にゼロタッチ(接触圧を生じることなく単に接触している状態)し、移動軌跡とルーフ溝の一方の側壁部S2とが乖離している点では乖離量に応じてルーフ溝の一方の側壁S2の上端縁S3に微小な傾きをもって接触する。
【0055】
なお、側壁部S2が上記のごとく凸なる曲線に対しては、曲線の接線に平行な線同士を接続してロボット6の移動軌跡を形成すればよいが、図示しないが、側壁部が凹なる曲線を持つ場合には、側壁部の凹なる曲線の接線同士を接続してロボットの移動軌跡を形成することとなる。
【0056】
図7は、支持手段としての第1、2基板4、5の締結構造の変形例を示したもので、図2、3の例では四隅に長穴4Bとカラー16を配してボルト17で締結する構造であったが、この変形例においては、3点の締結部位で締結したものである。
【0057】
即ち、前記3点の締結部位の上部の一点25は水平、垂直方向に移動しないタイトな構造であり、下部の二点26は前者の一点25を中心とした円周方向に配置した長穴27とカラー28とで締結するようにしたものである。
【0058】
なお、29は第1、2基板4、5間に配置したスペーサであり、30は第1、2基板4、5に両端が固定された弾性体である。
【0059】
この例においては、タイトな締結部位を中心に第1基板4が回転可能となっているため、回動範囲をより微小に設定することができる。
【0060】
なお、隙間矯正治具1、および、ヘッド移動軸3を含めて加工ヘッド2を回動可能とする構造は、上記した構造に限られず、図示しないが、ヘッド移動軸の基部をロボットハンド部に回動可能に軸支し、基部の両回動位置にストッパを配置し、ストッパと基部との間に基部の回動を制限する弾性材を配置したものであってもよい。
【0061】
以上説明した、本実施の態様においては、以下に説明する効果を奏しうる。
【0062】
即ち、隙間矯正治具1および加工ヘッド2を加工進行方向に平行な軸7回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段としての第1、2基板4、5を介して加工ヘッド2および隙間矯正治具1の位置を調整しつつ進行方向に移動させる位置決め手段としてのロボット6を備え、ロボット6、若しくは、ヘッド移動軸3により隙間矯正治具1の先端1Aをパネル接合部W1に押圧力をもって当接させ且つロボット6により隙間矯正治具1の側方を前記側壁部S2の上端縁S3に接触させ、前記第1、2基板4、5により加工ヘッド2および隙間矯正治具1を軸7回りに回動させた状態でロボット6により加工ヘッド2、および、隙間矯正治具1を加工進行方向に移動させるものであるため、隙間矯正治具1先端1Aおよびレーザ照射点は、側壁S2を基準として一定距離範囲内に位置するようにできる。
【0063】
このため、車体の形状精度やロボットの位置決め精度によって側壁S2の位置と隙間矯正治具1の位置とにズレが生じたとしても、それにより生ずる隙間矯正治具1先端1Aおよびレーザ照射点の移動は無視できる程度に小さいものとでき、パネル接合部W1が底部に配置される溝であっても幅を狭くした溝にも適用可能できる。
【0064】
また、加工ヘッド2と一体の隙間矯正治具1は、その先端1Aがパネル接合部W1に押圧力をもって当接され、次いで、側壁部S2がある横方向に移動され、先端1Aの側面が側壁部S2に当接され、次いで、更に所定距離移動されてその側面が側壁部S2の上端縁S3に接触されることで、加工ヘッド2および隙間矯正治具1は第1、2基板4、5の軸7回りに回動されるため、ワーク形状を基準に照射位置決めできる。
【0065】
しかも、位置決め手段の移動軌跡を側壁部S2が画く曲線に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したため、曲線部であってもティーチングが容易となり、ティーチング工数が大幅に小さくできる。
【0066】
なお、上記実施形態において、パネル接合部W1の両側に側壁S1、S2が形成された溝形状のワークWに対するレーザ溶接における照射位置決め方法および装置について説明したが、図示はしないが、片側のみに側壁が形成されたパネル接合部に対しても、同様に照射位置決めできるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すレーザ溶接における照射位置決め装置の概略側面図。
【図2】同じく第1、2基板の取付け構造を示す分解斜視図であり、(A)は第1基板側の斜視図、(B)は第2基板側の斜視図。
【図3】同じく第1、2基板の取付け状態を示す正面図(A)、および、側面図(B)。
【図4】レーザ溶接されるパネル接合部を構成するパネル構造の一例を示す断面図。
【図5】照射位置決め装置の位置決め作動を(A)〜(D)により順に示す作動図。
【図6】ロボットのティーチングの例を示す説明図。
【図7】第1、2基板の締結構造の変形例を示す正面図。
【図8】従来例を示す側面図。
【図9】従来技術における隙間矯正治具とワークとの関係を説明する説明図。
【符号の説明】
W ワーク
W1 パネル接合部
P1、P2 水平部
S1、S2 側壁部
S3 上端縁
1 隙間矯正治具
2 加工ヘッド
3 ヘッド移動軸
4 第1基板(支持手段)
4B、27 長穴
5 第2基板(支持手段)
6 ロボット(位置決め手段)
7 軸
10 レーザビーム
15 スペーサ
16、28 カラー
17 ボルト
18 ナット
19 弾性体
Claims (6)
- パネルの一部がパネル接合部として重ねられ、少なくとも一方のパネルは前記パネル接合部に連なる側壁部を介して前記パネル接合部から隆起されているパネル接合部へのレーザ溶接における照射位置決め方法であって、
パネル接合部にレーザ光を照射する加工ヘッドおよび加工ヘッドに設けられレーザ光に先行してパネル接合部に当接してその間の隙間を矯正する隙間矯正治具を、加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段を介して位置決め手段により位置調整および移動させるよう構成し、
前記位置決め手段によって、パネル接合部に押圧力をもって当接させた前記隙間矯正治具の先端側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させ、
上記回動状態で加工ヘッドからレーザ光を照射しつつ、加工ヘッドおよび隙間矯正治具を加工進行方向に移動させるようにしたことを特徴とするレーザ溶接における照射位置決め方法。 - 前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接した隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動させて、隙間矯正治具の先端側面を側壁部に当接させ、
次いで、隙間矯正治具を前記横方向と同一方向に更に所定距離移動させて隙間矯正治具の側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接における照射位置決め方法。 - 前記位置決め手段は、その移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザ溶接における照射位置決め方法。
- パネルの一部がパネル接合部として重ねられ、少なくとも一方のパネルは前記パネル接合部に連なる側壁部を介して前記パネル接合部から隆起されているパネル接合部へのレーザ溶接における照射位置決め装置であって、
パネル接合部にレーザ光を照射する加工ヘッドと、
前記加工ヘッド先端に固定され、加工ヘッドから照射されるレーザ光に先行してパネル接合部に押圧力をもって当接してパネル接合部の隙間を矯正しつつ加工ヘッドの照射位置を調整する隙間矯正治具と、
加工ヘッドを加工進行方向に平行な軸回りに回動可能であり且つ中立方向に復帰付勢して支持する支持手段と、
前記支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具の位置を調整しつつ進行方向に移動させる位置決め手段とから構成し、
前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって当接した隙間矯正治具の先端の側方を前記側壁部の上端縁に接触させ、前記支持手段により加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させた状態で加工進行方向に移動させるものであることを特徴とするレーザ溶接における照射位置決め装置。 - 前記位置決め手段は、パネル接合部に押圧力をもって先端が当接した隙間矯正治具を側壁部がある横方向に移動させて、隙間矯正治具の先端側面を側壁部に当接させ、
次いで、隙間矯正治具を前記横方向と同一方向に更に所定距離移動させて隙間矯正治具の側方を前記側壁部の上端縁に接触させることで、支持手段を介して加工ヘッドおよび隙間矯正治具を軸回りに回動させ、
上記回動状態で加工ヘッドからレーザ光を照射しつつ、加工ヘッドおよび隙間矯正治具を加工進行方向に移動させるよう教示されることを特徴とする請求項4に記載のレーザ溶接における照射位置決め装置。 - 前記位置決め手段は、その移動軌跡を側壁部に対する接線もしくは接線に平行な線を連結して構成したことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のレーザ溶接における照射位置決め装置。
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