JP3578417B2 - 有機elデバイス - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、有機EL素子を発光源として備えた有機ELデバイスおよび有機EL素子の封止方法に係り、特に、密着タイプの封止方法で封止された有機ELを発光源として備えた有機ELデバイスおよび有機EL素子を封止するための密着タイプの封止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
EL素子には無機EL素子と有機EL素子とがあり、いずれのEL素子も自己発光性であるために視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れるとともに取扱が容易である。このため、グラフィックディスプレイの画素やテレビ画像表示装置の画素、あるいは面光源等としての研究開発および実用化が進められている。
有機EL素子は、陽極と陰極とをこれらの間に有機発光材料を含有する発光層を少なくとも介在させて積層したものであり、現在までに種々の層構成のものが開発されている。層構成の具体例としては、陽極/発光層/陰極、陽極/発光層/電子注入層/陰極、陽極/正孔注入層/発光層/陰極、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極、等が挙げられる。発光層は通常1種または複数種の有機発光材料により形成されるが、有機発光材料と正孔注入材料および/または電子注入材料との混合物により形成される場合もある。
【0003】
このような層構成を有する有機EL素子は、多くの場合、基板上に形成される。そして、発光層からのEL光を前記の基板側から取り出す場合には基板の直上に陽極が形成され、発光層からのEL光を有機EL素子を設けた側から取り出す場合には基板の直上に陰極が形成される。陽極は、Au,Ni,ITO(インジウム錫酸化物)等の仕事関数の大きな物質からなる透明ないし半透明の薄膜により形成される。一方陰極は、Yb,Mg,Al,In等の仕事関数の小さな物質からなる薄膜により形成される。
【0004】
有機EL素子は電流駆動型の発光素子であり、発光層(有機発光材料)に注入された電子と正孔とが再結合するときに生じる発光を利用するものである。このため、有機EL素子は発光層の厚さを薄くすることにより例えば4.5Vという低電圧での駆動が可能で応答も速いといった利点や、輝度が注入電流に比例するために高輝度の発光が可能といった利点を有している。また、発光材料を変えることによってり青,緑,黄,赤等、いろいろな色の発光が得られている。これらの利点により、現在、実用化のための研究が続けられている。
【0005】
ところで、有機EL素子に用いられる有機発光材料等の有機物は水分や酸素等に弱い。また電極も、酸化により大気中では特性が急激に劣化する。したがって、実用的な有機EL素子や有機ELデバイスを得るためには、封止を施す必要がある。
有機EL素子の封止方法としては、封止対象の素子表面に封止層としてのポリパラキシレン膜を気相重合法により形成する方法(特開平4−137483号公報参照)や、封止対象の素子表面にSiO2 の保護膜を形成する方法(特開平4−73886号公報参照)もあるが、より封止効果の高い方法が既に開発されている。その方法は次の2つの形態に大別される。
【0006】
一つはケーシングタイプの封止方法で、有機EL素子をケース内に入れて外界と遮断し、前記のケース内に有機EL素子と共に所定の封止用流体を充填しておくことにより封止する方法である。もう一つは密着タイプの封止方法で、基板上に形成されている有機EL素子の背面(基板側からみて素子の後ろ)にガラス板等の封止材を接着剤で面接着することにより封止する方法である。
【0007】
ケーシングタイプの封止方法によれば、ケース内に入れる封止用流体として適当なものを選ぶことにより有機EL素子を破壊することなくその劣化を防止することができるが、その一方で下記(1)〜(3)のような難点を生じる。
(1)有機EL素子をケースに入れることを必須とするので、有機EL素子の利点の1つである薄型という特徴が損なわれる。
(2)ケースを工作する工程およびケース内に封止用流体を注入する工程等が必要であるため、大量生産には不向きである。
(3)基板上に形成されている多数の有機EL素子を1つのケースを用いて封止しようとする場合等のように、大きなケースに大量の封止用液体を入れた場合には、外界の温度上昇に伴う熱膨張によってケース内の封止用流体の体積が増したときにケースを破壊してしまうおそれがある。
【0008】
一方、密着タイプの封止方法によれば、封止後においてもその厚さが薄く、かつ大量生産が比較的容易な有機ELデバイス(封止された有機EL素子を発光源として備えているもの)を容易に得ることができ、また、高い封止効果を容易に得ることができる。密着タイプの封止方法としては、GeO等の無機化合物からなる保護膜を封止対象の有機EL素子の外周に設けた後にこの上にガラス基板を固着する方法(特開平4−212284号公報参照)や、封止対象の有機EL素子の外周に直接またはSiO2 膜を介して光硬化性樹脂層を設け、この光硬化性樹脂層を介してガラス基板を固着する方法(特開平5−182759号公報参照)が知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の密着タイプの封止方法によって有機EL素子を封止して得た有機ELデバイスには、1000時間程度連続駆動させると有機EL素子の発光機能が失われるという難点があった。
【0010】
本発明の第1の目的は、密着タイプの封止法により封止された有機EL素子を発光源として備えた有機ELデバイスであって、有機EL素子の発光機能が喪失しにくい有機ELデバイスを提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、封止後に有機EL素子の発光機能が喪失しにくい有機EL素子の封止方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述した発光機能の喪失の原因について鋭意検討を加えた結果、この発光機能の喪失は封止効果の低減に起因するものではなく、有機EL素子の接着剤層側の電極端部においてショートが発生することに起因していることを見いだした。この点をさらに詳しく説明する。
【0013】
接着剤や光硬化性樹脂では硬化時に体積が収縮することから残留応力が発生し、この残留応力は、封止対象の有機EL素子と前記の接着剤や光硬化性樹脂との間にGeOやSiO2 等の膜があったとしてもその膜厚がμmオーダーと薄いと有機ELに伝わってしまう。そして、残留応力は曲率半径の小さな部分で特に強くなるので、有機EL素子に伝播した残留応力は当該素子の端部等に集中する。この結果、素子の電極端部等が押潰され、陽極と陰極とが接触してショートが発生する。
本発明者らは上記の知見に基づきさらに検討を加えた結果、本発明に到達した。
【0014】
上記第1の目的を達成する本発明の有機ELデバイスは、基板上に設けられた有機EL素子と、この有機EL素子を覆うようにして前記基板上に形成された接着剤層と、この接着剤層によって前記基板上に固着された封止材とを備えた有機ELデバイスであって、 前記有機EL素子と前記接着剤層との間に前記有機EL素子を覆う応力緩和層を有し、該応力緩和層がずれ応力の発生が小さい物質であるフッ素系、シリコーン系または炭化水素系の液体、グリースまたはゲルからなる層を含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、上記第2の目的を達成する本発明の有機EL素子の封止方法は、基板上に設けられた有機EL素子の背面にこの有機EL素子を覆うようにして接着剤層を設け、この接着剤層によって前記基板上に封止材を固着することにより前記有機EL素子を封止するにあたり、前記有機EL素子と前記接着剤層との間に前記有機EL素子を覆う応力緩和層を設けることを特徴とするものである。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
先ず本発明の有機ELデバイスについて説明すると、この有機ELデバイスは上述したように特定の箇所に応力緩和層を有することを特徴とするものである。そこで、この応力緩和層について先ず説明する。
【0017】
上記の応力緩和層は、接着剤層の残留応力が有機EL素子に伝播するのを抑制するためのものである。したがって、この応力緩和層は水分や酸素が外部から有機EL素子に侵入するのを防止する効果(以下、封止効果という)を有していてもよいし有していなくてもよいが、封止効果を有して方がより好ましい。また、応力緩和層はずれ応力の発生が小さい物質からなる層のみからなる単層構造の層、またはずれ応力の発生が小さい物質からなる層を含む複数層構造の層であることが好ましい。応力緩和層を複数層構造とする場合には、ずれ応力の発生が小さい物質からなる層を有機EL素子を覆って形成する。
【0018】
ここで、上記の「ずれ応力の発生が小さい物質」とは、接着剤層が硬化等の要因により有機EL素子の電極と平行な方向にずれたときに、そのずれを実質的に伝えない性質を有する流体(気体,液体)、グリース、ゲル等を意味する。
【0019】
上記のずれ応力の発生が小さい物質のうち、流体としてはヘリウムガス,窒素ガス,アルゴンガス等の気体や、クロロフルオロカーボン,パーフルオロポリエーテル,パーフルオロアミン,パーフルオロアルカン等のフッ素系液体、メチルハイドロジエンシリコーン,メチルクロロフェニルシリコーン,トリフルオロプロピルメチルシリコーン等のシリコーン系液体、α−オレフィン(C5 〜C17のポリα−オレフィン),ポリブテン,アルキルベンゼン,ポリアルキレングリコール等の炭化水素系液体等を挙げることができる。しかしながら、これらの流体からなる応力緩和層を接着剤層形成用の接着剤が当該応力緩和層内あるいは当該応力緩和層と基板(有機EL素子を設けるための基板)との界面に進入するのを防止しながら形成するには煩雑な工程を必要とする。したがって、上記の「ずれ応力の発生が小さい物質」として流体を使用する場合、この流体としては溶剤に樹脂やゴム等を溶解させてなり、大気中10〜30℃程度の温度条件下で溶剤の蒸発により造膜するコーティング液を用いることが好ましい。
【0020】
上記のコーティング液を用いた場合には、当該コーティング液からなる層中の溶剤を若干蒸発させることにより層表面に固体層(被膜)を形成させることができ、かつ、前記の固体層よりも内側の部分については液体状態を維持させることが可能である。したがって、例えば液体状態が維持される範囲内に有機EL素子が位置するようにして上記のコーティング液からなる層を形成した後、固体層の形成および接着剤層の形成を順次行うことにより、目的とする応力緩和層を容易に形成することができる。
【0021】
なお、コーティング液は前記ずれ応力の発生が小さい液体のなかでも室温下で容易に蒸発するものを溶剤としていることが好ましい。また、前記の固体層は特に硬くなる必要は無いが、接着剤が浸透してしまうものは用をなさないので、コーティング液に溶けている固体成分は固体層となったときに接着剤を実質的に通さないものであることが好ましい。
【0022】
上述したコーティング液の具体例としては下記(1)〜(3)のものが挙げられる。
(1)サイトップCTX−105A(商品名;旭硝子(株)製)、フロロバリヤー(商品名;(株)泰成商会製)、フロリナートFC72(商品名;住友3M(株)製)にテフロンAF(商品名;デュポン社製)を溶かしたもの、前記のフッ素系液体を溶剤としこの液体のより重合度が進んだものを溶質とするもの等のフッ素系コーティング液。
(2)前記のシリコーン系液体を溶剤としこの液体のより重合度が進んだものを溶質とするもの等のシリコーン系コーティング液。
(3)前記の炭化水素系液体を溶剤としこの液体のより重合度が進んだものを溶質とするもの等の炭化水素系コーティング液。
【0023】
また、前述した「ずれ応力の発生が小さい物質」としてはグリースやゲルも好適である。グリースは基油、増ちょう剤、添加剤からなるが、基油に前記ずれ応力の発生が小さい液体を用いているものが特に好ましい。増ちょう剤、添加剤としては、それが固体粒子である場合はその粒径が小さい方が好ましい。前記の粒径が大きすぎると有機EL素子を傷つけ、そこがショートの原因になる。また、前記の粒径は少なくとも応力緩和層の目的とする厚さよりも小さい必要がある。しかし、前記の粒径があまりに小さいとちょう度がなくなり、グリースを用いる利点がなくなる。前記の粒径は100オングストローム〜10μmが好ましい。増ちょう剤、添加剤として固体粒子でないものを用いたグリースは、当該グリースにより有機EL素子を傷つける心配がないので、一層好ましい。
【0024】
上記のグリースの具体例としては、下記(1)〜(3)のものが挙げられる。
(1)PTFEグリース(商品名;ニチアス(株)製)等のフッ素系グリース。
(2)FS高真空用グリース(商品名;ダウコーニング社製)等のシリコーン系グリース。
(3)アピエゾングリースN(商品名;アピエゾン社製)等の炭化水素系グリース。
【0025】
そして、前記のゲルの具体例としてはグリセリン、ゼラチン、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル、メチルセルロースゲル等が挙げられる。本発明で使用するゲルは流動性を有している必要がある。
【0026】
応力緩和層を形成するにあたって前述したコーティング液を使用する場合、応力緩和層の形成は前述した方法により行ってもよいが、補助板を用いて次のように行ってもよい。
まず、有機EL素子上にこの有機EL素子を覆うに十分な量のコーティング液を滴下ないし塗布してコーティング液の層を一旦形成する。次に、前記の層の上に補助板を配置し、この補助板の重みにより、またはこの補助板に荷重をかけることにより前記の層を一様に拡がらせる。前記の補助板としては平面視したときに有機EL素子を覆うに十分な大きさを有するものを使用し、この補助板は有機EL素子が形成されている基板と実質的に対向する向きに設ける。また、コーティング液の量と補助板の重量ないし補助板に加える荷重とは、有機EL素子と補助板との間にコーティング液の層が形成されるように適宜調節する。次いで、適当時間放置することによりコーティング液の層の外表面(外気と接している面)、すなわち前記の層において基板表面と平行な方向の表面に固体層(被膜)を形成させる。このとき、有機EL素子に接する部分についてはコーティング液が固化しないよう、放置時間を適宜調節する。これにより応力緩和層が一応得られるが、このままでは有機EL素子に接する部分のコーティング液が短時間の内に固化してしまうので、前記の補助板を覆うようにして接着剤層を形成する。接着剤層を形成した後にはコーティング液中の溶剤の揮散が抑止されるのでコーティング液の固化が抑止され、その結果として有機EL素子に接して存在するコーティング液は液体状態を維持し続ける。これにより目的とする応力緩和層が得られる。
【0027】
また、前述したグリースを使用しての応力緩和層の形成は、有機EL素子を覆うに十分な量のグリースを有機EL素子上に滴下ないし塗布してグリース層を形成することにより行うことができる。あるいは、前述のようにしてグリース層を形成した後、このグリース層の上に補助板を配置し、この補助板の重みにより、またはこの補助板に荷重をかけることにより前記のグリース層を一様に拡がらせることにより行うことができる。また、補助板を用いずに、グリースをμmオーダーで塗り付けることにより応力緩和層を形成することも可能であるが、μmオーダーで薄く塗り付けることは、有機EL素子を傷つける可能性もあり、難しいといえる。
そして、前述したゲルを使用しての応力緩和層の形成は、グリースを用いて応力緩和層を形成する場合と同様にして行うことができる。
【0028】
上述のようにして形成することができる応力緩和層の厚さ(有機EL素子上での厚さ)は、概ね0.1μm〜1cmの範囲内で適宜選択可能である。厚さが0.1μm未満では所望の効果を得ることが困難である。一方、厚さが1cmを超えると、薄型という有機ELデバイスの利点が損なわれるばかりでなく、応力緩和層の体積の増大によって熱膨張による体積増も大きくなるので、使用時の温度変化等により破壊するおそれが強くなる。応力緩和層の好ましい厚さは、0.01〜1mmである。なお、ここでいう厚さは、応力緩和層が前述したコーティング液を使用して形成したものである場合には有機EL素子を覆って液体状態を維持したまま存在しているコーティング液の層の厚さを意味する。
【0029】
また、応力緩和層を形成するにあたって補助板を用いる場合、この補助板は封止効果を有していてもよいし有していなくてもよいが、封止効果を有している方がより好ましい。補助板としてはガラス,セラミックス,金属等の無機物や、フッ素系樹脂,アクリル系樹脂,ポリカーボネート,ポリエステル,ポリアミド,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリオレフィン系樹脂等の樹脂等でできた板状のものを用いることが好ましい。補助板の大きさは、前述したように平面視したときに有機EL素子を覆うに十分な大きさであることが好ましい。また、補助板の厚さは概ね0.1μm〜3mmとすることが好ましい。厚さが0.1μm未満のものはその生産コストが高く、また取り扱いにくいことから、望ましくない。一方、厚さが3mmを超えると薄型という有機ELデバイスの利点が損なわれる。補助板の好ましい厚さは0.01〜1mmである。
【0030】
本発明の有機ELデバイスでは、基板上に設けられた有機EL素子を覆うようにして上述した応力緩和層が設けられており、この応力緩和層によって覆われた有機EL素子を覆うようにして前記の基板上に接着剤層が形成されている。この接着剤層は後述する封止材を固着させるためのものであると同時に、前述した応力緩和層が外気と触れるのを防止するためのものであり、その側面は特別の部材を設けるか後述する封止材の形状を特別なものとしない限りは外気と接する。したがって、接着剤層は封止効果を有しているもの、すなわち透水性や酸素透過性が低いものであることが特に好ましい。このような接着剤層としては光硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、嫌気性接着剤等からなるものが好ましく、具体例としてはベネフィックスVL((株)アーデル製の光硬化性接着剤の商品名)、アクリルワン#4111((株)マルトー製の光硬化性接着剤の商品名)、アロンタイトUL(東亜合成化学工業(株)製の嫌気性接着剤の商品名)、アレムコボンド570((株)オーデック製の熱硬化性接着剤の商品名)等が挙げられる。
【0031】
接着剤層は、前述した応力緩和層の上(応力緩和層を形成するにあたって補助板を用いた場合にはこの補助板の上)およびこの応力緩和層を設けた側の基板表面において前記の応力緩和層が設けられていない部分の所望箇所に接着剤を滴下し、この上に後述する封止材を配置し、封止材の重みにより、または封止材に荷重をかけることにより前記の接着剤を一様に拡がらせた後に当該接着剤を硬化させることにより形成することができる。また、塗布法、スピンコート法、ディップ法等の方法により未硬化の接着剤層を形成した後、この接着剤層の上に後述する封止材を配置してから当該接着剤を硬化させることによっても形成することができる。
【0032】
接着剤層の最終的な厚さ(応力緩和層上での厚さ。応力緩和層を形成するにあたって補助板を用いた場合にはこの補助板上での厚さ)は概ね0.1μm〜1cmとすることが好ましい。厚さが0.1μm未満では、封止材を載せたときに当該封止材が未硬化状態の接着剤の表面張力により浮き上がろうとする結果、未硬化状態の接着剤の中やこの接着剤と封止材との界面に気泡が入り易い。一方、厚さが1cmを超えると、薄型という有機ELデバイスの利点が損なわれる。接着剤層の好ましい厚さは0.001〜1mmである。接着剤層の形成時においては、有機EL素子が応力緩和層によって被覆されていることから、接着剤の硬化時の硬度や収縮率に注意を払う必要が実質的にない。その結果として、応力緩和層が無い場合よりも接着剤の選択の幅が広がる。
【0033】
上述した接着剤層によって基板(有機EL素子が設けられているもの)上に固着される封止材は、外部から有機EL素子に水分や酸素が侵入を防止するためのものであるので、封止効果の高いもの、すなわち透水性や酸素透過性の小さいものを用いることが好ましい。封止材として用いることができる物質の具体例としてはガラス,セラミックス,金属等の無機物や、フッ素系樹脂,アクリル系樹脂,ポリカーボネート,ポリエステル,ポリアミド,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0034】
封止材の形状は、加工の手間が少なく経済的であることから、板状であることが好ましい。また、封止材の厚さは薄型の有機ELデバイスを得るうえからは薄い方が望ましいが、あまりに薄いと外力等の衝撃に対して弱くなるので、封止材の材質に応じて概ね0.1μm〜1cmの範囲内で適宜選択することが好ましい。厚さが0.1μm未満では外力等の衝撃に対して実用上十分な耐性を有するものを得ることが困難である。一方、厚さが1cmを超えると薄型の有機ELデバイスを得ることが困難になる。封止材のより好ましい厚さは0.01〜1mmである。
【0035】
本発明の有機ELデバイスは、上述した応力緩和層、接着剤層および封止材の他に、前記の応力緩和層によって覆われた有機EL素子を必須構成要件とするものである。有機EL素子は基板上に設けられたものであればよく、その層構成は有機EL素子として機能するものであれば特に限定されるものではない。
【0036】
基板側を光の取り出し面とするタイプの有機EL素子の層構成の具体例としては、基板表面上の積層順が下記(1)〜(4)のものが挙げられる。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(3)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
【0037】
ここで、発光層は通常1種または複数種の有機発光材料により形成されるが、有機発光材料と正孔注入材料および/または電子注入材料との混合物により形成される場合もある。また、前述した層構成の素子の外周に当該素子を覆うようにして素子への水分の侵入を防止するための保護層が設けられる場合もある。
【0038】
基板側を光の取り出し面とする場合、前記の基板は少なくとも有機EL素子からの発光(EL光)に対して高い透過性(概ね80%以上)を与える物質からなり、具体的には透明ガラス、透明プラスチック、石英等からなる板状物やシート状物、あるいはフィルム状物が利用される。なお、本発明の有機ELデバイスでは前述した封止材側を光の取り出し面とすることも可能である。この場合には基板上の積層順を上述の順番と逆にして有機EL素子を形成し、基板材料については有機EL素子からの発光(EL光)の透過性を考慮する必要はない。代わりに、応力緩和層の材料、接着剤層の材料および封止材の材料について有機EL素子からの発光(EL光)に対して高い透過性(概ね80%以上)を与える物質を使用する。
【0039】
陽極、陰極、発光層、正孔注入層、電子注入層、保護層の材料としては、それぞれ従来公知の材料を用いることができる。例えば、陽極材料としては仕事関数が大きい(例えば4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物が好ましく用いられる。具体例としては金,ニッケル等の金属や、CuI,ITO,SnO2 ,ZnO等の誘電性透明材料等が挙げられる。特に、生産性や制御性の点からITOが好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μmの範囲内で適宜選択可能である。
【0040】
また、陰極材料としては仕事関数の小さい(例えば4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物等が好ましく用いられる。具体例としてはナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウムと銀との合金または混合金属、アルミニウム、Al/AlO2 、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属等が挙げられる。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μmの範囲内で適宜選択可能である。
陽極および陰極のいずれにおいても、そのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。なお、陽極材料および陰極材料を選択する際に基準とする仕事関数の大きさは4eVに限定されるものではない。
【0041】
発光層の材料(有機発光材料)は、有機EL素子用の発光層、すなわち電界印加時に陽極または正孔注入層から正孔を注入することができると共に陰極または電子注入層から電子を注入することができる注入機能や、注入された電荷(電子と正孔の少なくとも一方)を電界の力で移動させる輸送機能、電子と正孔の再結合の場を提供してこれを発光につなげる発光機能等を有する層を形成することができるものであればよい。その具体例としては、ベンゾチアゾール系,ベンゾイミダゾール系,ベンゾオキサゾール系等の系の蛍光増白剤や、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、ポリフェニル系化合物、12−フタロペリノン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、ナフタルイミド誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系化合物、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体等が挙げられる。発光層の厚さは特に限定されるものではないが、通常は5nm〜5μmの範囲内で適宜選択される。
【0042】
正孔注入層の材料(正孔注入材料)は正孔の注入性と電子の障壁性のいづれかを有しているものであればよい。その具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系化合物、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマー、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物等が挙げられる。正孔注入層の厚さも特に限定されるものではないが、通常は5nm〜5μmの範囲内で適宜選択される。正孔注入層は上述した材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる複数層構造であってもよい。
【0043】
電子注入層は陰極から注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料(電子注入材料)の具体例としては、ニトロ置換フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフリーフタロシアニンやメタルフタロシアニンあるいはこれらの末端がアルキル基やスルホン基等で置換されているもの、ジスチリルピラジン誘導体等が挙げられる。電子注入層の厚さも特に限定されるものではないが、通常は5nm〜5μmの範囲内で適宜選択される。電子注入層は上述した材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる複数層構造であってもよい。
【0044】
そして、保護層の材料の具体例としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質および吸水率0.1%以下の防湿性物質、In,Sn,Pb,Au,Cu,Ag,Al,Ti,Ni等の金属、MgO,SiO,SiO2 ,Al2 O3 ,GeO,NiO,CaO,BaO,Fe2 O3 ,Y2 O3 ,TiO2 等の金属酸化物、MgF2 ,LiF,AlF3 ,CaF2 等の金属フッ化物等が挙げられる。
【0045】
また、有機EL素子を構成する各層(陽極および陰極を含む)の形成方法についても特に限定されるものではない。陽極、陰極、発光層、正孔注入層、電子注入層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、スパッタリング法、LB法等を適用することができるが、発光層についてはスパッタリング法以外の方法(真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等)を適用することが好ましい。発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。スピンコート法等により発光層を形成する場合には、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かすことによりコーティング溶液を調製する。
【0046】
また、保護層については真空蒸着法、スピンコート法、スパッタリング法、キャスト法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、反応性スパッタリング法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法等を適用することができる。
【0047】
各層の形成方法は、使用する材料に応じて適宜変更可能である。有機EL素子を構成する各層の形成にあたって真空蒸着法を用いれば、この真空蒸着法だけによって有機EL素子を形成することができるため、設備の簡略化や生産時間の短縮を図るうえで有利である。
【0048】
なお、有機EL素子を構成する各層(保護層を含む)の形状および大きさは必ずしも同一ではない。また、素子を平面視したときに、基板の直上に形成された電極の上に他の全ての層が必ず納まっているというわけでもない。一方、本発明でいう応力緩和層は接着剤層の残留応力が有機EL素子に伝播して当該有機EL素子にショートが生じるのを抑制するためのものである。したがって、本発明でいう「有機EL素子を覆う応力緩和層」とは、有機EL素子を平面視したときに陰極と陽極とが重なる領域を少なくとも覆っている応力緩和層を意味する。また、本明細書でいう「有機EL素子を覆うに十分な量のコーティング液(グリース,ゲル)」とは、「有機EL素子を平面視したときに陰極と陽極とが重なる領域を少なくとも覆うに十分な量のコーティング液(グリース,ゲル)」を意味する。そして、「平面視したときに有機EL素子を覆うに十分な大きさを有する補助板」とは「平面視したときに、有機EL素子を平面視したときに陰極と陽極とが重なる領域を少なくとも覆うに十分な大きさを有する補助板」を意味する。
【0049】
また、本発明の有機ELデバイスを構成する有機EL素子の数は1個であってもよいし複数個であってもよい。複数個とする場合、各素子は層構成や発光色から見た種類が同一であってもよいし異なっていてもよい。有機EL素子の数をいくつにするかは、目的とする有機ELデバイスの用途等に応じて適宜選択可能である。基板上に複数個の有機EL素子が形成されている場合、応力緩和層は有機EL素子毎に設けてもよいし、全ての有機EL素子に共通するものを1つのみ設けてもよいし、全ての有機EL素子のうちの複数個に共通するものを複数設けてもよい。基板上に形成された複数個の有機EL素子を覆うために複数の応力緩和層を設けるにあたって補助板を使用する場合についても同様であり、設けようとする応力緩和層毎に補助板を使用してもよいし、全ての応力緩和層に共通するものを1枚のみ設けてもよいし、全ての応力緩和層のうちの複数個に共通するものを複数枚設けてもよい。接着剤層および封止材については、基板上に複数個の有機EL素子が形成されている場合でも全ての有機EL素子に共通するものをそれぞれ1つのみ設けることが実用上好ましい。
【0050】
本発明の有機ELデバイスは、上述した有機EL素子と、この有機EL素子を覆うようにして基板(有機EL素子が設けられているもの)上に形成された前述の応力緩和層と、この応力緩和層を覆うようにして前記の基板上に形成された前述の接着剤層と、この接着剤層によって前記の基板上に固着された前述の封止材とを備えたものである。この有機ELデバイスでは、有機EL素子が応力緩和層によって覆われていることから、接着剤層の残留応力が有機EL素子に伝播することが抑制される。その結果として、接着剤層から伝播した残留応力によって有機EL素子の端部等が押潰されてショートするということが防止されるので、有機EL素子の発光機能が長期間に亘って喪失しにくい。
【0051】
また、本発明の有機ELデバイスでは、従来と同様に接着剤層の形成時に有機EL素子の表面と平行な方向に力が働くが、有機EL素子が応力緩和層によって覆われていることから、前記の力が有機EL素子に伝播することが抑制される。その結果として、前記の力によって有機EL素子に電極剥離が発生するということが防止されるので、有機ELデバイスの製造過程や製造後に有機EL素子の発光機能が喪失するということが起きにくい。
さらに、本発明の有機ELデバイスは有機EL素子を密着タイプの封止方法により封止したものであるので、有機EL素子の封止効果が高く、デバイス自体の厚さが薄く、かつ大量生産が比較的容易である。
【0052】
このような特徴を有する本発明の有機ELデバイスは、面光源、キャラクター表示装置、電飾用装置、車載用インジケーター、複写機の除電用光源、プリンタ用光源、光変調装置等として利用することができる。
【0053】
次に、本発明の有機EL素子の封止方法について説明する。
この方法は、前述したように、基板上に設けられた有機EL素子の背面にこの有機EL素子を覆うようにして接着剤層を設け、この接着剤層によって前記基板上に封止材を固着することにより前記有機EL素子を封止するにあたり、前記有機EL素子と前記接着剤層との間に前記有機EL素子を覆う応力緩和層を設けることを特徴とするものである。
【0054】
前記の応力緩和層は、接着剤層の残留応力が有機EL素子に伝播するのを抑制するために設けるものであり、その材料および形成方法は前述した本発明の有機ELデバイスの中で説明した通りである。また、この応力緩和層によって覆われる有機EL素子、前記の応力緩和層によって覆われた有機EL素子を覆うようにして設けられる接着剤層、および前記の接着剤層によって基板(有機EL素子が設けられているもの)上に固着される封止の詳細についても、それぞれ前述した本発明の有機ELデバイスの中で説明した通りである。
【0055】
この方法により封止した有機EL素子では、当該有機EL素子が応力緩和層によって覆われていることから、接着剤層の残留応力が有機EL素子に伝播することが抑制される。その結果として、接着剤層から伝播した残留応力によって有機EL素子の端部等が押潰されてショートするということが防止されるので、発光機能が長期間に亘って喪失しにくい有機EL素子(封止されたもの(=有機ELデバイス))が得られる。
【0056】
また、接着剤層の形成時には有機EL素子の表面と平行な方向に力が働くが、有機EL素子が応力緩和層によって覆われていることから、前記の力が有機EL素子に伝播することが抑制される。その結果として、前記の力によって有機EL素子に電極剥離が発生するということが防止されるので、封止の過程や封止後に有機EL素子の発光機能が喪失するということが起きにくい。
さらに、本発明の方法は密着タイプの封止方法の1つであるので、封止効果が高く、かつ厚さが薄い有機EL素子(封止されたもの(=有機ELデバイス))を大量生産することが比較的容易である。
【0057】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
(1)有機EL素子の作製
先ず、25mm×75mm×1.1mmの大きさのガラス基板上に当該ガラス基板の長手方向に帯状に膜厚100nmのITO膜を成膜したもの(以下、これを透明支持基板という)を用意し、この透明支持基板をイソプロピルアルコールで30分間超音波洗浄した後、純水で30分間洗浄し、最後に再びイソプロピルアルコールで30分間超音波洗浄した。
洗浄後の透明支持基板を市販の真空蒸着装置(日本真空技術(株)製)の基板ホルダーに固定し、モリブデン製抵抗加熱ボートにN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス−(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン(以下、TPDという)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、Alq3 という)を200mg入れて、真空チャンバー内を1×10−4Paまで減圧した。
【0058】
次に、TPDを入れた前記の抵抗加熱ボートを215〜220℃まで加熱し、TPDを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒でITO膜上に堆積させて、膜厚60nmの正孔注入層を成膜した。このときの基板温度は室温であった。次いで、正孔注入層が成膜された透明支持基板を真空チャンバーから取出すことなく、正孔注入層の成膜に引続いて発光層の成膜を行った。発光層の成膜は、Alq3 を入れた前記の抵抗加熱ボートを275℃まで加熱し、Alq3 を蒸着速度0.1〜0.2nm/秒で正孔注入層上に堆積させて、膜厚60nmのAlq3 層を成膜することにより行った。このときの基板温度も室温であった。
次に、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム1gを入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに銀500mgを入れて、真空チャンバー内を2×10−4Paまで減圧した。そして、マグネシウムを入れた前記の抵抗加熱ボートを500℃程度に加熱してマグネシウムを約1.7〜2.8nm/秒の蒸着速度で蒸発させると共に、銀を入れた前記の抵抗加熱ボートを800℃程度に加熱して銀を0.03〜0.08nm/秒の蒸着速度で蒸発させて、マグネシウムと銀との混合金属からなる膜厚150nmの陰極を発光層上に計3個設けた。各陰極は平面視上の大きさが3mm×15mmのものであり、これらは一定間隔でITO膜と直交する向きに設けられている。
【0059】
この後、前記の陰極まで設けたガラス基板を3つに切り、ガラス基板上の層構成が陽極(ITO膜)/正孔注入層/発光層/陰極(Mg・Ag層)である有機EL素子を計3つ得た。これらの有機EL素子の発光面(平面視したときに陰極と陽極が重なり、これらの電極の間に正孔注入層および発光層が存在している領域)の大きさは3mm×5mmである。また、これらの有機EL素子の初期輝度は電圧6.5V、電流密度3mA/cm2 の条件下で100cd/m2 に達し、このときの電力変換効率は1.6lm/Wであった。
【0060】
(2)応力緩和層および接着剤層の形成並びに封止材の配設
先ず、応力緩和層の材料としてフッ素樹脂コーティング液(旭硝子(株)製のサイトップCTX−105A)を用意し、また、補助板として約10mm×10mm×0.15mmの大きさのカバーガラス(以下、カバーガラスIという)を用意した。次に、前記のフッ素樹脂コーティング液5μlを上記(1)で作製した有機EL素子上に滴下し、この上に前記のカバーガラスIを載せた。フッ素樹脂コーティング液の粘性の低さとカバーガラスIの重みにより前記コーティング液は一様に広がり、有機EL素子とカバーガラスIとの間には前記コーティング液の薄い膜(厚さ0.05mm)ができた。このとき、コーティング液の一部はカバーガラスIによって覆われる領域の外側に若干はみ出した。
この状態で10分程放置することにより、フッ素樹脂コーティング液からなる上記の薄い膜の外表面、すなわちガラス基板の表面と平行な方向の表面に固体層(被膜)を形成させて、目的とする応力緩和層を一応得た。このとき、有機EL素子に接している部分のフッ素樹脂コーティング液は固化せずに液体状態を保っていた。
【0061】
次に、接着剤として光硬化性接着剤((株)アーデル製のベネフィックスVL)0.1mlを上記のカバーガラスI上に滴下し、その上に封止材としてのカバーガラス(大きさは約20mm×20mm×0.15mm;以下、カバーガラスIIという)を載せた。光硬化性接着剤の粘性の低さとカバーガラスIIの重みにより前記光硬化性接着剤は一様に広がり、上記の応力緩和層およびカバーガラスIを完全に覆った。カバーガラスIIの載置に引き続き、ハロゲンランプの光を前記のカバーガラスII上から光硬化性接着剤に照射して、当該光硬化性接着剤を硬化させた。
【0062】
これにより、上記の応力緩和層を覆うようにして光硬化性接着剤からなる厚さ0.1mm(カバーガラスI上での厚さ)の接着剤層が形成され、同時に前記の接着剤層によって封止材としてのカバーガラスIIがガラス基板(有機EL素子が設けられているもの)上に固着された。さらに、接着剤層を形成した後には上記の応力緩和層中のフッ素樹脂コーティング液の溶剤の揮散が抑止されるので、有機EL素子を覆って存在するフッ素樹脂コーティング液は液体状態を維持し続け、その結果として目的とする応力緩和層が最終的に形成された。
【0063】
上述のようにして接着剤層の形成および封止材の配設まで行ったことにより、目的とする有機ELデバイスが得られた。以下、同様にして有機ELデバイスを作製し、計45個の有機ELデバイスを得た。
本実施例1で作製した有機ELデバイスの断面の概略図を図1に、また上面図を図2に示す。
【0064】
図1に示したように、この有機ELデバイス1はガラス基板2の片面に形成された有機EL素子3と、この有機EL素子3を覆うようにしてガラス基板2上に形成された応力緩和層4と、この応力緩和層4を形成するために用いたカバーガラスIからなる補助板5と、この補助板5および前記応力緩和層4を覆うようにしてガラス基板2上に形成された光硬化性接着剤からなる接着剤層6と、この接着剤層6によってガラス基板2上に固着されたカバーガラスIIからなる封止材7とを備えたものである。応力緩和層4はフッ素樹脂コーティング液を材料とするものであり、この応力緩和層4においてガラス基板2の表面と平行な方向の表面はその形成時に溶剤が蒸発したことにより固化して固体層4aを形成しており、有機EL素子3に接している部分のフッ素樹脂コーティング液4bは固化せずに液体状態を保っている。
【0065】
また、有機EL素子3は、ガラス基板2上に陽極としてのITO膜、正孔注入層としてのTPD層、発光層としてのAlq3 層、および陰極としてのMg・Ag混合層を順次積層したものである。これらのうちITO膜を符号3aで、またMg・Ag混合層を符号3bで図1中および図2中にそれぞれ示す。図1および図2に示したように、ITO膜3aはガラス基板2表面に帯状に形成されており、Mg・Ag混合層3bはITO膜3aと直交する向きに設けられている。そして、ITO膜3aとMg・In混合層3bとが平面視上重なっている部分が、有機EL素子3の発光面に相当する。
【0066】
実施例2
先ず、実施例1と同条件でガラス基板上に有機EL素子を作製した。次に、応力緩和層の材料としてフッ素系グリース(ニチアス(株)製のPTFEグリース)を用い、このフッ素系グリース約0.01mlを上記の有機EL素子上に塗布した後、この上に補助板として約10mm×10mm×0.15mmの大きさのカバーガラスIを載せた。次いで、前記のカバーガラスを上から軽く押圧することにより前記のフッ素系グリースを一様に広がらせて、有機EL素子とカバーガラスIとの間にフッ素系グリースの薄い膜(厚さ0.1mm)を形成した。これにより応力緩和層が得られた。この後、実施例1と同条件で光硬化性接着剤からなる接着剤層(厚さ0.06mm)の形成とこの接着剤層による封止材(カバーガラスII)の固着とを行って、目的とする有機ELデバイスを得た。以下、同様にして有機ELデバイスを作製し、計55個の有機ELデバイスを得た。
【0067】
実施例3
先ず、実施例1と同条件でガラス基板上に有機EL素子を作製した。次に、前記の有機EL素子を構成する陰極(Mg・Ag層)上に、保護層として膜厚0.2μmのアルミニウム層を真空蒸着法により形成した。この後、実施例1と同条件で、補助板(カバーガラスI)を用いての応力緩和層(厚さ0.05mm)の形成と、光硬化性接着剤からなる接着剤層(厚さ0.1mm)の形成と、この接着剤層による封止材(カバーガラスII)の固着とを行って、目的とする有機ELデバイスを得た。以下、同様にして有機ELデバイスを作製し、計45個の有機ELデバイスを得た。
【0068】
比較例1
応力緩和層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、計45個の有機ELデバイスを作製した。このとき、補助板も使用しなかった。
【0069】
比較例2
接着剤層の形成および接着剤層による封止材の固着を共に行わなかった以外は実施例1と同様にして、計45個の有機ELデバイスを作製した。
【0070】
比較例3
先ず、25mm×75mm×1.1mmの大きさのガラス基板の片面の短手方向の両方の端部にそれぞれ10mm×75mm×100nmのITO膜が成膜されたものを透明支持基板として用い、この透明支持基板を実施例1と同条件で洗浄した後にマスク自動交換機構を備えた真空蒸着装置の基板ホルダーに装着した。次に、上記のITO膜の一方にマスクをかけ、この状態で実施例1と同条件で正孔注入層および発光層をそれぞれ成膜した。次いで、蒸着装置に付いているマスク自動交換機構を用いて上記のマスクを外した後、前記機構でもって一方のITO膜(前記のマスクをかけていた方のITO膜)の長手方向の両方の外側縁部にそれぞれ幅5mmに亘ってマスクをかけた。
【0071】
次に、マグネシウム1gを予め入れておいたモリブデン製抵抗加熱ボートと銀500mgを予め入れておいたモリブデン製抵抗加熱ボートとをそれぞれ加熱し、マグネシウムを約1.5nm/秒の蒸着速度で蒸着させ、同時に銀を約0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着させて、マグネシウムと銀との混合金属からなる膜厚150nmの陰極を発光層上に成膜した。陰極まで成膜したことにより、上記のガラス基板上には有機EL素子が形成された。
【0072】
この後、上記の真空蒸着装置をそのまま用いて、正孔注入層、発光層および陰極の成膜から続く一連の真空環境下で以下の要領で保護層を成膜した。
先ず、蒸発源としてテトラフルオロエチレンとパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとの無定形共重合体粉末(デュポン社製のテフロンAF)1.5gを収容したアルミナ製坩堝をタングステン製バスケットに予め入れておき、このタングステン製バスケットの上方(アルミナ製坩堝の上)に12μmφのステンレス製メッシュをかぶせた。次いで、真空チャンバー内を1×10−4Paまで減圧した後、前記のタングステン製バスケットに通電加熱して前記の蒸発源を455℃に加熱して、有機EL素子を構成する上記の陰極上に蒸着速度0.5nm/秒で膜厚800nmの保護層(テフロンAF薄膜)を成膜した。
【0073】
この後、保護層まで成膜した有機EL素子を真空チャンバーから取り出し、この有機EL素子について以下の要領でケーシングタイプの封止を行って、有機ELデバイスを得た。
まず、正孔注入層の成膜にあたってマスクをかけなかった方のITO膜の長手方向の両方の外側縁部について、それぞれ幅5mmに亘ってこのITO膜上に設けられている正孔注入層、発光層、陰極および保護層を切除した。またガラス基板の短手方向の両方の縁部についても、その厚さが実質的にガラス基板の厚さとITO膜の厚さとの和になるように、それぞれ幅5mmに亘って正孔注入層、発光層、陰極および保護層を切除した。
【0074】
次いで、18mm×73mm×2mmの凹部と、この凹部の底に設けられた直径2mmの貫通孔(以下、注入口という)とを有するガラス板(外寸:20mm×75mm×3mm、以下シールドガラスという)を用意し、このシールドガラスと保護層まで成膜した有機EL素子とをエポキシ系接着剤(セメダイン社製のセメダインスーパー5)により貼り合わせた。エポキシ系接着剤は、主剤と硬化剤とを混ぜ合わせてヘラで20回かき混ぜてから、上記保護層まで成膜した有機EL素子の縁部に幅1mmでほぼ20×75mmの長方形に塗布した。またシールドガラスと上記保護層まで成膜した有機EL素子とは、陰極および保護層がシールドガラスの凹部内に収まるようにして貼り合わせた。貼り合わせ後、大気中に10時間放置してエポキシ系接着剤を硬化させた。
【0075】
次いで、シールドガラスに設けられている注入口から、吸湿用のシリカゲル(粒径50μm)を8体積%分散させたシリコーンオイル((株)東芝製のTSK451、以下封止用液体という)を注入して、シールドガラスの凹部と上記保護層まで成膜した有機EL素子とにより形成された空間内を封止用液体で満たした。
この後、注入口をガラス製の蓋で封鎖して、ケーシングタイプの封止が施された有機ELデバイスを得た。なお、ガラス製の蓋は、上述したエポキシ系接着剤によりシールドガラスに接着させた。以下、同様にして有機ELデバイスを作製し、計45個の有機ELデバイスを得た。
【0076】
歩留りの評価
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3でそれぞれ作製した有機ELデバイスについて、デバイス作製直後から初期輝度が100cd/m2 となる直流定電流で有機EL素子を連続駆動し、連続駆動開始直後、1週間後、1箇月(31日間)後および1000時間後のそれぞれの時点で、ショートにより発光機能を喪失した有機EL素子の数を数えた。なお、輝度の測定は輝度計(ミノルタ社製のCS−100)を用いて大気中で行った。この結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示したように、実施例1〜実施例3でそれぞれ作製した有機ELデバイスではショートにより発光機能を喪失した有機EL素子の数が少ない。このことから、信頼性の高い有機ELデバイスが高い歩留まりの下に作製されたことがわかる。
これに対し、応力緩和層を設けなかった比較例1では連続駆動開始直後の時点で殆どの有機EL素子がショートにより発光機能を喪失しており、1週間後には全ての有機EL素子がショートにより発光機能を喪失していた。このことから、応力緩和層は有機EL素子がショートによってその発光機能を喪失するのを防止するうえで有用であることがわかる。
【0079】
また、比較例2で作製した有機ELデバイスでは、連続駆動開始直後の時点ではショートによって発光機能を喪失した有機EL素子の数が少ないが、1000時間後には全ての素子がショートにより発光機能を喪失していた。そして、比較例3で作製した有機ELデバイスでは、全ての調査時点で、ショートによって発光機能を喪失した有機EL素子の数が実施例1〜実施例3と同等かそれ以下である。したがって、比較例3では有機EL素子がショートによってその発光機能を喪失するか否かという観点からみた信頼性が高い有機ELデバイスが高い歩留まりの下に作製されたということができ、この点で比較例3の有機ELデバイスは優れたものである。しかしながら、後述する封止効果や製造の難易、有機ELデバイスの厚さ等をも考慮すると、実施例1〜実施例3の有機ELデバイスの方が優れているといえる。
【0080】
封止効果の評価
有機EL素子に見られるダークスポットと呼ばれる丸い形の無発光領域は、有機EL素子に水分や酸素が侵入することにより拡大していく。したがって、任意のダークスポットについてその大きさの経時変化を調べることは、封止効果を評価するための指標として好適である。
このような観点から、上述した歩留りの評価のための連続駆動開始直後、1日後、1週間後、1箇月(31日間)後および1000時間後の各時点で各有機ELデバイスを写真撮影し、1000時間後の時点で発光機能を喪失していなかった有機ELデバイスの中から任意に1つのデバイスを選択し、その有機ELデバイスを構成する有機EL素子中の任意のダークスポットに着目して各時点での直径を前記の写真から求めた。この結果を表2に示す。なお、比較例1で作製した有機ELデバイスについては1週間後の時点で全ての有機EL素子がショートにより発光機能を喪失していたので、1日後の時点で発光機能を喪失していなかった有機ELデバイスの中から任意に1つのデバイスを選択した。また、比較例2で作製した有機ELデバイスについては1000時間後の時点で全ての有機EL素子がショートにより発光機能を喪失していたので、1箇月後の時点で発光機能を喪失していなかった有機ELデバイスの中から任意に1つのデバイスを選択した。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示したように、実施例1〜実施例3でそれぞれ作製した有機ELデバイスでは1000時間連続駆動した後でもダークスポットはそれ程拡大していない。このことから、実施例1〜実施例3の各有機ELデバイスでは有機EL素子に対して高い封止効果が得られていることがわかる。◎
一方、比較例1の有機ELデバイスではショートにより発光機能を喪失する有機EL素子が相次いだため、封止効果を評価するに十分なデータを得ることができなかった。また、比較例2の有機ELデバイスではダークスポットの成長が極めて速く、有機EL素子に対する封止が不十分であることがわかる。そして、比較例3の有機ELデバイスではダークスポットの成長がやや速く、有機EL素子に対する封止効果は実施例1〜実施例3のもよりも低いことがわかる。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の有機ELデバイスは有機EL素子を密着タイプの封止法により封止したものでありながら有機EL素子の発光機能が喪失しにくい有機ELデバイスである。また、本発明の方法により封止した有機EL素子では封止後に有機EL素子の発光機能が喪失することが起きにくい。したがって、本発明によれば比較的簡単な製造工程で、薄型で長期間に亘って安定な有機ELデバイスを高い歩留まりの下に提供することが可能になる。
【0084】
【図面の説明】
【0085】
【図1】実施例1で作製した有機ELデバイスの断面を示す概略図である。
【0086】
【図2】実施例1で作製した有機ELデバイスの上面を示す概略図である。
【0087】
【符号の説明】
1 有機ELデバイス
2 ガラス基板
3 有機EL素子
4 応力緩和層
5 補助板
6 接着剤層
7 封止材
Claims (5)
- 基板上に設けられた有機EL素子と、この有機EL素子を覆うようにして前記基板上に形成された接着剤層と、この接着剤層によって前記基板上に固着された封止材とを備えた有機ELデバイスにおいて、
前記有機EL素子と前記接着剤層との間に前記有機EL素子を覆う応力緩和層を有し、該応力緩和層がずれ応力の発生が小さい物質であるフッ素系、シリコーン系または炭化水素系の液体、グリースまたはゲルからなる層を含むことを特徴とする有機ELデバイス。 - 応力緩和層が、有機EL素子を覆う液体層と、この液体層の外表面に形成された固体層とを有し、かつ、前記固体層が前記液体層を形成している液と同一組成の液の固化物からなる、請求項1に記載の有機ELデバイス。
- 応力緩和層と接着剤層との間に、背面から平面視したときに有機EL素子を覆う補助板が基板と実質的に対向する向きに設けられている、請求項1または請求項2に記載の有機ELデバイス。
- 応力緩和層が、有機EL素子を覆う液体層と、この液体層の外表面に形成された固体層とを有し、かつ、前記固体層が前記液体層を形成している液と同一組成の液の固化物からなる、請求項3に記載の有機ELデバイス。
- 基板上に設けられた有機EL素子の背面にこの有機EL素子を覆うようにして接着剤層を設け、この接着剤層によって前記基板上に封止材を固着することにより前記有機EL素子を封止するにあたり、前記有機EL素子と前記接着剤層との間に前記有機EL素子を覆う応力緩和層を設けることを特徴とする有機EL素子の封止方法。
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