JP3584256B2 - 新規サマリウム錯体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラクトンの開環重合用触媒などに有用な新規なサマリウム錯体及びその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二価ランタノイドである二価サマリウム(Sm)の錯体については、従来、Cp*−(ペンタメチルシクロペンタジエニルアニオン)や I− など同一の配位子を複数個有する錯体を中心に研究が進められてきた。最近、新規な配位子を有するランタノイド錯体として、ビスアリールオキシドアニオン(ArO− ) を配位子とする二価ランタノイド錯体(ArO)2Ln (LnはSm又はYbを示し、ArO は2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノキシドアニオンを示す) についての特徴ある反応性が報告され、アリールオキシド配位子がランタノイド錯体に対して有用な配位子であることが明らかにされた(Hou, Z., et al., J. Am. Chem. Soc., 117, pp.4421−4422, 1995; Yoshimura, T., et al., Organometallics, 14, pp.4858−4864, 1995; Hou, Z., et al., J. Am. Chem. Soc., 116, pp.11169−11170, 1994)。しかしながら、異なる配位子を有するサマリウム錯体は配位子の再配列などによって合成が困難であり、ほとんど研究されていない。
【0003】
例えば、二価サマリウムアミド錯体Sm[N(SiMe3)2]2(THF)2(Me: メチル基;THF:テトラヒドロフラン配位子)を二当量の2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノールなどのヒドロキシアリール化合物と反応させると、対応する二価サマリウムアリールオキシド錯体 (ArO)2Sm(THF)3 が得られること、並びに、この錯体をI2と反応させるとアリールオキシド配位子を有する三価のサマリウム・ヨウ化物: (ArO)2Sm(THF)2I が得られることが知られている(Hou, Z., et al., Inorg. Chem., 35, pp.7190−7195, 1996)。これらはいずれもモノマーとして単離することができるものの、オレフィン重合などの触媒としての有用性はほとんどないことが知られている。
【0004】
最近、 [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]n (式中、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、ArO は2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノキシド配位子を示す、THF はテトラヒドロフラン配位子を示し、n は該錯体が [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]を繰り返し単位とするポリメリック錯体であることを示す)で表される二価のサマリウム錯体が提案された (Hou, Z., et al., Organometallics, 16, pp.2963−2970, 1997) 。しかしながら、従来、 サマリウム錯体にシロキシドが配位した錯体は知られておらず、その有用性も明らかにされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
本発明の課題は、従来知られていない新規なサマリウム錯体を提供することにあり、より具体的には、シロキシド配位子を有する新規なサマリウム錯体を提供することにある。また、本発明の別の課題は、上記の新規サマリウム錯体の触媒としての有用性を明らかにすることにある。本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、シロキシド配位子を有するサマリウム錯体を提供することに初めて成功した。また、この新規錯体がラクトンの開環重合用触媒として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、式(I) :CpSm2[OSi(OR)3]3(式中、Cpはシクロペンタジエニル系配位子、好ましくはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体;式(II):Sm[OSi(OR)3]3 (式中、ORはアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体;及び、式(III) :CpSm3[OSi(OR)3]6(式中、CpはCpはシクロペンタジエニル系配位子、好ましくはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体を提供するものである。これらの錯体の好ましい態様として、ORが tert−ブトキシド配位子である上記サマリウム錯体が提供される。別の観点からは、本発明により、ラクトンの開環重合用触媒である上記サマリウム錯体が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
上記式(I) から(III) で表される本発明のサマリウム錯体において、Cpはシクロペンタジエニル系配位子を示す。シクロペンタジエニル系配位子としては、シクロペンタジエニル配位子の他、1から5個の同一又は異なるC1−4アルキル基、好ましくは同一の5個のC1−4アルキル基を有するシクロペンタジエニル配位子、特に好ましくはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子などを用いることができる。 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す。1つの錯体中に存在する複数個の配位子ORは、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、すべてが同一の配位子であることが好ましい。アルコキシド配位子としては、例えば炭素数1から8個程度、好ましくは炭素数1から4個の直鎖又は分枝鎖のアルコキシド配位子を用いることができる。例えば、嵩高い分枝鎖のアルコキシ配位子が好適であり、 tert−ブトキシ配位子などが特に好適である。
【0008】
アリールオキシド配位子としては、置換又は非置換フェノキシドアニオン、好ましくは置換フェノキシドアニオンを用いることができる。置換フェノキシドアニオンとしては、例えば、ベンゼン環上に1個又は2個以上、好ましくは2個又は3個のアルキル基が置換したものを用いることができる。ベンゼン環上の2個以上のアルキル基を有する場合、これらのアルキル基は同一でも異なっていてもよく、これらのアルキル基のうちの2個がそれぞれベンゼン環上の2−位及び6−位(フェノキシドのベンゼン環においてオキシド基が置換した炭素原子を1−位とする)に置換して、2,6−ジアルキル置換フェノキシドアニオンを形成していることが好ましい。
【0009】
ベンゼン環上の2−位及び6−位に置換するアルキル基としては、錯体の安定性などの観点から、イソプロピル基、tert− ブチル基、ネオペンチル基などの立体的に嵩高いC3−C6 アルキル基を用いることが好適である。例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシドアニオン、2,6−ジイソプロピルフェノキシドアニオン、2,6−ジネオペンチルフェノキシドアニオン、2−tert− ブチル−6− イソプロピルフェノキシドアニオン、2−tert− ブチル−6− ネオペンチルフェノキシドアニオン、又は2−イソプロピル−6− ネオペンチルフェノキシドアニオンなどを用いることができる。これらのうち、ベンゼン環の2−位及び6−位がともに tert−ブチル基で置換されたフェノキシドアニオン(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシドアニオン)が特に好ましい。
【0010】
また、これらの2,6−ジアルキル置換フェノキシドアニオンのベンゼン環がさらに1個又は2個以上、好ましくは1個のアルキル基を有する場合、そのようなアルキル基としてはC1−C4 アルキル基が好適であり、該アルキル基の置換位置としては4−位が好適である。例えば、2,6−ジアルキル置換フェノキシドアニオンのベンゼン環の4−位にメチル基やエチル基などのC1−C4 アルキル基が導入されたフェノキシドアニオンを配位子として有する錯体は、溶解性などの観点から好ましい。より具体的には、配位子として2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノキシドアニオンを有する錯体が好ましい。
【0011】
式(I) で表される錯体は、下記のスキームに従って、公知のサマリウム錯体 (Cp* )2Sm(THF)2(Evans, W. J., et al., J. Am. Chem. Soc., 107, pp.941−946, 1985;式中、Cp* は前記と同義である)と (OR)3SiOH (式中、 OR はアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す)とを反応させることにより製造することができる。また、式(II)で表される錯体は、公知のサマリウムアミド錯体 Sm[N(SiMe3)2]3 (Bradley, D.C., et al., J. C. S. Dalton., pp.1021−1023, 1973 ;式中、 SiMe3 はトリメチルシリル基を示す)に三当量の (OR)3SiOH (式中、ORは前記と同義である)を反応させることにより製造することができる。 (OR)3SiOH (式中、ORはアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す)で表される化合物は、例えばアヅマックス社などから試薬として入手することが可能である。さらに、式(III) で示される錯体は、式(I) で表される錯体と(II)で表される錯体とを溶媒中で混合することにより製造することができる。なお、これらの錯体の製造方法の具体例が実施例に記載されているので、当業者は、出発原料、反応条件などを適宜選択することにより、式(I) ないし式(III) に包含される所望の錯体を容易に製造することが可能である。
【0012】
【化1】
【0013】
上記のサマリウム錯体は、例えば、ラクトンの開環重合触媒として有用であり、従来のラクトン開環用触媒に比べて高い触媒活性があり、比較的分子量分布の狭い重合物を与えるという特徴がある。これらの触媒を用いたラクトンの開環重合は、例えば、トルエンなどの不活性溶媒中でモノマー1モルに対して 0.0002 〜0.005 モル程度、好ましくは 0.001〜0.002 モル程度の量の触媒を用いて行うことができる。モノマーとして用いるラクトン化合物としては、例えば、ε−カプロラクトンやδ−バレロラクトンなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。一般的にラクトンの開環重合にモノマーとして用いることができるラクトン化合物は、いずれも本発明のサマリウム錯体を用いて重合することが可能である。
【0014】
溶液中での上記モノマーの濃度は特に限定されないが、例えば、 1〜20 %(V/V) 、好ましくは 5〜10%(V/V)程度の濃度で反応を行うことができる。重合温度は特に限定されず、−78 ℃〜50℃程度までの温度下、好ましくは0℃から室温程度の温度下で重合を行うことができる。よりシャープな分子量分布の重合体を製造するためには低温下に反応を行うことが望ましい。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。実施例中、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示す。
例1:Cp* Sm2(OSi(OtBu)3)3
トルエン 10 mlに (Cp* )2Sm(THF)2 (0.5 mmol) と(tBuO)3SiOH (0.75 mmol) を加えたところ、緑色の溶液が得られた。室温で2時間反応させた後、溶液をろ過して濾液を減圧濃縮した。残渣にトルエンを加えて結晶化させ、目的物のキューブ状結晶を得た(収率 85%)。
結晶データ(図1)
a=12.7812 (35); b=13.2613 (36); c=22.6518 (62)Å
α=105.353 (22) °; β=91.165 (23)°; γ=117.475 (17) °
v=3239.01 (137)Å3 ;空間群:P−1
【0016】
例2:Sm(OSi(OtBu)3)3
トルエン 20 mlに Sm(N(SiMe3)2)3 (1 mmol)と(tBuO)3SiOH (3 mmol)を加えたところ、無色の溶液が得られた。室温で5時間反応させた後、溶液をろ過して濾液を減圧濃縮した。残渣にトルエンを加えて結晶化させ、目的物のキューブ状結晶を得た(収率 85%)。
結晶データ(図2:[Sm(OSi(OtBu)3)3]2)
a=26.042 (5)Å; b=14.383 (3)Å; c=27.99 (3)
β=98.60 (5)°
v=10365 (7)Å3 ;空間群:C 2/c
【0017】
例3:Cp* Sm3(OSi(OtBu)3)6
トルエン 20 mlにCp* Sm2(OSi(OtBu)3)3 (0.3 mmol) と Sm(OSi(OtBu)3)3 (0.3 mmol) を加えて2時間反応させた。得られた緑色の溶液をろ過して濾液を減圧濃縮した。 残渣にトルエンを加えて結晶化させ、目的物の針状晶を得た(収率 75%)。
結晶データ(図3)
a=26.48 (1); b=27.12 (2); c=19.26 (1) Å
α=108.18 (6) °; β=100.80 (5) °; γ=62.16 (3)°
v=11604 (14) Å3 ;空間群:P−1
【0018】
例4:ラクトンの開環重合
トルエン 10 mlに Sm(OSi(OtBu)3)3 (0.1 mmol) を加え、激しく攪拌しながらε−カプロラクトン (17 mmol)を加えところ、反応液が徐々に粘性になった。室温で15分攪拌した後、多量のメタノールを加えてポリマーを沈殿させた。生成物を濾取して乾燥して重合体(99%)を得た。Mn=27000、Mw/Mn=1.25 同様にしてδ−バレロラクトンを出発原料として用いて開環重合体を高収率で得た。
【0019】
【発明の効果】
本発明の新規サマリウム錯体は、例えばラクトンの開環重合用触媒として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサマリウム錯体:Cp* Sm2(OSi(OtBu)3)3の構造を示した図である。
【図2】本発明のサマリウム錯体:Cp* Sm3(OSi(OtBu)3)6の構造を示した図である。
【図3】本発明のサマリウム錯体:Cp* Sm3(OSi(OtBu)3)6の構造を示した図で
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラクトンの開環重合用触媒などに有用な新規なサマリウム錯体及びその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二価ランタノイドである二価サマリウム(Sm)の錯体については、従来、Cp*−(ペンタメチルシクロペンタジエニルアニオン)や I− など同一の配位子を複数個有する錯体を中心に研究が進められてきた。最近、新規な配位子を有するランタノイド錯体として、ビスアリールオキシドアニオン(ArO− ) を配位子とする二価ランタノイド錯体(ArO)2Ln (LnはSm又はYbを示し、ArO は2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノキシドアニオンを示す) についての特徴ある反応性が報告され、アリールオキシド配位子がランタノイド錯体に対して有用な配位子であることが明らかにされた(Hou, Z., et al., J. Am. Chem. Soc., 117, pp.4421−4422, 1995; Yoshimura, T., et al., Organometallics, 14, pp.4858−4864, 1995; Hou, Z., et al., J. Am. Chem. Soc., 116, pp.11169−11170, 1994)。しかしながら、異なる配位子を有するサマリウム錯体は配位子の再配列などによって合成が困難であり、ほとんど研究されていない。
【0003】
例えば、二価サマリウムアミド錯体Sm[N(SiMe3)2]2(THF)2(Me: メチル基;THF:テトラヒドロフラン配位子)を二当量の2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノールなどのヒドロキシアリール化合物と反応させると、対応する二価サマリウムアリールオキシド錯体 (ArO)2Sm(THF)3 が得られること、並びに、この錯体をI2と反応させるとアリールオキシド配位子を有する三価のサマリウム・ヨウ化物: (ArO)2Sm(THF)2I が得られることが知られている(Hou, Z., et al., Inorg. Chem., 35, pp.7190−7195, 1996)。これらはいずれもモノマーとして単離することができるものの、オレフィン重合などの触媒としての有用性はほとんどないことが知られている。
【0004】
最近、 [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]n (式中、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、ArO は2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノキシド配位子を示す、THF はテトラヒドロフラン配位子を示し、n は該錯体が [Cp* Sm(OAr) Cp* K(THF)2]を繰り返し単位とするポリメリック錯体であることを示す)で表される二価のサマリウム錯体が提案された (Hou, Z., et al., Organometallics, 16, pp.2963−2970, 1997) 。しかしながら、従来、 サマリウム錯体にシロキシドが配位した錯体は知られておらず、その有用性も明らかにされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
本発明の課題は、従来知られていない新規なサマリウム錯体を提供することにあり、より具体的には、シロキシド配位子を有する新規なサマリウム錯体を提供することにある。また、本発明の別の課題は、上記の新規サマリウム錯体の触媒としての有用性を明らかにすることにある。本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、シロキシド配位子を有するサマリウム錯体を提供することに初めて成功した。また、この新規錯体がラクトンの開環重合用触媒として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、式(I) :CpSm2[OSi(OR)3]3(式中、Cpはシクロペンタジエニル系配位子、好ましくはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体;式(II):Sm[OSi(OR)3]3 (式中、ORはアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体;及び、式(III) :CpSm3[OSi(OR)3]6(式中、CpはCpはシクロペンタジエニル系配位子、好ましくはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示し、 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体を提供するものである。これらの錯体の好ましい態様として、ORが tert−ブトキシド配位子である上記サマリウム錯体が提供される。別の観点からは、本発明により、ラクトンの開環重合用触媒である上記サマリウム錯体が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
上記式(I) から(III) で表される本発明のサマリウム錯体において、Cpはシクロペンタジエニル系配位子を示す。シクロペンタジエニル系配位子としては、シクロペンタジエニル配位子の他、1から5個の同一又は異なるC1−4アルキル基、好ましくは同一の5個のC1−4アルキル基を有するシクロペンタジエニル配位子、特に好ましくはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子などを用いることができる。 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す。1つの錯体中に存在する複数個の配位子ORは、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、すべてが同一の配位子であることが好ましい。アルコキシド配位子としては、例えば炭素数1から8個程度、好ましくは炭素数1から4個の直鎖又は分枝鎖のアルコキシド配位子を用いることができる。例えば、嵩高い分枝鎖のアルコキシ配位子が好適であり、 tert−ブトキシ配位子などが特に好適である。
【0008】
アリールオキシド配位子としては、置換又は非置換フェノキシドアニオン、好ましくは置換フェノキシドアニオンを用いることができる。置換フェノキシドアニオンとしては、例えば、ベンゼン環上に1個又は2個以上、好ましくは2個又は3個のアルキル基が置換したものを用いることができる。ベンゼン環上の2個以上のアルキル基を有する場合、これらのアルキル基は同一でも異なっていてもよく、これらのアルキル基のうちの2個がそれぞれベンゼン環上の2−位及び6−位(フェノキシドのベンゼン環においてオキシド基が置換した炭素原子を1−位とする)に置換して、2,6−ジアルキル置換フェノキシドアニオンを形成していることが好ましい。
【0009】
ベンゼン環上の2−位及び6−位に置換するアルキル基としては、錯体の安定性などの観点から、イソプロピル基、tert− ブチル基、ネオペンチル基などの立体的に嵩高いC3−C6 アルキル基を用いることが好適である。例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシドアニオン、2,6−ジイソプロピルフェノキシドアニオン、2,6−ジネオペンチルフェノキシドアニオン、2−tert− ブチル−6− イソプロピルフェノキシドアニオン、2−tert− ブチル−6− ネオペンチルフェノキシドアニオン、又は2−イソプロピル−6− ネオペンチルフェノキシドアニオンなどを用いることができる。これらのうち、ベンゼン環の2−位及び6−位がともに tert−ブチル基で置換されたフェノキシドアニオン(2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシドアニオン)が特に好ましい。
【0010】
また、これらの2,6−ジアルキル置換フェノキシドアニオンのベンゼン環がさらに1個又は2個以上、好ましくは1個のアルキル基を有する場合、そのようなアルキル基としてはC1−C4 アルキル基が好適であり、該アルキル基の置換位置としては4−位が好適である。例えば、2,6−ジアルキル置換フェノキシドアニオンのベンゼン環の4−位にメチル基やエチル基などのC1−C4 アルキル基が導入されたフェノキシドアニオンを配位子として有する錯体は、溶解性などの観点から好ましい。より具体的には、配位子として2,6−ジ−tert−ブチル−4− メチルフェノキシドアニオンを有する錯体が好ましい。
【0011】
式(I) で表される錯体は、下記のスキームに従って、公知のサマリウム錯体 (Cp* )2Sm(THF)2(Evans, W. J., et al., J. Am. Chem. Soc., 107, pp.941−946, 1985;式中、Cp* は前記と同義である)と (OR)3SiOH (式中、 OR はアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す)とを反応させることにより製造することができる。また、式(II)で表される錯体は、公知のサマリウムアミド錯体 Sm[N(SiMe3)2]3 (Bradley, D.C., et al., J. C. S. Dalton., pp.1021−1023, 1973 ;式中、 SiMe3 はトリメチルシリル基を示す)に三当量の (OR)3SiOH (式中、ORは前記と同義である)を反応させることにより製造することができる。 (OR)3SiOH (式中、ORはアルコキシ基又はアリールオキシ基を示す)で表される化合物は、例えばアヅマックス社などから試薬として入手することが可能である。さらに、式(III) で示される錯体は、式(I) で表される錯体と(II)で表される錯体とを溶媒中で混合することにより製造することができる。なお、これらの錯体の製造方法の具体例が実施例に記載されているので、当業者は、出発原料、反応条件などを適宜選択することにより、式(I) ないし式(III) に包含される所望の錯体を容易に製造することが可能である。
【0012】
【化1】
【0013】
上記のサマリウム錯体は、例えば、ラクトンの開環重合触媒として有用であり、従来のラクトン開環用触媒に比べて高い触媒活性があり、比較的分子量分布の狭い重合物を与えるという特徴がある。これらの触媒を用いたラクトンの開環重合は、例えば、トルエンなどの不活性溶媒中でモノマー1モルに対して 0.0002 〜0.005 モル程度、好ましくは 0.001〜0.002 モル程度の量の触媒を用いて行うことができる。モノマーとして用いるラクトン化合物としては、例えば、ε−カプロラクトンやδ−バレロラクトンなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。一般的にラクトンの開環重合にモノマーとして用いることができるラクトン化合物は、いずれも本発明のサマリウム錯体を用いて重合することが可能である。
【0014】
溶液中での上記モノマーの濃度は特に限定されないが、例えば、 1〜20 %(V/V) 、好ましくは 5〜10%(V/V)程度の濃度で反応を行うことができる。重合温度は特に限定されず、−78 ℃〜50℃程度までの温度下、好ましくは0℃から室温程度の温度下で重合を行うことができる。よりシャープな分子量分布の重合体を製造するためには低温下に反応を行うことが望ましい。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されることはない。実施例中、Cp* はペンタメチルシクロペンタジエニル配位子を示す。
例1:Cp* Sm2(OSi(OtBu)3)3
トルエン 10 mlに (Cp* )2Sm(THF)2 (0.5 mmol) と(tBuO)3SiOH (0.75 mmol) を加えたところ、緑色の溶液が得られた。室温で2時間反応させた後、溶液をろ過して濾液を減圧濃縮した。残渣にトルエンを加えて結晶化させ、目的物のキューブ状結晶を得た(収率 85%)。
結晶データ(図1)
a=12.7812 (35); b=13.2613 (36); c=22.6518 (62)Å
α=105.353 (22) °; β=91.165 (23)°; γ=117.475 (17) °
v=3239.01 (137)Å3 ;空間群:P−1
【0016】
例2:Sm(OSi(OtBu)3)3
トルエン 20 mlに Sm(N(SiMe3)2)3 (1 mmol)と(tBuO)3SiOH (3 mmol)を加えたところ、無色の溶液が得られた。室温で5時間反応させた後、溶液をろ過して濾液を減圧濃縮した。残渣にトルエンを加えて結晶化させ、目的物のキューブ状結晶を得た(収率 85%)。
結晶データ(図2:[Sm(OSi(OtBu)3)3]2)
a=26.042 (5)Å; b=14.383 (3)Å; c=27.99 (3)
β=98.60 (5)°
v=10365 (7)Å3 ;空間群:C 2/c
【0017】
例3:Cp* Sm3(OSi(OtBu)3)6
トルエン 20 mlにCp* Sm2(OSi(OtBu)3)3 (0.3 mmol) と Sm(OSi(OtBu)3)3 (0.3 mmol) を加えて2時間反応させた。得られた緑色の溶液をろ過して濾液を減圧濃縮した。 残渣にトルエンを加えて結晶化させ、目的物の針状晶を得た(収率 75%)。
結晶データ(図3)
a=26.48 (1); b=27.12 (2); c=19.26 (1) Å
α=108.18 (6) °; β=100.80 (5) °; γ=62.16 (3)°
v=11604 (14) Å3 ;空間群:P−1
【0018】
例4:ラクトンの開環重合
トルエン 10 mlに Sm(OSi(OtBu)3)3 (0.1 mmol) を加え、激しく攪拌しながらε−カプロラクトン (17 mmol)を加えところ、反応液が徐々に粘性になった。室温で15分攪拌した後、多量のメタノールを加えてポリマーを沈殿させた。生成物を濾取して乾燥して重合体(99%)を得た。Mn=27000、Mw/Mn=1.25 同様にしてδ−バレロラクトンを出発原料として用いて開環重合体を高収率で得た。
【0019】
【発明の効果】
本発明の新規サマリウム錯体は、例えばラクトンの開環重合用触媒として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサマリウム錯体:Cp* Sm2(OSi(OtBu)3)3の構造を示した図である。
【図2】本発明のサマリウム錯体:Cp* Sm3(OSi(OtBu)3)6の構造を示した図である。
【図3】本発明のサマリウム錯体:Cp* Sm3(OSi(OtBu)3)6の構造を示した図で
Claims (7)
- 式:CpSm2[OSi(OR)3]3(式中、 Cp はシクロペンタジエニル系配位子を示し、 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体。
- 式:Sm[OSi(OR)3]3 (式中、ORはアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体。
- 式:CpSm3[OSi(OR)3]6(式中、 Cp はシクロペンタジエニル系配位子を示し、 OR はアルコキシド配位子又はアリールオキシド配位子を示す)で表されるサマリウム錯体。
- Cpがペンタメチルシクロペンタジエニル配位子である請求項1又は3に記載のサマリウム錯体。
- ORが tert−ブトキシド配位子である請求項1から4のいずれか1項に記載のサマリウム錯体。
- ラクトンの開環重合用触媒である請求項1から5のいずれか1項に記載のサマリウム錯体。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載のサマリウム錯体の存在下でラクトン化合物を開環重合することを特徴とする重合方法。
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| JP06074098A JP3584256B2 (ja) | 1998-03-12 | 1998-03-12 | 新規サマリウム錯体 |
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