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JP3569414B2 - アクチン結合蛋白質ニューラビン - Google Patents
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、動物の脳に特異的に存在し、神経シナプス結合の形成等に重要な役割を果たしている新規なアクチン結合蛋白に関するものであり、この蛋白質は、神経系の発生、分化の分子機構の解明、あるいは、神経疾患等の診断または予防、治療薬の開発などに有用である。
【0002】
【従来の技術】
脳における信号伝達では、神経細胞同士のシナプス結合が極めて重要な役割を果たしている。この神経シナプス結合が形成される過程では、神経細胞は軸索突起の伸張を行い、その先端に成長円錐が形成されるが、この成長円錐には豊富なアクチン線維が存在しており、外界からの刺激に応じてアクチンの重合、脱重合を反復することによって成長円錐が活発な運動を行い、これによって軸索突起の伸張が促されることが知られている。最近、RhoファミリーのG蛋白質である
Cdc42、Rac、Rhoがそれぞれアクチン系細胞骨格を介してfilopodia の形成、lamellipodiaの形成・接着とストレス線維の形成を制御することが報告されている(Cell vol.81, p53−62, 1995) 。これらの個々の細胞機能が時間的秩序を保って発現されることによって、成長円錐の運動が効率的に引き起こされる。しかしながら、個々のG蛋白質が制御するアクチン系細胞骨格蛋白質(アクチン結合蛋白質)は未だ同定されておらず、この成長円錐の運動を制御する分子機構の解明、すなわち神経シナプス結合の形成過程を制御する機構を解明するためには、個々の細胞機能に関与するアクチン結合蛋白質を同定することが重要であると考えられる。
【0003】
またアクチン結合蛋白質の同定は、神経シナプス結合部の分子構造を理解するためにも重要である。すなわち、伸張した軸索突起は、最終的に他の細胞と結合して神経シナプス結合を形成させるが、シナプス結合前部と後部は20−30nm の間隔を保って相接し、前部から後部へ情報伝達を行っている。このシナプス結合間の情報伝達において最も特徴的なことは、一般の分泌細胞における分泌の時間的経過が分オーダーであるのに対し、シナプス結合前部からの情報伝達物質の放出がミリ秒オーダーときわめて早いことである。これは一つには、シナプス前部の細胞膜近傍における特徴的なシナプス小胞の貯留形式によると考えられている( Cell vol.83, p187−194, 1995)。シナプス小胞はシナプス前部の細胞質に均一に存在するのではなく、大部分のシナプス小胞はシナプス前部の細胞膜より0.5 μm 以下の部位にクラスターしている。このクラスター中の大部分のシナプス小胞はシナプス前部の細胞骨格系と連結しており、アクチン結合蛋白質であるsynap−sin がこの連結に重要な役割を果たしていると推測されている。また、クラスター中の一群のシナプス小胞はシナプス前部の細胞膜にdocking しており、シナプス小胞とシナプス小胞と細胞膜は融合した状態になっている。このdocking したシナプス小胞電子顕微鏡上アクティブゾーンとして観察される密度の高い構造物に並列しており、このアクティブゾーンには、Ca2+ の流入をつかさどるチャネルと、Ca2+ の濃度変化に応じて神経伝達物質の放出をトリガーする機構が濃縮されていると考えられている。しかしながら、アクティブゾーンを含めて神経シナプス前部の細胞膜周辺の基本的な構造蛋白質は全く不明である。
【0004】
これまでに、神経シナプス前部細胞膜にアクチン結合蛋白質であるfodrinが存在し、クラスターしたシナプス小胞間にアクチンが存在するという報告があり、またアクチンとそのモーター蛋白質であるmyosinがシナプス小胞の細胞膜への融合化に影響を及ぼすとの報告もなされている。従って、アクチン結合蛋白質がアクティブゾーンを含めた神経シナプス前部の細胞膜周辺の構造形式に重要であることは十分に推測されている。
【0005】
以上のとおり、神経軸索突起の伸張とそれに続く神経シナプス前部の特徴的な構造形成を理解する上で、アクチン結合蛋白質のさらなる同定は必須である。また、このような蛋白質は、例えば脳内情報伝達の機能的、構造的障害に起因する神経疾患等の診断または予防もしくは治療のための新しい方法や材料を提供するものと期待される。
【0006】
この発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、脳内に特異的に存在する新規なアクチン結合蛋白質を、その構造(アミノ酸配列)および性状を明らかにして提供することを目的としている。
また、この発明は、このアクチン結合蛋白質の遺伝子工学的操作のための材料を提供することを目的としもている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、配列番号1のアミノ酸配列を有し、脳に特異的に存在するアクチン結合蛋白質を提供する。
またこの発明は、配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配列を有する動物性蛋白質を提供する。
【0008】
さらにこの発明は、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配列をコードするcDNA配列と、このcDNA配列またはその一部配列がハイブリダイズするゲノムDNA配列をも提供する。
すなわち、この発明の蛋白質は、成長ラット脳シナプトゾーム画分より分離精製した分子量180KDaの蛋白質であり、アクチン線維(F−アクチン)との結合性によってアクチン結合蛋白質であることが確認された蛋白質である。そして、この精製蛋白質の一部アミノ酸配列をプローブとしてラットcDNAライブラリーよりcDNAクローンを取得し、このcDNAから推定されるアミノ酸配列の解析の結果、この蛋白質は配列番号1のアミノ酸配列を有する新規なアクチン蛋白質であることも確認されている。
【0009】
この発明のアクチン結合蛋白質は、従って、上記のcDNAを適当な発現ベクターに挿入し、大腸菌等で発現させて取得することができる。また、上記の
cDNAまたはその一部をプローブとして用いることにより、ラット以外の動物のcDNAライブラリーから該当するcDNAを単離し、これを適当な宿主−ベクター系で発現させることにより、動物種に固有の蛋白質として取得することもできる。このようなラット以外の動物由来の蛋白質も配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質である。
【0010】
この発明のcDNA配列は、上記のとおりのラットcDNAおよびその他の動物由来のcDNAを含むものである。また、この発明のゲノムDNA配列は、全ての動物種のDNA配列を含むものである。
以下、実施例を示して、この発明のアクチン結合蛋白質の取得並びにその性状等についてさらに詳しく説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【0011】
【実施例】
実施例1:アクチン結合蛋白質の同定と精製
ラットの様々な臓器(脳、肺、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、骨格筋、精巣)のホモジュネートをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にかけ、ニトロセルロース膜に転写した後、 125Iで標識したF−アクチンとの結合性を指標としてアクチン結合蛋白質を同定した(図1参照)。その結果、脳に特異的な分子量180KDaおよび140KDaのバンドが得られた。これらの蛋白質の 125I標識F−アクチンとの結合性は標識しているF−アクチンによって競合阻害された。従って、180KDaおよび140KDaの蛋白質は共に、実際にF−アクチンに結合すると示唆される。また、これらの蛋白質は 125Iで標識したG−アクチンには結合しないことから、脳特異的なF−アクチン結合蛋白質であることが確認された。
【0012】
次に、これらの蛋白質の脳での分布を調べたところ、シナプトゾーム可溶画分に濃縮されていることが判明した。そこで、シナプトゾーム可溶画分より各種のカラムクロマトグラフィーを用いて、180KDa蛋白質を高度に精製した。この精製蛋白質をポリアクリルアミドゲルから切り出し、分解酵素 (lysil endo− peptidase)によって限定分解した後、ペプチドマッピングを行い、9つのペプチドを単離し、それらの部分アミノ酸配列を決定した。そして、配列データベースによる相同性検索の結果、180KDa蛋白質は新規な蛋白質であることが確認された。一方、140KDa蛋白質は、フェニルセファロースカラムクロマトグラフィーによって3つのピークとして溶出された。最初に溶出されたピークをさらに精製した結果、この140KDa蛋白質は神経細胞特異的な既知のアクチン結合蛋白であるDrebrinであることが判明した。
実施例2:アクチン結合蛋白質の性状解析
実施例1で得た180KDa蛋白質のアクチン結合様式をblot overlay法を用いて検討した結果、180KDa蛋白質とアクチンとの結合はmyosin subfrag− ment 1によって特異的に阻害されたが、gelsolinでは阻害されなかった。これらのことにより、180KDa蛋白質はアクチン線維の側面に結合することが示唆された。
【0013】
次に、この180KDa蛋白質が重合、脱重合などのアクチンのダイナミックな動態に関与しているかを検討した。pyrene−アクチンを用いた実験の結果、180KDa蛋白質はアクチンの重合、脱重合に作用しなかった。また、falling ball法を用いて180KDa蛋白質アクチン線維の架橋作用を検討した実験では、この蛋白質はアクチン線維の粘度を増強した(図2)。
【0014】
以上の結果から、180KDa蛋白質はアクチン線維の側面に結合し、アクチン線維を架橋させることが確認された。
実施例3:アクチン結合蛋白質の遺伝子クローニング
実施例1で得た180KDa蛋白質の部分アミノ酸配列に基づいて6種類のオリゴヌクレオチドプローブを作成し、ラットの脳cDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果、約3.7kbpの遺伝子を有するクローンが得られた。配列を決定したところ、このクローンは配列番号1に示したアミノ酸配列を有する蛋白質をコードしており、実施例1で単離した180KDa蛋白質の9個のペプチドを全て含んでいた。
【0015】
次に、このクローン遺伝子を発現ベクターに組み込み、このベクターをCOS7細胞に導入して、細胞の発現産物について 125I標識F−アクチンを用いたblot overlay法を行ったところ、確かに180KDaの分子量の位置にバンドが認められたことから、このクローンはラット脳より精製した180KDa蛋白質の遺伝子全長をコードしていることが確認された。
実施例4:アクチン結合蛋白質の構造解析
実施例1で得た180KDa蛋白質のアミノ酸1次構造を解析したところ、中央部にPDZドメインが、そのC末端側にコイルド・コイル構造と予想させる部位が認められた。また、ノーザンブロット分析の結果からは、図3に示したように脳での特異的発現が認められ、上記blot overlay法の結果とよく一致した。
【0016】
さらに、180KDa蛋白質のアクチン結合ドメインを決定するために、この蛋白質を4分割し、各断片をglutathione S−transferase(GST) と融合させ、 125I標識F−アクチンを用いたblotoverlay 法を行った。その結果、180
KDa蛋白質のN末端から144 番目のアミノ酸部位にアクチン結合ドメインが存在することが確認された。
【0017】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、脳で特異的に発現する新規なアクチン結合蛋白質と、この蛋白質を産業上利用するための遺伝子材料が提供される。これらの蛋白質および遺伝子材料は、脳内情報伝達に重要な役割を果たしている神経シナプス結合の発生や形成過程を解明するために有用であるばかりか、脳内情報伝達系の機能的および/または構造的障害等を原因とする各種神経疾患の診断または予防もしくは治療法の開発にも大きく貢献する。
【0018】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】アクチン結合蛋白質の同定のために行った 125I標識F−アクチンによるoverlay 法の原理を示した模式図である。
【図2】この発明のアクチン結合蛋白質のアクチンの重合への影響を調べるために行ったFalling Ball法の結果である。
【図3】この発明のアクチン結合蛋白質の発現分布をしら調べるために行ったノーザンブロットの結果である。

Claims (2)

  1. 配列番号1のアミノ酸配列を有し、脳に特異的に存在するアクチン結合蛋白質。
  2. 配列番号1のアミノ酸配列をコードするcDNA。
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