JP3580947B2 - 画像のノイズ量判別装置およびノイズ量判別方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像データに基づいて印刷版作成用データを作成する画像処理装置などに適用され、入力画像データ中のノイズ量の大小を判別するための装置および方法に関する。また、本発明は、ノイズ量の大小に応じた鮮鋭化処理を入力画像データに対して施すための画像処理装置および画像処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、写真原稿から印刷版を作成する場合に、原稿を光学的に読み取るための画像入力装置が利用される。画像入力装置は、原稿に対応した画像データを出力する。この画像データは、たとえば、パーソナルコンピュータからなる画像処理装置に入力され、印刷版を作成するための処理が施される。
【0003】
高画質の印刷物を得るために、画像処理装置においては、入力画像データに対して各種の画像処理が施される。その1つに、画像鮮鋭化処理がある。画像鮮鋭化処理とは、画像に含まれる高周波成分を強調することによって、画像のエッジ部を強調し、シャープな画像を得るための画像データ処理である。典型的な鮮鋭化処理は、ラプラシアンフィルタリングやアンシャープマスキングである。
【0004】
ラプラシアンフィルタリングによる鮮鋭化は、原画像にラプラシアン操作を施して得られた画像を原画像に加算することによって達成される。ラプラシアン操作では、たとえば、処理対象画素を中心とした3×3画素のマトリクス内の各画素の画像データが用いられ、処理対象画素の画像データとその周囲の各画素の画像データとの差が求められ、これらの差が加算される。これにより、空間二次微分成分が得られる。この空間二次微分成分を原画像に加算することによって、画像のエッジ部が強調される。
【0005】
アンシャープマスキングは、原画像を平滑化して得られる平滑化画像を原画像から差し引き、この差し引き分を原画像に加算する、という操作によって画像のエッジ部を強調する処理である。アンシャープマスキングによる鮮鋭化処理は、ラプラシアンフィルタリングによる鮮鋭化処理と等価である。
ところが、これらの鮮鋭化処理では、画像の有意情報だけでなく、ノイズ成分までもが強調されるため、不用意な鮮鋭化処理は、かえって画像品質の低下を招く。したがって、鮮鋭化の度合いを適切に定める必要がある。そこで、従来では、処理対象画像と処理結果とを目視観察し、試行錯誤によって鮮鋭化の度合いを調整している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
鮮鋭化の度合いの調整を自動化することが考えられるが、良好な画像品質を達成することが困難であり、熟練者による試行錯誤に頼らざるを得ないのが現状である。
特に、対象画像の荒れ具合(ノイズの量)は、鮮鋭化処理の調整を行ううえで考慮されるべき大きな要因であるが、この荒れ具合の判断については、熟練者の目視観察による以外には有効な手段が無く、このことが、画像処理の自動化を図るうえでの大きな障害となっていた。
【0007】
画像中のノイズ特性の解析を行うための一般的な方法は、その画像のパワースペクルを調べることである。しかし、パワースペクトルを得るためにはフーリエ変換を行う必要があるから、大容量の画像に対しては演算時間がかかり過ぎる。一方、画像中に既知の領域(たとえば均一な背景等)があり、その領域を選択することができるのであれば、その領域の実効値を求めることによって、ノイズ量を判別できる。しかし、ノイズ量の判別に適した画像領域が常に選択できるとは限らないから、確実性に欠け、この手法を採用することもできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、入力画像データ中のノイズ量を高速に、かつ、確実に自動判別することができる装置および方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、入力画像データ中のノイズ量を高速に、かつ、確実に自動判別し、その判別結果に基づいて適切な鮮鋭化処理を行うことができる装置および方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、入力画像データに対して高空間周波数成分を強調する処理を施す高域フィルタ手段と、
この高域フィルタ手段によって処理された画像データのヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
このヒストグラム作成手段によって作成されたヒストグラムの形状をパターン認識するパターン認識手段と、
入力画像データ中のノイズ量の大小を判別するノイズ量判別手段とを含むことを特徴とする画像のノイズ量判別装置である。
【0010】
これに対応するノイズ量判別方法は、請求項5に記載されているとおり、入力画像データに対して高空間周波数成分を強調するためのフィルタ処理を施し、
この処理結果に対して、フィルタ処理の応答値のヒストグラムを作成し、
このヒストグラムの形状をパターン認識手段によってパターン認識させ、
その認識結果に基づいて、入力画像データ中のノイズ量の大小を判別することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、入力画像データを高域フィルタ手段によって処理することにより、画像中の高空間周波数成分が抽出される。画像中に含まれるノイズは高周波成分であるから、高域フィルタ手段による処理によって、ノイズ成分が強調されることになる。
さらに、高域フィルタ手段によって処理されたデータに基づいて、ヒストグラムが作成され、このヒストグラムの形状のパターン認識に基づいて、入力画像データ中のノイズ量の大小が判別される。
【0012】
ノイズ量が多ければ、ヒストグラムの分布形状は、高域フィルタ手段による処理の応答値の大きい側にシフトし、ノイズ量が小さければ、ヒストグラムの分布形状は応答値の小さい側にシフトする。このような傾向は、対象画像の種類によらないから、パターン認識手段によってノイズ量の大小に応じたヒストグラムの分布形状の変化を認識することにより、対象画像の種類に関係なく、ノイズ量の大小を正確に判別できる。また、画像中における特定の性質の画像部分(たとえば一定濃度の画像部分)を抽出する必要もない。
【0013】
しかも、高域フィルタ手段によるフィルタ処理は、フーリエ変換によるパワースペクトルの作成に比較して非常に簡単な処理であり、高速に完了することができる。
請求項2記載の発明は、上記パターン認識手段は、ヒストグラム中の所定のサンプリング点における頻度を入力として、ノイズ量の大小に相当する複数のカテゴリについての認識結果を出力するニューラルネットワークであることを特徴とする請求項1記載のノイズ量判別装置である。
【0014】
これに対応するノイズ量判別方法の発明は、請求項6に記載されているとおり、請求項5記載方法において、上記ヒストグラムのパターン認識に用いるパターン認識手段は、ヒストグラムの所定のサンプリング点における頻度を入力とし、ノイズ量の大小に対応した複数のカテゴリについての認識結果を出力するニューラルネットワークであることを特徴とする。
【0015】
この発明では、パターン認識手段としてニューラルネットワークが用いられる。ニューラルネットワークは、人間の知覚系の持つ並列処理機能を有しているから、形状の認識のように、非定量的な対象の識別判定に適している。したがって、ニューラルネットワークの適用により、ノイズ量の大小を適切に判別できる。ニューラルネットワークの学習については、請求項7に記載のとおり、ノイズ量が既知の複数のカテゴリの画像を教師として上記ニューラルネットワークの学習を行えばよい。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記ノイズ量判別手段は、上記パターン認識手段による認識結果を入力として、ファジー推論によって入力画像データ中のノイズ量を判別するファジー推論手段を含むものであることを特徴とする請求項1または2記載のノイズ量判別装置である。
これに対応するノイズ量判別方法の発明は、請求項8に記載されているとおり、請求項5ないし7のいずれかに記載の方法において、上記ノイズ量の大小の判別は、上記パターン認識手段による認識結果を入力としたファジー推論によって行うことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、パターン認識結果に基づくノイズ量の判別にファジー推論が適用される。これにより、あいまいさを伴うパターン認識結果に対する処理を良好に行える。
請求項4記載の発明は、入力画像データに鮮鋭化処理を施すための画像処理装置であって、
上記請求項1、請求項2または請求項3記載のノイズ量判別装置と、
このノイズ量判別装置によって判別されたノイズ量に応じて設定される度合いで、入力画像データに対して鮮鋭化処理を施す鮮鋭化処理手段とを含むことを特徴とする画像処理装置である。
【0018】
これに対応する画像処理方法の発明は、請求項9に記載されているとおり、入力画像データに鮮鋭化処理を施すための画像処理方法であって、
上記請求項5ないし8のいずれかに記載のノイズ量判別方法によって入力画像データのノイズ量を判別し、
この判別されたノイズ量に応じて設定される度合いで、入力画像データに対して鮮鋭化処理を施すことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、フィルタ処理、ヒストグラムの作成、およびヒストグラム形状のパターン認識によって高速かつ確実に判別されたノイズ量に基づき、入力画像データに対する鮮鋭化処理の度合いが設定される。これにより、ノイズ量に応じた鮮鋭化処理を自動で行えるから、画像処理の自動化を極めて有利に図ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像データ作成装置の構成を示すブロック図である。この画像データ作成装置は、写真原稿のような原稿から印刷版作成用の画像データを得るための装置であり、原稿Dを読み取って画像データを取得するための画像入力装置1と、画像入力装置1によって取得された画像データに各種のデータ処理を施す画像処理装置2とを有している。画像処理装置2は、たとえば、パーソナルコンピュータで構成することができる。
【0021】
画像入力装置1は、原稿Dを光学的に読み取って、R(赤)、G(緑)およびB(青)の三原色成分を表すアナログ画像信号を出力するCCD素子11と、CCD素子11の出力信号をディジタル信号に変換する機能および変倍機能を有する倍率変更回路12と、ガンマ補正のためのガンマ補正回路13とを備えている。
【0022】
倍率変更回路12は、アナログ画像信号をディジタル画像データに変換する際のサンプリング周期を複数種類に設定することができるものであって、いずれのサンプリング周期を適用するかによって、画像の読取倍率が定まる。たとえば、CCD素子11の1つの読取画素の出力信号に対して2回のサンプリングが行われるようにサンプリング周期を定めておけば、原画像を2倍に拡大できる。
【0023】
ガンマ補正回路13は、CCD素子11の特性等に起因するガンマ特性を補償するためのデータ補正を行い、原稿Dを忠実に再現する画像データを作成する。画像入力装置1が出力するRGBの三原色画像データは、画像ファイル21として画像処理装置2に取り込まれる。画像ファイル21の画像データは、色変換部22において、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(黒)の画像データに色変換される。この色変換された画像データは、鮮鋭化処理部23において、画像鮮鋭化のための処理が行われる。
【0024】
鮮鋭化処理部23は、たとえば、ラプラシアンフィルタリングやアンシャープマスキングによって、画像の鮮鋭化処理を行い、製版用画像データを作成する。製版用画像データは、感材フィルムを露光して印刷版を作成する画像記録装置などにおいて用いられる。
鮮鋭化処理部23において鮮鋭化処理を実行するか否か、および、鮮鋭化する際の鮮鋭化の度合いは、ノイズ量判別部30による処理結果に基づいて定められる。ノイズ量判別部30は、画像ファイル21の画像データのうちB(青)データを取り出し、これにラプラシアンフィルタリングを施す高域フィルタとしてのラプラシアンフィルタ31と、ラプラシアン操作後の画像データのヒストグラムを作成するヒストグラム作成部32と、作成されたヒストグラムの形状をパターン認識することによって画像データ中のノイズ量の判別の基礎となるデータを出力するパターン認識部33と、パターン認識部33の処理結果に基づいて、ファジー推論によって画像データ中のノイズ量を判別し、そのノイズ量に応じて鮮鋭化処理部23を制御するファジー推論部34とを含む。パターン認識部33は、認識用データベース35を参照してパターン認識処理を行う。認識用データベース35には、たとえば、原稿の種類毎の認識基準が記憶されている。原稿の種類とは、人物画、風景画などのことである。ノイズ量判定部30による処理においてBデータのみが用いられるのは、RおよびGデータに比較して、Bデータに対するノイズの影響が最も大きいからである。
【0025】
画像処理装置2には、さらに、解析対象となるノイズの種類や原稿Dの画像の種類などを入力するための入力部25が備えられている。
図2は、ラプラシアンフィルタ31による処理を説明するための図である。ラプラシアンフィルタ処理では、画像を構成する複数の画素が順に注目画素とされ、その注目画素についての処理後の画像データが求められる。具体的には、図2(a) に示すように、注目画素(i,j)を中心とする3×3画素のマトリクスが想定され、このマトリクス内の各画素の画像データに図2(b) に示された重み付けを与えて加算する。これにより、ラプラシアン操作後の画像データF(i,j) は、マトリクス内の各画素の原画像データG(i−1,j−1) ,G(i,j−1) ,G(i+1,j−1) ,G(i−1,j) ,G(i,j) ,G(i+1,j) ,G(i−1,j+1) ,G(i,j+1) ,G(i+1,j+1) を用いて、次のように表される。
【0026】
図3は、ラプラシアンフィルタ31の通過周波数特性を示す図である。この図から理解されるように、ラプラシアンフィルタ31は、空間周波数の高い画像成分を通過させる高域フィルタとして作用する。ラプラシアンフィルタ31としては、上述の3×3画素のマトリクスの他にも、図4に示されているような5×5画素のマトリクス(図4(a) )や7×7画素のマトリクス(図4(b) )のような他のカーネルサイズのものを用いることもできる(図4には、Savitzy−Golay のラプラシアンフィルタ(最小二乗フィッティング)を示す。)。図3に示すとおり、一般に、ラプラシアンフィルタのカーネルサイズを大きくすると、通過周波数帯域が低周波数側にシフトする。
【0027】
図5は、ノイズ量の異なる3枚の原稿に対するラプラシアンフィルタ処理の応答値のヒストグラムである。図5(a) は、ノイズ量が少ない場合に相当し、図5(b) はノイズ量が中程度の場合に相当し、図5(c) はノイズ量が多い場合に相当している。図5(a) 、図5(b) および図5(c) の比較から、ノイズ量の大小に応じてヒストグラムの形状が変化することが理解される。より具体的には、ノイズ量が多いほど、応答値の高い側に頻度分布がシフトしている。その理由は、次のとおりである。
【0028】
すなわち、画像中に含まれるノイズは、孤立点のような空間周波数の高い成分であり、画像の有意情報とは無関係に重畳されたものである。特に、CCD素子11の基本ノイズのように画像入力装置1において画像データに重畳された電気的なノイズは、画像中に完全な孤立点として表れる。また、35ミリフィルム原稿などでは、粒子モトルとよばれる粒子雲がノイズとして把握される。この粒子モトルも、画像中に点在するから、空間周波数の高い成分である。
【0029】
したがって、ラプラシアン操作によって、画像中のノイズ成分は、画像の有意情報以上に強調される可能性が高く、そのため、フィルタリング後の画像のヒストグラム分布の形状が、ノイズ量の大小に依存することになるのである。
図6、図7および図8は、異なる種類の画像に対応するラプラシアンフィルタ処理の応答値のヒストグラム分布を示す図である。図6は、人物像(ポートレート)に相当しており、図7は、ドライバやペンチのような金属物(ツール)の画像に相当しており、図8は、フルーツの画像のような静物画に相当している。また、図6(a) 、図7(a) および図8(a) は、それぞれ、ノイズを重畳していない標準の画像に相当し、図6(b) 、図7(b) および図8(b) は、それぞれ、ノイズを2%重畳した画像に相当し、図6(c) 、図7(c) および図8(c) は、それぞれ、ノイズを4%重畳した場合に相当している。また、各図には、各画像に相当するラプラシアンフィルタ応答値の平均値および標準偏差を併記してある。
【0030】
これらの図から、どのような種類の画像であれ、ノイズ量の大小に応じて、ヒストグラムの形状が変動し、その傾向は、図5を参照して説明したとおりであることが理解される。したがって、ヒストグラム分布の形状を認識する手段があれば、読取画像中のノイズ量を自動判別することができる。
ところが、図6、図7および図8において併記されている標準偏差を参照すると、標準偏差はノイズ量の大小にはあまり関連がないことが判る。また、平均値情報は、ノイズ量の大小に応じて一応の変化が見られるものの、対象画像の種類によって様々な値をとる。したがって、対象画像の種類に依存することなくノイズ量の自動判別を行うためには、上述の数値情報はあまり有用ではない。
【0031】
そこで、この実施形態においては、ヒストグラムの分布形状の認識のためのパターン認識部33には、ニューラルネットワークが適用されている。ニューラルネットワークは、人間の知覚系の持つ並列処理機能を有しているから、非定量的な認識対象であるヒストグラム形状のパターン認識に適している。
図9は、パターン認識部33における処理内容を説明するためのブロック図である。パターン認識部33には、ヒストグラムを正規化するための正規化処理部331と、正規化されたヒストグラムのパターン認識を行って対象画像のノイズ量判別のための基礎情報を出力するニューラルネットワーク332とが含まれている。
【0032】
正規化処理部331は、対象画素の総画素数による影響を排除する。すなわち、対象画像の総画素数が多ければ、その分ヒストグラムにおける頻度が多くなるから、形状分析のためには、総画素数による影響を排除しておくことが好ましい。そこで、正規化処理部331は、ヒストグラム作成部32によって作成されたヒストグラムにおいて最大頻度をとる応答値の近傍の一定範囲内の応答値に相当する頻度値の平均値を求め、この平均値が所定の値になるように各応答値に対応する頻度値を変更する。これによって、ヒストグラムの正規化が達成される。平均値をとるのは、もしもヒストグラムがくし状になっていれば、最大頻度値を所定値に合わせるように各応答値の頻度値を変更しても、適切に正規化を行うことができないからである。
【0033】
なお、最大頻度をとる応答値を求める際、「0」の付近の応答値については、候補から除外しておくことが好ましい。これは、応答値「0」の付近の頻度は極端に大きいと予想され、したがって、応答値「0」の付近の応答値に相当する最大頻度値に基づいて正規化処理を行っても、適切な正規化を行うことができないおそれがあるからである。
【0034】
図10は、ニューラルネットワーク332の構造を概念的に示す図である。このニューラルネットワークは、多層パーセプトロンと呼ばれるフィードフォワード型の非線形素子のネットワークである。このニューラルネットークは、入力層、中間層および出力層の3層からなる。むろん、もっと多数の層を有するものも適用可能である。
【0035】
図10中「○」は、非線形素子を表し、たとえば、図中i素子の入出力条件は、前層からの入力ベクトルをX、素子の出力ベクトルをYとすると以下の式で定義できる。
【0036】
【数1】
【0037】
関数fは、非線型特性を持たせるための単調増加関数であり、一般に、その出力が(0,1)の範囲内で単調増加するシグモイド関数が用いられる。シグモイド関数は、一般に、下記第(3) 式で定義される。
【0038】
【数2】
【0039】
図11は、入力層の非線形素子への入力パターンを説明するための図であり、正規化されたヒストグラムが示されている。ニューラルネットワーク332の入力層の各非線形素子には、上記正規化されたヒストグラムにおいて予め定められたサンプリング点S1,S2,・・・・・・,S14における頻度値(正規化された値)がそれぞれ入力される。
【0040】
サンプリング点S1,S2,・・・・・・,S14は、ラプラシアンフィルタ処理の応答値の離散的な値に定められているが、必ずしも、等間隔で定められているわけではない。サンプリング点を定めるに当たっては、ノイズ量の大小によるヒストグラム分布の形状の変化をとらえるのに最適な応答値が選択される。より具体的には、小さな応答値の付近や、応答値に対する頻度の変化率(ヒストグラムの傾き)が急変する参照符号Cで示す付近については、高密度にサンプリング点が設定される。これに対して、応答値が比較的大きな値の付近では、ノイズ量の大小による頻度の変化が少ないと考えられるので、広い間隔でサンプリング点が設定されている。サンプリング点を等間隔に定めてもよいが、サンプリング点を増やすことになるので、あまり好ましくない。
【0041】
サンプリング数は任意であるか、あまり多く選ぶと、非線形素子をそれだけ増やさなければならず、演算時間の増大にもつながるので、必要最小限にとどめておくことが好ましい。また、分布の局所的変動の影響を低減するためには、サンプリング点の付近での平滑化処理をヒストグラムに施し、この平滑化された値をサンプリングデータとしてニューラルネットワーク332の入力層の非線形素子に入力すればよい。
【0042】
たとえば、サンプリング数が5の場合に、入力パターンに対して、ノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大の3つのカテゴリに出力パターンを分類するとすれば、パーセプトロンのモデルは、図12に示すようになる。
すなわち、入力層は、サンプリング数に対応する5つの非線形素子を有しており、この5つの非線形素子に、サンプルデータD1,D2,・・・・・・,D5がそれぞれ入力される。入力層には、さらに、閾値用のバイアス素子が設けられている。
【0043】
中間層は、2つの非線形素子と1つの閾値用バイアス素子とを含む。2つの非線形素子のそれぞれに、入力層の各非線形素子およびバイアス素子の出力が並列に与えられている。中間層の2つの非線形素子および1つの閾値用バイアス素子の出力は、出力層の3つの非線形素子のそれぞれに並列に入力されている。出力層の3つの非線形素子は、それぞれ、ノイズ量小、ノイズ量中およびノイズ量大の各カテゴリに属する度合いを表す信号を出力する。この意味においては、ニューラルネットワーク332は、ノイズ量判別手段を構成していると言える。
【0044】
ニューラルネットワーク332の出力層の3つの素子の出力は、ニューラルネットワーク332とともにノイズ量判別手段をなすファジー推論部34に並列に入力される。
図12の例では、中間層に2つの非線形素子のみが割り当てられているが、これは、3つの出力状態(ノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大)を表現するためには、2ビットで充分であると考えられるためである。しかし、ノイズ量の大小に対する出力パターン間のユークリッド距離が近い場合などには、中間層の素子数を増やして分解能を上げ、カテゴリの区別の明確化を図る必要がある。
【0045】
ニューラルネットワーク332において適切なパターン認識処理が行われるためには、まず、定義したパーセプトロンに対する学習を行わなければならない。学習方法は、たとえば、予め3つの出力カテゴリ(ノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大)に分類した画像のセットを準備し、それを教師として用いて、逆伝達アルゴリズムによって行えばよい。以下、その手順を示す。
【0046】
▲1▼ 各カテゴリの画像をラプラシアンフィルでフィルタリングし、その応答値についての正規化ヒストグラムを作成する。
▲2▼ この正規化ヒストグラムをサンプリングし、パーセプトロン入力パターンを得る。
▲3▼ パーセプトロンにデフォルト(既定値)の結合加重係数を与え、▲2▼で得られたパターンを入力し、出力値を得る。
【0047】
▲4▼ 入力画像のカテゴリの出力パターンを出力目標とし、▲3▼の出力パターンとのユークリッド距離を計算する。
▲5▼ このユークリッド距離を埋めるべく、逆伝達アルゴリズムで新たな結合加重係数を計算する。
▲6▼ 出力目標と入力画像の出力パターンとのユークリッド距離が一定値に収束するまで、新たな結合加重係数を定めては出力パターンを得、さらにこの出力パターンと出力目標とのユークリッド距離を算出する、というステップを繰り返す。
【0048】
このようにして学習されたパーセプトロンは、教師として用いた画像以外の不特定の画像に相当する入力パターンに対しても、妥当な分類結果を出力すると予想される。また、ニューラルネットワーク自体の補間機能により、はっきり分類が確定できない場合でも、中間的な出力パターンが得られることが期待できる。こうして、ニューラルネットワーク332は、対象画像のノイズ量、すなわち、荒れ具合を表す情報を出力する。
【0049】
パターン認識部33によって参照される認識用データベース35(図1参照)には、学習処理によって定められた結合加重係数が格納されている。認識用データベース35には、必要に応じて、認識結果がフィードバックされる。すなわち、鮮鋭化処理が適切に行われなかったときには、そのときの画像のカテゴリを出力目標として再度学習を行うことにより、結合加重係数が更新される。こうして、画像処理の回数の増大に伴って、ノイズ量の判別の正確度が増大していくことになる。
【0050】
ニューラルネットワーク332によるノイズ量の判別は、対象画像の種類によらずに適切に行えると考えられるが、対象画像の種類を予め特定しておき、画像の種類に応じた適切なパターン認識を行えば、さらに正確にノイズ量を判別できる。そこで、認識用データベース35には、標準の結合加重係数セットの他に、画像の種類(ポートレート、ツール、フルーツなど)毎に結合加重係数のセットが記憶されている。この結合加重係数のセットは、画像の種類毎に、ノイズ小、ノイズ中、ノイズ大の各カテゴリの画像を教師として求めたものである。画像処理装置2に備えられた入力部25から、画像の種類が指定された場合には、当該指定された種類に相当する結合加重係数のセットがニューラルネットワーク332に設定される。画像の種類が指定されなければ、標準の結合加重係数のセットが適用される。
【0051】
図13は、ファジー推論部34における処理を説明するための図である。図13(a) は、ニューラルネットワーク332の出力パターンに基づいて画像データ中のノイズ量を判別するためのメンバーシップ関数を示す。すなわち、ノイズ量の判別に際して、ノイズ量が小さいことを表すファジー集合に対応したメンバーシップ関数Ms、ノイズ量が中くらいであることを表すファジー集合に対応したメンバーシップ関数Mm、およびノイズ量が大きいことを表すファジー集合に対応したメンバーシップ関数Mlが用いられる。
【0052】
ニューラルネットワーク332の出力層の3つの素子の出力をファジールールの条件部の確信度として用い、この確信度に応じてノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大の各ファジー集合を頭切りする。この頭切りした各ファジー集合を合成することより、図13(b) に示す合成されたファジー出力集合が求められる。この合成されたファジー出力集合の重心の値が、対象画像のノイズ量NAとして判別される。このノイズ量NAに相当する制御値が鮮鋭化処理部23に入力されることにより、対象画像のノイズ量に応じた度合いの鮮鋭化処理が行われる。
【0053】
たとえば、ノイズが少ない場合には、画像のエッジを強く強調するように強い鮮鋭化処理が行われ、ノイズが多い場合には、ノイズが強調されすぎないように、弱い鮮鋭化処理が行われる。
鮮鋭化処理部23における鮮鋭化処理には、上述のとおり、ラプラシアンフィルタやアンシャープマスクが適用される。ラプラシアンフィルタには、上述の図2(b) のものを用いることができる。このラプラシアンフィルタによって処理された画像データを原画像データに加算することによって鮮鋭化処理が達成される。ラプラシアンフィルタによって処理されたデータを原画像データに加算する際に、所定の係数αを乗じることとし、この係数αをノイズ量判別部30からの制御値に応じて変化させるようにすれば、鮮鋭化の度合いを変化させることができる。係数αを零とすれば、画像の鮮鋭化は行われない。
【0054】
なお、ノイズ量判別部30のラプラシアンフィルタ31におけるフィルタサイズは、検出対象のノイズの種類やサイズに応じて定められることが好ましい。たとえば、画像入力装置1における処理中に混入した電気的ノイズは、画像中では1画素のみの孤立点となっていると考えられる。したがって、電気的ノイズの除去のためには、3×3画素のマトリクスのラプラシアンフィルタを適用するのが適切である。また、35ミリフィルム原稿中に存在しているような粒子モトルに起因するノイズの大きさは、その粒子モトルの大きさおよび倍率変更回路12において設定される拡大倍率に応じて変化する。したがって、粒子モトルに起因するノイズを主な解析対象ノイズとする場合には、その粒子モトルのサイズと、拡大倍率の大小とに応じてフィルタのサイズを変更することが好ましい。
【0055】
具体的に説明する。解析対象となるノイズのサイズをx(μm)、CCD素子11の解像力をy(dpi:dot per inch)、倍率をz(倍)とすると、ノイズ1つを構成するエリアの一辺の画素数は次式で計算される。
【0056】
【数3】
【0057】
たとえば、400dpi、400%拡大(4倍)時に、粒子モトルの大きさが30μmであるとすると、粒子モトルを構成するエリアの一辺の画素数は、上記第(4) 式に代入して、
【0058】
【数4】
【0059】
となる。したがって、粒子モトルに相当する画像は、約2×2のピクセルエリアで構成されることになる。
ノイズの認識を行う場合、ラプラシアンフィルタ31のカーネルサイズの最適値は、対象ノイズを包含できるサイズであり、上記の例では、3×3のサイズがあれば充分である。このフィルタサイズであれば、孤立した1画素からなる電気的ノイズをも良好に解析できる。
【0060】
このように、解析対象のノイズの大きさ、倍率および解像度に基づいて、フィルタサイズを定めることが好ましいから、画像処理装置2の入力部25から、ノイズサイズ、倍率変更回路12の倍率およびCCD素子11の解像度の情報を入力し、これらの情報に基づいて、ラプラシアンフィルタ処理部31において用いられるラプラシアンフィルタのカーネルサイズを定めるようにすれば、一層正確にノイズ量を判別することができる。
【0061】
また、倍率変更回路12における変倍率に応じてニューラルネットワーク332の結合加重係数を変更することも効果的である。したがって、認識用データベース35に複数種類の変倍率に対応した適切な結合加重係数を記憶させておき、入力部25から入力された倍率に応じて適切な結合加重係数がニューラルネットワーク332に設定されるようにしてもよい。
【0062】
以上のようにこの実施形態によれば、画像データに対してラプラシアン操作を施すことによって画像中の高周波成分を取り出し、このラプラシアン操作によって得られた画像のヒストグラムが作成される。そして、このヒストグラムの分布形状が、ニューラルネットワーク332によってパターン認識され、その結果として、対象画像中のノイズ量が判別される。こうして自動的に判別されたノイズ量に基づき、画像鮮鋭化処理が制御され、画像中の高周波成分の強調の度合いが自動調整される。
【0063】
ラプラシアンフィルタ31によるフィルタ処理は高速であるから、全体の処理は短時間で完了することができ、しかも、画像中の特定の領域(たとえば、濃度が一定の領域)を抽出する必要もないから、ノイズ量の判別を確実に行える。さらには、ニューラルネットワーク332によるヒストグラム形状のパターン認識は、基本的には、対象画像の種類に依存せずに良好に行えるから、対象画像の種類に関係なくノイズ量の判別を正確に行える。
【0064】
このように、従来では熟練者による試行錯誤によっていた鮮鋭化処理の調整が、高速かつ確実に自動判別されたノイズ量に基づき、自動でかつ適切に行える。これにより、画像データ処理の自動化を図るうえで極めて有利になる。
本発明の実施の形態の説明は以上のとおりであるが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記の実施形態では、高域フィルタ処理のためにラプラシアンフィルタが用いられているが、アンシャープマスクなどの他の高域フィルタが適用されてもよい。アンシャープマスクでは、図14に示す平滑化フィルタが用いられる。原画像データから、平滑化された後の画像データを減じることによって、画像のエッジ部やノイズなどの空間周波数の高い部分の画像を抽出できる。
【0065】
また、上記の実施形態の説明においては、倍率変更回路12における変倍率に応じて、ラプラシアンフィルタ31のカーネルサイズを変更することについて説明したが、その代わりに、ラプラシアンフィルタ処理に先だって、画像を所定の倍率の画像に変倍することとし、常に一定のサイズのフィルタを用いるようにしてもよい。しかし、この場合には、画像の変倍のために画像データの間引きや水増しを行う必要があるから、ノイズ量の判別対象の画像データと、鮮鋭化処理を受ける画像データとは異なるデータとなる。そのため、ノイズ量の判別の正確性の点では、フィルタサイズを変更する場合よりも劣るおそれがある。
【0066】
その他、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0067】
【発明の効果】
請求項1または請求項5記載の発明によれば、高速なフィルタ処理、ヒストグラムの作成およびその形状のパターン認識によって入力画像データ中のノイズ量を高速にかつ確実に自動判別することができる。
請求項2、請求項6または請求項7記載の発明によれば、ニューラルネットワークを用いることによってヒストグラムの形状のパターン認識を適切に行えるから、入力画像データ中のノイズ量の大小を正確に判別できる。
【0068】
請求項3または請求項8記載の発明によれば、パターン認識結果に基づくノイズ量の判別にファジー推論を適用しているので、あいまいさを伴うパターン認識結果に対する処理を良好に行える。
請求項4または請求項9記載の発明によれば、フィルタ処理、ヒストグラムの作成、およびヒストグラム形状のパターン認識に基づいて高速かつ確実に判別されたノイズ量に基づいて、入力画像データに対する鮮鋭化処理の度合いが設定される。これにより、ノイズ量に応じた鮮鋭化処理を自動で行えるから、画像処理の自動化を極めて有利に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像データ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ラプラシアンフィルタによる処理を説明するための図である。
【図3】ラプラシアンフィルタの通過周波数特性を示す特性図である。
【図4】5×5および7×7の各ラプラシアンフィルタを示す図である。
【図5】ノイズ量の大小に伴うヒストグラムの形状の変化を示す図である。
【図6】人物像(ポートレート)の画像におけるヒストグラムの形状を示す図である。
【図7】ツールの画像におけるヒストグラムの形状を示す図である。
【図8】フルーツの画像におけるヒストグラムの形状を示す図である。
【図9】パターン認識部の構成を示す図である。
【図10】ニューラルネットワークの概念的な構成を示す図である。
【図11】ニューラルネットワークに入力すべきヒストグラムの値のサンプリングについて説明するための図である。
【図12】ニューラルネットワークの一例を示す図である。
【図13】ファジー推論部による処理を説明するための図である。
【図14】アンシャープマスキングに適用される平滑化フィルタを示す図である。
【符号の説明】
2 画像処理装置
21 画像ファイル
23 鮮鋭化処理部
30 ノイズ量判別部
31 ラプラシアンフィルタ
32 ヒストグラム作成部
33 パターン認識部
34 ファジー推論部
35 認識用データベース
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像データに基づいて印刷版作成用データを作成する画像処理装置などに適用され、入力画像データ中のノイズ量の大小を判別するための装置および方法に関する。また、本発明は、ノイズ量の大小に応じた鮮鋭化処理を入力画像データに対して施すための画像処理装置および画像処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、写真原稿から印刷版を作成する場合に、原稿を光学的に読み取るための画像入力装置が利用される。画像入力装置は、原稿に対応した画像データを出力する。この画像データは、たとえば、パーソナルコンピュータからなる画像処理装置に入力され、印刷版を作成するための処理が施される。
【0003】
高画質の印刷物を得るために、画像処理装置においては、入力画像データに対して各種の画像処理が施される。その1つに、画像鮮鋭化処理がある。画像鮮鋭化処理とは、画像に含まれる高周波成分を強調することによって、画像のエッジ部を強調し、シャープな画像を得るための画像データ処理である。典型的な鮮鋭化処理は、ラプラシアンフィルタリングやアンシャープマスキングである。
【0004】
ラプラシアンフィルタリングによる鮮鋭化は、原画像にラプラシアン操作を施して得られた画像を原画像に加算することによって達成される。ラプラシアン操作では、たとえば、処理対象画素を中心とした3×3画素のマトリクス内の各画素の画像データが用いられ、処理対象画素の画像データとその周囲の各画素の画像データとの差が求められ、これらの差が加算される。これにより、空間二次微分成分が得られる。この空間二次微分成分を原画像に加算することによって、画像のエッジ部が強調される。
【0005】
アンシャープマスキングは、原画像を平滑化して得られる平滑化画像を原画像から差し引き、この差し引き分を原画像に加算する、という操作によって画像のエッジ部を強調する処理である。アンシャープマスキングによる鮮鋭化処理は、ラプラシアンフィルタリングによる鮮鋭化処理と等価である。
ところが、これらの鮮鋭化処理では、画像の有意情報だけでなく、ノイズ成分までもが強調されるため、不用意な鮮鋭化処理は、かえって画像品質の低下を招く。したがって、鮮鋭化の度合いを適切に定める必要がある。そこで、従来では、処理対象画像と処理結果とを目視観察し、試行錯誤によって鮮鋭化の度合いを調整している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
鮮鋭化の度合いの調整を自動化することが考えられるが、良好な画像品質を達成することが困難であり、熟練者による試行錯誤に頼らざるを得ないのが現状である。
特に、対象画像の荒れ具合(ノイズの量)は、鮮鋭化処理の調整を行ううえで考慮されるべき大きな要因であるが、この荒れ具合の判断については、熟練者の目視観察による以外には有効な手段が無く、このことが、画像処理の自動化を図るうえでの大きな障害となっていた。
【0007】
画像中のノイズ特性の解析を行うための一般的な方法は、その画像のパワースペクルを調べることである。しかし、パワースペクトルを得るためにはフーリエ変換を行う必要があるから、大容量の画像に対しては演算時間がかかり過ぎる。一方、画像中に既知の領域(たとえば均一な背景等)があり、その領域を選択することができるのであれば、その領域の実効値を求めることによって、ノイズ量を判別できる。しかし、ノイズ量の判別に適した画像領域が常に選択できるとは限らないから、確実性に欠け、この手法を採用することもできない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、入力画像データ中のノイズ量を高速に、かつ、確実に自動判別することができる装置および方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、入力画像データ中のノイズ量を高速に、かつ、確実に自動判別し、その判別結果に基づいて適切な鮮鋭化処理を行うことができる装置および方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、入力画像データに対して高空間周波数成分を強調する処理を施す高域フィルタ手段と、
この高域フィルタ手段によって処理された画像データのヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
このヒストグラム作成手段によって作成されたヒストグラムの形状をパターン認識するパターン認識手段と、
入力画像データ中のノイズ量の大小を判別するノイズ量判別手段とを含むことを特徴とする画像のノイズ量判別装置である。
【0010】
これに対応するノイズ量判別方法は、請求項5に記載されているとおり、入力画像データに対して高空間周波数成分を強調するためのフィルタ処理を施し、
この処理結果に対して、フィルタ処理の応答値のヒストグラムを作成し、
このヒストグラムの形状をパターン認識手段によってパターン認識させ、
その認識結果に基づいて、入力画像データ中のノイズ量の大小を判別することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、入力画像データを高域フィルタ手段によって処理することにより、画像中の高空間周波数成分が抽出される。画像中に含まれるノイズは高周波成分であるから、高域フィルタ手段による処理によって、ノイズ成分が強調されることになる。
さらに、高域フィルタ手段によって処理されたデータに基づいて、ヒストグラムが作成され、このヒストグラムの形状のパターン認識に基づいて、入力画像データ中のノイズ量の大小が判別される。
【0012】
ノイズ量が多ければ、ヒストグラムの分布形状は、高域フィルタ手段による処理の応答値の大きい側にシフトし、ノイズ量が小さければ、ヒストグラムの分布形状は応答値の小さい側にシフトする。このような傾向は、対象画像の種類によらないから、パターン認識手段によってノイズ量の大小に応じたヒストグラムの分布形状の変化を認識することにより、対象画像の種類に関係なく、ノイズ量の大小を正確に判別できる。また、画像中における特定の性質の画像部分(たとえば一定濃度の画像部分)を抽出する必要もない。
【0013】
しかも、高域フィルタ手段によるフィルタ処理は、フーリエ変換によるパワースペクトルの作成に比較して非常に簡単な処理であり、高速に完了することができる。
請求項2記載の発明は、上記パターン認識手段は、ヒストグラム中の所定のサンプリング点における頻度を入力として、ノイズ量の大小に相当する複数のカテゴリについての認識結果を出力するニューラルネットワークであることを特徴とする請求項1記載のノイズ量判別装置である。
【0014】
これに対応するノイズ量判別方法の発明は、請求項6に記載されているとおり、請求項5記載方法において、上記ヒストグラムのパターン認識に用いるパターン認識手段は、ヒストグラムの所定のサンプリング点における頻度を入力とし、ノイズ量の大小に対応した複数のカテゴリについての認識結果を出力するニューラルネットワークであることを特徴とする。
【0015】
この発明では、パターン認識手段としてニューラルネットワークが用いられる。ニューラルネットワークは、人間の知覚系の持つ並列処理機能を有しているから、形状の認識のように、非定量的な対象の識別判定に適している。したがって、ニューラルネットワークの適用により、ノイズ量の大小を適切に判別できる。ニューラルネットワークの学習については、請求項7に記載のとおり、ノイズ量が既知の複数のカテゴリの画像を教師として上記ニューラルネットワークの学習を行えばよい。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記ノイズ量判別手段は、上記パターン認識手段による認識結果を入力として、ファジー推論によって入力画像データ中のノイズ量を判別するファジー推論手段を含むものであることを特徴とする請求項1または2記載のノイズ量判別装置である。
これに対応するノイズ量判別方法の発明は、請求項8に記載されているとおり、請求項5ないし7のいずれかに記載の方法において、上記ノイズ量の大小の判別は、上記パターン認識手段による認識結果を入力としたファジー推論によって行うことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、パターン認識結果に基づくノイズ量の判別にファジー推論が適用される。これにより、あいまいさを伴うパターン認識結果に対する処理を良好に行える。
請求項4記載の発明は、入力画像データに鮮鋭化処理を施すための画像処理装置であって、
上記請求項1、請求項2または請求項3記載のノイズ量判別装置と、
このノイズ量判別装置によって判別されたノイズ量に応じて設定される度合いで、入力画像データに対して鮮鋭化処理を施す鮮鋭化処理手段とを含むことを特徴とする画像処理装置である。
【0018】
これに対応する画像処理方法の発明は、請求項9に記載されているとおり、入力画像データに鮮鋭化処理を施すための画像処理方法であって、
上記請求項5ないし8のいずれかに記載のノイズ量判別方法によって入力画像データのノイズ量を判別し、
この判別されたノイズ量に応じて設定される度合いで、入力画像データに対して鮮鋭化処理を施すことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、フィルタ処理、ヒストグラムの作成、およびヒストグラム形状のパターン認識によって高速かつ確実に判別されたノイズ量に基づき、入力画像データに対する鮮鋭化処理の度合いが設定される。これにより、ノイズ量に応じた鮮鋭化処理を自動で行えるから、画像処理の自動化を極めて有利に図ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像データ作成装置の構成を示すブロック図である。この画像データ作成装置は、写真原稿のような原稿から印刷版作成用の画像データを得るための装置であり、原稿Dを読み取って画像データを取得するための画像入力装置1と、画像入力装置1によって取得された画像データに各種のデータ処理を施す画像処理装置2とを有している。画像処理装置2は、たとえば、パーソナルコンピュータで構成することができる。
【0021】
画像入力装置1は、原稿Dを光学的に読み取って、R(赤)、G(緑)およびB(青)の三原色成分を表すアナログ画像信号を出力するCCD素子11と、CCD素子11の出力信号をディジタル信号に変換する機能および変倍機能を有する倍率変更回路12と、ガンマ補正のためのガンマ補正回路13とを備えている。
【0022】
倍率変更回路12は、アナログ画像信号をディジタル画像データに変換する際のサンプリング周期を複数種類に設定することができるものであって、いずれのサンプリング周期を適用するかによって、画像の読取倍率が定まる。たとえば、CCD素子11の1つの読取画素の出力信号に対して2回のサンプリングが行われるようにサンプリング周期を定めておけば、原画像を2倍に拡大できる。
【0023】
ガンマ補正回路13は、CCD素子11の特性等に起因するガンマ特性を補償するためのデータ補正を行い、原稿Dを忠実に再現する画像データを作成する。画像入力装置1が出力するRGBの三原色画像データは、画像ファイル21として画像処理装置2に取り込まれる。画像ファイル21の画像データは、色変換部22において、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、およびK(黒)の画像データに色変換される。この色変換された画像データは、鮮鋭化処理部23において、画像鮮鋭化のための処理が行われる。
【0024】
鮮鋭化処理部23は、たとえば、ラプラシアンフィルタリングやアンシャープマスキングによって、画像の鮮鋭化処理を行い、製版用画像データを作成する。製版用画像データは、感材フィルムを露光して印刷版を作成する画像記録装置などにおいて用いられる。
鮮鋭化処理部23において鮮鋭化処理を実行するか否か、および、鮮鋭化する際の鮮鋭化の度合いは、ノイズ量判別部30による処理結果に基づいて定められる。ノイズ量判別部30は、画像ファイル21の画像データのうちB(青)データを取り出し、これにラプラシアンフィルタリングを施す高域フィルタとしてのラプラシアンフィルタ31と、ラプラシアン操作後の画像データのヒストグラムを作成するヒストグラム作成部32と、作成されたヒストグラムの形状をパターン認識することによって画像データ中のノイズ量の判別の基礎となるデータを出力するパターン認識部33と、パターン認識部33の処理結果に基づいて、ファジー推論によって画像データ中のノイズ量を判別し、そのノイズ量に応じて鮮鋭化処理部23を制御するファジー推論部34とを含む。パターン認識部33は、認識用データベース35を参照してパターン認識処理を行う。認識用データベース35には、たとえば、原稿の種類毎の認識基準が記憶されている。原稿の種類とは、人物画、風景画などのことである。ノイズ量判定部30による処理においてBデータのみが用いられるのは、RおよびGデータに比較して、Bデータに対するノイズの影響が最も大きいからである。
【0025】
画像処理装置2には、さらに、解析対象となるノイズの種類や原稿Dの画像の種類などを入力するための入力部25が備えられている。
図2は、ラプラシアンフィルタ31による処理を説明するための図である。ラプラシアンフィルタ処理では、画像を構成する複数の画素が順に注目画素とされ、その注目画素についての処理後の画像データが求められる。具体的には、図2(a) に示すように、注目画素(i,j)を中心とする3×3画素のマトリクスが想定され、このマトリクス内の各画素の画像データに図2(b) に示された重み付けを与えて加算する。これにより、ラプラシアン操作後の画像データF(i,j) は、マトリクス内の各画素の原画像データG(i−1,j−1) ,G(i,j−1) ,G(i+1,j−1) ,G(i−1,j) ,G(i,j) ,G(i+1,j) ,G(i−1,j+1) ,G(i,j+1) ,G(i+1,j+1) を用いて、次のように表される。
【0026】
図3は、ラプラシアンフィルタ31の通過周波数特性を示す図である。この図から理解されるように、ラプラシアンフィルタ31は、空間周波数の高い画像成分を通過させる高域フィルタとして作用する。ラプラシアンフィルタ31としては、上述の3×3画素のマトリクスの他にも、図4に示されているような5×5画素のマトリクス(図4(a) )や7×7画素のマトリクス(図4(b) )のような他のカーネルサイズのものを用いることもできる(図4には、Savitzy−Golay のラプラシアンフィルタ(最小二乗フィッティング)を示す。)。図3に示すとおり、一般に、ラプラシアンフィルタのカーネルサイズを大きくすると、通過周波数帯域が低周波数側にシフトする。
【0027】
図5は、ノイズ量の異なる3枚の原稿に対するラプラシアンフィルタ処理の応答値のヒストグラムである。図5(a) は、ノイズ量が少ない場合に相当し、図5(b) はノイズ量が中程度の場合に相当し、図5(c) はノイズ量が多い場合に相当している。図5(a) 、図5(b) および図5(c) の比較から、ノイズ量の大小に応じてヒストグラムの形状が変化することが理解される。より具体的には、ノイズ量が多いほど、応答値の高い側に頻度分布がシフトしている。その理由は、次のとおりである。
【0028】
すなわち、画像中に含まれるノイズは、孤立点のような空間周波数の高い成分であり、画像の有意情報とは無関係に重畳されたものである。特に、CCD素子11の基本ノイズのように画像入力装置1において画像データに重畳された電気的なノイズは、画像中に完全な孤立点として表れる。また、35ミリフィルム原稿などでは、粒子モトルとよばれる粒子雲がノイズとして把握される。この粒子モトルも、画像中に点在するから、空間周波数の高い成分である。
【0029】
したがって、ラプラシアン操作によって、画像中のノイズ成分は、画像の有意情報以上に強調される可能性が高く、そのため、フィルタリング後の画像のヒストグラム分布の形状が、ノイズ量の大小に依存することになるのである。
図6、図7および図8は、異なる種類の画像に対応するラプラシアンフィルタ処理の応答値のヒストグラム分布を示す図である。図6は、人物像(ポートレート)に相当しており、図7は、ドライバやペンチのような金属物(ツール)の画像に相当しており、図8は、フルーツの画像のような静物画に相当している。また、図6(a) 、図7(a) および図8(a) は、それぞれ、ノイズを重畳していない標準の画像に相当し、図6(b) 、図7(b) および図8(b) は、それぞれ、ノイズを2%重畳した画像に相当し、図6(c) 、図7(c) および図8(c) は、それぞれ、ノイズを4%重畳した場合に相当している。また、各図には、各画像に相当するラプラシアンフィルタ応答値の平均値および標準偏差を併記してある。
【0030】
これらの図から、どのような種類の画像であれ、ノイズ量の大小に応じて、ヒストグラムの形状が変動し、その傾向は、図5を参照して説明したとおりであることが理解される。したがって、ヒストグラム分布の形状を認識する手段があれば、読取画像中のノイズ量を自動判別することができる。
ところが、図6、図7および図8において併記されている標準偏差を参照すると、標準偏差はノイズ量の大小にはあまり関連がないことが判る。また、平均値情報は、ノイズ量の大小に応じて一応の変化が見られるものの、対象画像の種類によって様々な値をとる。したがって、対象画像の種類に依存することなくノイズ量の自動判別を行うためには、上述の数値情報はあまり有用ではない。
【0031】
そこで、この実施形態においては、ヒストグラムの分布形状の認識のためのパターン認識部33には、ニューラルネットワークが適用されている。ニューラルネットワークは、人間の知覚系の持つ並列処理機能を有しているから、非定量的な認識対象であるヒストグラム形状のパターン認識に適している。
図9は、パターン認識部33における処理内容を説明するためのブロック図である。パターン認識部33には、ヒストグラムを正規化するための正規化処理部331と、正規化されたヒストグラムのパターン認識を行って対象画像のノイズ量判別のための基礎情報を出力するニューラルネットワーク332とが含まれている。
【0032】
正規化処理部331は、対象画素の総画素数による影響を排除する。すなわち、対象画像の総画素数が多ければ、その分ヒストグラムにおける頻度が多くなるから、形状分析のためには、総画素数による影響を排除しておくことが好ましい。そこで、正規化処理部331は、ヒストグラム作成部32によって作成されたヒストグラムにおいて最大頻度をとる応答値の近傍の一定範囲内の応答値に相当する頻度値の平均値を求め、この平均値が所定の値になるように各応答値に対応する頻度値を変更する。これによって、ヒストグラムの正規化が達成される。平均値をとるのは、もしもヒストグラムがくし状になっていれば、最大頻度値を所定値に合わせるように各応答値の頻度値を変更しても、適切に正規化を行うことができないからである。
【0033】
なお、最大頻度をとる応答値を求める際、「0」の付近の応答値については、候補から除外しておくことが好ましい。これは、応答値「0」の付近の頻度は極端に大きいと予想され、したがって、応答値「0」の付近の応答値に相当する最大頻度値に基づいて正規化処理を行っても、適切な正規化を行うことができないおそれがあるからである。
【0034】
図10は、ニューラルネットワーク332の構造を概念的に示す図である。このニューラルネットワークは、多層パーセプトロンと呼ばれるフィードフォワード型の非線形素子のネットワークである。このニューラルネットークは、入力層、中間層および出力層の3層からなる。むろん、もっと多数の層を有するものも適用可能である。
【0035】
図10中「○」は、非線形素子を表し、たとえば、図中i素子の入出力条件は、前層からの入力ベクトルをX、素子の出力ベクトルをYとすると以下の式で定義できる。
【0036】
【数1】
【0037】
関数fは、非線型特性を持たせるための単調増加関数であり、一般に、その出力が(0,1)の範囲内で単調増加するシグモイド関数が用いられる。シグモイド関数は、一般に、下記第(3) 式で定義される。
【0038】
【数2】
【0039】
図11は、入力層の非線形素子への入力パターンを説明するための図であり、正規化されたヒストグラムが示されている。ニューラルネットワーク332の入力層の各非線形素子には、上記正規化されたヒストグラムにおいて予め定められたサンプリング点S1,S2,・・・・・・,S14における頻度値(正規化された値)がそれぞれ入力される。
【0040】
サンプリング点S1,S2,・・・・・・,S14は、ラプラシアンフィルタ処理の応答値の離散的な値に定められているが、必ずしも、等間隔で定められているわけではない。サンプリング点を定めるに当たっては、ノイズ量の大小によるヒストグラム分布の形状の変化をとらえるのに最適な応答値が選択される。より具体的には、小さな応答値の付近や、応答値に対する頻度の変化率(ヒストグラムの傾き)が急変する参照符号Cで示す付近については、高密度にサンプリング点が設定される。これに対して、応答値が比較的大きな値の付近では、ノイズ量の大小による頻度の変化が少ないと考えられるので、広い間隔でサンプリング点が設定されている。サンプリング点を等間隔に定めてもよいが、サンプリング点を増やすことになるので、あまり好ましくない。
【0041】
サンプリング数は任意であるか、あまり多く選ぶと、非線形素子をそれだけ増やさなければならず、演算時間の増大にもつながるので、必要最小限にとどめておくことが好ましい。また、分布の局所的変動の影響を低減するためには、サンプリング点の付近での平滑化処理をヒストグラムに施し、この平滑化された値をサンプリングデータとしてニューラルネットワーク332の入力層の非線形素子に入力すればよい。
【0042】
たとえば、サンプリング数が5の場合に、入力パターンに対して、ノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大の3つのカテゴリに出力パターンを分類するとすれば、パーセプトロンのモデルは、図12に示すようになる。
すなわち、入力層は、サンプリング数に対応する5つの非線形素子を有しており、この5つの非線形素子に、サンプルデータD1,D2,・・・・・・,D5がそれぞれ入力される。入力層には、さらに、閾値用のバイアス素子が設けられている。
【0043】
中間層は、2つの非線形素子と1つの閾値用バイアス素子とを含む。2つの非線形素子のそれぞれに、入力層の各非線形素子およびバイアス素子の出力が並列に与えられている。中間層の2つの非線形素子および1つの閾値用バイアス素子の出力は、出力層の3つの非線形素子のそれぞれに並列に入力されている。出力層の3つの非線形素子は、それぞれ、ノイズ量小、ノイズ量中およびノイズ量大の各カテゴリに属する度合いを表す信号を出力する。この意味においては、ニューラルネットワーク332は、ノイズ量判別手段を構成していると言える。
【0044】
ニューラルネットワーク332の出力層の3つの素子の出力は、ニューラルネットワーク332とともにノイズ量判別手段をなすファジー推論部34に並列に入力される。
図12の例では、中間層に2つの非線形素子のみが割り当てられているが、これは、3つの出力状態(ノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大)を表現するためには、2ビットで充分であると考えられるためである。しかし、ノイズ量の大小に対する出力パターン間のユークリッド距離が近い場合などには、中間層の素子数を増やして分解能を上げ、カテゴリの区別の明確化を図る必要がある。
【0045】
ニューラルネットワーク332において適切なパターン認識処理が行われるためには、まず、定義したパーセプトロンに対する学習を行わなければならない。学習方法は、たとえば、予め3つの出力カテゴリ(ノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大)に分類した画像のセットを準備し、それを教師として用いて、逆伝達アルゴリズムによって行えばよい。以下、その手順を示す。
【0046】
▲1▼ 各カテゴリの画像をラプラシアンフィルでフィルタリングし、その応答値についての正規化ヒストグラムを作成する。
▲2▼ この正規化ヒストグラムをサンプリングし、パーセプトロン入力パターンを得る。
▲3▼ パーセプトロンにデフォルト(既定値)の結合加重係数を与え、▲2▼で得られたパターンを入力し、出力値を得る。
【0047】
▲4▼ 入力画像のカテゴリの出力パターンを出力目標とし、▲3▼の出力パターンとのユークリッド距離を計算する。
▲5▼ このユークリッド距離を埋めるべく、逆伝達アルゴリズムで新たな結合加重係数を計算する。
▲6▼ 出力目標と入力画像の出力パターンとのユークリッド距離が一定値に収束するまで、新たな結合加重係数を定めては出力パターンを得、さらにこの出力パターンと出力目標とのユークリッド距離を算出する、というステップを繰り返す。
【0048】
このようにして学習されたパーセプトロンは、教師として用いた画像以外の不特定の画像に相当する入力パターンに対しても、妥当な分類結果を出力すると予想される。また、ニューラルネットワーク自体の補間機能により、はっきり分類が確定できない場合でも、中間的な出力パターンが得られることが期待できる。こうして、ニューラルネットワーク332は、対象画像のノイズ量、すなわち、荒れ具合を表す情報を出力する。
【0049】
パターン認識部33によって参照される認識用データベース35(図1参照)には、学習処理によって定められた結合加重係数が格納されている。認識用データベース35には、必要に応じて、認識結果がフィードバックされる。すなわち、鮮鋭化処理が適切に行われなかったときには、そのときの画像のカテゴリを出力目標として再度学習を行うことにより、結合加重係数が更新される。こうして、画像処理の回数の増大に伴って、ノイズ量の判別の正確度が増大していくことになる。
【0050】
ニューラルネットワーク332によるノイズ量の判別は、対象画像の種類によらずに適切に行えると考えられるが、対象画像の種類を予め特定しておき、画像の種類に応じた適切なパターン認識を行えば、さらに正確にノイズ量を判別できる。そこで、認識用データベース35には、標準の結合加重係数セットの他に、画像の種類(ポートレート、ツール、フルーツなど)毎に結合加重係数のセットが記憶されている。この結合加重係数のセットは、画像の種類毎に、ノイズ小、ノイズ中、ノイズ大の各カテゴリの画像を教師として求めたものである。画像処理装置2に備えられた入力部25から、画像の種類が指定された場合には、当該指定された種類に相当する結合加重係数のセットがニューラルネットワーク332に設定される。画像の種類が指定されなければ、標準の結合加重係数のセットが適用される。
【0051】
図13は、ファジー推論部34における処理を説明するための図である。図13(a) は、ニューラルネットワーク332の出力パターンに基づいて画像データ中のノイズ量を判別するためのメンバーシップ関数を示す。すなわち、ノイズ量の判別に際して、ノイズ量が小さいことを表すファジー集合に対応したメンバーシップ関数Ms、ノイズ量が中くらいであることを表すファジー集合に対応したメンバーシップ関数Mm、およびノイズ量が大きいことを表すファジー集合に対応したメンバーシップ関数Mlが用いられる。
【0052】
ニューラルネットワーク332の出力層の3つの素子の出力をファジールールの条件部の確信度として用い、この確信度に応じてノイズ量小、ノイズ量中、ノイズ量大の各ファジー集合を頭切りする。この頭切りした各ファジー集合を合成することより、図13(b) に示す合成されたファジー出力集合が求められる。この合成されたファジー出力集合の重心の値が、対象画像のノイズ量NAとして判別される。このノイズ量NAに相当する制御値が鮮鋭化処理部23に入力されることにより、対象画像のノイズ量に応じた度合いの鮮鋭化処理が行われる。
【0053】
たとえば、ノイズが少ない場合には、画像のエッジを強く強調するように強い鮮鋭化処理が行われ、ノイズが多い場合には、ノイズが強調されすぎないように、弱い鮮鋭化処理が行われる。
鮮鋭化処理部23における鮮鋭化処理には、上述のとおり、ラプラシアンフィルタやアンシャープマスクが適用される。ラプラシアンフィルタには、上述の図2(b) のものを用いることができる。このラプラシアンフィルタによって処理された画像データを原画像データに加算することによって鮮鋭化処理が達成される。ラプラシアンフィルタによって処理されたデータを原画像データに加算する際に、所定の係数αを乗じることとし、この係数αをノイズ量判別部30からの制御値に応じて変化させるようにすれば、鮮鋭化の度合いを変化させることができる。係数αを零とすれば、画像の鮮鋭化は行われない。
【0054】
なお、ノイズ量判別部30のラプラシアンフィルタ31におけるフィルタサイズは、検出対象のノイズの種類やサイズに応じて定められることが好ましい。たとえば、画像入力装置1における処理中に混入した電気的ノイズは、画像中では1画素のみの孤立点となっていると考えられる。したがって、電気的ノイズの除去のためには、3×3画素のマトリクスのラプラシアンフィルタを適用するのが適切である。また、35ミリフィルム原稿中に存在しているような粒子モトルに起因するノイズの大きさは、その粒子モトルの大きさおよび倍率変更回路12において設定される拡大倍率に応じて変化する。したがって、粒子モトルに起因するノイズを主な解析対象ノイズとする場合には、その粒子モトルのサイズと、拡大倍率の大小とに応じてフィルタのサイズを変更することが好ましい。
【0055】
具体的に説明する。解析対象となるノイズのサイズをx(μm)、CCD素子11の解像力をy(dpi:dot per inch)、倍率をz(倍)とすると、ノイズ1つを構成するエリアの一辺の画素数は次式で計算される。
【0056】
【数3】
【0057】
たとえば、400dpi、400%拡大(4倍)時に、粒子モトルの大きさが30μmであるとすると、粒子モトルを構成するエリアの一辺の画素数は、上記第(4) 式に代入して、
【0058】
【数4】
【0059】
となる。したがって、粒子モトルに相当する画像は、約2×2のピクセルエリアで構成されることになる。
ノイズの認識を行う場合、ラプラシアンフィルタ31のカーネルサイズの最適値は、対象ノイズを包含できるサイズであり、上記の例では、3×3のサイズがあれば充分である。このフィルタサイズであれば、孤立した1画素からなる電気的ノイズをも良好に解析できる。
【0060】
このように、解析対象のノイズの大きさ、倍率および解像度に基づいて、フィルタサイズを定めることが好ましいから、画像処理装置2の入力部25から、ノイズサイズ、倍率変更回路12の倍率およびCCD素子11の解像度の情報を入力し、これらの情報に基づいて、ラプラシアンフィルタ処理部31において用いられるラプラシアンフィルタのカーネルサイズを定めるようにすれば、一層正確にノイズ量を判別することができる。
【0061】
また、倍率変更回路12における変倍率に応じてニューラルネットワーク332の結合加重係数を変更することも効果的である。したがって、認識用データベース35に複数種類の変倍率に対応した適切な結合加重係数を記憶させておき、入力部25から入力された倍率に応じて適切な結合加重係数がニューラルネットワーク332に設定されるようにしてもよい。
【0062】
以上のようにこの実施形態によれば、画像データに対してラプラシアン操作を施すことによって画像中の高周波成分を取り出し、このラプラシアン操作によって得られた画像のヒストグラムが作成される。そして、このヒストグラムの分布形状が、ニューラルネットワーク332によってパターン認識され、その結果として、対象画像中のノイズ量が判別される。こうして自動的に判別されたノイズ量に基づき、画像鮮鋭化処理が制御され、画像中の高周波成分の強調の度合いが自動調整される。
【0063】
ラプラシアンフィルタ31によるフィルタ処理は高速であるから、全体の処理は短時間で完了することができ、しかも、画像中の特定の領域(たとえば、濃度が一定の領域)を抽出する必要もないから、ノイズ量の判別を確実に行える。さらには、ニューラルネットワーク332によるヒストグラム形状のパターン認識は、基本的には、対象画像の種類に依存せずに良好に行えるから、対象画像の種類に関係なくノイズ量の判別を正確に行える。
【0064】
このように、従来では熟練者による試行錯誤によっていた鮮鋭化処理の調整が、高速かつ確実に自動判別されたノイズ量に基づき、自動でかつ適切に行える。これにより、画像データ処理の自動化を図るうえで極めて有利になる。
本発明の実施の形態の説明は以上のとおりであるが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記の実施形態では、高域フィルタ処理のためにラプラシアンフィルタが用いられているが、アンシャープマスクなどの他の高域フィルタが適用されてもよい。アンシャープマスクでは、図14に示す平滑化フィルタが用いられる。原画像データから、平滑化された後の画像データを減じることによって、画像のエッジ部やノイズなどの空間周波数の高い部分の画像を抽出できる。
【0065】
また、上記の実施形態の説明においては、倍率変更回路12における変倍率に応じて、ラプラシアンフィルタ31のカーネルサイズを変更することについて説明したが、その代わりに、ラプラシアンフィルタ処理に先だって、画像を所定の倍率の画像に変倍することとし、常に一定のサイズのフィルタを用いるようにしてもよい。しかし、この場合には、画像の変倍のために画像データの間引きや水増しを行う必要があるから、ノイズ量の判別対象の画像データと、鮮鋭化処理を受ける画像データとは異なるデータとなる。そのため、ノイズ量の判別の正確性の点では、フィルタサイズを変更する場合よりも劣るおそれがある。
【0066】
その他、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0067】
【発明の効果】
請求項1または請求項5記載の発明によれば、高速なフィルタ処理、ヒストグラムの作成およびその形状のパターン認識によって入力画像データ中のノイズ量を高速にかつ確実に自動判別することができる。
請求項2、請求項6または請求項7記載の発明によれば、ニューラルネットワークを用いることによってヒストグラムの形状のパターン認識を適切に行えるから、入力画像データ中のノイズ量の大小を正確に判別できる。
【0068】
請求項3または請求項8記載の発明によれば、パターン認識結果に基づくノイズ量の判別にファジー推論を適用しているので、あいまいさを伴うパターン認識結果に対する処理を良好に行える。
請求項4または請求項9記載の発明によれば、フィルタ処理、ヒストグラムの作成、およびヒストグラム形状のパターン認識に基づいて高速かつ確実に判別されたノイズ量に基づいて、入力画像データに対する鮮鋭化処理の度合いが設定される。これにより、ノイズ量に応じた鮮鋭化処理を自動で行えるから、画像処理の自動化を極めて有利に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像データ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ラプラシアンフィルタによる処理を説明するための図である。
【図3】ラプラシアンフィルタの通過周波数特性を示す特性図である。
【図4】5×5および7×7の各ラプラシアンフィルタを示す図である。
【図5】ノイズ量の大小に伴うヒストグラムの形状の変化を示す図である。
【図6】人物像(ポートレート)の画像におけるヒストグラムの形状を示す図である。
【図7】ツールの画像におけるヒストグラムの形状を示す図である。
【図8】フルーツの画像におけるヒストグラムの形状を示す図である。
【図9】パターン認識部の構成を示す図である。
【図10】ニューラルネットワークの概念的な構成を示す図である。
【図11】ニューラルネットワークに入力すべきヒストグラムの値のサンプリングについて説明するための図である。
【図12】ニューラルネットワークの一例を示す図である。
【図13】ファジー推論部による処理を説明するための図である。
【図14】アンシャープマスキングに適用される平滑化フィルタを示す図である。
【符号の説明】
2 画像処理装置
21 画像ファイル
23 鮮鋭化処理部
30 ノイズ量判別部
31 ラプラシアンフィルタ
32 ヒストグラム作成部
33 パターン認識部
34 ファジー推論部
35 認識用データベース
Claims (9)
- 入力画像データに対して高空間周波数成分を強調する処理を施す高域フィルタ手段と、
この高域フィルタ手段によって処理された画像データのヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
このヒストグラム作成手段によって作成されたヒストグラムの形状をパターン認識するパターン認識手段と、
入力画像データ中のノイズ量の大小を判別するノイズ量判別手段とを含むことを特徴とする画像のノイズ量判別装置。 - 上記パターン認識手段は、ヒストグラム中の所定のサンプリング点における頻度を入力として、ノイズ量の大小に相当する複数のカテゴリについての認識結果を出力するニューラルネットワークであることを特徴とする請求項1記載のノイズ量判別装置。
- 上記ノイズ量判別手段は、上記パターン認識手段による認識結果を入力として、ファジー推論によって入力画像データ中のノイズ量を判別するファジー推論手段を含むものであることを特徴とする請求項1または2記載のノイズ量判別装置。
- 入力画像データに鮮鋭化処理を施すための画像処理装置であって、
上記請求項1、請求項2または請求項3記載のノイズ量判別装置と、
このノイズ量判別装置によって判別されたノイズ量に応じて設定される度合いで、入力画像データに対して鮮鋭化処理を施す鮮鋭化処理手段とを含むことを特徴とする画像処理装置。 - 入力画像データに対して高空間周波数成分を強調するためのフィルタ処理を施し、
この処理結果に対して、フィルタ処理の応答値のヒストグラムを作成し、
このヒストグラムの形状をパターン認識手段によってパターン認識させ、
その認識結果に基づいて、入力画像データ中のノイズ量の大小を判別することを特徴とするノイズ量判別方法。 - 上記ヒストグラムのパターン認識に用いるパターン認識手段は、ヒストグラムの所定のサンプリング点における頻度を入力とし、ノイズ量の大小に対応した複数のカテゴリについての認識結果を出力するニューラルネットワークであることを特徴とする請求項5記載のノイズ量判別方法。
- ノイズ量が既知の複数のカテゴリの画像を教師として上記ニューラルネットワークの学習を行うことを特徴とする請求項6記載のノイズ量判別方法。
- 上記ノイズ量の大小の判別は、上記パターン認識手段による認識結果を入力としたファジー推論によって行うことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のノイズ量判別方法。
- 入力画像データに鮮鋭化処理を施すための画像処理方法であって、
上記請求項5ないし8のいずれかに記載のノイズ量判別方法によって入力画像データのノイズ量を判別し、
この判別されたノイズ量に応じて設定される度合いで、入力画像データに対して鮮鋭化処理を施すことを特徴とする画像処理方法。
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